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ミッション:ミッシンギンミスト
1.
1974年、太平洋上を飛ぶ一機の天候観測機があった。コールサイン、スワン38。
「ウォーターゲートもベトナムも、お天道さまには関係なし、か」
とコ・パイ。機長がそれにこたえる。
「とっととわれらがクラークに帰って一杯やりたいぜ、おれは低気圧だと頭痛がするんだよ」
「冗談でしょう? 気の毒なほど観測機長に向いてない持病ですね」
「ようするに、早いとこ二日酔いの頭痛のほうをあじわいたいってことだよ」
後席、観測要員達から抑え気味の笑いが漏れる。
「OK、諸君。とっとと灰色十字をつっきって帰るぞ」
積乱雲が近づく。空はどこまでもモノクロームだ。
機内が緊張感を取り戻す。
……陰気な空だ、海に不時着してスキューバでもした方が、ずいぶん彩やかな海底が見れるに違いない。
機長がそう不謹慎に自嘲しつつ、さほどの機体動揺もなく積乱雲内に突入したその時。
彼の希望通りの出来事が、彼の望む正反対の色彩でハーキュリーを襲った。
紅。視界の及ぶかぎりの赤。なんだ? 雲か、いや紅い霧?
「ダミット、なんだこれは! アシッドペーパー中毒の幻覚体験か!?」
「夜のベッドで無能野郎のピンキーバッドトリップだ、聖なる汚物だ!」
搭乗員たちが叫ぶ。
赤。上も下もない赤。雨ならキャノピに打ち付ける筈だ、霧か?
軍人らしい表現まじりで、それぞれの恐怖と驚愕と罵りに満ちた言葉が機内を跳ねまわる。
ともかく、スワン38はその名のみを歴史に残して消失した。
彼らはせめて赤でなく、蒼く澄みわたった空に散りたいと思ったろうか?
今はそれすらもわからない。
2.
21世紀。トーキョー。
もっとも通常、さまざまな時空に進出、現出するクロノサーフ及びティークリッパーにとって、何世紀の何日かということは状況にすぎないものだが。
綾鷹・郁は眼下の首都を眺め唇を噛む、いや噛みかけた。
「だめだめ、新作のリップグロス塗ったばっかやもん」
と本能的に思い至り、郁は自身の唇を臨戦態勢にとどめる。
しかし郁から見て状況は――この時代の人間たちにとっても――深刻なようだった。
首都の河川、浄水場はことごとく、湛える水を赤くしている。
都民はパニックに陥り、失われつつある秩序の元、暴動が頻発していた。東京そのものが鬱血し、血管が浮き出ているようだ、と郁は思う。
いや、本物の血も流れているのだ。
まて、そういえば飲み過ぎ考えすぎ寝不足は瞳を赤くしてしまうがつぶらに泣きはらした瞳というのも修羅場においてはなかなかイイ武器になるかもしれない上目づかいでさらに袖をきゅっと掴んでやると効果的かもしれない小雨などふっているとさらによい背景は東欧の古い映画風がいい、などとうっとりもする郁であったが。
ともかく、久遠の都の環境保護局は、郁のそんな恋愛脊髄に負けず劣らず迅速に、時間犯罪及び事故の両面から捜査を開始した。
しかしその最中。
『赤い、霧が……うわああっ!』
以上を最後に通信を途絶、救難信号だけをのこした事象艇がある。
――艇が一機、食われた。
環境保護局内は動揺したが、すぐに全ての局員が、当該事象艇乗り組み員の最後のSOS発信に敬意を払うことになる。
ブリッジで腕を組む藤田・あやこを擁した妖精王国旗艦ウォースパイトが、信号を受けて東京に現れたからである。
3.
「さてここは、どこでもなくどこでもいい場所。いつでもなくいつでもいい時」
広く、古色然とした乾いた洞窟内。
露わな岩壁に似つかわしくない、ビロードの絨毯。
その上に、蝶ネクタイのオークショニアが立っている。
「『狂気のシンジケイト』にようこそ紳士淑女の皆さま。前口上は抜きにしまして、早速この度の商品のご紹介にまいります」
ステージを見上げる紳士淑女達とやらも、とってつけたような正装に、一癖も二癖もありそうな面構えばかり。
広い洞窟内に、つつけば破裂しそうな欲望が充満している。
隅々の闇の中を含めると、はたして何人いるかわからない。
「いうまでもなく我々シンジケイトは買ってください等とは申しませんし、思ってもいない。あなた方が是非にも売ってくれという商品を提示するだけでございます。あなた方ができることは頭を下げることでなく、対価を釣り上げることだけでございます」
唇を歪める者、舌打ちをする者。
「ご紹介するのは『恐怖心の結晶』。これひとつで都市のひとつをまるごと恐怖で支配できるという代物」
会場はどよめきたった。
「これの使い途は、今さら紳士淑女方に説明するものでもありますまい。では競りを開始いたします」
「おい待てよ」
競り人の一人が声をあげる。
「そいつの効果は本当なんだろうな。あんたらシンジケイトは、文字通り人を食っているからな」
「ほう、信用できぬと」
「証左を見せてくれるんだろうな、と言ってんだ。信用はハナからしてない」
オークショニアは嗤う。
「流石ですな。もちろん、証拠ならばとびきりのものを用意しておりますので」
彼の後方にモニターの光が鈍く浮かびあがろうとしている。
4.
ウォースパイト内、汎用科学室。
「おっかしいなあ……」
採取した赤い水、その分析結果を眺め、郁はウェーブをくるくると指先でもてあそびながら首を傾げる。
「実際、人を馬鹿にした話ね」
とあやこ。
「冗談じゃ済まない規模でやらかしてくれてるけどね……この赤いのが蛇口ひねったらドバーッでしょ? 素人は驚くわね」
二人が幾分毒気を抜かれたようになるのも当然、成分はフルオレセイン。
染料の一種で、がぶ飲みする訳にはいかないものの、色づけされた中を水遊びしたって何ら問題ないようなモノなのだ。
「ましてや観測艇を神隠し、なんて効能はないの」
あやこは短い溜息をつく。
「あー、あたしこれどっかで見たと思ったっちゃん! この蛍光ペンみたいな色、ホテルの入浴剤にあった」
「へえ。ふーん。ほほう? ……いまどきどういう類のホテルなの、それ」
あやこは流し目しつつ、にやにやしている。
「せ、せからし! どこでもよかろーもん! あたし、ちっくと思いだしたことあるけん!」
恥じらいか怒りか、赤面した郁はドタバタと連絡艇に乗り込み、自分のクロノサーフへ帰って行く。
回線開いといてねー、と郁の背中に念押ししてあやこは虎の子用、最深部のハンガーをコールする。
「こちら艦長。ミストラルの本日の試験飛行評価、進捗は?」
「ハンガーです。全高度域、最高速での、レーダーレドーム熱ノイズ試験クリア。全条件で浮遊霊知覚利用ルックダウン能力に低下なし」
「ふむふむ。『エルモ』は?」
「高機動無人標的へミストラルから発射、全弾命中です。各速度域でテスト。呪念による中間誘導・終端誘導・可変速誘導、最適値で機能。ミサイル本体の対G強度、きしむ音ひとつありません」
「いよっしゃあ!」
軽くガッツポーズして意気揚々と去る艦長に、乗員が顔を見合わせる。
「……キャプテンは、たまにああいう感じなんですかね?」
「……たまーにね、戦争大好き全開セレブだかんね」
一方、郁である。
突き動かされるように、郁は太平洋上、1974年に飛んでいた。
『ダミット、なんだこれは――』
『まるで夜のベッドで無能野郎のピンキーバッドトリップだ――』
「あーもう、この人たちも気の毒には違いないけど、スラングがひどくて、何度も聞いてると疲れるなあ」
郁は大きく伸びを一つ。
赤。消える飛行物体。“神隠し”と呼ばれる現象。
ティークリッパーの勘か、女の勘か。郁はここ、1974年スワン38の消失時間を、繰り返し訪れ観測を繰り返す。
もう何度目だろう。しかしまだ何もつかめない。
「えーい、もう一回! こうなったらとことんやっちゃる!」
『……とっとと我らがクラーク基地に帰って一杯……』
もう、何度目だろう。
5.
もう何度目だろうか?
この洞窟内、オークショニアに対して金額アップの声が上がるのは。
なにせ買い手たちは名うての悪党揃い。時が立つにつれ『恐怖の結晶』の利用価値が分かってくる、悪用次第でいくらでも元がとれると気付いた彼らは次々に値段を釣りあげ競い合う。
「やれやれ、まだまだですな。この調子では桁が足りない。時間の無駄だ」
狂気のシンジケイトの男は肩をすくめ、モニターのスイッチを入れる。
「本日最大の余興、プロモーションです。皆さんの中にはこれをご存じの方もいるでしょうが」
一層のどよめきが洞窟内に起こる。
「これは……」
「おいまさか、その結晶とやらはそいつも飲み込める、というのか」
「それを今から皆さんにお見せしようというのですよ。もちろんライブ映像です。コレに、恐慌状態に陥ってもらいます」
画面に標的が大写しになる。妖精王国旗艦、ウォースパイト。
一同に歓声があがる。おいおいあんな大物に手をだして大丈夫か、と幾分畏れたような響きの声も。
「ご覧あれ」
と、ウォースパイトの上方に赤い光が一瞬走り、またたくまに渦を巻きその巨体を赤い霧が覆い始める。艦の舳先が、明らかにぐらついている。中の人間が動揺しているのだろう。
なんてこった、すげえ、といった言葉が次々とあがる。
「10倍アップだ! 10倍払う!」
「俺らはその20倍出す!」
「言い値でいい! 国家予算並みでもいい! 俺に売れ!」
「ならこっちはその倍だ!」
競り場の熱は最高潮に達する。もはやパンを奪い合う亡者の群れに似ていた。
6.
警報。
あやこは艦橋へ駆けながら、一体どういうことかと訝しむ。警報が鳴るならなるで、鳴っているものは対処するより仕様が無い。誤報なら嬉しいが、そんな幸運を期待しながら艦長は務まらない。
おかしいのは、幾重にも警報が鳴っていること。
そして、明らかにそれぞれ互いに距離があり同時に攻撃を受けるはずの無いブロックのものが同時に悲鳴を上げていることだ。
仮に船体が中破するほどの大質量の攻撃を受けたとして、鳴るのなら攻撃を受けた隣接するブロック群、もしくはその方向の警報群でなければ筋が通らない。
でなければ相当数の工作員の侵入を許した上に同時多発的に艦内各所で破壊行動を起こされた、としか。しかしそれを許すような生ぬるい指揮を続けた覚えはない。
文字通り耳を尖らせて、あやこは警報のオーケストラに集中。
つとメインブリッジをあきらめ、比較的強い指揮移譲権限を持つ、最寄りのサブブリッジへ方向を変える。
浸食は、艦体上方から進んでいるように聴き分けられたからだ。
判断は正しかった。
サブブリッジ前の警備兵は、一体何事かと戸惑ってはいたもののあやこを見て敬礼。致命的な混乱はここには及んでいない。
「ドア、開け!」
叫ぶなり、兵の開いた対爆ドアから中に飛び込む。何人かの当直士官が、あやこを見て幾分安堵したように管制卓へ向き直る。
あやこはすぐに早口で命じる。
「メインブリッジ閉鎖、内外から一切の出入りをさせるな。艦長権限で強制インタラプト、指揮所を此処へ移す。警報下ブロックから、いや、外部からの干渉はすべてシャットアウト」
「イエス、メム」
秩序を取り戻した室内が活気を取り戻す。
自らもコンソールを操り異常をさぐりつつ、あやこは郁のクロノサーフをコールする。
先ほど去り際、郁の背中に投げかけた言葉が届いていればいいが。
ノイズ。まだノイズ。だめだろうか。しかし郁への発信を続けつつ、さらに指示をだす。
「ハンガーへ、スクランブル待機のEF−111を緊急発進」
幸いなことにこちらはすぐに通じた。
「ハンガー了解、レイブン1からレイブン4が、すでにカタパルトにのってます」
「よっし。射出、ペアで原因究明にあたらせて。それからミストラルDを続けてカタパルトへ」
さらにあやこは、艦外カメラでEF−111のそれぞれの2機編隊を追尾できるよう設定。
内部からの電子的妨害はない。何なのだろう、これは?
『……しもし。もしもーし。ちょっと、クロノサーフにワン切りとかまじありえんけん?』
郁の声だ。
7.
「おおっ、通じたじゃん。こっちはこっちで大変なのよ。なんかわかった?」
『もう、やっとってとこ。あたしじゃなかったら見逃してるね。例の台風観測機の消失時に、僅かな電磁波が……』
「あ、ちょ、ちょっと待って」
レイブン2機編隊のパスを追尾するカメラ、それぞれの画面を横目で見ていたあやこは見た。
3番機、4番機が続けて赤い霧に包まれる。
彼らも消えるのだろうか、いや、郁は今、何といった?
電磁波。あやこはレーダーレンジの指向性を操作。
霧に包まれた2機から、確かに微弱な電磁波をみてとる。
「やっほ。戻ってきたよー、ッて何なんこれ、なんばしよん!?」
クリアな郁の声が飛び込んでくる。ノイズは隔たった時空間の微振だったらしい。
「ええと……あたしは1974年でエンドレスでアメリカンスラングスクリーム聞きながらがんばって、どーにか収穫を得て帰ってきましたよと。そしたらウォースパイトと艦載機まで例の赤い霧に包まれてますよと……あたしどげんすっと……」
「あなたのクロノサーフで、あの霧の電磁波を妨害を。もどったばかりのとこ悪いんだけれど」
「ん、なんで?」
あやこは思わず一瞬失語する。なんでって?
「むしろあの電磁波、増幅させたほうがよかろーもん。スワンちゃんは超微弱な電磁波残して消えたんやけん、妨害したらまた艦載機も消えるっちゃないと?」
そういわれればそうかもしれない。いや、検証するならば、ウォースパイトが完全にあの赤い霧に飲まれていない今しかない。
でなければ、この艦までを巻き込んだ、全てをかけた二者択一になってしまう。
「わかった。やって」
と、あやこはようやく絞り出した。
「うん、もうやった」
「へっ?」
瞬間、突風が吹いたように旗艦とEF−111を覆っていた赤い霧が晴れる。
そしてその先に、これまた風が運んで来たかのように黒い不明艦が滞空していた。
8.
よし。ありがとう郁。後の事は、荒っぽいことは私がやる。
「不明艦を敵性と認める! ミストラル、まわせーっ!」
平静を取り戻したウォースパイト。そのカタパルトにはすでにミストラルDがアイドルで待っていた。
数分とたたずあやこは機上、宙空にいる。
敵艦は回頭、増速中。目的地があるのか。
「それとも? 逃げ切れるかも、とか、思いあがってるんじゃあないわよね」
あやこはスロットルをMAXへ叩きこむ。アフターバーナ、点火。走れミストラル。
ドン、と加速Gを感じる。さらに機首上げ。疾駆から崖上へ飛び上がるイタチのように、機体が跳ね上がる。
「さっすがミストラル、急加速中でもこの反応よっ」
AAM『エルモ』2基、レディー。
「初実戦にしちゃ的がでかすぎて、あんまし張り合いがないわね……」
ミサイル、リリース。連続発射。
AAM『エルモ』は周囲の浮遊霊の視覚を借り、敵艦の急所へ正確に突き刺さった。さらにその名の通りの高プラズマが目標艦を深くえぐり蝕む。
翼下パイロンを空にしたミストラルはさらに身軽さを増した。パワーをミリタリーへ。
無数の螺旋を描きながら、あやこは容赦なくガン攻撃を浴びせる。
言い訳のように打ち返してくる対空銃座を次々と蜂の巣に。さらに推進部とおぼしきノズル部を右舷、左舷と潰していく。
「あっ……と。あまりやりすぎるとこのデクノボウを市街に落としてしまうわね」
機体を敵艦後方、高位につけ、あやこは追尾態勢に入る。
「あんた達に、空で死ぬ資格なんて、あるものですか」
9.
敵性不明艦内。
艦長の目は、もはや常人のそれではなくなろうとしていた。
「対空銃座、何をしている! はたき落とせ! 機関全速っ」
代わりに入ってくる報告は、彼の絶叫を嘲笑うようなものでしかなかった。
両舷の副指揮所にミサイル被弾。
弾頭の放つ高圧プラズマによって電子戦装備、光学欺瞞装置、全損。
両舷及び後部対空砲、敵艦載機によりことごとく破壊され反撃不可能。
対空・航法レーダーレドーム全壊。
エンジンは高度を保つのに精一杯、全速の20%も出ない。ただかろうじてアジトと隠しドックのある東京へ向かってはいる。
唯一の救いは、弾切れか燃料切れか、例の悪魔のような戦闘機が去ってくれたこと。
もはやシンジケイトに助けを乞うよりない。
艦長は永久のような恐怖の時間をじっと耐え、コンパスを凝視しながら東京への到着を神に祈る。
時間だ。ついに到着した。その筈だ。
安堵で笑いそうなヒザを引きずって彼が眼下に見たのは、自らの正気を疑う光景だった。
見渡す限りの雲海。巨大にして凶暴なほどに切り立った不毛の岩山と巨大な台地。
その隙間からかすかに覗くのは果てしなく深い森林。
もはや思考力らしいそれすらも、彼にはなく。ただただ泣くような声でシンジケイトの競売窟に通信を呼び掛ける。
その遥か後方。旗艦ウォースパイトメインブリッジで、あやこは同じ光景を眺めていた。
「どうしたのかしら、そこはまぎれもなく東京都ですわよ」
と、彼女はつぶやく。
「もっとも、この艦をつかって、ちょっとした美景を投射してあるけれど、ね。本質の見えない艦長に従っているクルーこそ、みじめなものだわ」
10.
競売洞窟内は阿鼻叫喚の有様だった。
余興の筈の罠はことごとく失敗に終わり、競売の客は暴れ出す者、逃げの算段を打つ者、オークショニアへ食ってかかる者と様々、もともとが無法者の集団であるからこうなると手に負えない。
さらに錯乱した艦長からのこれまた錯乱した内容の救援要請が入り、混乱の輪は加速する。
故に。
その少女の存在に彼らが気付くのは余りにも遅かった。
呆れ気味に溜息ひとつ、郁はようやっと口を開く。片手に非殺傷散弾銃、もう片手にスタンナイフ装着の実弾ライフル。
「……はあ。やっと状況わかったかなあ。まだかなあ。よそ様の恐怖を煽って結晶化、商売しとったあんたらも、もう店じまいやけん。やろ?」
洞窟内の誰も、一言も発することができない。
「原因究明と、みなさんの捕縛。両方やっちゃらんといけんのがティークリッパーの辛いとこ。覚悟はよか? あたしはできてる」
数分も立たぬうち。
郁によって、シンジケイトと闇の顧客一味は足腰の立たぬまで『ぼてくりこかしてやった(郁:談)』状態で捕縛され、久遠の都政府により処断された。
その後しばらく、観光ヘリやセスナ愛好家の間で「空から見た東京が秘境になっていた」などとまことしやかに囁かれたが、噂としてさえすぐに廃れてしまったらしい。
了
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