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<東京怪談ノベル(シングル)>


花壇メイラー対忍者ハットトリック君だ玲奈

1.
「ふっふっふ‥‥」
 某ネットカフェ。モニター画面に食らいつくように1人の少女がにやにやと笑っている。
 三島玲奈(みしま・れいな)。花の女子高生である。
 その隣のブースでは、これまたモニター画面にのめり込むように頭をつける少女・瀬名雫(せな・しずく)がニタニタと笑っている。
「そうきたか〜」
 両者のモニターに映るのはチャットの画面。この2人、なぜかチャットを通して話している。
 ‥‥隣にいるんだから直に話せばいいのに‥‥と思わないわけではないが、そこはそれ。乙女の事情である。
【チャットルーム:次の仮麺はこれだ!】
 そう書かれた画面に次々と文字が表示されていく。
『玲奈:次期仮麺はやっぱり植木鉢で変身する花屋でしょ』
『雫 :いやいや。切手を収集する郵便屋だよ』
 この時期の『あるある』であるキッズ向け番組の後番組タイトル予想チャットである。‥‥あるある。
『玲奈:だからぁ、植木鉢を束ねたベルトに色々な種を植えて変身するんだよ。絶対そうだって!』
『雫 :100歩譲ってそうだとしても、切手収集と郵便屋だけは譲れないよ』
 ネット上の白熱したバトルが続く。‥‥だから、隣にいるんだから直接話せと‥‥。

『玲奈:‥‥わかった。その100歩に免じてこちらもタイトルを譲歩しよう。【花壇メイラー】。これ以上は譲れぬ!』

 ざわっ‥‥ざわっ‥‥!
 琴線に何かが触れた。同時に、2人は立ち上がる。
「玲奈ちゃん、これは!」
「雫、そうよ。これしかないわ!」
 2人は再びモニターに向かうと『とーきょーとっきょきょきゃきょく』のHPを開く。
 天啓のひらめきを形にするのだ! これは正義だ!
 そうして【花壇メイラー】は登録され、キッズ向け番組の後番組タイトル予想をするネット民によりその騒動は拡散されていくのであった‥‥。


2.
 『幽罠極』。
 それは通販詐欺や不幸の手紙が生む不信感を糧にする輩が集う。
 この度、幽罠極は世界的な事件を起こすことを画策した。
 題して『すぁっかーvv杯において侍ヴルーを徹底的に意気消沈させちゃうぞ☆忍者ハットトリック君軍団召喚!』計画である。
「いいか。我々の崇高な野望を実現させるために、全力を尽くすのだ! ニソニソ!」
 幽罠極の野望だ! ニソニソGOGO!

「OH! NOぉぉぉぉぉ!」
 すぁっかーvv杯。疣痔断わーる国。
 つたないひらがなで『これわふこーのてがみです』と書かれた手紙が届いたり、選手たちの荷物が消えたりとトラブルが多発し選手たちは浮足立っていた。
 ‥‥ひらがなで『ふこーのてがみ』って書かれても彼らに読めるわけはないのだが、何となく雰囲気? ほら、文字の感じで読み取れちゃった的な‥‥。それぐらい字が汚かったと‥‥。
「コレハ侍う゛るーノインボウカ!?」

 さて、対戦相手の侍ヴルー陣営。こちらにも異変が起きていた。
「へい、景気づけの寿司1000人前お待ち!」
『ババキトク・スグカエレ』
「いやいやいやいや! 1000人前とかおかしいだろ! っていうか、ババって誰よ!?」
 ヴルーがさらに青ざめると白くなる。侍ヴルーホワイト!
「これは疣痔断わーるの策略なのか!?」

 いいえ、忍者ハットトリック君軍団です。
 gdgdになっている両陣営を見守る忍者軍団は満足げに頷く。
 ‥‥正直、ここまでうまくいくとは思わなかった。
 あとは仕上げに転バイヤーしちゃうでござるよ?
 取り出したのはノート型PC。広げるとブラウザを立ち上げ、オークションにアクセスする。
『【稀少】侍ヴルー使用のサッカーシューズ【レアもの】』
 vv杯の流れに乗って、需要は供給を上回る。
 上がれ上がれ、屋根をも突き破って上がるがいいのである。
 しかし、勝ち取ったそれは‥‥パチモンで御座る! はーっはっはっは!!
 暗躍する忍者軍団。恐ろしい野望がいま着々とダメージを与えているのであった‥‥。


3.
 色々なトラブルを抱えながら、試合は始まる。
 ボールがフィールドを走る。ボールは友達!
 駆け回る侍ヴルーと疣痔断わーるの面々。お互い、トラブルのせいでグダングダンである。
 白熱する試合? 盛り上がるサポーター?
 しかし、ここでまたトラブルは起きる。
 いつの間に忍び込んだのか、全身黒ずくめの忍者がフィールド内に現れた!
 ひと‥‥いや、2人? 3人?? ‥‥忍者の分身の術か!
 忍者は選手よりも早くボールを奪うとあっと今にそれを消して見せた。‥‥神隠しか!
 ボールがなくては試合ができない。観客からブーイングが上がる。
 あぁ、こんな時こそ正義のヒーローが必要なのに!

「うぇwww騙されてるwwwあたし達がかいたヤツなのに」
 ネット民が『花壇メイラー』に右往左往している様子を玲奈はニヤニヤと見つめる。
「不在通知シュート、取得! ‥‥これは!?」
 モニターを見ていた雫の叫びがこだまする。
「雫、どうしたの!?」
「返信よ、玲奈ちゃん!」
 いや、当たり前のように言ってるけど、ちょっと何言ってるかわかんない。
『返信!!!』
 玲奈と雫は腰に鉢付のベルトを巻く。そしてそのベルトの鉢に種を植え、頭上の薬缶で水を撒く。
 2人はポストにまたがった花壇メイラーに見事変身することに成功した!
「敵はフィールドにあり! いざ、尋常に! じんじょぉうに〜!!!」


4.
 てれてれて〜♪
 突如フィールドに鳴り響く音楽と、激しいバイクの音に会場にいた者たちは耳を塞ぐ。
「収集時間にただいま参上!」
「読めない字は行方知れずで戻しちゃうぞ☆」
 ポスト型の赤いバイクにまたがって、赤いまふりゃーを風になびかせてさっそうと登場するは花壇メイラーの可憐なる乙女2人。
「あ、あそこよ! あそこにボールがあるわ!」
 雫の声に、玲奈は駆け出す。
「ご住所は正確に!!」
 素早いキックがボールに命中し、侍ヴルーに1得点! 観客が沸き立つ。
「くっ!? なんでござるかアイツラは!」
 忍者たちは動揺しつつも、玲奈たちを牽制しつつボールを奪おうと必死だ。
 しかし、玲奈たちは負けなかった。1点を返されたが、それ以上は許さなかった。
『PK戦であーる!』
 なだれ込んだPK戦。これが最後のチャンスだ。
 忍者たちはPKに乱闘を仕掛けた。
「なんて卑怯な! 玲奈ちゃん、やっちまいな!」
「あらほらさっさー!」
 一発退場、レッドカード!
「うそん! まだ乱闘してないですやん!」
「しようとしたからダ・メ♪」
 玲奈に抗議する忍者の背後から雫が忍び足で近づき、そっと切手爆弾を貼る。
「今よ、玲奈ちゃん!」
 乙女2人の呼吸を合わせ、花壇メイラーの必殺技が炸裂する!

『消印パ〜ンチ!』

 飛んで飛んで飛んで飛んで‥‥
「修行するで御座るよニソニソ〜!」
 遠くなっていく断末魔。そしてそれは星になって砕け散った。
 どっかーん☆
「ふっ。悪は滅んだわ」
 かっこをつけて決めポーズの玲奈と雫に罵声が飛ぶ。
「お前らも悪じゃ――!!」
 気が付けば束日央の人間に囲まれて、玲奈と雫、ふるボッコwwwwうぇwww
 かくて、花壇メイラーは闇に葬り去られた。
 花壇メイラーは伝説となり、また触れてはならぬ禁忌となった。

「メロンが食べたいね、玲奈ちゃん」
「イチゴでもいいよ」
 のんきに食べ物の話をしながら、玲奈と雫は今日もまたネットカフェで新たな話題を探す。
 そんな乙女たちの物語‥‥。