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<東京怪談ノベル(シングル)>


アイス屋さん〜氷の女王様編〜

「……暑くなってきた、アイスがたくさん売れる……」
 アリア・ジェラーティは台車を引きながら、ポツリと呟いていた。
「この辺で、いいかな……?」
 そして、とある公園で台車を停めて、アリアは自分の格好を見る。
(女王らしさを、演出してみたらどうかって言われて……今回の服装にしてみたんだけど……)
 アリアは、この服を選ぶまでのことを思い出していた……。

※※※

「……どうすれば、女王らしくなれるんだろう?」
 鏡の前に立ち、かくり、と首を傾げる姿は女王ではなく、天使のようにも見える。
「氷の、女王なら……雪とか、氷のアクセサリーが必要、かな?」
 アリアはそう呟き、氷の結晶の形をしたイヤリングを耳につけた。きらり、と輝く結晶のイヤリングはアリアの青い髪に映えていて、何とも言えない幻想的な雰囲気を醸し出している。
「うん……悪くない、かも? あとは服をどうするかだけど……」
 今までは北欧系の服を着て、行動をしていたけど、どうせなら今回は服も買えたい。そんな思いがアリアの胸の中にはあった。
 そんな時、いつから持っていたのか分からない、少し大人っぽい服を見つけた。
「これ、女王っぽい……?」
 ゴシックなデザインだけど、青を基調としているせいか、あまりくどくないデザインだ。パッと見た感じではアリスをイメージした服にも見えるけど、今回はその服を着て接客を行うことを決め、着替えた後にアイス屋さんの台車を引いて、公園に向かったのだった。

※※※

「ママァ! アイス屋さんがある!」
 今朝の出来事を思い出していたアリアだけど、男の子の声にハッと現実に引き戻される。
「いらっしゃいませ、ソーダ、ミルク、オレンジ……色々ありますよ」
 雰囲気を変えるため、アリアはにっこりと微笑み、丁寧な口調で男の子に声を掛ける。
(笑うって、こういうのでいいのかな……営業スマイル……難しい……)
 思わずドキッとしてしまうような笑顔だけど、アリアの心中では、これが正しいのか分からない状態であると、当然のことだが、他の者が気づくはずもなかった。
「ソーダ! ください!」
 男の子はニコニコと注文してきて、その子の母親が代金を支払う。
 すると、次々にお客さんがやってきて、アリアの台車は一気にたくさんの人に囲まれていた。
「へぇ、可愛い子じゃん! おにーさん達といいことでもするー? なーんてな、あはははっ!」
 どうやら、ちょっと……いや、かなり迷惑なタイプのお客さんまで来てしまったらしい。
(……あ、他のお客さん達が帰っていっちゃう)
 高校生らしい男性達は、数人でアリアの前に立ち、大声などで営業妨害をしてくる。
「……邪魔は、駄目です」
 アリアが、ポツリ、と言うけれど……。
「うわっ、マジで可愛い。なんてーの、こういう子、家にひとりは欲しいってやる?」
「おいおい、お前幼女好きだったのかよ……引くわー」
 アリアの申し出は一切聞き入れてもらえず、迷惑行為はだんだんエスカレートしていくばかり。
「……私は、ちゃんと注意したのに、どうして聞いてくれないの?」
 小さな手を強く握り締めながら、アリアは、ジロリ、と男子高校生を睨みつけた。
「おっ、幼女が睨んでる。何? お仕置きでもしてほしーとか?」
「ぎゃはははっ、それ変態じゃん! さて、なんのアイスを買おうかなー」
「……買わなくても、いいです」
 アリアがポツリと呟く。短い言葉だったけれど、その言葉には怒りが込められていた。
「……あなた達、悪い人だから……お仕置きしてあげる」
 その時、アリアが見せた表情は紛れもなく『氷の女王』のようだった。
 そして、男子高校生の氷像が3日間ほど、アリアの自宅前に飾られていたのは言うまでもないのだった――……。


―― 登場人物 ――

8537/アリア・ジェラーティ/女性/13歳/アイス屋さん

――――――――――

アリア・ジェラーティ様

こんにちは、今回はご発注頂き、ありがとうございます。
今回は女王様っぽいアイス屋さんということでしたが、
内容はいかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていれば幸いです……!

それでは、今回も書かせて頂き、ありがとうございました!
また、機会がありましたよろしくお願い致します!

2015/4/19