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まったりとした休日
●思い立ったら旅行へ
「たまには、ゆっくり骨休めするのもええやろ」
早朝の東京駅。
セレシュ・ウィーラーは、日帰り旅行に出かけるため、始発の特急に乗ることに。
(ここ数日、夜の研究に没頭しすぎて疲れ溜まっとるからなあ。これじゃ、ええ研究でけんわ)
根を詰め過ぎたこともあり、疲れがなかなかとれない。
このままでは研究が捗らず、体に支障をきたす。
そうならないよう、気分転換に出かけよう!
思い立ったので、即実行。なるべく近場で、暖かいところに行くことに。
そうなると、行き先は東京近郊の温泉街しかない。
インターネットで調べると、意外にも、東京は日本の隠れた温泉地であるこことがわかった。
東京は神奈川、大分、静岡に次いで日本で4番目の温泉密度を誇り、都内23区だけに絞ると、神奈川を越える日本で一番の温泉地だ。
「東京、随分と温泉施設があるんやなあ。驚いたわ」
温泉といえば、ぱっと思いつくのは別府、草津といった有名どころだろう。
東京に温泉が多い、というのは、研究熱心なセレシュでもわからないことだった。
温泉に向かう列車の中で、駅の売店で買った駅弁を頬張る。
「この駅弁、なかなかいけるわ。温泉には、どんな食べ物あるんか楽しみやなあ」
温泉街に着いたら、まずは何をしようか。
最後の一口を食べ終え、お茶を飲みながらプランを練る。
●ツルツル、スベスベ
「まずは、温泉に浸かってのんびりしよか」
温泉施設で料金を支払った後、最初はどの温泉にしよか? と案内図をじっくり見る。
「ここの温泉、うぐいす色のにごり湯かあ。珍しいなお湯やな。しかも源泉掛け流し。こら、おもろそうや。まずはここからや」
そうと決めたら、さっそく掛け流し温泉へ。
「ん〜ポカポカ〜♪」
この温泉は、塩分濃度の高いナトリウム塩化物強塩温泉だ。
温泉中に存在する塩分には保湿効果があるうえ、身体を芯まで温めてくれる。
それだけでなく、鎮静効果や殺菌効果が含まれているので切り傷や皮膚病などの肌トラブルに働きかけ、疲労回復や健康増進にも良い作用をもたらす。
肉体的には丈夫だが、美肌はお得とセレシュは温泉を堪能。
お次は、緑に囲まれた、青空を見上げながら入浴できる露天風呂。
昼間と夜では表情の違う露天風呂だそうだが、日帰りなので、夜の表情を楽しむことができないのが残念。
「青空を見ながらのお風呂もええもんや。あ〜極楽〜♪」
ババくさいと思いつつ、つい出てしまう言葉だった。
「ここの内湯、肌触りなめらかやな。井戸水を使用、かあ。それでなんんやな」
ジェットバス、腰掛湯でリラックスし、電気風呂、立ち湯、寝湯を一通り浸かる。
「最後はこれにしよか」
お湯でまったりした後は、漢方薬草の粉末を蒸気で蒸し、室内に充満させた薬効と香りを楽しむスチームサウナ。
「今日の薬草はヨモギかあ。この壺に入っている塩を身体に刷り込んで発汗を促せば、デトックス効果と美肌効果が期待できるか。やってみよ」
温泉とサウナで、セレシュのお肌はツルツル、ピカピカ。
「んー、お肌の潤いバッチリや! こらええわ♪」
●美味しいものを食べよう
「あ〜いいお湯だったわ〜」
温泉で全身ホカホカ、お肌ツルツルになって大満足。
身も心もリラックスしたらお腹がすいてきたので、食事処で腹ごしらえを。
「お、これ、美味しそうやな。これにしよ」
セレシュが決めたのは、旬の海産物と野菜を使った季節のコース料理。
「それと、地酒も頼むわ。お薦め何? あ、うち、こう見えても大人やねん。身分証明見せよか?」
メニューを下げようとした女性従業員が、未成年にはお酒は出せないといった表情をしているので、自分からお酒を飲める年齢であることを
明かす。
「失礼致しました。お持ちしますので、少々お待ちください」
頭を下げ、無礼を詫びるとそそくさと厨房に行った従業員を見て、悪いことしてもうたかな……と反省。
食事処は、昭和の住まいを再生したかのような造りの和室で、庭園を眺めながら、ゆっくりとした時間を過ごせるようになっている。
先に注文した地酒を飲みながら、まったり気分で庭園を見ているだけで癒されるような気分に。
(こんなのんびりした時間を過ごすんも、たまにはええな)
そんなことを考えているうちに、料理が運ばれてきた。
旬の海産物を使った刺身や焼き魚、地元野菜の漬け物や煮物といった和食だった。
「この刺身、美味いわあ。煮物もええ味や」
美味しい料理に舌鼓を打ちつつ、庭園を眺めたり、地酒を飲んだり。
●お土産は何にしよう
美味しい食事を済ませた後は、土産物屋を物色することに。
「土産買うんは、鍼灸院の常連さんだけでええかなあ?」
いくつ買おうかと悩むが、その前に、何があるのか見て回る。
土産物の定番といえば、絵葉書とか、キーホルダーとかいろいろ。
セレシュが来た温泉施設にも、そのようなものが置いてある。
温泉まんじゅうといった食べ物もあるが、お土産は残せるものがいいと判断し、ハンドタオルをいくつか購入。
「うち用はこれやな」
自分用に選んだのは、花柄の巾着袋。
(着物を着て、これ持って歩いたら、うちも大和撫子に見えるやろか?)
帰る前に、もう一度温泉に入ってのんびりすることに。
ゆったり、まったりとした時間はあっという間に過ぎ、帰りの列車の時間に。
「たまには、命の洗濯するのは大事やね。今度はどこでしよかな」
今日は温泉だったから、次はエステにでもしよかな? と考えているうちに眠たくなったのか、列車に揺られて心地良くなったのか、ウトウトと眠ってしまった。
研究に没頭するんもええけど、のんびりするんもええな。
そういう一日をおもいっきり楽しんだセレシュだった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【8538 / セレシュ・ウィーラー / 女性 / 21歳 / 鍼灸マッサージ師】
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■ ライター通信 ■
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セレシュ・ウィーラー様
お久しぶりです。ご発注、まことにありがとうございます。
大変お待たせ致しました。
以前のノベルは自宅でのんびり、といったシチュエーションでしたが、今回は、温泉でゆっくりと過ごすといった内容になっております。
日帰りではありますが、温泉に浸かって疲れを癒したり、美味しいものを食べてリラックスしていただきました。
ノベルを読んで、のんびり気分が伝わることを願います。
ここがイメージと違う、という点がございましたらお気軽にリテイク願います。
またお会いできることを楽しみにしつつ、これにて失礼致します。
氷邑 凍矢 拝
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