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<流星の夏ノベル>


無人島de夏休み!
 ― うっかりしてたら命が流星するよ!? ―

1.
「オカルトが楽しめるかもよ!」
 知り合いのオカルトアイドル・SHIZUKUはそう言うと胸を張った。
「…で? なんで俺を誘うんだよ?」
 工藤・勇太(くどう・ゆうた)は冷たいジュースを飲みながら、SHIZUKUの話を聞き返す。
「ん? そんなの決まってるじゃない」
 SHIZUKUの言葉に思わずドキッとした勇太にSHIZUKUはにっこりと笑う。
「オカルトを追う同士としてのささやかなセンベイよ」
「…それを言うなら『餞別』じゃないのかよ…」
「揚げ足取るなんて男らしくないよ! 行くの!? 行かないの!?」
 SHIZUKUにそう言われて、勇太はひとつ訊いてみた。
「友達…誘ってもいいかな?」

 晶(あきら)・ハスロと東雲杏樹(しののめ・あんじゅ)、そして勇太とSHIZUKUは無人島へとやってきた。
「意外と素敵なところですね」
 杏樹は可憐な笑顔で景色を楽しむ。晶は物珍しげにあたりを見回している。
「東京から近いのに…こんなところがあるんですね」
 白い砂浜、青い空、透明な海に萌える緑。大自然の塊のような無人島である。
「すげえな! 来てよかった!!」
 勇太はそう叫んだが、少しだけ気がかりがあった。
 それは、他にも誘った友人がいたのだが彼らが集合場所に現れなかったことである。既にスマホは圏外を示しており、連絡を取ることすらできない。
 …しょうがないか。寝坊か何かしたんだろ。
「勇太君、ちょっと!」
 SHIZUKUが船の上から勇太を呼んだ。なんだろう? と行ってみれば、何やら大量の荷物を抱え込んでいる。
「船長さんがこれ持って行けって…」
「なに? これ」
 箱に入ったそれらの中身は見えないが、SHIZUKUが重そうにしているのを代わりに持つ。ずっしりしている。
「船長さん、これ何が入ってんの?」
 勇太の言葉に、船長の声が船内から聞こえる。
「この島で必ず必要になる物デ〜ス!」
 …あれ? どっかで聞いたことがあるような声だけど…??
「あ、俺も手伝います」
 晶もそれらを運ぶのを手伝う。なかなかの量を2人で運び出した。
「おも、重かった…」
「なっさけないわねー」
 SHIZUKUの声に、杏樹は優しげに勇太と晶を労う。
「暑いのに大変でしたね。ごめんなさい。お役にたてなくて…」
「そんな! 女の子なんだから、こういう時は男に任せてよ!」
 勇太の言葉に杏樹は優しいまなざしで笑う。SHIZUKUとは大違いだ。
 …と、何かの機械音が聞こえる。振り返ると…
「ふ、船が!?」
 島を離れ行く船の姿。そして聞こえる船長の声。
「明日また会いまショ〜! よいサバイバルを〜!!」
 ちらりと見えたピンクの長い髪…まさか…まさか!?
「シーユートゥモロー!」
 マドモアゼル都井(とい)が運転する船は、情け容赦なく無人島を離れていった…。


2.
「置いて…かれた?」
 呆然とするSHIZUKUに、真っ青な顔した晶。割と冷静そうな杏樹に勇太はハッと我に返った。
「さっきの! さっきの荷物!!」
 勇太たちは先ほど船から降ろした荷物を開封する。中から出てきたのは意外な物だらけだった。
「なんで…なんで鎧とか盾とか…武器とか入ってんの?」
「RPGゲームの勇者の装備みたいですね」
「これが船長さんのおっしゃる『必要になる物』ですか?」
 わからない。突然異空間にでも頬りこまれた気分だ。いや、現実だけども。
「…食料は!? 水は!?」
 勇太は荷物の中を探しまくったが、それらしきものは一切発見できなかった。
「つまり…サバイ…バル」
「そういうことなのでしょうね。私、ナイフとフォークよりも重いもの持った事がないんですが…」
 杏樹が困ったようにそう言った。
 そりゃ困るよね。バカンスだと思ってたらサバイバルでした! とか。食べ物自分で採れとか、装備の意味とか…。
「そういや、SHIZUKUはこの島の地形って知ってるのか?」
 勇太の言葉にSHIZUKUは即行で首を横に振る。
「…ってことはまず地形を把握した方がよさそうだよな」
「それなら、二手に分かれるのはどうかしら? 島の海岸沿いにぐるっと回って会える地点が必ずあるはずです」
 黒い日傘をくるりと回した杏樹の言葉に、SHIZUKUは頷く。
「そうだね、日が暮れる前になんとかしたいし…勇太君、あたしとこっちに行こう」
「え!? 俺とSHIZUKUで行くの!?」
 驚いた勇太にSHIZUKUは耳打ちをする。
「…馬鹿ねぇ! あの2人、どう見てもいい感じじゃない。2人っきりにしてあげなよ」
 …そういうもんなのか? 杏樹と晶をちらりと見る。
「そういうもんなのか?」
「鈍いなぁ…いいから、行こう!」
 SHIZUKUに手を引かれ、杏樹と晶と別れ砂浜を歩きだす。装備はひとまず置いていく。

 ずんずん砂浜を歩いていくと、やがて木が生い茂げり始める。砂浜ギリギリまで木が生い茂る。密林のようだ。
「なんだか変な島ね」
 SHIZUKUの感想に、勇太も頷いた。さっきまでのバカンス気分が吹き飛んでいたせいかもしれなかったが、なんだか最初に見た島の印象とまるで違う。
「なんか、B級ホラー映画のノリだな」
 おどけた調子で少しでも明るく言うと、SHIZUKUはクスッと笑った。
 が、すぐにSHIZUKUの顔面が蒼白になる。
「…ゆ…あれ…!!」
 SHIZUKUが指差すを方向を見る。勇太は思わず固まった。
「な、なんだ!? あれ!!」
 そこにはのっそりと歩くヤドカリ…ただしバカデカイ。勇太が5人分ほどの大きな殻、勇太が2人分ほどのバカデカイ鋏、勇太が…もういい。とにかくデカイのだ。
「…おい」
「…う、うん」
 勇太の声にSHIZUKUは音を立てぬように後ずさる。
「逃げるが勝ちだ!」
 ダッシュ&ダッシュ!! 力の限りに2人は逃走した。敗走ではない。勇気ある撤退だ。
「くっ…あの装備はアイツら用ってことか…」
 元の浜辺に戻ると杏樹と晶の姿はなく、勇太はSHIZUKUと2人で荷物を漁る。
 鎧、盾…弓があるな、これで行くか。矢はたくさんある。何か不思議な赤い色をした弓矢も混ざっていた。
 震える手元が勇太の焦りを象徴する。あんな敵は初めてだ。ていうか、現実にあるのかよ!
 SHIZUKUは鎧と両手に小ぶりな剣を携えた。機動力重視という訳だ。
「SHIZUKU…生き残るぞ!」
「ここで死んだら洒落にならないもんね…勇太君こそ生き残りなさいよね」
「俺は生き残れるよ!」
「どうだか〜?」
 軽口を叩いてみても、SHIZUKUの肩が震えている。怖いのだ。
 それでも行かなければ。いざ、戦いへ!


3.
 ヤドカリもどきはまだ先ほどの場所にいた。大きな鋏…あれで挟まれたらひとたまりもないだろう。
「勇太君、弓でアイツの注意をひきつけて。その間にあたしがアイツに接近して攻撃してみるよ」
「おう! …ってなんで俺がおまえに命令されてるんだよ!?」
「こういう時は女の方が強いのよ!」
 意味わかんねぇ…とはいえ、SHIZUKUの作戦はある意味正攻法。従わない理由はない。
「わかったよ。…無理すんなよ?」
「わかってる。お互いにね」
 そう言ってSHIZUKUと勇太は距離をとる。ヤドカリもどきにはまだ気づかれていないようだ。
 SHIZUKUが位置についたのを確認し、勇太は弓をぐっと引く。
 銃と一緒だ。…多分。視線の先の目標をしっかり捕え…放つ!

 カーン!

 …間抜けな音がした。殻に弓が当たったのだ。
 しかし、ヤドカリもどきの気を引くには充分だった。ヤドカリもどきは勇太を見ると、すごい勢いで方向を変えて密林の中を突き進んできた。
「やべ!」
 勇太は走る。密林の中を。弓を持ったまま、全力疾走。これは疲れる。
 ぐんぐんとその距離が縮まっていき、勇太に巨大な鋏が振り下ろされそうになった瞬間、SHIZUKUの刃がヤドカリもどきを襲った!
 固い殻は無理と判断したのか、SHIZUKUは関節部分を狙って刃を振る。
「オカルトアイドルで鍛えたこの踊りを見なさ〜い! アイドル乱舞〜!!!」
 なんだよ!? アイドル乱舞って!?
 踊るように、舞うように。SHIZUKUは両手に持った刃を振り回す。
 確実なダメージを与えるそれに、ヤドカリもどきはズーンとその場に崩れ落ちる。
 チャンスだ! 勇太は弓を構えると、ヤドカリもどきの目らしき小さな黒い点を狙う。
 SHIZUKUにだけいいとこやらせるかよ! 男の意地だ。女には負けられない。
 放たれた矢はスパンッといい音を立ててヤドカリもどきの右目にヒットした。ヤドカリもどきは悲痛な叫びをあげた。
 もう片方の目も…勇太が弓を再度引こうとすると、ヤドカリもどきの鋏が勇太を狙って落ちてきた。
「うわっ!?」
 間一髪で避けたが、どうやらヤドカリもどきを怒らせてしまったようだ。すごい勢いでヤドカリもどきは泡を吹いている。
 弓を引き、目を再度狙うがむやみに振り回される鋏に阻まれて当たりそうもなかった。
 どうする!? この武器じゃダメなのか!?
「勇太君、大丈夫!?」
 SHIZUKUの声がする。このままじゃ2人ともやられる!?
 ふと、勇太は何気なく持ってきた赤い矢を思い出した。これを使ってみよう。一か八かの賭けだった。
 弓がしなる。矢が放たれる。

 目の前が、真っ赤に染まった。

「あっつーーーーい!!!」
 燃え上がったヤドカリもどきの傍に居たSHIZUKUが慌てて遠ざかる。
「あんなの使うなら先に言ってよ!」
「俺だってあんなことになるなんて知らなかったんだよ!」
 ヤドカリもどきはそのまま息絶え、この戦いは勇太とSHIZUKUの勝利となった。
 その後、燃えるヤドカリもどきからそこはかとなくいい匂いがしてきた…ということを付け加えておく。


4.
 なぜかぶっ倒れていた晶とバケツを持った杏樹と合流し、それぞれの収穫について情報を交換した。
「水源を確保しました。晶さんのおかげです」
 柔らかな笑顔の杏樹に、SHIZUKUは喜んだ。もちろん勇太も。喉がからっからだった。
「こっちはいい具合に甲殻類の…丸焼きをゲットしたよ」
「甲殻類?」
 首を傾げた杏樹に勇太は苦笑する。
「まぁ、動かせないから一緒に来てよ」
 そして見たのはでっかいヤドカリもどきの丸焼き。偶然の副産物である。
「美味しそうな匂いですね」
 やや青ざめたままの晶がお腹を押さえた。皆腹ペコだ。
「よし、明日のためにみんなで食おう! いっただっきまーす!」

『いっただっきまーす!』

 美味しく焼けたそのヤドカリもどきは、カニのようだがカニでないジューシーな美味さだった。
 サバイバルも悪くない。
「あ、鋏はあたしの!」
「早いもん勝ち!」
「女の子に譲りなさいよー!!」
「2個あるんだから、そっち食えばいいだろ!?」
「そっちの方が大きいもん!!」
 SHIZUKUと勇太のやり取りに晶と杏樹が笑う。楽しい夕食だった。
 しかし、時間は待ってくれない。
「あ、寝る場所確保しなきゃ!」
 SHIZUKUが立ち上がると、晶も勇太も「あっ」と声を出した。すっかり忘れていた。
 しかし、杏樹は1人にっこりと笑う。
「それならいい場所を見つけておきました。ご飯を食べたらそちらに移動しましょう」
「いつの間に…」
 晶の呟きに杏樹は答えず、ただ笑っていた。

 こうして、SHIZUKUと勇太の活躍により夕食を。
 晶の活躍により水を。
 杏樹の活躍により寝床を確保し、無事に夜を過ごすことができた。
 朝日が昇ると、勇太は誰よりも早く起きた。
「よし! 何とか乗り切ったぜ!」


5.
 迎えの船は意外と早く着いた。
「アハハハハ〜! 皆さん、お元気そうで何よりデ〜ス」
 相変わらずのテンションのマドモアゼルの船に揺られて、東京の港についた勇太たち。
 そこで待っていたのは…勇太の友人たちだった。
「お前ら…どこ行ってたんだよ!?」
「どこって…無人島だけど…?」
 友人たちは顔を見合わせた。その顔は困惑に満ちていた。
「な、なんだよ?」
「いいか? よく聞けよ。お前と昨日ここで俺ら待ち合わせたよな? 俺ら、昨日ここに来たんだよ。そしたら、お前らいなくて、船を出してくれるっていう船長に訊いてみても来てないって言われて、家に電話しても出ないし、スマホも繋がんねぇし…お前らどこ行ってたんだよ!?」
 …???
「何言ってんだよ。俺らが乗ってきた船なら今そこに…」
 振り向いた勇太が見たのは…ただ、広大に広がる海だけだった。
「………」
 次の言葉は見当たらなかった。

 俺たちは、さっきまで一体どこに居たというのか?
 俺たちをあそこまで運んでくれたあの船はいったいどこに行ったのか?
 俺たちは…俺たちは何を体験してきたというのか?

 夏の潮風が、勇太の疑問に答えてくれるはずはなかった…。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 1122 / 工藤・勇太 / 男性 / 17歳 / 超能力高校生

 8584 / 晶・ハスロ / 男性 / 18歳 / 大学生

 8650 / 東雲・杏樹 / 女性 / 999歳 / 高校生


 NPC / SHIZUKU / 女性 / 17歳 / 女子高校生兼オカルト系アイドル

 NPC / マドモアゼル・都井 / 両性 / 33歳 / 謎の人

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 工藤・勇太 様

 こんにちは、三咲都李です。
 この度は流星の夏ノベル、ご依頼いただきましてありがとうございます。
 SHIZUKUとパーティー組んでサバイバル! 皆で生き残ってぇ!!
 ひと夏の楽しい狩りサバイバル、少しでもお楽しみいただければ幸いです。