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<東京怪談ノベル(シングル)>


――妖狐の悪戯遊び――

「……暑いですねぇ」
 ギラギラと照りつけるような太陽の下、アリア・ジェラーティはアイスを売りながらポツリと呟いた。
 氷の女王を先祖に持つと言われているせいか、極端なほどではないけど、人並みに暑さには弱かったりする。
「……? 何か、声が聞こえる?」
 アリアが視線を移すと、公園の所で柚葉が見慣れない妖狐と戯れているのが見えた。
「ボクの方が人間を沢山驚かせられるよ!」
「何言ってんの、ワタシの方が沢山驚かせられるに決まってるよ!」
 柚葉と女の子は火花を散らしあいながら、可愛らしいケンカをしている。
「だったら勝負だよ! どっちが多く驚かせられるか、ボクと勝負しろ!」
「いいよ、どうせあんたが泣く結果になるだけだろうからね!」
 柚葉ともう1匹の妖狐は、公園にいる子供、大人を驚かせに向かい始めた。
「負けた方は、勝った方の言う事を1つだけ何でも聞く! これでいいでしょ?」
「もちろん! どうせボクが勝つから今のうちに覚悟しといた方がいいよ!」
 ふふん、と少し威張るような笑みを見せて、柚葉は近くの子供の方に向かって行く。
「ばぁっ!」
 少し怖いお化けに変化して、柚葉は小さな男の子を驚かせる。
 突然、目の前にお化けが現れ、砂場で遊んでいた男の子は激しく泣き喚く。
「ど、どうしたの? 何で突然こんなに泣いちゃうのかしら……!」
 近くにいた母親がおろおろとしながら、必死で男の子をあやしている。
「どうだ! ボクが驚かせたから、あんな風に驚いたんだぞ!」
「子供は驚いて当然でしょ? ワタシはちゃ〜んと大人を狙うんだから!」
 ふふ、と不敵な笑みを浮かべた後、見知らぬ妖狐は自分たちの姿を見つめる大人の方に向かって行く。
「おに〜さん、ワタシと一緒に遊ばない? ……こんなカラダ、だけど」
「うわああっ!」
 どろり、と首から下を腐ったような幻覚を見せ、見知らぬ妖狐は男性を驚かす。
「ほ〜ら、ワタシの方が凄いでしょ?」
「ぐぬぬぬ……!」
 その時、アリアは柚葉の姿に気づいた。
「だったら! アリアちゃんを驚かせた方が勝ちってのは、どう!?」
 柚葉の言葉を聞き、見知らぬ妖狐も、ちらり、とアリアを見る。
「……なるほど、手ごわそうね。いいわ、あの人を驚かせられた方の勝ちとしましょう」
 見知らぬ妖狐は不敵に微笑み、柚葉と一緒にアリアを驚かせに向かう。
「アリアちゃん! ボクの方が驚くよね!?」
「ちょっと! 知り合いだからって驚くふりをするのはやめなさいよね!」
 妖狐の2人は、同時にアリアに向かって行ったが――……。
「……そんなに熱くなってるなら、アイスでも食べて熱を冷ませばいいのに」
 アリアは小さくため息を吐きながら、自分に向かってくる2人を氷漬けにする。
「このまま、ここに置いていても大変ですね」
 かくり、と首を傾げながら呟き、アリアは2人を氷漬けにしたものをあやかし荘に持ち帰る事にした。

※※※

「ケンカするほど仲が良いと言いますし、しばらくこれはここに置いておきましょうか」
 あやかし荘の玄関先に置かれたのは、アリアが氷漬けにした柚葉と見知らぬ妖狐の2人。微妙にお互いの顔が引きつっているように見えるのは、きっときのせいだろう。
「あぁ、しばらくすれば元に戻ると思いますけど……しばらく、ここにいて下さいね」
 氷漬けになった2人に告げて、アリアはあやかし荘の中に入っていく。
 2人は氷が溶けるまで、あやかし荘の玄関にオブジェとして置かれる羽目になった。
(ちょっと! どういう事なのよ! 何でワタシが氷漬けになってるの!?)
(……うぅ、やっぱりアリアちゃんを驚かせるなんてムボーだったんだ)
 お互い言葉を交わせないけど、アリアを怒らせるのはまずい、と身を持って思い知ったのだった――……。

 そして、氷が溶けた頃、アリアの元に謝りに行く妖狐の姿があったとか――……。


――登場人物――

8537/アリア・ジェラーティ/女性/13歳/アイス屋さん
TK01/柚葉/女性/14歳/子供の妖狐

――――――――

アリア・ジェラーティ様

初めまして。
今回はシチュエーションノベルのご発注をありがとうございました。
今回の内容はいかがだったでしょうか?
気に入っていただける内容に仕上がっていれば幸いです。

それでは、またご機会がありましたら宜しくお願い致します。

2014/7/4