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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


頑張った子にはご褒美を

「晴れたっすね。テルテル坊主作った甲斐があったっすー」
「そうね」
「それにしても、姉ちゃん、その恰好すごく似合ってるっす。可愛過ぎっすよ」
「そう?永輝も似合ってるわ」
 自分の服装と、姉の服装を見比べて、
「恋人同士……とかに見えたりしないっすかね」
そう呟く、永輝。
「何か言った?」
「え?な、なんでもないっすよ?」
 首をかしげる姉に、あわてて首を振って永輝は誤魔化した。
 森ガール系の格好をしている絵美と、爽やか系の服装の永輝。彼らの関係を知らなければ、完全にお似合いの恋人同士に見えるだろう。
「そ、そんなことより。姉ちゃんと二人って久しぶりっす」
 心からの笑顔を見せる弟に、絵美は微笑んだ。
「楽しそうで何より」
「当然っすよ。姉さんとデートっすよ?楽しくないわけないっす。姉さんは楽しくないっすか?」
「そんな訳ないでしょ」
 くすくす笑いながら、絵美は答えた。
「それはよかったっす」
 そういっているうちに、目的地である水族館についた。休日ということもあってか結構混んでいるようだった。
「はぐれないようにしないとっすね」
「ええ」
 動物好きの絵美の為にゆっくりと順路を回っていく二人。自分のようにはしゃぐわけではないが、うれしそうに微笑む姉を見て、テスト頑張ってよかったと本当に思う永輝だった。


 ペンギンのコーナーに来た時、ちょうどショーが始まる時間だった。何匹ものペンギンはひょこひょこ列をなして出てくる。
「可愛い」
「姉ちゃん、俺、飲み物買ってくるっす」
 姉が見やすいように出来るだけ前の方の席を取り、永輝はそういって席を外した。
「可愛かったわね」
 しばらく経って、ショーが終わり、絵美がそう声をかけるが、そこには誰もいない。首をかしげる絵美。どうも、ショーに集中していて、永輝の言葉が耳に入っていなかったようだ。
「困ったわね」
 そういいながら、溜息混じりに
『さっき通った、大きな水槽の前にいる』
 そうメールを打って、大きな水槽の方へと、向うのだった。


「あれ?姉ちゃん?」
 それと入れ違いになる形で、ペンギンのコーナーに戻ってきた永輝。ショーが終わったからだろうか、人もまばらだ。その中から大好きな姉を見つけられないほど、永輝の眼は節穴ではない。
「姉ちゃんがいないっす!」
 おろおろしながら、コーナーの近くも探すが、やはり姿は見えない。
「こんなことなら、一緒にいればよかったっす!!どこにいるっすか!?」
 若干パニックになりながら後悔した時、メールの着信音。しかもこの音は愛しい姉からのものだ。慌てて見ると
「了解っす!!」
 そういって、永輝は大きな水槽に走り始めた。


「ねぇ、君一人?」
 絵美が、大きな水槽の前で水槽を眺めていると、見知らぬ男が二人、にやにやしながら話しかけてきた。
「いえ、違います」
「じゃあ、誰かと待ち合わせかな?こんな所に君みたいな可愛い子一人で置いていくような奴より、俺らとまわらない?そのほうが絶対楽しいよ?」
 男の一人がそう言って車椅子のハンドルに手を伸ばした時、その手をつかむ者がいた。
「何の用っすか?」
「なんだ、お前?今、この可愛い子と話してんの。外野は黙ってろよ」
「俺の連れにになんか用っすか?っていえばいいっすか?」
 そう睨み付ける永輝。その殺気すら纏った鋭い眼光にたじろぎながら
「なんだよ、彼氏持ちかよ」
 そう言い捨てて去って行った。


「ごめんっす。あの場を離れたばっかりに危ない目に合わせたっす」
 平謝りする永輝に微笑む絵美
「永輝が助けてくれたから大丈夫。それより、手のそれひとつくれる?永輝も走ってきたんでしょ。飲んで?」
 さっき買ったドリンクを手渡し、自分も飲む永輝。走ってきたこともあってか、のどが渇いていたのだろう。一気に飲み干し
「ぷはー。生き返ったっす」
「よかった」
「もう離れないっすよ」
「そうして」


 その言葉通り、二人は館内をゆっくりと見てからお土産コーナーにやってきた。
「あっ……ねえちゃん。俺トイレ行ってくるからここでお土産選んでてほしいっす」
「わかった。ここにいる」
「お願いするっす」
 そう頭を下げて、お手洗いの方へ走っていく弟をお見送って、何かないかと見ていると可愛らしいシャチの縫いぐるみがあった。それを手に取り、ふと会計へ行こうとした時、ある物に目が止まった。静かに微笑んで、絵美はそれも手に取り会計へ。


「遅くなったっす。あれ?、もうお土産買ったんすか?」
「あぁ。永輝は何か買う?」
「自分はいいっす。こうやって姉ちゃんと来れただけで満足っすから」
「そう、じゃあ、これ記念に」
 そう言って、絵美は水色のペンギンと小さな鈴の付いたストラップを差し出す。
「いいんすか!?」
「心配ない、ほら」
 そういって青とピンクのペンギンのストラップを取り出して見せた。
「三人でお揃い。いいでしょ?」
「お揃い、いいっすね。ありがとうっす」
「帰ったら、みんなでつけよう?」
「そうっすね。あんまり独占しすぎるのも悪いっすし、帰るっす」
 そう永輝が言って二人は家路へとつくのであった。


 その日の夕食後、絵美の買ったストラップをつけて微笑みあう三人の姉弟の姿があった。