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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


本当の言葉



久遠の都。
先の機械母神「ステイン」の地球奇襲は、尊い数千のTCを失うという壮絶な防衛戦であった。
藤田艦長以下、瀕死のクルーが応急処置で何とか歩ける程度に回復したが、その中から生還したのは、わずか旗艦一隻。
その一隻も、一時は敵に憑依され、仲間の犬死を座視せざるを得なかったという有様。

部隊の再編と、ズタボロになった艦の修理の間、あやこには休暇許可が出た。

「私の両親が慰問に来るって言ってるんだけど」
そう言ったのはリサ。
旗艦にリサの両親が慰問に来ると言っているらしい。
その言葉を聞いたあやこの視線は上を向き、うーん、と考える。
「ごめん、私、ちょっと地球に行こうと思うんだけど」
「そう、じゃぁ、両親には、また今度って伝えておくから」
「うん、ありがとう」
傷心中のあやこはそんな気分になれず、快諾してくれたリサに感謝しつつ、地球へと逃げ出した。

地球、ニューヨークにはあやこの夫達(エルフは重婚制)がいる。
そこにはあやこの第一主人の実家があり、龍やエルフの新郎達も一緒に暮らしている。
懐かしのニューヨーク。
「おかえり、あやこ」
「お疲れ様、あやこ。 大丈夫だった?」
一息する間もなく夫達があやこに群がり、各々の流儀で癒してくれた。

現在、彼の実家には、彼の姪(小学生)一家が滞在中。
まだ小学生ではあるが、TCに強く憧れを抱ている姪。
そのせいもあってか、キラキラとした目で、あやこを見ていた。
そしてそんな娘に、両親は困惑気味だった。


***


ハーレム地区、龍族大使館では艦隊の凱旋を祝して龍国主催の戦勝パレードを予定中。
「凱旋パレードですって? 止して頂戴。 しばらく仕事のことは忘れたいのよ」
龍の夫も関わっているのだが、あやこは乗り気ではない様子。
ハァ…、と溜息をついて、パレードへの参加を拒否した。

「私はこの子と遊んでるわ。 ね?」
「うん!」
あやこが話しかけたのは姪っ子。
姪は当然、とても嬉しそうにそれを承諾したが……

「この娘は農園の跡取りだ。 悪影響を及ぼさないでもらえるかな?」
姪の父親がそう言って、姪をあやこから引き離した。
「悪影響ですって?」
「──あやこ、食事に行こう。 頼みたいことがあるんだ。」
あやこが姪の父へと噛み付こうとした瞬間に、エルフの夫が気を利かせ、会話に割って入る。
「え、あ…、そうね。 そうするわ」
怒りをぶつけそうになったあやこだが、エルフの夫のおかげで冷静さを取り戻し、姪の父に背を向けた。

「助かったわ。 ありがとう」
「どういたしまして。 ─ところで頼みたいことなんだけど」
「えぇ。 何?」
「査読を頼むよ」
「あぁ、そんなこと。 お安い御用よ」
エルフの夫はあやこに査読を頼んだ。

エルフの夫は最近、錬金術師のギルドにてアトランティス大陸を再建する事業の長をしている。
…といっても数百ある部門の一リーダーだが。
新大陸建設に関する魔道書の査読を妻であるあやこにして欲しいようだ。
そして、あわよくばギルドへスカウトしたい様子。

──弱気なあやこは、ギルドの仕事に心を惹かれていた。


気分転換に樹の上で読む綾子。
エルフの知識層の流儀だ。

「あのあやこが落ちぶれたものだな」
樹木の下から声が聞こえた。
あやこは視線をそちらへと向ける。
「エルフが水の底で土いじりだと?」
龍の夫がエルフを茶化す。
「なんですって?」
龍の夫を睨むあやこ。

当然、喧嘩が勃発したわけだが……


「お前のブログでは、戦争に無力だったようだが?」
時同じくして、叔父がリサに噛みついた。
「なんですって?」
全く同じ言葉を放つ二人。

…そして当然、喧嘩は拡大。


***


一方、旗艦では砲手の萌が艦長の人柄をリサの両親に説明していた。

『艦長は、いつも月ではなく地球を見ている』 と。

その言葉を聞いて、感激するリサの両親。
本人達はここに居ないのだが、こちらは萌のおかげで何事もなくすみそうだ。


***


姪はあやこに宙への憧れを語る。
苦笑しながら、その話を聞いているあやこ。
それを見て、面白くなさそうな顔をしている姪の父。

「リサのブログに書いてある内容も、お前も浮世離れし過ぎだ」
叔父は遂に綾子を揶揄。
「うちの娘まで、毒する気か?」

「言って良いことと悪いことがあるわよ!」
ついにキレたあやこ。
「ちょっと、あやこ! 落ちついて!」
リサが止めるのも聞かず、あやこは叔父に掴みかかり、乱闘になった。
しかし、男と女では力の差がある。

──あやこはハドソン川に落とされた。

「あ……」
ずぶ濡れになり、あやこは川の中で落ち着きを取り戻した。
けれど、その代わりに、あやこの瞳にはジワリと涙が浮かんだ。

「怖かったのよ!あたし!!」
堰を切った様に涙がポロポロと溢れ出し、そしてついに、抑え続けていた全てを吐き出す綾子。

叔父はその姿を見て、微笑を浮かべた。
叔父は意図して煽っていたのだ。
「え……?」
その様子を見て、あやこは驚いたような表情を見せる。
「やれやれ、人間の女心には苦労するぜ」
あやこを見てそう言ったのは、龍の夫。
何と彼も噛んでいたのだ。

「悪かったね、あやこ」
叔父と、龍の夫が、同時にあやこへと手を差し伸べた。
あやこはその手を借りて、川から上がる。

もう、あやこの涙は止まっていた。


***


夕食の席。
皆が揃って、わいわいと楽しい時間を過ごした。

「みんな、ありがとう。 そろそろ艦隊に戻るわ!」
そう言って一足先に、笑顔で艦隊へと戻ったあやこ。

あやこが去った後、姪はじっと星を眺めていた。

「暫く夢を見させておいてやろう……」
そんな姪の姿を見て、夫達に囁くリサ。
夫達は、その提案に頷いて返事に代えた。


──叔父夫婦は、少し離れた窓辺から、姪のそんな姿をそっと見守っていた。








fin






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ご依頼ありがとうございました。
あやこさんを思い遣る夫達と叔父さん
そしてTCに憧れる姪っ子さんの行動
皆の想いは、きっと同じだったんだなぁと思いました。
また機会がありましたら宜しくお願いします。