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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


写真撮影は計画的に

「2人で買い物なんて久しぶりっすね」
「そうですね。いつも姉さんがいますから」
 振り返る女の子達の視線に目もくれず、街を歩く永夜と永輝。永夜の手には赤いポップコーン。
「食べますか?」
「……もういやっす」
「お菓子は主食です」
 永夜は手の中にある赤いポップコーンを一掴み口に入れる。永輝は知っている。あれが、なぜ赤いのか。
「そんなことより、なんでさっきから辛いものばかりなんすか!?味覚がおかしくなりそうっす」
「そうですか?」
 そう、あれは通りすがりにあったポップコーン屋さんで見かけた
『冬季限定!これで体も心もポッカポカ。唐辛子ポップコーン』
 なる、ネタ臭しかしない代物なのだ。永輝も一口もらったが、口の中が痛くなった。
「だいたい服を選びに来てるのになんでさっきからお菓子ばかり買ってるんすか!」
 今日は2人で私服を買いに街へ出てきたのだ。互が互いの服を見立てて、ちょっとイメチェンを図ろうというような話だったのだが先程から買っているのはお菓子ばかり。
「お菓子は主食です」
 きりっと言う弟を見つつ、本当に何をしに来たいんだろうと考えてしまう。
 

「すみません」
 後ろから声をかけられ、2人は振り返る。
「何か?」
 警戒しながらも、口を開く永夜。
「芸能界とか興味ありませんか?」
「は?」
 警戒心を強める2人にスカウトらしき人は説明し始める。
「モデルさんを探してるんですが、写真を撮らせていただけませんか?もし芸能界に興味があるなら、うちの専属モデルになっていただきたく……」
「断るっす」
「お断りです」
 そう言ってスカウトさんをスルーし、2人は歩き始める。
「あっ、クレープ屋さんすね」
 スカウトさんに声をかけられたところのすぐ近くにクレープ屋さん発見。辛いもので口の中が痛くなっている永輝は
「お姉さん、期間限定のこれくださいっす」
そう言って、チョコレートたっぷりのいかにも甘そうなクレープを注文。
「ハバネロクレープ……」
「無いっすよ!」
 クレープを食べて口の中の辛さが中和されたのか、永輝のツッコミにもキレが戻ってきた。
 その後、服を見るが、永輝はさわやか系、永夜はクール系の服装を好むので、どうも趣味が噛み合わない。
 結局お互いに好きな洋服を買って、帰ることに。
「あまり遅くなっても姉さんが心配しますしね」
「早く買った服を姉ちゃんに見せたいっす」
 なんだかんだでるんるん気分で帰ろうとしている2人に、どこかで見たことのある人が声をかけてきた。
「あの……1枚だけでも撮らせてもらえませんか?」
「あぁ、さっきのスカウトさん」
「その話なら断ったはずっすよ?」
 それを聞いて子犬のようにしゅんとなるスカウトさん。
 2人は顔を見合わせため息をつくと
「1枚だけっす」
 そういった。
「本当ですか!?」
 スカウトさんの表情がぱぁと明るくなった。
「急いでくださいね。早く帰りたいので」
「はい、急ぎます!」
 本当に犬ならしっぽをブンブン振っていそうな位嬉しそうにしながら、スタッフに指示を出すスカウトさん。
「犬ですね」
「犬っすね」
 その光景を見ながら、2人は準備を眺めていた。


「ありがとうございました。雑誌ができたらお送りしたいので住所と写真に載せるお名前、コメントなんかもあれば教えていただけませんか?」
 顔を見合わせる2人。何やらアイコンタクトをして、永夜が口を開く。
「雑誌は送っていただかなくて結構です。名前は夜と昼。コメントは特にありません」
「えっ、でも……あっ、じゃあ電話番号だけでも」
 またしゅんとなりそうになる、スカウトさんに仕方なく永夜が携帯の番号を教え二人は家路につくことにした。
「そういえば、なんの写真だったんでしょうね」
「雑誌っていったっすね」
「まあ、いかがわしい雑誌でなければいいでしょう」


 後日、姉が一冊の有名雑誌を買って帰ってきた。
 いつもなら買わないような若い女性向けのファッション雑誌だ。
「どうしたんすか?雑誌なんていつも買わないのに。しかもそれ、姉ちゃんが興味ないジャンルの雑誌っすよね?」
 首をかしげる弟2人の前に姉は雑誌のあるページを広げてみせた。
 そこには、この間街に買い物に行った時に取られた写真がでかでかと載っていた。そのコーナーでは一番大きいサイズで取り上げられている。
「学校でもこの話題でもちきりよ」
「そ……そうですか」
「そう……なんすね」
 完全にひいている二人。ガンとして断ればよかったと公開したが、もう遅かった。
 その後、ただでさえ目立つというのに学校では一躍、時の人になってしまった上に、例のスカウトさんから何度か電話がかかってきて
「好評なので是非もう一度でていただけないですか?」
「もうやりません。あまりしつこいと通報しますよ」 
 と頼まれたが、丁重に(若干脅しつつ)お断りし、番号を着信拒否にしたことで、この一件は片付いた。


「もう、ああいうのはコリゴリっす」
「同感です」
 2人はため息をついて二度とああいうのは受けないと心に誓うのだった。


Fin