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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 妹系☆女僧侶の誕生 ――

「……さて、これをどうしましょうか」
 松本・太一は先日参加した『LOST』のオフ会で渡されたMODを見ながら呟く。
(確か、同僚は『露出の多い妹系』のグラフィックと言っていましたが……)
 妹系ならなんとなく分かるけど、露出が多い妹系、とはあまり想像が出来ない。
 露出の多い=お姉さん系、というイメージがあるからだろう。
「せっかく頂いたわけですし、一応反映させてみましょうか……」
 松本は苦笑しながらも『LOST』の自キャラに同僚から渡されたMODを反映させてみる。
 すると――……。
「うわぁ……」
 反映された途端、清楚なイメージで作っていた女僧侶はまるで魔法少女のような外見に変わる。
 正直に言えば、男性向けのゲームに登場しそうなスカートの短さ、僧侶のはずなのに持っている武器の先端には大きなハートがついていて、パッと見ただけでは僧侶とは思われないだろう。
「あの人は、こういう趣味なんですかね……」
 これを渡してきた時の同僚はやけに興奮していた気がする。
 恐らく、これは彼の趣味がふんだんに込められたグラフィックなのだろう。
「もうひとつ……確か、瀬名さんから渡された物もありましたね」
 せっかく貰ったのだから、と松本は瀬名・雫から渡されたMODも反映させてみる。
「これは、結構いい感じですね」
 黒を基調としたグラフィックで、少々足の露出が多い気がするが、同僚が渡してきた物ほどではなかった。むしろ、クールな印象を受けて、松本はどちらかと言えば、瀬名が渡してきた物の方が気に入っている。
(そういえば、私は『LOST』の異変に巻き込まれているし、どんな影響が出るんでしょうか)
 MODを反映させることで『LOST』の影響を受けることを考えなかったわけではない。
 ただ、グラフィックを変えるだけという安易な気持ちがあったのも否めなかった。
「え……」
 松本は、ふと鏡を見た。
 そこで視界に入って来た姿を見て、言葉を失った。
「これは……」
 鏡の中の自分は、同僚が渡してきたMODの姿に酷似したもの。
 すべてがあの『露出の多い妹系』ではなく、松本自身の面影などは残っているけれど……更に若く見え『女性化』という現象が進んでしまったように思える。
 元々『女性化』が進み、松本は性別こそ男性なのに女性にしか見えない状況だ。
 それが更に深刻化してしまい、高校生――……というより、中学生のように見えなくもない。
(これは、別な意味で大変なことになりそうです)
 外見のMODを反映しただけで、現実世界の自分にも反映されてしまった。
(……つまり、やっぱり『LOST』の中の自キャラは、私自身――ということなんでしょうね)
(あのキャラが『死亡』した時、私も一緒に――……ということなんでしょうか)
 今さらながらに、自分が怖いゲームに関わってしまったのだということに気づく。
「……どうせ反映されるなら、瀬名さんがくれた方が良かった気がします」
 画面に表示されている自分のキャラクターを見て、松本は小さなため息を吐く。
 装備などは一切変わっていないのに、キャラクターの持っている武器や防具などのグラフィックも変わっている。
 元のグラフィックに戻そうとしても、戻すことが出来ず、松本はこのままのグラフィックで『LOST』を進めることを強いられてしまった。
(……あの人が悪いわけじゃないんですけど、反映させようとしたのは私自身で決めたことだって分かっているんですけど……恨みたくなりますね)
 パソコンに表示されるキャラクターの姿、そして鏡に映る自分の姿を見ながら、松本はここ最近で一番深いため息をついたのだった……。


―― 登場人物 ――

8504/松本・太一/48歳/男性/会社員・魔女

TK01/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――

松本・太一様

こんにちは、いつもご発注頂きありがとうございます。
今回のノベルはいかがだったでしょうか?
気に入っていただけますと幸いです……!

それでは、また機会がありましたらご発注をお待ちしております。
今回も書かせて頂き、ありがとうございました!

2015/7/1