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神聖都学園 学園祭開催!
秋になり、神聖都学園は学園祭の準備をはじめていた。
アリア・ジェラーティは神聖都学園の生徒であるSHIZUKUと影沼・ヒミコからインターネットカフェに呼び出され、文化祭に遊びに来ないかと誘われる。
興味を持ったアリアは行くことを決め、三人で文化祭の話題で盛り上がっているところへ、突然入店してきた一人の女の子が泣きながらヒミコに抱きついた。
話を聞くと、彼女はヒミコと同じクラスの女子生徒で、クラスの催し物は喫茶店をやるらしい。しかしオススメメニューのフラッペを作る道具が先程届いたので、試しに一度使ってみたところ、故障して動かなくなってしまったそうだ。直せるものの、数日の時間を必要とするらしい。
だが文化祭は明日。オススメメニューを失い、クラスメイト達はどうしようかとパニックになっているそうだ。
そこでふと、SHIZUKUはアリアに視線を向ける。アリアがアイス屋を職業としていることを思いだし、フラッペを作るかき氷機とアイス製造機を持っていないかと尋ねた。
ヒミコと女子生徒にも期待に満ちた眼差しを向けられ、アリアは渋々予備の分も含めて、持っていると答える。
そして予備の二台を、ヒミコのクラスに貸し出すことになった――。
パーン……パンパパーンッ
「秋空に響く花火の音……。結構、良いかも」
アリアは白い息を吐きながら、笑みを浮かべる。頭には青いロシア帽、体には白いファー付きの青いコートと青いケープ、手には黒い手袋と足には茶色のロングブーツと、完全に防寒対策の格好をして来た。
文化祭当日は気温は低いものの晴れており、大勢の人々が学園祭に訪れる。
アリアは歩きながら、校門の所で貰ったパンフレットに眼を通す。
「さて、と……。かき氷機とアイス製造機、昨日使い方を教えたけれど……大丈夫かな?」
SHIZUKUは午前中、アイドルとして体育館のステージで催し物をする予定だ。そしてヒミコはSHIZUKUの手伝いがあるので、二人とも今は忙しい。
なのでアリアは一人、昨日機械を貸したヒミコの教室へ一人で向かう。
校舎の中は温調がきいており、アリアは少し頬を赤くして手で自分の顔をあおぐ。
「流石は神聖都学園……。昨日、『こんな季節にフラッペ?』って思ったけれど、この暖かさなら食べても大丈夫そう……」
そしてヒミコの教室に到着すると昨日会った女子生徒がアリアを見つけて、笑顔で駆け寄って来た。メイド服を着ている女子生徒はちゃんと借りた機械を使いこなせていると言って、アリアを席に案内した後、早速作って持ってくると言う。
アリアは一人、イスに座って大人しく待っていると、すぐにフラッペが目の前に置かれた。
「おおっ〜! 美味しそうっ……!」
かき氷にオレンジシロップをかけ、その上にバニラアイスクリームが乗っており、皮をむいたオレンジがアイスを囲むように置かれている。透明のガラスの器に盛られているフラッペは、本来ならば夏以外にはあまり見かけないもの。
少し懐かしさを感じながら、アリアはスプーンを使ってフラッペを頬張る。オレンジの甘酸っぱさが口の中に広がり、冷たさに一瞬体が震えるものの、アリアの顔には笑みが浮かぶ。
女子生徒が感想を求めてきたので、アリアは素直に美味しいと答えた。夏に食べるのとはまた違った美味しさがあることに、感動したのだ。
満足そうにフラッペを完食した後、代金を払おうとしたが、機械を貸してもらった礼だと言って奢ってもらった。
「……まっ、ちゃんと使いこなせているみたいだし、フラッペも美味しかった。とりあえず安心……」
その後は体育館へ向かい、SHIZUKUの催し物を見に行く。
「おや、珍しい……。てっきりオカルト関係で何かすると思っていたんだけど、まさか普通にコンサートとは……」
体育館には多くの人が集まっており、アリアは角の方でステージを見る。
SHIZUKUはアイドル衣装を着て、歌って踊っていた。客達は大喜びで、熱気が凄い。
コンサートは一時間ほどで終わり、アリアは待ち合わせの時間が近いことに気付いて、体育館近くの中庭に移動する。
「おーいっ! アリアちゃん!」
「お待たせしましたぁ!」
制服に着替えたSHIZUKUとヒミコが、待ち合わせ時間ぴったりに走ってやって来た。
「大丈夫。SHIZUKUちゃんのコンサートを見てたから……」
「あっ、見てくれたんだ! どうだった?」
SHIZUKUに問われ、アリアはフッ……と遠い目をする。
「……普通にアイドルをしているSHIZUKUちゃんが、異常に新鮮に見えた……」
「んなっ!? それってどういう意味よ!」
「まっまあまあ」
一時間もコンサートをした後だというのに、SHIZUKUはまだまだ元気なようだ。
手伝いをしていたヒミコの方が、若干疲れているように見える。
「ところでどこに行く? SHIZUKUちゃんは行きたいところ……あるの?」
「もっちろん! 実はあたしが副部長をしている怪奇探検クラブ部員以外の人が、占い屋をしているそうなの。ぜひそこへ行ってみたいわ!」
「占い屋と一言で言いましても、クラスの催し物になっているそうです。数名の人が、いろいろな占いを一回百円でしてくれるそうなので、興味を持っている人が多いんですよ」
「へえ……。確かに面白そう……」
そして三人は、早速占い屋を行っている教室へ向かう。女の子達が並んでいたが、すぐに順番は回ってきた。
教室の中は布で区切られており、占いの内容が描かれた看板が立っている。
「えーっと……。対人だとタロット占い、水晶占い、手相占い……などなど。無人だとガチャポンおみくじ、星座占い機が、壁際に置かれた机の上に何台か並んでいるね……」
アリアは教室の中を見回し、どれが良いかと考えた。
「対人は一人につき、相談事は一つで、制限時間は三分から五分……。意外にしっかりしているわね」
「お客様が多いようですし、その方が良いのかもしれません」
SHIZUKUとヒミコも占いの内容を見ていく。
「……ねぇ、二人とも。私はタロット占いが良いな」
アリアはタロットカードを使った占いを選んだ。少し並んだ後、順番がきて、布を捲りながらSHIZUKUとヒミコと共に中に入ると、占い師のコスプレをした女子生徒が一人、座って待っていた。
占ってもらうアリアは、占い師の正面に置いてあるイスに座り、恋の占いを頼む。
すると占い師はアリアとの間にある机の上でタロットカードを使い、占いをはじめた。
占いの結果は、『気に入った相手を束縛するクセがあるようなので、そこを直せば幸せになれる』とのことだ。
思い当たることがあるSHIZUKUとヒミコの表情が強ばるものの、アリアはニヤッ……と冷たい微笑みを浮かべる。
「……そう、だね。私、あなたのような人が好みだから、ついコレクションに……」
「さあーってと! アリアちゃんの占いの結果は聞いたし、お金を置いて出て行こうね!」
「そっそうですね。次の人が、外で待っていますし」
SHIZUKUは百円玉をキョトンとしている占い師に手渡し、ヒミコと共にアリアの体を拘束しながら教室から出て行った。
「……冗談なのに」
「アリアちゃんの冗談は、本気に聞こえるからタチが悪いわ」
むくれるアリアだが、SHIZUKUは本気で真面目だ。
次に三人は、校庭ではじまったヒーローショーを見に行く。
手作り感があるヒーロー衣装を着た五人組が、全身黒づくめの衣装を着た悪役達と戦闘を開始したところだ。
――が、不意にアリアは悪のボスらしき男子生徒と、バッチリ眼が合ってしまう。
するとボスは子分達に何かを命じると、アリアはあっと言う間に誘拐されてしまった。
「ああっ! アリアちゃん!」
「人質役になってしまいました……。観客いじりをするとはやりますね」
SHIZUKUとヒミコはとりあえず、成り行きを見守ることにする。
最初はポカーンとしていたアリアだが、すぐに空気を察した。しかし一般人なら「助けて!」と叫ぶところを、
「私のことはいいから! 早く敵をやっつけて!」
とヒーロー達に言って、SHIZUKUとヒミコを少々呆れさせるところはアリアらしい。
小柄なアリアは体格のいい男子生徒に抱きかかえられており、ヒーロー達が助けようと近付いてくる。ヒーロー達はアリアには当たらないように攻撃をしてくるも、敵は身軽に避ける。
「……意外とヤルね。でもコレはどうかな?」
小さな声で呟くと、アリアは敵の背中に小さな氷の塊を作りだす。
敵は妙な声をあげながらその場に倒れてしまったので、アリアは自力で逃げられた。
「……背中が弱点の人だったんだね。ちょっと悪かったって思うよ」
地面に倒れてピクピクと痙攣している敵を見て、アリアは気の毒そうに両手を合わせて頭を下げる。
「アリアちゃんっ! お化け屋敷に勝手に氷の像を作っちゃダメ!」
「アリアさん! フルーツフラッペが美味しくて感動したことは分かりましたけど、クレープやケーキに使われるフルーツを勝手に凍らせてはいけません!」
――しかし氷の小悪魔のイタズラは、その後もSHIZUKUとヒミコを悩ませることとなった。
<終わり>
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【8537/アリア・ジェラーティ/女性/13歳/アイス屋さん】
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■ ライター通信 ■
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このたびはご依頼していただき、ありがとうございました(ぺこり)。
ストーリーの中にある『氷の小悪魔』シーンは、書いていてとても楽しかったです♪
また機会がありましたら、よろしくお願いします。
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