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<東京怪談ノベル(シングル)>


【ひよこ創世記】


 この世界は不思議なのですよ。
 不思議がたくさんあるのですよ。
 世界が不思議?
 不思議が世界? 
 世界を創造する時、
 その世界の創生の神様は誰もがその世界の設計図を描くのですが、
 なら、この不思議も世界の創生の計画のうち?
 私が不思議に想う事は、この三次元と呼ばれる世界…地球は、あまりにも命の数に対して、
 それの容れ物として創生された人間さんと呼ばれる器が少ない事なのです。
 例えば人間さんたちに今、一番世界で大きいと思われている大きな大きなシロナガスクジラさん。
 本当はそれよりも大きな恐竜さんが地球と呼ばれる器の地下に広がる場所、アルガタで、地底人たちと一緒に暮らしているのは、上に暮らしている人間さんたちには内緒の話。
 アルガタも内緒ですよ?
 でも、たまーに海の底の穴から泳げる恐竜さんが外に出てしまって、それを見つけた人間さんに記念撮影されてしまうけれども、それは内緒の話です。
 内緒の話。しぃー。秘密の話。本当にですよ?
 そんな大きな恐竜さんもいれば、
 蟻さんやミジンコさんよりももっと小さいバクテリアさんみたいな命の器もあるのです。
 命の器の数は小さい物から大きい物まで数が決まっています。
 人間さんと呼ばれる器の種族が生み出した数の概念をも超えるほどの。
 天国と呼ばれる場所。
 地獄と呼ばれる場所。
 彼の岸。此の岸。と呼ばれる場所の、彼の岸。そこで命は此の岸へ行く順番待ちをしています。
 順番を待って、巡って来たチャンスを経て、命は割り振られた器に入って、寿命をまっとうするために頑張るのです。
 それは無意識と呼ばれる世界のシナリオにそって。
 命は皆すべて、無意識と呼ばれる魂の領域で繋がっていて、それが一つの思考、行動を起こすと、次の瞬間にはそれが伝わり連鎖反応を起こし、世界と呼ばれる舞台で運命と呼ばれるシナリオにそって劇が演じられるのです。
 すべてが一瞬一瞬のその思考の末の判断によって起こったように思えても。
 それはとても幸せな巡りあわせもあれば、
 それはどうしてこんなにも酷い事が起こるのだろうと嘆き悲しむような巡りあわせまであります。
 でも、神様は観ているのです。願っているのです。
 そこに、なら、命はどのような物を築き上げるのだろう? と。
 それが此の岸に器をもらって舞い降りた命に課された試練なのです。
 私が神様候補生として試されているように。
 なら、この私、クリスティアラ・ファラットを創り出した神様は、無意識と呼ばれる世界のシナリオが創り出した私の今のこの次の瞬間に、私がどのような物語を築きあげるのか観ておられるのでしょうか? 
 世界の理、出来事すべてが決まっているのであるのなら、
 私のこの思考するという行為の決定が先で、人間さんが少ないという現象がその後で決定されたのか、
 それとも人間さんが少ないという現象が先に決定されていて、私のこの思考が決定されたのか?
 卵が先か? 鶏が先か?
 鶏が先か? 卵が先か?
 どれだけ考えてもそれは答えがわかりません。
 なので、いっそう答えはひよこが先という事にしておきましょうか?
 ――ぴよぴよ。
 でも、ひよこが答えというのは言いえて妙かもしれません。だって私は神様の見習いですから。
 私は神様の見習い。
 でも、簡単な世界ならもう創造する事が出来ます。
 本当ですよ?
 たまに……本当に、たまにですよ? 失敗する事もあるかもしれませんが。でも、たまにですよ?
 この地球と呼ばれる三次元の世界では、
 その数の概念をも超える命の数よりも、
 此の岸における命の器は少なく、
 さらに、人間さんと呼ばれる器は他の種族に比べてとても少ない。
 あ、でも、人間さんが少ないという事は、私の角を切られる危険性も少ない?
 こ、ころさないでください。(;;)
 でも、たとえば私が生み出した命の器に、私の角を切ると言う思考にプロテクトをかけたとしたら?
 そうしたら、人間さんが多くても私は危険ではないのかもしれません。
 それは試してみる価値はあるかもしれません。


 それは戯れの創生。
 人間さんの女の子があまりにも暇でクッキーを作るように。
 仔猫があまりにも暇でてふてふを追うように。
 仔犬が自分の尻尾を追いまわしてくるくると回るように。


 私も戯れに世界を創りましょう。


 人間さんの多い世界。
 でも、私の角に興味の無い世界。
 

 クッキーを焼くには、
 薄力粉、
 バター、
 砂糖、
 卵黄
 −が必要。


 世界を創生するのにも、ほんの少しの材料が必要。
 その材料はどこから持ってきましょうか?
 これは戯れの創生。
 なので、私が本気を出して、無から有を生み出す訳にはいかないのです。


 それならこんなのどうでしょう?
 人間さんの壊れてしまった玩具がいつの間にか無くなっている現象がありますよね?
 あれはですね、妖精さんが壊れた玩具を自分たちの世界に持って行って、
 それを修理して、
 そうしてまた妖精さんの国から人間さんの国へと再出荷をするのです。

 なら、私もそれに倣いましょう。
 神様見習いはそのお話に倣いましょう。

 神様は世界を創ります。
 無から有を創ります。
 でも、今日は戯れの創生なので、それはやめましょう。

 
 地球を創生した神様もクッキーを焼くように地球を創りました。
 他の神様も他の世界を創る時もそのように。
 なら、その余った材料はどうなったでしょう?
 神様だから全てが計算ずくだから材料なんてあまらないだろう?って。
 うふふふ。神様はですね、実はほんのちょこっとだけ大雑把でいい加減なところがあるのですよ。
 だから、世界を創る時もよく材料が余る事があるのです。
 この度の世界の創生は戯れ。
 なので、私は戯れにその世界の余りを使って世界を組み立てましょう。
 それはまるで何の絵も文字も書かれていないピースをはめてパズルを完成させるように。
 ピースの形だけを頼りに。


 バラバラに創られた世界のピース。
 それぞれ一つずつのピースを創った神様は違う神様だから、
 ピースがあうなんて本当に奇跡。
 え? 神様だから奇跡は簡単に起こせるだろう? って?
 いいえ、違います。
 奇跡とはやる、という行為によって導かれるひとつの結論でしかありません。

 やる、と、やらないとでは違うのです。
 やらなかったら、絶対に事は成就しませんが、
 やったなら、ひょっとしたら事は成就するかもしれません。

 絶対に無い、と、ひょっとしたら、とでは違いますよね?
 

 奇跡とはそういう想いによって起される結果でしかないのです。


 ですから、私も。
 戯れでも、真っ白な、製造元の違うピースでも無限にあるその山から探し出せば必ず合う(逢う)ピースはあると思うのです。


 ピースをひとつひとつひとつ、はめましょう。


 世界と呼ばれる容れ物をまずは創りましょう。
 ―――光よ、あれ。

 
 そうして私はまずは世界を創りました。
 でも、世界は未だ真っ白。
 だって、真っ白なピースで創り出した世界ですから。
 ですから、この世界に色を塗りましょう。
 でも、それはどんな色?
 世界があって、そこに住まう命が生まれました。
 その世界にあう命が。
 それは川の流れのように流れの向きは一方方向にだけ流れるように決まっています。
 ここは戯れの創生の世界。
 ならばここで私は力の流れの練習もしましょう。
 地球では私はまだまだ見習いの神様ですから、本格的な調整はできませんから。
 ひよこの私が創り出した世界。
 なら、ここはひよこが溢れる可愛くて楽しい世界?
 いいえ。最初は人間さんがどうして少ないのだろう?と思い、戯れに創った世界ですから、そうですね。
 人間さんが多い世界にしましょう。
 なら、それにあわせて世界の大きさももう少し広げましょう。
 そう。わざわざ始業式で宇宙人や未来人、超能力者が居たら自分の前に来なさい、なんて言わなくてもその存在は誰でも知っている世界。
 あと、そうですね。
 幽霊さんも皆に見えるようにしましょうか。
 だって、幽霊さんはいつもそこに居るのに、誰にも気づいてもらえなくて寂しい想いをしていますから。
 そういう世界を創りましょう。
 ―――光あれ


 ひよこの形をした大きな大きな大陸。
 そこにはたくさんの人間さんが暮らしています。
 でも、人間さんが多いので、魚や動物たちもたくさん獲られてしまいます。
 自然も壊されてしまいます。
 宇宙人や未来人も来るので食料事情が厳しいです。
 なるほど。そういう事なのですね。
 なら、人間さんが光合成できるようにしたらどうでしょう?
 ただ、光合成だけで人間さんが生きられるようになりますと、それはそれでまた世界が壊れてしまうので、ほんの少しだけ水を飲んだり、動植物を食するようにしましょう。
 地球で戦争のきっかけとなっている多種多様な言葉、文化、でも、それは創りましょう。
 たくさんの想いがあるようにしましょう。
 そう世界の流れを調整しましょう。
 

 そうしてひよこの世界に住まう命が生まれました。
 そうしてひよこの世界に住まう命たちの文化ができました。


 私はまるで絵本を眺めるように、
 私が組み立てなおした世界を眺めています。


 ひよこの世界では、たくさんの種族が一緒に仲良く暮らしています。


 そこはたくさんの種族が暮らし、
 未来人も、
 超能力者も、
 宇宙人も
 幽霊も、
 妖怪や、
 そういった人外の者も、
 大きな恐竜や、
 小さな小さな生き物まで溢れる世界。
 皆が仲良く暮らせる世界。
 なので、このひよこの世界には争いはありません。
 私はそれぞれにそれぞれ固有の文化を与えながらも、
 ひとつの言語を皆が話せる力を渡しましたから。
 人間さんはほぼ光合成できるようにしましたから
 その器関係なく。
 ひよこの大陸では卵が大地から生まれるのです。
 その卵には熱が入っています。
 その熱によって人間さんは、暖を取り、湯を沸かし、電気を起こし、車を動かし、電車や飛行機まで動かします。
 宇宙人が来るので、宇宙に出る方法も知っています。
 未来へ行く方法も。
 このひよこの世界には知恵が溢れています。



 ですので、私は、このひよこの世界に住まうすべての生き物にひとつの役割を与えました。
 それは物語の管理。
 私、クリスティアラ・ファラットがこれから経験したり、見聞きしたりする物語から、この世界に住まう命たちが経験し見聞きする物語はすべて、このひよこの大陸の中心にある大きな図書館に本となって管理されます。
 その本の数はそれこそ数の概念を超える冊数となるでしょう。
 この世界に住まう命は、その本一冊一冊を皆で執筆し、保管し、管理するのです。


 そうしてその大きな大きな図書館の本棚に、まず最初に、あなたが読んでいるこの物語が納められました。




―END−


 ***ライターより***

 こんにちは、クリスティアラ・ファラット様。
 この度はご発注ありがとうございます。
 担当させていただいたライターの草摩一護です。
 
 キャッチフレーズと角の設定、可愛いですね。
 初めてノベルを担当させていただくPC様は、
 最初に何度も設定を拝見して、そのPC様が掴めるようにするのですが、
 キャッチフレーズと角の設定のシーンでいつも和んでいました。
 ですので、この度のお話もその二つから受けたイメージが反映されています。
 少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
 重ね重ねになりますが、この度は本当にありがとうございます。

 草摩一護