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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


大奮闘……!?

 大きな音や雑踏、叫ぶ声などがこだまする大型アミューズメントパーク。
 一見してみれば、遊具やおもちゃを楽しむ人々の様子などが窺えそうなものだが、今は少しばかり違うようだ。
 辺りは暗い夜の闇。親子連れやカップルなどが遊びに来れる様な時間ではない深夜の出来事なのである。
 うさぎやクマのぬいぐるみ、ブリキのおもちゃや恐竜のプラスティック人形など、子供達が手にとって遊ぶようなおもちゃが所狭しと暴れ回っている。
 ぎゅうぎゅうと互いの体を潰しあうようなおもちゃたちがいるその場所に、二つの影が降り立った。
「随分派手にやってますね」
 呆れているようで、どこか楽しんでいるかのような表情にも見えるティレイラの姿に、シュリーナは短くため息を吐く。
「ティレ。遊びに来たわけじゃないのよ?」
「わ、分かってます!」
 少しばかり焦ったように姿勢を正し、僅かに顔を俯けたティレイラに、シュリーナはふっと笑った。そして、ぽんと肩に手を置くと大暴れしている玩具の群を見やりながら口を開く。
「ここからは二手に分かれましょう。一緒に魔物を退治するより分かれた方が効率がいいわ」
「はい、お姉様!」
 二人はその場で二手に分かれると、ティレイラはバサッと背中の翼を広げて空へと舞い上がる。
「さぁ、張り切って行くわよ! お姉様に遅れはとれないわ!」
 両手を上下に構え作り出した一本の光は大きく弾けて一本の弓へと変わる。手にした矢を番え、たむろしている玩具たち目掛けて抜き放った。
 ヒュっと空を切るような甲高い音が鳴り響き、抜き放たれた弓はもみくちゃになっている玩具たちの間を裂く様に蹴散らし、玩具たちは飛び散った。
 それを皮切りに玩具の群に飛び込んだティレイラは次々と矢を抜き放ち玩具たちを蹴散らしていく。
 宙に舞い上がる玩具たちは、次々と意思を失い元の姿に戻ってボタボタと地面に落ち身動きをとらない。
「これくらい、簡単だわ」
 余裕の笑みを浮かべながらアミューズメントパークの中を縦横無尽に飛び回っていると、突如目の前に黒い大きな影が飛び出してきた。
「きゃああっ!」
 油断していたティレイラは、黒い影に打ち上げられた意思を失くしたぬいぐるみと同様に吹き飛ばされる。
 勢いよく吹き飛んだティレイラの体は、室内の壁に強かに背中を打ちつけた。
 背中に走る激痛に顔を歪ませ、ズルズルと床に崩れ落ちたティレイラは吹き飛ばした張本人を睨み上げた。
「!」
 目の前には、どの玩具よりも大きく、自分の身の丈さえも裕に越える大きさの魔物がギラつく瞳を光らせてこちらを睨み下ろしている。
 冗談でしょ、と思わず呟いてみるも鼻息荒くこちらを睨む大きな魔物はフシューっと息を吐いた。
 痛む体を抱きしめるようにして、側に落ちていた弓をぎゅっと握り締め立ち上がったティレイラもまた同様に魔物を睨みつける。
「あなたが親玉ね……」
 ティレイラは足をその場に踏みしめると魔物に狙いを定めた。
 こちらから先に仕掛けるか、それともあちらから先に仕掛けてくるか……。
 張り詰める緊張感の中、ティレイラはピタリと焦点を定め先制攻撃を仕掛ける。
 抜き放った弓はぐんぐん空間を勢いよく飛び、魔物の眉間目掛けて飛んでいく。だが、魔物は赤い目をぎゅっと細めると大きな腕を振りかぶりティレイラの矢を叩き落した。
 ティレイラはすぐさま自分が得意とする炎を呼び出し、魔物目掛けて炎を飛ばした。
 相手は所詮玩具。どんなに図体がでかかろうが炎には勝てないだろう。
 そう思っていたのだがそれはとんだ思い違いだった。
 炎は確かに魔物の体を取り巻くが、それもほんの一瞬の出来事だった。
「ブオオオォォォォッ!!」
 大きな咆哮を上げ、今度は魔物が攻撃を仕掛けてきた。瞬間的にビュッと吐き出した薄い黄色がかった液体がティレイラ目掛けて飛んでくる。
 咄嗟に障壁を作り出し身を護る体勢をとったが、相手の攻撃は留まる事を知らない。次々と吐き出した液体に幾度も障壁を作り出して身を護っているうちに、ティレイラは疲弊していた。
「こ、このままじゃ……っ」
 弱り出したティレイラをみやり、魔物は更に篭った液体を吐き出してくる。
 ティレイラは障壁を作り出すことはやめて、その場から飛び退くようにして逃げ出した。が、尻尾や翼の先に液体がかかってしまう。
 ベトッとした粘性の高いその液体が樹脂だと気付いたのは、今この瞬間だった。
「やだぁぁっ! 気持ち悪いぃぃ!」
 たまらず悲鳴をあげ、次々と仕掛けてくる魔物の樹脂に翻弄されてしまう。
 バタバタと逃げ回っているうちに、液体の付いた尻尾と翼がカチコチに固まってコーティングされ、動かなくなってしまった。
「うそぉ〜〜〜〜〜っ! もうやだぁああぁ〜!」
 動かない翼を動かそうと慌てふためいていると、バシャリ、と魔物の吐き出した樹脂を頭から被ってしまった。
 これはもう逃げられない、無理だ……。
 樹脂をかぶった瞬間にそう悟ったティレイラは半べそ状態になる。
「……また、やっちゃった……。どうしていつもこうなるのかしら」
 じたばたともがきながら助けを求めるも、樹脂は硬質化して抵抗虚しくティレイラは等身大の樹脂人形として地面にゴロンと転がった。


 その頃、シュリーナもまた魔物を次々と魔物を蹴散らしていた。
「他愛ないわね」
 ふふんと鼻で笑っていると、不意に目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。そこから顔を出した魔物は先ほどティレイラを樹脂人形へと変えてしまった魔物だ。
「大きな魔物ねぇ……」
 感心したようにそう呟くと、シュリーナはバサリと背中にある翼を広げ、こちらに気付かずに去ろうとする魔物の背中に飛び乗った。
 巨体を揺らしながら去ろうとする魔物にシュリーナはこの魔物が親玉である事を察して、その手の内に重力の魔法を呼び起こす。
「はい、終わり」
 薄い笑みを浮かべ、シュリーナは勢いよく魔物に魔法をぶつけた。するとあっけなく魔物の体は弾け飛び、魔物の体内にあった樹脂が雨のように大量に飛び散る。
 シュリーナは咄嗟に防護の魔力の膜で体を護るが、魔物の放った魔法の樹脂は彼女の全身にかかってしまったのだった。
 ピキピキと音をたてて固まりだした樹脂に、シュリーナもまたティレイラ同様にその場で固まり出したが彼女はいたって冷静だった。
(あらまぁ……)
 固まってしまったシュリーナとティレイラを残し、巨大な魔物が消え去った事で元に戻った玩具はあちらこちらに散在する。
 そのまま夜は更に更けて行き、静まり返ったアミューズメントパーク。
 パキリと小さな音が鳴り、パラパラと床の上に樹脂のかけらが落ちていく。すると、防護膜で身を護っていたシュリーナがゆっくりと動き出す。
「中和が少し時間かかってしまったわ」
 ふぅ、とため息を漏らして辺りをぐるりと見回した。
 あまりに静まり返った場内に、ティレイラも自分と同じように樹脂に固められてしまったのだろう。
 そう思った瞬間、何かを閃いたように顔を上げたシュリーナは口元に笑みを浮かべる。
「そうだわ。ティレもきっと可愛い姿になってるに違いないわね」
 わくわくと胸躍らせながら、ティレイラのいる空間へ移り彼女を探すとすんなり見つかった。
 半べそ状態で固まってしまっていたティレイラを見た瞬間、シュリーナは両手を合わせて高揚する。
「凄い……素晴らしいわ! さすがはティレね! 完璧よ!」
 目を輝かせたシュリーナは、半べそティレイラを家へと持ち帰りじっくりと堪能する事を楽しみにするのだった……。