コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 疑似体験 ――

「……ふぅ」
 松本・太一は小さくため息を吐きながら、パソコンの画面を見つめる。
 そこに映し出されているのは、何度となく遊んだLOSTのトップ画面。
 今回、松本はLOSTで初めての試みをしてみようと考えていた。
 安全第一の方法であるが、それがルーチンワークになるのも危険だと承知している。
「やってみますか」
 再び松本は息を吐き、情報を感覚に変換して『疑似現実』にしてみる。
 これは松本の能力があるからこそ出来る事であり、他の人間には恐らく出来ないだろう。LOSTから受動的に得た情報を体感情報に変換して、LOSTの世界を疑似現実にする。
 もちろん疑似現実だから、足りない情報は他の異世界から拝借する、というものだけど。
 松本の能力ならば『受動的』ではなく『能動的』にする事も不可能ではない。
 けれど、それをしないのはLOSTにとっての『地雷』を踏みそうで怖いからだ。疑似現実にすれば影響は受けないと思うが、万が一のためを考えて、リスクの少ない方でやってみようという考えに到ったらしい。
 疑似現実での松本は『女性』の『僧侶』としてLOSTの世界を冒険する事になった。
 ……とは言っても、個人の脳内限定なので今回は動作などの確認のみ、に徹する。

※※※

「……あまり、LOSTをプレイするのと変わりませんね」
 女性の僧侶キャラでLOSTの世界を疑似体験してみるが、あまり苦労することなくキャラを操作出来ている。
 もしかしたら、ある意味では今までLOSTに入り続けていたおかげかもしれない。
 この疑似体験である程度の操作を覚え、実際のLOSTに活かすというのも悪くはない。
「……僧侶キャラは結構便利ですね、回復魔法は勿論のこと、光属性の攻撃魔法も覚える」
 幾つかレベルをあげてみると、意外と使い勝手の良い職業だということに気づく。
 ただHPが低いため、1人で行動する時は危険度が一気に増すのが難点だろう。
「……誰かと一緒に行ければ問題はなさそうですが、こちらの置かれている状況を考える限り、あまり魔法使い系の職業は難しそうですね」
 実際はゲームオーバーになるとどうなるか分からないけれど、ログイン・キーを持つ者は恐らく普通にやり直せるような事はない気がする。
 それこそ『死』の覚悟を持っていなければならない、松本はそんな気がしていた。
「……職業変換、なるほど一定のレベルに達した後ならば職業を変える場所が存在するんですね、つまり実際のLOSTでも私が僧侶キャラにチェンジする事は可能、と」
 疑似体験をするまで気づかなかった事だけど『職業変換』という項目が存在する。
 恐らく何らかのイベントを行った後ならば、自由に職業を変える事が出来るのだろう。
(これは、良い事を知ったかもしれませんね)
 今回の体験がなければ、恐らく知る事がなかったであろう事実。
 方法などは分からないけれど、この情報は実際にLOSTをプレイする時に役立つもの。
(今後もこうやって、たまには疑似体験をしてみるのもいいかもしれませんね)
 実際ではリスクなしでは知りえない情報も、もしかしたら知る事が出来るかもしれない。
 多少のズルはあるかもしれないが、松本は他のプレイヤーと違って、彼女に選ばれてしまっている、だからこそなりふり構わず1つでも多くの情報を知りたいと思っていた。
(体感や動作には問題ない、職業変換についても知る事が出来た……初めての試みとしては、結果は上々と言った所ですね)
 松本は心の中で呟いた後、疑似体感を終了する。
 目を開くと、そこは見慣れた自分の部屋。
 LOSTも実際には起動されておらず、疑似体感は成功したと言えるだろう。
 もしかしたら、松本にとってこの『疑似体感』を出来るという能力こそが、LOST攻略の大きな鍵になるのかもしれない。
 けれど、疑似体感とはいえ、それなりに精神力を消耗してしまう。
 普段ならばここまでの疲労はないように思えるが、やはり謎に包まれたLOSTの疑似体感を行ったせいだろうか。
「さすがに疲れましたね、今日はゆっくり休むとしましょう」
 目頭を押さえながら、松本が呟く。
 LOST攻略のために知った1つの方法、これから松本はどんな風にLOSTを攻略していくのだろうか――……。

END


―― 登場人物 ――

8504/松本・太一/48歳/男性/会社員・魔女

――――――――――
松本・太一 様

こんにちは、いつもご発注頂きありがとうございます!
今回は疑似体験という事で執筆させて頂きましたが、
内容の方はいかがだったでしょうか?
ご満足いただける内容に仕上がっていれば幸いです。

それでは、また機会がありましたら、
ご発注をお待ちしております……!

今回は書かせて頂き、ありがとうございました!

2014/9/20