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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 流されゆく意識、動かぬ心 ――

「…うわぁ」
 LOSTにログインした後、海原・みなもは小さな声で呟いた。
「みなもちゃん? どうかしたの?」
 一緒にログインしていた瀬名・雫が少し慌てたようにみなもに言葉を投げかける。
 彼女はみなもの置かれている立場を誰よりも分かっているため、些細なことで心配するようになった。みなも自信もその事を分かっており、嬉しい反面、巻き込んでしまうのではないかという恐怖も確かに心の中に存在している。
「何でもないんです、ただログインした時に以前よりも臨場感があるというか……まるで、実際にこの場に立っているようなそんな感じがしただけなので……」
 みなもが苦笑気味に言葉を返すと「LOST自体が精神をダウンロードするけど、多分あたしが見ている画面とみなもちゃんが見ている画面はまったく違うんだろうね」と瀬名は答えた。
「でも、イベントに参加するって言ってたけど本気? ……不吉な事は言いたくないけど、あんまり強くなり過ぎるとみなもちゃんも近づき過ぎちゃうんじゃないかな」と瀬名は呟く。
「……けど、何かしないとこのままずるずるとLOSTに流されそうな……最初からこちらの住人だったように溶け込んで抜け出せなくなるような気がするんです」
 みなもの言葉は直感で感じたもので、実際に抜け出せなくなるのか、それはわからない。
「みなもちゃんの直感って結構当たるから怖いよね、でも……あたしに何でも言ってね! 出来る事は限られてくるだろうけどあたしに出来る事は何でもやるから!」
 瀬名はみなもの手をギュッと握りしめながら、必死に告げる。
 その必死な姿を見て、みなもは泣きたいくらいに嬉しい気持ちで胸がいっぱいになっていた。
「そういえば、今回のイベントではどんな物が景品になっているんですか?」
 みなもが問いかけると「玉手箱」と瀬名は短く答えた。
「……玉手箱、ですか?」
 みなもは首を傾げながら問いかける。
「何が出るかは分からない。伝説のアイテムが出る場合もあるし、下手すればモンスターが出てきて戦闘! ってパターンもあったかな」
「玉手箱というより、何でもありの箱と言った方がいいんじゃ……」
「それもそうだね、でも今回は黒の玉手箱だからレア率高いんじゃないかなー。白、青、黄、赤、黒、紫の順番でレア率が変わってくるの。白ははっきり言ってモンスター箱と言っても過言じゃないし、紫はレア物が確定してるって言ってもいいくらい良い物ばかり出るんだよ」
「……黒ってことは、結構な確率って事ですね。どんなイベントなんですか?」
「鬼ごっこ。鬼モンスターが出てくるから、最後まで捕まらなかった人の勝ち。でもあたしは残念だけど出場できないんだー。このイベントには縛りがあって、前回のイベントに出場したら、次のイベントには出場できない掟になってるんだよ」
 つまり、みなもがひとりでイベントに出場しなければならないということ。
(……少し怖いですが、やってみましょう。正直に言えば回復薬が出るだけでも構いません。今のあたしには回復薬1つでも集める必要があるんですから)
 みなもは心の中で呟き、イベント出場を決めたのだった。

※※※

 そしてイベント当日。
 みなもは『白蓮、穿牙士』という上級職のおかげか、それともみなも自身の潜在能力なのか、他の参加者の誰よりもうまく鬼から逃げていた。
(身体が軽く感じる、これ以上浸食されないように多少の制限が掛かっているはずなのに……それでもこの素早さ、もし制限がなかったらどれくらいの強さを手に入れられるんだろう)
 みなもはあまりの強さに驚くばかりだった。
「みなもちゃーん! 最後のひとりになったら鬼にタッチするんだよー!」
 観客席から瀬名の声が聞こえ、みなもは周りを見る。
 既に他の参加者達は鬼に捕まってしまっており、会場にいるのはみなもだけ。
「タッチされたらダメだからね! タッチしなきゃ優勝にならないよー!」
 瀬名の言葉を聞き、みなもはグッと地面を蹴り、鬼に向かう。
 その素早さに鬼さえも翻弄して、みなもは苦労することなく鬼にタッチが出来た。

※※※

「おめでとう! 黒の玉手箱ゲットじゃん!」
「ありがとうございます、何て言うかもう少し苦労すると思ったんですけど……」
 みなもが呟くと「言うねぇ、参加者の中にはレベル100越えの猛者もいたっていうのに」と瀬名が苦笑気味に答えてきた。
(……レベル100越えの人よりも、今のあたしの方が強いということなんでしょうか)
 そんなことを考えながら玉手箱を開けると「解放の珠」というアイテムが入っていた。
「あっ、これって呪い解放アイテムだよ! ほら、みなもちゃんが持ってる呪具の呪いを解けるってやつ。呪いを解いたら別アイテムになるんだよね」
(……解放の珠、まだまだあたしが知らないことが多いですね。もっと知識を増やさなくては)
 手に入れたアイテムを見つめながら、みなもは心の中で呟いていた。
「そういえば、みなもちゃんって四足歩行なのに他の人は全然不思議に思ってなかったね。上級職だから扱いが違うのかなぁ?」
 瀬名が首を傾げながら呟く。
(そういえば、呪具装備中はモンスター扱いだったのに……今の姿と大して変わりはしないのに、何かが違うんでしょうか?)
 瀬名の呟きにみなもも首を傾げたのだった……。


―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――

海原・みなも様

こんにちは、いつもご発注頂きありがとうございます。
今回はいかがでしたでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていれば良いのですが……!
いつもみなもちゃんを楽しく書かせて頂いております。
また機会がありましたら、どうぞ宜しくお願い致します。

それでは、今回も書かせて頂き、ありがとうございました!

2015/3/9