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違法集団を追え！
その日、興信所に訪れたのは珍しくIO2の人間であった。
「IO2の人間が来た、って事は、IO2からの依頼って事で良いんだな？」
「そう考えてもらって構わない」
スーツを着こなした男が、応対している武彦にデータの入ったUSBメモリを差し出す。
「依頼の資料はここに入っている。……端的に説明するならば、違法集団の調査だ」
「違法集団？ どんな事やってるんだ？」
「魔術的に創造された生命体の輸出だ」
IO2が現れたことでおおよそ察していたが、オカルト案件であった。
武彦としては、この案件を受けたくはない……が、IO2との間柄がこじれても面倒だ。
何より今も零の目が光っている。下手を打てばまた小遣いが減らされそうだ。
「魔法的に創造された生物ってのは偉く抽象的な説明だな」
「例えばホムンクルスやキメラなどがこれに該当する。それらを勝手に作り出す事すら違法だが、勝手に輸出するとなると更に悪くなる」
「つまり……何をされても文句は言えない集団、ってことか」
実力行使もやむなし、と言う事の確認に、男は黙って頷いた。
「ヤツらもそれぐらいの覚悟くらいしてるだろう。……だが出来るだけ君たちだけでの武力行使はやめていただきたいね。一応、IO2の案件だ」
「俺も一応、IO2のバイトぐらいはやってるんだが？」
「君がIO2に所属している、と認めてくれるのならばそれでいいのだがね」
その言葉には、武彦は鼻で笑ってUSBメモリを手に取った。
「で、その集団について、わかってる事がこのメモリに入っている、と？」
「そうだ。情報元は、その集団から逃げてきた人工生命の個体によるものだ。恐らく、間違いないだろう」
「裏は取れてんの？」
「それを調査してもらいたい。……仕事は二つ、集団の詳細を知ること、そして集団のアジトを探る事だ。やってくれるな？」
「給金によりますよ。こちとら万年貧乏事務所なんでね」
「そちらは期待してくれて良い。その代わり、しっかり働けよ」
「誰に言ってるんだよ。こちとら貧乏だが敏腕だぜ」
笑って答える武彦に対し、男は満足そうに頷いた。
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「つまり、IO2の指揮下で働くと言う事か？」
「いや、こっちの好きにして良いみたいだぞ。監視役もいないみたいだし」
冥月の問いに、武彦は手を振って答える。
確かに、依頼人だった男は既に興信所からはいなくなっているし、監視役のような影は感じられない。
「ユリが依頼主ならまだやりやすかったのだがな」
「そうは言うても、監視役がいないんやもん、自由にしてええって言われたようなもんやろ」
セレシュの言う通り、どうやら今回、IO2は放任主義らしい。
別に全てを全て放置しているわけではないだろうが、ある程度は自由にやっていいのだろう。
つまり、いつも通りだ。
「ではまず、目標を確認するぞ」
「敵組織を壊滅させればいいんだったな」
「それが手っ取り早くていいんだが、それは最終手段だ」
「IO2から貰った情報の確認やったね」
「それが最低目標だな」
二人と目標を確認しつつ、武彦は渡されたフラッシュメモリをパソコンに繋ぐ。
興信所にあった安物パソコンがUSB規格を採用している時期のモノで助かった。
そこに表示されていたのは、敵組織の概要。
「なになに……組織名は『不来昼』……ふらいひるってなんだ？」
「よく見ろ、ルビが振ってある。ヒルコズと読むらしいな」
「わかってるよ、ちょっと眼鏡が曇ってただけだよ」
武彦の適当な言い訳を聞き流しつつ、先を読み進める。
ヒルコズは新興の組織であり、つい最近活動が知られるようになったペーペーのようだ。
今までは魔法アイテムの流通に一枚かんでいたようだが、ここ数ヶ月ぐらいになって魔法生物の違法製造と違法流通に関わり始めた事が確認されている。
構成人数は数十人、拠点は幾つか発見されているようだが、探りを入れた場所は全て放棄されている。
現在もどこかに潜伏中だが、その位置は把握できていない。
今回、興信所に頼まれているのは構成人数の詳細と拠点の情報である。
「急に魔法生物産業に手ぇ出し始めた言うんは、なんや怪しいな」
「何か転機があったと見るべきか、それとも単に昔からやってた事がバレたと言うだけか……」
「その辺も含めて、俺らが調べる必要があるんだろう」
「情報集めか、まだるっこしいが仕方ないな」
武力で解決するにしても、相手の情報を集めない事には殴りこみもかけられない。
相手の拠点だけでも割り出さなければ、どうしようもないのだ。
「ウチは魔法アイテムの流通関係に知り合いもおるし、そっちから当たってみよかな」
「じゃあ俺がセレシュについて行こう。冥月は小太郎を持っていけ」
「……アレをか？」
今までスルーしていたが、現在、小太郎は事務所の隅っこで一人、なにやら神妙な顔をして考え事をしているようであった。
小太郎らしくもなく、考え事である。
「アイツを連れて行けば、なにか急激な天候悪化に見舞われる気がする」
「まぁ、いないよりは何かの役に立つだろ」
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冥月が部屋の隅でボーっとしている小太郎に近付くが、小太郎は全く気にせず、自分の思考世界に耽っている。
こちらに気付く様子もないので、仕方なく声をかける。
「考え事なんて似合わない事をしてるな」
「……ん、ああ」
だが、この上の空である。
彼の隣にいた零も小太郎にお茶を出していたのだが、既に冷めているようだった。
「なぁ、零。いつごろからこんななんだ？」
「そうですね、数日前からでしょうか。外出先で何かあったのか、帰ってきてからずっとです」
「外出先、ね」
ふむ、と唸りながら冥月は小太郎の頭を掴み、思い切り握る。
「痛だだだだ！！」
「聞いてるのか、小僧」
「いきなりアイアンクローとか、何考えてんだ、師匠！？ 一般人なら頭がつぶれるぞ！」
「加減はしている。お前が話を聞いていなさそうだったから、確認しただけだ」
「やりようってモンがあるだろ！ 聞いてるよ、ちゃんと！」
噛み付かんばかりの勢いの小太郎。
本気の考え事を邪魔されて、小太郎なりに腹が立ったのかもしれない。
「何を考え込んでいるんだ？ 似合わない事はやめておいた方がいいぞ」
「師匠も『馬鹿の考えなんちゃらかんちゃら』って言いたいのかよ」
「言われたのか？」
「……草間さんに」
ヤツなら言うだろうな、とは思ったが。
「一人で考え込んで数日だと聞くが、答えは出そうなのか？」
「いや、よくわからん」
「なら、周りに話してみたらどうだ。一人で考えても答えが出ないことは往々にある」
「師匠が聞いてくれんの？」
「生憎だが私は暇じゃない。ユリがいるだろ。相談を持ちかける事を口実に、出かけてみたらどうだ」
「……ユリの事なんだよ」
「ほぅ？」
小太郎が考え事とは珍しいと思ったが、ユリのことで、となるとなんだか納得できるのが不思議であった。
「ユリに何かあったのか？」
「……最近、なんかアイツ、急いでる気がしないか？」
「最近は姿を見かけないからわからんが……そうなのか？」
冥月が零に話を振ると、彼女も首を傾げる。
「私もあまりユリさんにはお会いしてません。興信所にも来ないですし……こないだ、買い物の途中で少しお話したぐらいでしょうか」
「じゃあ、小僧はどうしてそう思ったんだ？」
「町に出かけた時に、ふらっと見つけたりするんだよ。あとは……たまに連絡取ろうかと思うと取り込み中だったり」
小太郎が言うには、町で見かけた時にはいつでも仕事中の様子だったらしい。
調べ物をしていたり、誰かを追いかけていたり、麻生を連れまわして町中を駆け回っていたらしいのだ。
「ユリもようやく仕事を楽しめるようになってきた、と言う事か？」
「そうなら良いんだけどさ。……なんか、無理して頑張ってるみたいで」
「急いでる、と言えば」
ポン、と零が手を打つ。
「会って話した時に、確かたくさん仕事をこなすようにしている、と言っていました」
「理由は聞いたのか？」
「えっと、確か、どこかに出張に行く予定が出来たから、その前に大きな仕事を片付けておきたい、とか、箔をつけたい、とか」
「……出張？」
IO2にもそんな制度があるとは初耳だったが、どうやらユリはそれに選ばれているようだ。
……いや、何か選考のようなものがあり、それに選ばれるための実績を作ろうとしているとも考えられるか？
「どこに行くかは聞いてないのか？」
「アメリカだったかと」
「あ、アメリカぁ！？」
大声を出したのは小太郎。
出張とは言え、国内で済むと思っていたが、まさかの海外。しかも太平洋を渡った先であった。
「お、俺はそんなこと、聞いてないぞ！」
「わざわざお前に言うほどでもなかったんだろう」
「くっ！ 現状何も言い返せない……ッ！」
「しかし、いきなりだな」
何をするためのアメリカ出張かは知らないが、まさかそんな話が進んでいるとは知らなかった。
とは言っても、ユリが自分からアメリカ行きを考えるものだろうか？
もしそうなら、何か理由があるはずだ。
「何を考えたか知らんが、理由は私も気になるな。今から話を聞いてみるか」
「えっ！？」
驚いて振り返る小太郎を待たず、冥月は携帯電話を取り出してユリへと発信する……のだが。
「出ないな。電源が切れているようだ」
「たまに出たとしても、すぐに切られるのがオチだよ」
「なら、実際に会って話してみるのも手か。……だが、まずは仕事をこなしてからだな」
「仕事？ なんかやるのか？」
「結局話は聞いてなかったんじゃないか」
ゴチン、と拳骨が降ったのは言うまでもない。
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『――と言うわけで、奴さん、何千体ってホムンクルスをどこかに隠してるらしい』
「数に間違いはないのか？」
夜の町を眼下に眺めながら、冥月はビルの上で電話を受けていた。
相手は武彦。どうやら収集した情報を教えてくれるらしい。
彼が言うには、ヒルコズは大量のホムンクルスを作ってはいたが、海外には流していなかったと言う。
海外との取引と言うのはほとんどが嘘の取引であったらしいのだ。
実際は国内のどこかにそれらを隠し持っているらしいが、その所在まではわからなかったそうだ。
『もしかしたら、そっちの調べてる拠点に、わんさとホムンクルスが出てくるかもしれないぞ』
「数千体もホムンクルスがいるなら、私の影にもひっかかりそうなもんだが」
『どんな形で隠し持ってるかもわからんからな。一応、警戒しておけ』
「わかっている。ヘマはしないさ」
『……万が一、美人のホムンクルスがいても口説かないようにしろよ』
「殴られたいらしいな」
残念ながら、影の範囲外だったので、今すぐに殴る事は出来なかったが、帰ったらとりあえず一発殴る事にしよう。
通話を終え、夜風が吹く屋上の縁へとやってくる。
そこにはとある建物の様子を窺っている小太郎がいた。
「小太郎、何か動きはあったか？」
「特には。静かなもんだぜ」
見据える先の建物。そこが今回のターゲットである。
IO2から渡された情報にあった幾つかの潜伏先候補、それらを調べていた所、あの中には数十人の人影が確認できた。
他はもぬけの殻だったが、そこだけたむろしている、となると逆に怪しさもある。
まさかとは思うが、襲撃者を待ち伏せしている可能性も考えられなくはない。
だが、罠なら罠で突破すればいいだけの話だ。
「草間からの連絡があった。敵はどうやら、数千体のホムンクルスを飼っているようだぞ」
「数千？ マジかよ」
「怖気づいたか？」
「普通そうだろ。そいつらが戦力になるってんなら、こっちだって本腰を入れなきゃならん」
小太郎も『怖気づいた』とは口で言っても、しかし負ける気はサラサラないようである。
戦場の度胸がついた、と言う事か。
「しかし……」
「ん、どした、師匠？」
「いや、なんでもない」
考えていたのは、IO2の情報元である『逃げてきた人工生命体』とやらである。
その人工生命体はかなり重要な情報を持っていたようだ。それが決め手でIO2が動くような事になったのだから、ヒルコズとしても逃がしたくはなかったはず。
仮に逃げたとしても何かしらの保険はかけているのが普通だ。
例えば、ヒルコズの管理下から離れると、すぐに死んでしまうような時限装置や、管理者が能動的に情報の漏洩を防げるような機構があってもおかしくはない。
それがないのだとしたら、これはもしかしたら事件そのものが罠なのかもしれない。
更に、IO2が動くきっかけになった理由の半分、人工生命の違法流通に関してはデマだったと言う。
もしかしたら、とは思うが、IO2を釣って何がしたいのだろうか？
他に目的があるのだとしたら、一体……？
「師匠、行かないのか？」
「……あぁ、わかっている」
考えていてもわからないなら、まずは行動すべきか。
何せ、情報源は目の前にあるのだから。
まず、冥月が行ったのは、目標の建物のスキャニング。
影を把握し、その情報を手元の影をこねくり回してミニチュアにする。
「確認できるだけで、内部にいるのは三十余名。地下階はなし、二階建ての建物だな」
「見た感じ、小さめのビルだもんな」
外観からはちょっとこじんまりとしたビルにしか見えないが、どうやら中身はなおさら貧相であるらしい。
何のために作られた建物なのかすら判然としないが、そこを拠点としているのならば、そんなことは関係ない。
「エレベーターはなし、階段が一つのみ。一階に十四名、二階に十八名。この中にボスらしき人物がいるかどうかだな」
「別の所にいる可能性もあるもんな」
「別行動をしているだけならいいんだがな」
「……ん？ どゆこと？」
「いや、こっちの話だ」
仮にこれが罠だったとしたら、あの建物や内部の人間すら釣りエサの可能性もある。
だが、まだ冥月の予測の範囲を出ない。小太郎を下手に混乱させる必要はないだろう。
「では、早速孤立しているヤツを引っ張り出すか」
「引っ張り出す……って、建物の外に出すのか？ そこをフン縛るんだな！？」
「まぁ、あながち間違っていないが、多分勘違いしているだろう、お前」
言いながら、冥月は影の中に手を突っ込む。
そして、引き抜いた時にはスーツ姿の男が一人、釣れあがっている。
「ちょっと強引過ぎやしませんかね……」
「何をバカな事を。五体満足で引っ張り上げただけ、まだおしとやかさ」
状況の飲み込めていないスーツ姿の男を放って、二人はそんな事を話すのだった。
「さて、ではこれから尋問を行う」
影のロープで男を縛り上げ、屋上に座らせる。
目の前に立つのは冥月。
小太郎から見れば、もう既にあの男は詰みである。
「早めにゲロっちゃった方がいいぞ。あんまり強情になると、かなり痛い目を見る」
「そうだな。尋問が拷問に変わるか否かは、お前次第というわけだ」
男を威圧しつつ、質問を続ける。
「お前らのボスは誰だ？ あの中にいるのか？」
「……え、う、あ……」
「混乱して言葉も喋れないか？ ……いや、待てよ」
「師匠、なんかコイツ、おかしいぞ」
男を怪訝そうに眺めていた小太郎が口を挟む。
「見ればわかるさ。なんだか様子がおかしい」
「いや、そうじゃなくて！ そいつ……オーラの色がおかしい」
小太郎の能力、見鬼は他人のオーラの色を見ることも出来る。
それによって大雑把に感情などを読み取る事も可能だそうなのだが……。
「そいつ、ただの人間じゃない！」
「それはどういう……いや、そうか、人工生命！」
ヒルコズが製造していた人工生命。その中にはホムンクルスもある。
人間の形をした人工生命だって作れないワケではないのだ。
だとしたら、この建物は本当に罠だったのかもしれない。
「小太郎、あの建物の中にいるヤツら、全員分判別できるか？」
「近寄らないと無理だ。でも、どういうことだ？ 引っ張って来たヤツが偶然、人工生命だったってことか？」
「かもしれん。だが、何千体もホムンクルスを抱えていると言う情報もある。もしかしたら、あの中にいるヤツらは全員そうかもな」
「師匠の能力じゃわからないのか？ 体内構造が違ったりとか」
「影を把握すれば、相手の内部もわからないわけでもないが、中身は全て人間と同じ……ん？」
男の中身を探ってみると、内臓の一部に異物が埋め込まれているのに気付いた。
影を使ってそれを取り出してみると、それは小さな機械であった。
「これは、なんだ？」
「それからヤバい色が見える……なんかしら魔術がかかってるっぽいぞ」
「ヤバい……？ 具体的には？」
「そこまではわからねぇよ。草間さんやセレシュさんに見せてみた方が良いんじゃないか？」
「……そうだな。とりあえず、ここを制圧して、IO2に報告しよう」
今後の方針が決まったところで、早速行動に移そうとしたのだが、急にスーツの男がバタリ、と倒れる。
「もしや、この機械を取ったのは拙かったか？」
「が……あぁ……マスター……コドー……ッ！！」
もがき苦しんでいた男は、最後にそんな言葉を遺して、ピクリとも動かなくなった。
「マスター、コドー？」
「マスターコード……いや、コドー様って所か？」
恐らく、そのコドーという人物が人工生命の生殺与奪を握っているのだろう。
そして抜き出した機械が、そのスイッチとして働いてしまったと言う事だろうか。
「ど、どうする、師匠？」
「とりあえず、内部を調査するぞ。他のヤツらまで全員人工生命なのかどうか、調べておいた方がいいだろう」
「……お？ 師匠、これちょっと見てくれ」
小太郎が指差す先には影で作ったミニチュア。
今も建物の内部を詳しく再現している。
それを見ると、中にいる人影が全て妙な動きをしている。
忙しなく右往左往している者や、微動だにしない者、建物の外へ飛び出す者などその反応は様々だが、建物の内部は大混乱の様相であった。
「何があったんだ？」
「そいつが死んじゃったのと、なにか関係があるんじゃねーの？」
「さて、どうかな……だが、どうやらあながち間違いでもないのかもな」
建物は全て、冥月が影で探れる範囲内である。
その中にいる人影ももちろん、手に取るようにわかる。
だからこそ、建物の中にいる人影の大半に、同じような機械が埋め込まれているのにもすぐに気付けた。
「これが人工生命に植えつけられた何かの機械なのだとしたら、あの中にいる人間はほとんどがホムンクルスと言うわけだな」
「ってぇ事は、数千体のホムンクルスってのは、ヒルコズの構成員に化けてるって事か？」
「いや、それだと数が合わない」
IO2の情報によれば、ヒルコズの構成員は数十人。
桁を二つも間違えるほど、IO2も無能ではあるまい。
だとしたら、やはり他に数千体のホムンクルスがいるはずなのだ。
だが、どこに……？
「やはり、建物は徹底的に調べた方が良さそうだな」
「……あ、師匠、携帯鳴ってるんじゃね？」
「わかっている」
建物の様子を調べようとした矢先、冥月の携帯電話が震える。
どうやら着信したらしい。相手は武彦。
「どうした、草間」
『大変だ！ ユリが攫われた！』
「……どうしてユリが？」
『詳しくは後で話す！ とにかく、相手の本命はこっちだったらしいんだ、すぐに合流したい』
「わかった。すぐにそっちに行く」
拠点は罠である、その予感が的中してしまったらしい。
「悪い予感というのは、当たってしまうものだな」
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【8538 ／ セレシュ・ウィーラー （セレシュ・ウィーラー） ／ 女性 ／ 21歳 ／ 鍼灸マッサージ師】
【2778 ／ 黒・冥月 （ヘイ・ミンユェ） ／ 女性 ／ 20歳 ／ 元暗殺者・現アルバイト探偵＆用心棒】
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■ ライター通信 ■
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黒・冥月様、シナリオに参加してくださってありがとうございます。『もちろん罠です！！』ピコかめです。
前後編だし、ちょっとは後手に回っちゃってもいいよね。
まさか情報源が釣りエサだとバレてしまうとは……もうちょっと上手く擬装すべきだったかもしれませんね。
ちょっとしたサプライズにでもなればいいなと考えていたのですが、上手くはいかんもんです。
なんか、前々から見抜かれてばっかりだわ、俺。
では、よろしければ、次回もご参加下さい。
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