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<東京怪談ノベル(シングル)>



―― 侵蝕と引き換えに手に入れた力 ――


 LOSTに関わり始めて、どれくらいが経っただろう‥‥と海原みなもは心の中で呟く。長く関わっているような気もするし、考えているほど時間は経っていないような気もする。
 そんな事をみなもに考えさせるのは、きっとLOSTに侵蝕されているからだ。異変の調査をするたびに獣化が進み、少し前までは日常生活すら難しいほどだった。
(随分と、上手く出来るようになりましたね)
 獣化した部分は戻らないけれど、水の能力の応用が上手くなり、みなもは現実世界でも日常生活に支障がないほどの『力』を手に入れた。
「みなもちゃん? ぼんやりしてるけど、どうかした?」
 瀬名・雫がみなもの顔を覗き込みながら、不思議そうに問いかけてくる。
「いいえ、以前と比べるとレベルも上がったなと思いまして‥‥」
 ステータス画面を確認すると、もう初心者とは呼べないほど、レベルが上がっている。そこらのモンスターでは、今のみなもに勝つ事すら難しいだろう。
「みなもちゃん、結構レベル上げ頑張ってたもんねー。あたしがそのレベルになった時は、もうちょっと時間がかかったと思うんだけどなぁ」
 ゲームでも、調査でも、全力でぶつかるのがみなもという少女だ。それは瀬名も認めており、だからこそLOSTにも一緒に来てくれるのかもしれない。
「今のみなもちゃんだったら、あのボスも倒せるかもしれないねー」
「‥‥あのボス?」
「うん、レベル50以上で解放されるクエストがあるんだけど、行ってみる?」
 瀬名の口ぶりから、きっと瀬名自身はクエストをクリアしているのだろう。
 それでも、強引に『行こう』と言わないのは、それなりに強いボスが待ち構えているのだという事が伺える。
「どれくらいの強さなんですか? あたし、モンスター扱いですけど受けられます?」
「問題ないと思うよー、ボスを倒したらちょっとしたレアアイテムが手に入るんだ」
 瀬名の言葉に「レアアイテム?」とみなもは首を傾げながら聞き返す。
「乙女の祈りっていう、SS級のレアアイテム。どんな症状でも完全回復してくれるの。そのクエストは1回限定だから、乙女の祈りも1つしか入手できないんだよねー」
「どんな症状でも完全回復‥‥」
「物凄い金額でトレードしてくれって人がいるけど、誰もトレードしないんだよ。お金は貯められるけど、乙女の祈りは1回限定だから無理もないけどねー」
 瀬名の言葉を聞き、そのアイテムは自分にこそ有効かもしれないと言う事に気づく。今の状態で使うつもりはないけど、万が一の時に使うアイテムとして、是が非でも入手したいと考えた。
「雫さん、それってお手伝いをお願いする事も出来ますか?」
「もちろん、ただ補佐的な事しか出来ないんだよ。基本、戦闘はみなもちゃん一人でしなくちゃいけない、それでもいいなら、クエストの受注方法を教えてあげるけど‥‥」
 瀬名の言葉に、みなもは力強く頷く。
 こんな状況に置かれているから、便利なアイテムは1つでも多く入手しておきたい。
(お金ではトレードする人がいないって、雫さんが言っていましたけど‥‥同じランクのレアアイテムだったら、もしかしたらトレードしてくれる人がいるかも‥‥)
 SS級と言っていたから、恐らく他のアイテムも簡単に入手出来るとは思わないけど、可能性がゼロではない限り、かけてみたい気持ちが強かった。
「よし、それじゃいくよー!」

※※※

 雫に教えられてやってきたのは、真っ暗な亜空間。
 その中央にはみなもの何十倍もあるモンスターが、ぽつんと立っているのが見える。
「回復は任せて、だけどアイツの力、本当に半端ないから気をつけてね!」
 瀬名の激励を受けながら、みなもは小さく深呼吸をして、モンスターの前に立つ。
「グォォォォォッ!」
 けたたましい咆哮と共に、持っていた棍棒を激しく振り下ろしてきた‥‥が、スキルを使用して、みなもはモンスターの攻撃を避ける。
(‥‥? 簡単に、避けられる?)
 獣の証を装備しているせいか、それともみなも自身のレベルアップのおかげか、モンスターの攻撃を苦なく避け続ける。
 そして、攻撃スキルを使用して、みなもはモンスターに攻撃を行う。大きな身体を持つモンスターは、みなもの攻撃を受け、よろめき、ドスン、としりもちをついた。
(‥‥やっぱり、強くなってる)
 瀬名の話では、レベル50になっても勝つのは難しいかもしれない、と言う事だった。
 だけど、今のみなもはちょうどレベル50、こんなに簡単に勝てる相手ではないはず。
(‥‥私が、LOSTに選ばれているからでしょうか?)
 身体中に力がみなぎってくるのが分かる、みなもの身体に宿る力が、目の前のモンスターなど相手にはならないと心に訴えてくる。
「‥‥どうやら、あなたではあたしに勝つのは無理のようです」
 みなもは小さく呟き、再び攻撃スキルを繰り出し、モンスターを撃破した。

「す、すごい‥‥みなもちゃん、いつのまにそんなに強くなってたの」
 補佐として一緒に着いて来てくれた瀬名も驚きの表情を見せている。
「雫さんが、あたしに色々と教えてくれたからですよ」
 この言葉は嘘ではなかったけど、すべてでもない。
 瀬名のおかげで色々知る事が出来たのは事実だけど、今のモンスターを倒したのは、みなもの努力、そして侵蝕されていく呪いのおかげとも言える。
(‥‥戦っている時のあたし、まるであんな敵にやられるのは許さない、と言わんばかりに力がみなぎっていた)
 だけど、これで『乙女の祈り』を入手して、最悪の状態の時に使うための保険のような物を入手できたのだった――‥‥。

 そして、みなもを見守るかのように、現実世界ではログイン・キーが淡い光を放っていた。


―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――

海原・みなも様>

お久しぶりです。
いつもご発注をありがとうございます。
今回は強いみなもちゃんを書かせて頂きましたが、
いかがだったでしょうか?
気に入っていただける内容になっていれば幸いです。

それでは、また機会があればご発注お待ちしております。

2014/6/13