コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 女僧侶の冒険記 ――

「教会を救え、ですか……」
 松本・太一は受注したクエストを見ながら、小さな声で呟く。
 クエスト内容はシンプルなもので、敵NPCの盗賊達が教会を占拠して、色々な悪事を働いているから、それをなんとかする――……というものだった。
 このクエストはいつでも出現するわけではなく、前回松本が偶然にも巻き込まれた詐欺まがいの出来事がキッカケで出現するものだと、交流掲示板で書かれているのを見かけていた。
(ですが、女僧侶の自分に出来る事というのは限られてくるんですよね……)
 松本は依頼内容を見ながらため息をつく。
 これがバリバリの戦士系職業だったら、ひとりで攻め込むのことも難しくはないだろうが、防御力やHPが低く、攻撃手段が限られている僧侶となると話は違ってくる。
 しかも、このクエストは大抵のプレイヤーが終わらせている初級クエストらしくて、松本を手伝ってくれるような人はいなかった。
「とりあえず、街で情報収集をしてみますか……」
 松本は呟いた後、教会周辺の聞き込みを行うことになった。

※※※

「教会の司祭様? 以前の司祭様は良い人だったんだけどねぇ……何かの事情でいきなりいなくなって、今の新しい司祭様が来られたんだよ」
 住人NPCは周りを伺うようなアクションを見せた後に「……大きな声じゃ言えないけどさ、あたしは前の司祭様の方が気さくで好きだったんだけどねぇ」と言葉を付け足してきた。
(……突然いなくなった司祭と、あまり人から好かれていない新しい司祭……)
 何か関係があるような気がして、松本は首を傾げながらも聞きこみを続ける。
「そういや、森の奥に廃屋があるんだけどさ。新しい司祭様はあそこに出入りしてるって噂だな。けど、あそこは盗賊のすみかだって聞いてるんだけどなぁ」
 若い青年NPCはそう言いながら、松本の持つマップに廃屋の場所を書きこんでくれる。
 NPCは何も言わないけど、次の目的地はそこだと言いたいのだろう。
「何かあるなら街の衛兵を頼るといいよ、あそこの盗賊を捕まえようって動きがあるみたいだし」
 若い青年NPCから言葉を聞いた後、松本は衛兵所に向かう。
 そこで街で聞き込んだ事をすべて言うと「実は前司祭が盗賊共に囚われているという情報を掴んだのだ、もし良ければ君も一緒に手伝ってもらえないだろうか?」と衛兵から言われ『はい』と『いいえ』のアイコンが画面上に出てくる。
(ここは『はい』を選ぶべきでしょうね)
 松本は心の中で呟いた後『はい』を選択して、衛兵と共に森の奥にある廃屋に向かう事になった。どうやらシングルプレイヤーへの救済措置で衛兵2名が一時的に仲間になってくれるらしい。
「これなら、ひとりでも大丈夫そうですね」
 松本は呟いた後、衛兵と廃屋に向かって歩き出した。

※※※

「くそぅ!何でここがバレたんだ!」
 盗賊NPCはそう言って、松本&衛兵2名に襲いかかってくる。
 どうやらこのクエストのボスらしく、接近戦は衛兵に任せて、松本は衛兵の回復役に徹した。
 そして、ボスを撃破した後に『クエストクリア!』の文字が画面に表示される。
「君のおかげで囚われていた司祭を救助出来たし、盗賊も一網打尽に出来た。感謝する!」
 衛兵はそう言って、松本に僅かなお金と回復薬を渡してくる。
(貢献度は限りなく少なかったですし、まぁ、報酬はこんなものですよね)
 松本は苦笑しながら増えたお金と回復薬を見ながら、心の中で呟く。
(地味なクエストでしたけど、結構楽しかったですし……次に受けられそうなクエストがないかを探して見ましょうか)
 けれど、今日の冒険はこれまでにしよう――……と松本は言葉を付け足し『ログアウト』にカーソルを合わせて『LOST』の世界から現実の世界へと戻ってきたのだった……。

―― 登場人物 ――

8504/松本・太一/48歳/男性/会社員・魔女

――――――――――

松本・太一 様

こんにちは、いつもご発注頂きありがとうございます。
今回は僧侶の冒険話でしたがいかがでしたでしょうか?
いつも分かりやすい発注内容で、とても助かっております。
内容の方でご期待に添えられていると良いのですが……!
また、機会がありましたらご発注をお待ちしております。

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました!

2015/3/27