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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


妖刀みつがさね

「盗難事件、ですか」
 訝しげな顔をして、武彦は依頼人の顔を見る。
 現れたのはピシッと着物を着た男性。
 椅子に座っていても背筋がピンと伸び、姿勢がすごく良い。
 立ち振る舞いからも、どこか育ちがいいのではないか、と言う雰囲気が感じ取れる。
 そんな男性が、困った顔を浮かべて額に浮いた汗を拭った。
「私どもの蔵に納めてあったモノが盗まれてしまいまして……」
「警察に届けは?」
「もちろん、済ませております。ですが、この数週間、何の進展もなしで……」
「警察の手に負えないモノなんですか?」
 コトリ、とお茶を差し出した零が尋ねる。
 男性は言い難そうにしながらも、ポツリ、と言葉を零した。
「妖刀、と呼ばれる品物です」
 胡散臭い単語に、武彦は思わず顔をしかめる。
 また、オカルトの臭いがしてきた。
「私たちの保管していた妖刀の銘は『みつがさね』と言います。出所はわかりませんが、戦国時代の頃から存在していた、と伺っております」
「そんなものを、どうしてあなたが?」
「祖父の遺したモノでして、値打ちモノだから大事にするように、と」
「お祖父さんの形見だから、妖刀なんて危ないものを蔵にしまっておいたと」
「兄さん!」
 トゲのあるような武彦の物言いに、零が戒める。
 しかし、男性はあまり気にした様子はなく、困ったように笑っていた。
「何しろ、私どもは本当に言い伝えにあるような妖刀が存在するとは思っていなかったのです。盗難にあうその夜までは」
「なにかあったんですか?」
「……盗人が、家の者や手伝いに呼んだ者を斬りつけたのです。そしてその状況が……」
 自分で見た光景が夢であったのではないか、とでも思っているようであった。
 男性は今も自分で口に出そうとしている事実を疑ってかかっているのだ。
「十数メートル離れた場所から、斬られたんですよ」
「……そりゃあ、随分長い刀だ」
「いいえ、刀身は届いておりませんでした。あの刀は……斬撃が飛ぶのです」
「仰っている意味がよくわかりませんな」
 なんとなく察しのついていた武彦だったが、とりあえずとぼける。
 こんな特殊な――異能力を有した――変な――言い方は何でも良い。そんな事件に関わるのは遠慮したかった。
 それは普通の探偵の仕事ではない。
「その手の事件なら、その手の業者がおります。俺たちのところではなく、そちらに話してみてはいかがですか」
「兄さん!」
 もはや零の声は諌めるというよりは、単純に怒っていた。
 そして男性も困った風に眉を寄せる。
「ですが……この手のお話に明るい方へ尋ねた所、こちらの興信所ならばあるいは、と言われたのですが……」
 どこの誰だか知らないが、後で突き止めて殴る、と武彦は決めた。

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 その日の夜。
「草間さん、どこまで行くんですか?」
 町の明かりも届かなくなりそうな路地裏。
 ヒンヤリとつめたい風の流れる場所に、二人の男性がやって来ていた。
 片方は草間興信所の主、草間武彦。
 そしてもう一人は、彼よりも歳若い青年である。
「助っ人を一人、呼ぼうと思ってな。俺たちだけじゃちょっと手に余るかもしれないんでな」
 武彦はそう言って路地の真ん中に立ち止まり、グルリと首を回す。
「おーい、千影! いないのか?」
 暗闇の中でもよく視界の届く目で様子を眺めつつ、千影は呼ばれたから、と言わんばかりに歩を進めた。
「あらぁ、武彦ちゃん。どうかしたの?」
 暗闇から染み出すように、ジワリと現れたのは黒猫。
 遠目から見ると、輝く緑の瞳ばかりが深い闇の中に浮かんでいるように見えるだろう。
 千影の姿を見て、青年の方は驚いたようにも見えていた。
「……ネコ、ですか?」
「んぅ? 武彦ちゃんのお友達? 初めまして、あたしはチカだよ、よろしくねぇ」
「こら、あだ名じゃなくてちゃんと名乗れよ。こいつは千影。まぁ、なんと言うかマイペースなヤツだが役には立つ」
 改めて武彦から紹介された千影は、アスファルトの地面を音もなく踏みながら武彦とフェイトの近くへ進む。
 明かりの届く場所まで歩き、背中に生えた美しい翼を無邪気にはためかせ、青年を見据える。
 武彦と一緒にいるからには、敵意のある人間とも思えない。
 だが、
(不思議な魂をしてるのねぇ)
 何故だかとても違和感を覚える魂の匂いがした。
 その正体を探ろう、とはせず、千影はすぐに思考を手放す。
 正直、別にどうでもいい、と思ってしまったのだ。
 そうこうしていると、青年が千影に向かって頭を下げた。
「俺はフェイトです、よろしくお願いします」
「フェイトちゃんね、よろしく。……それで、武彦ちゃん、今日は何の用事?」
「ああ、ちょっとお前に手伝ってもらいたい事があってな」
 武彦は今日引き受けた依頼の事を話す。
 千影は毛繕いをしながら、なんとなくその話を聞いていた。
 妖刀の事、それが盗まれた事、回収する依頼を引き受けた事。
 そしてそれを千影にも手伝って欲しい、と言う事。
「ふぅん、遠くまで斬れる刀、ねぇ。ちょっと気になるかも」
「お、乗り気になったか?」
「うん! そのみつがさねちゃんを〜……壊して食べちゃえばいいんだっけ?」
「違う違う! 回収するんだ。破壊するかどうかはその後で決める」
 武彦の撤回を受け、千影は残念そうにしょげた。
「壊しちゃダメなのぉ?」
「そりゃそうだ。俺たちが受けたのは『妖刀を回収する事』だからな。……まぁ、回収した後、依頼人が持て余すようだったらこっちで引き取るって手もあるけどな」
 依頼人の様子は妖刀に対して困っていたようである。
 信用していなかった妖刀の曰くが事実であり、どうしたらいいのかわからないようでもあった。
「まぁ、その時は処分代としてもうちょっと金がもらえるだろうからな」
「草間さん、小ズルイ」
「違うな。俺は小ズルイんじゃなく、頭が切れるんだ」
 フェイトのツッコミに対して適当に反論しつつ、武彦は『さて』と仕切りなおした。
「じゃあ、この三人でみつがさねとやらを追う。俺とフェイト、千影は一人で情報収集だ。みつがさねの居所を見つけたら報告してくれ」
「えぇ〜、あたし一人?」
「フェイトはちょっと一人にしておけないんでな」
 そう言われ、フェイトは『うっ』と武彦を見た。
 千影には窺い知れない事だったが、何か理由でもあるのだろう。
 もしかしたら、魂の違和感に関係があるのかもしれない。
 だが、さほど重要ではあるまい。
「さぁ、始めようか。刀狩りだ」

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 人の通れない隙間や、普通は歩かないフェンスの上など、どこでも便利に歩けるのは猫の特権だと思う。
 時には道のない場所なんかでも、猫の体ならばスイスイと通れたりする。
 日中ならば心地よい陽だまりなどを見つけたりするのだが、今は夜。
 それはそれで趣があるモノだが、それを楽しんでいる暇もない。
 手伝いをすると決めた以上、ちゃんとこなさなければなるまい。
 何よりも、千影自身、妖刀というモノに興味が湧いていた。
「ねぇ、ちょっといい?」
 千影は道の途中にいた野良猫を見つけ、話しかける。
 人語を理解しない野良猫ではあったが、千影の呼びかけはしっかりと理解している様子であった。
「この辺で不思議な刀を見かけなかった? みつがさねちゃんっていうんだけど……」
 しかし、千影の問いに野良猫は芳しくない反応を見せた。
 どうやらみつがさねのありかについて心当たりはないらしい。
「そっかぁ。残念」
 首をカクンと落とし、その場を去ろうとする千影。
 それを見て野良猫は『にぃ』と鳴く。
 小さくか細い声ではあったが、その声に反応するかのように、そこかしこから猫が何匹も現れ始めた。
「えっ、チカを手伝ってくれるの?」
 野良猫はやはり『にぃ』と鳴き、周りの猫たちを見やる。
 ほとんどの野良猫は目を逸らすばかりだったが、チラホラと鳴き声が返ってきているようだった。
「……ふんふん、なるほどぉ」
 猫のネットワークとは不思議なもので、かなり離れた場所の情報まで、彼らは共有しているようであった。
 猫の伝聞によると、妖刀らしき長物を持った人間を見かけた猫がいるらしい。
 彼らの目は人間よりもはるかに多くの『モノ』を見ている。
 何もない場所に向かって毛を逆立てたり威嚇するように鳴いたりしているのは、つまりそういう事だ。
 彼らの目によれば、妖刀を見破るのも簡単なのであろう。
「教えてくれてありがとぉ。……うーん、でも遠いなぁ」
 千影が現在いる場所とは離れており、恐らく武彦とフェイトが歩き回っているであろう地域からもまた別の場所である。
 もし、妖刀の使い手が今日も獲物を求めて夜の町を歩いているのだとしたら、千影が先行した方が被害を抑えられる可能性はある。
 そうした場合、千影から武彦たちに連絡を取る手段がなくなるのが問題だった。
「うーん、どうしようかなぁ。……あ、そうだ」
 思いついたように企み顔をする千影は、周りの猫をもう一度見回した。

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「見ぃつけた♪」
 繁華街から大分離れた場所、寂れた路地裏にその女性はいた。
 年恰好はかなり若く、学生のようにも見える。
 そんな女子が夜のこんな場所にいるのは些か不自然ではあった。
 そして何より、そんな少女がまとうには不相応すぎる殺気と死臭。
 千影は彼女に間違いない、と確信する。
「夜に遊ぶんなら、もっと楽しい場所があるんじゃない?」
「……だれ?」
 少女は突然現れた喋るネコを見て、殺気を放つ。
 ピリリとヒゲを震わせるほどの圧力を受けてなお、千影は涼しげであった。
「ふふ、怖がらなくていいよ。あたしはチカ。その刀に用事があるの」
「刀に? ……ああ、なるほど。これを取り返しに来たのね」
 千影の言葉を聞いて、少女は怪しく笑う。
 そして、手に持っていた刀の柄を掴んだ。
「ここ数日、これを取り戻しに来た人間は何人かいたけど……ネコは初めてねぇ」
「聞いても良い? どうして、そのみつがさねちゃんを盗んだりしたの?」
「剣士がより強い剣を求めるのは当然の道理でしょう?」
 なるほど、根っからの戦闘狂であるらしい。
 魔都東京に至っては、しばしば精神のおかしい人間もいるが、あれほど若い時分から狂ってしまうとは可哀想なものである。
「その刀、回収しなきゃいけないんだよねぇ。そしたら多分、あなたも殺しちゃいけないんだと思うんだけど……」
「何を独り言を……」
「手加減ってどれくらいすればいいのか、よくわからないから――」
 千影は姿勢を低く構え、後ろ足に力を込める。
「――死んでも怨まないでねぇ」

 刹那、夜闇に紛れるように、黒い一閃が奔る。
 白い牙と爪だけが、月光を受けて煌くように白線を引いたが……女子はそれを軽くいなしてかわした。
「あれぇ?」
「手加減ね。しすぎなんじゃないの?」
 女子は軽口のように言うと、すぐに剣を抜き放つ。
 美しい白刃は空中に弧を描き、瞬く間に鞘へと収まる。
 一瞬の抜刀術。抜刀から納刀まで、ほんのわずかな時間しかなかった。
 だが、女子と千影の間合いはかなり開いている。そこから当たるはずもなかった。
 その時、とてつもない殺気を感じ、千影は本能的にその場から飛びのく。
 次の瞬間、千影の立っていたアスファルトが音を立てて割れ、大きな斬撃の跡は近くのビルの壁にまで走った。
 コンクリートの壁を引き裂き、窓枠をひしゃげさせ、ガラスを粉砕し、雨樋を断ち切る。
 その距離、十メートルにも及ぶ剣閃。それがあの一瞬で放たれたのであった。
「へぇ、それが飛ぶ斬撃ってやつかぁ。ふふ、ちょっと面白いかも」
「……事前に情報は仕入れてるみたいね。どこの誰だか知らないけれど、そいつも始末しておいた方がいいのかしら」
「出来るのかなぁ?」
「どういう意味?」
「あたしはここで、あなたを見逃すつもりはないよ?」
 千影の翼が一度、バサリと音を立てて羽ばたく。
 無遠慮な殺意がその場に広がり、冷たい空気となって女子を包んだ。
「只者ではないってか。面白いわ。こう言うヤツを斬ってこそ、剣士としてハクが付くってモンよ」
 だが、それに全く動じない。
 単なる無鉄砲か、何かに裏打ちされた自信か。
 それを確かめてみるのも面白い。
 千影が少女の様子を窺っていると、彼女はユラリと剣を抜く。
「あら、抜刀術が得意なんじゃないの?」
「意表を突けないなら、こんな手品はもう意味はないもの」
 刀身が完全に晒され、片手脇に構えられる。
 少女は重心を落とし、地を踏みしめて千影を見据えた。
「少し、本気を出すわよ」
「それは楽しみぃ♪」
「余裕でいられるのも、そこまでよ!!」
 踏み込みと共に、一閃。
 千影をすくい上げるような斬り上げ。
 切っ先は地面スレスレを飛び、千影の毛並みを掠める。
 しかし、千影はしっかりと回避していた。
 剣閃が飛ぶかと思って、その分も余計に距離を取っていた。
「あら?」
 千影の危惧していた飛ぶ剣閃は現れず、代わりに目の前から少女が消える。
 超スピードでの移動、と言うわけではあるまい。それを目で追えないほど、千影の目は悪くない。
 少女は確かに『消えた』。まるで闇に、影にしみこむように。
「こっちよ!」
 声が聞こえたのは背後。
 振り返ると、みつがさねの切っ先が千影に迫っていた。
 いつの間に移動したのか。なにか瞬間移動的な能力を持っているのだろうか?
 推測すら立たないが、今は回避を――

 ガキン、と音を立てて刀の切っ先が空中で止まる。
「間に合った!」
 続けて、壁に反響して暴力的なまでの音が鳴り響く。
 ドカンドカン、と数発。どうやら銃声の様である。
「フェイトちゃん?」
 銃声のした方を窺うと、フェイトと武彦が来ていた。
「ちょっと遊びすぎたかなぁ。あたし一人でやってみようと思ったんだけど」
 多少残念がったように零しながら、千影は少女から距離を取り、フェイトと武彦の側へと飛びのく。
「遅かったねぇ、フェイトちゃん、武彦ちゃん」
「お前が先走ったんだろうが! なんで合流しなかった!」
「だってぇ、早くしないと逃げられちゃいそうだったし」
 確かに、ここまで離れた場所にいられたなら、フェイトと武彦に合流していたら、行方を掴むのにまた苦労していただろう。
 そこは千影の判断が正しかったであろう。
「二人とも、戦闘中ですよ」
「わかってるよぉ」
 千影は足に力を込めながら少女を見据える。
 フェイトも同じように、銃を構えながら少女を窺った。
 少し距離が離れすぎている。
 逃げられる、だろうか?
「くく……くくく」
 いや、千影は知っている。
 あの少女は、戦闘狂だ。
「燃える、燃えるわよ。明らかな劣勢! これを退けてこそ、私は剣士として更に高みにいける!」
「な、なんだぁ、アイツ……おかしいのか?」
「純粋な強さを求める剣士、ですか。ある意味正しいのかもしれませんが、時代柄、人を殺してまで高みを目指すのはいかがなものかと」
 武彦とフェイトの呆れ声も聞こえないかのように、少女は手に持っている剣をゆらゆらとしながら、こちらを窺っている。
「行くわよ、もっと楽しませてよねぇ!!」
「来ます!」
 フェイトが身構えた。

 千影は少女が踏み込んでくるのに合わせて、地面を蹴る。
 少女はこちらをチラリと窺ったが、そのまま突進する事を選んだようだ。
 確認しつつ、千影は路地の壁に着地する。
「そっちが本気を出すなら、あたしもちょっとはやる気を出さないとね!」
 千影の足が付いている壁が、ミシリと鳴く。
 ヒビが走って埃が舞った。
 次の瞬間、千影の身体が大きく膨れ上がる。
 一瞬にして、ネコだった千影は大きな獅子となったのだ。
 これこそ、千影の本当の姿。
 ネコの時よりも爪も、牙も、鋭さと大きさが増している。単純に殺傷力が上がっている。
 この一撃が当たれば、少女も無事ではいられまい。
「……っ!」
 その時、少女が上空へと飛び上がった。
 奇しくも千影のいる方向である。
 真っ直ぐこちらに飛んでくる少女に向けて、爪を伸ばしたのだが、やはり少女の輪郭は影に紛れて歪む。
 千影よりも更に高くに出現した少女は……その刀を鞘に収めていた。
「またアレ!?」
「喰らいなぁ!」
 声と共に、少女は居合い抜きを放つ。
 刀の残像は鋭く伸び、一直線に空間を切り裂く。
 襲い掛かってくる剣閃は、しかし、獅子の毛皮に傷をつけるほどではなかった。
「ちぃっ!!」
 口惜しそうな少女は空中で舌打ちしながら、またも剣を収めていた。
 次弾が来るのだろう。
 先に着地した千影はグルゥと唸る。
「フェイトちゃん!」
「えっ?」
 フェイトは驚いたようだが、すぐに千影の心中を察する。
 まだ空中に浮いている少女に目掛けて、銃口を向け、すぐさま引き金が引かれる。
 銃弾は真っ直ぐに少女へと飛ぶが、
「甘いっ!」
 少女は影の移動を使ってそれを回避しようと試みる。
「……見えたよぉ!」
 しかし、その移動方法は見せすぎた。
 千影は地面を蹴り、壁を蹴り、少女の現れる場所の更に上にまで飛び上がる。
「……なっ!?」
「連続して移動は出来ないみたいだね!」
 獅子の大きな前足が少女の頭を捉え、押さえつける。
「千影さん、これでっ!!」
 更に、千影の上に見えない壁が発生し、千影はそれを蹴った。
 地面へ向けて、弓矢の如くに放たれる千影と少女。
「そんな……そんな、バカなぁああ!?」
 少女の体は、強かアスファルトに打ち付けられ、そのまま気絶した。

「……殺しちゃったかな?」
「いえ、まだ息はあります。血がかなり流れてますけど、すぐに処置すればなんとか」
 かなり良い勢いで地面に激突した少女は、全身打撲で更に頭からの出血が認められたが、なんとか生きているらしい。
「IO2の病院に連絡しておいた。すぐに救急車が来るだろうよ」
 手際の良かった武彦の報告。
 どうやら、これで一件落着らしい。

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「結局、あの娘はどうしてみつがさねちゃんを盗んだのかなぁ?」
「お前が突き止めたんだろ? 剣士としての性だったって」
 人の姿となって昼の興信所を訪れた千影は、暇そうな武彦と問答をしていた。
「でも、あの娘自身は能力者とかじゃなかったんでしょ? だったら妖刀の事を知ってたって言うのもおかしいかなぁって」
「……まぁ、普通の女子学生が妙な情報を仕入れているってのも、確かに妙ではある……が」
 武彦はタバコをふかして天井を仰ぐ。
「情報の出所なんて、俺たちが知ったこっちゃねーよ。その辺りはIO2が調べてくれるだろ」
「それもそっか!」
 楽観的な二人は、それ以上詳しく追及することはなかった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【3689 / 千影・ー (ちかげ・ー) / 女性 / 14歳 / Zodiac Beast】

【8636 / フェイト・− (フェイト・ー) / 男性 / 22歳 / IO2エージェント】



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■         ライター通信          ■
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 千影様、シナリオに参加してくださり、ありがとうございます! 『ガッツリ戦闘!』ピコかめです。
 犯人に対しても、妖刀に対しても、あんまり深い設定はないです。

 今回は終始、ネコや獅子の姿で戦っていただきましたが、どんなもんでしょう。
 ネコのような小さな動物での戦い方なんかは、まだ俺の中では未開発の地域なのでちょっと面白かった反面、不安もあります。
 もっとなんかこう……動物っぽい戦い方を勉強したい。
 ではでは、気が向きましたらまたどうぞ〜。