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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 魔獣が舞う夜 ――

「これは、大丈夫でしょうか……」
 海原・みなもは瀬名・雫から渡されたMOD(非公式改造プログラム)を見つめながら呟く。
 改造プログラムとは言っても、最初から最強キャラとか、そのようなことではなく、アクション性の補佐をするようなサポートプログラムである。
 白虎になってから、アクション性の高い操作になってしまい、みなもは試行錯誤しながら必死で慣れようとしていたが、気合いと根性だけで乗り越えられるものではなく、みなもは事情を知っている瀬名に相談をした。
 その結果、MODを渡されたというのが数分前までの出来事だ。
「みなもちゃんの事情を知ってるから、下手な物は渡せないんだけど……みなもちゃんがやられちゃったら本末転倒だし、とりあえず使えそうだったら使ってみるのもいいかもしれないよ」
「あの、それでこれはどのような物なんでしょうか?」
「簡単に言えば、操作性の簡略化、かな? 技とか幾つかボタンを押さなきゃいけないけど、それを入れていたらボタン一つで技発動が出来たりするんだよ」
「へぇ、そんなに便利な物が出ているんですね……」
「上級職になればなるほど、技とか魔法も強くなっていくでしょ? その代わりに、結構操作性が難しくなっていくから、これを使ってる人も多いんだよ」
 そのような話には疎いみなもは、少し分かりづらかったけど、このMODを使えば技発動などが簡単になるということだけは分かった。
「それじゃ、ちょっと使ってみますね」
「うん、ヤバそうだったら即刻使用中止ってことで」
 みなもは少し恐怖を感じながらも、MODを起動してみた。
「ど、どう?」
 瀬名が恐る恐る問いかけてくる。
「身体が、勝手に動くんですけど……」
「えっ!? うそっ!?」
 みなもの言葉を聞き、瀬名が驚いたように言葉を返してきた。
「勝手に動くとか、そういうのはないはずなんだけど……」
「でも、本当に勝手に動いているんです……」
 瀬名も、みなもも戸惑ったように言う。
「……もしかして」
 瀬名は何かに思い当たったのか、恐る恐る言葉を紡ぐ。
「もしかしたら、だけど……みなもちゃんの四足獣にはAIプログラムがあるんじゃないの?」
「え?」
「だからMODをインストールして、極端な話だけどバグが起こって勝手に動いてる……って感じじゃないのかな? あたしも詳しくは分からないから断定はできないんだけど……」
 瀬名の申し訳なさそうな言葉に、みなもは慌てて「いえ、気にしないでください!」と言葉を返す。
「でも、獣だからと言って気性が荒くなるわけじゃないんですよね。普通に動物が散歩するみたいな、そんな感じの動きっぽいです」
 普通のプレイヤーだったら、これも楽しめたかもしれない。
 けど……。
「うーん、勝手に動いちゃうならそれはアンインストールした方がいいかもね……AIプログラムがあるってことは、戦闘中とかも勝手に動いちゃうってことだし……」
 瀬名がしょんぼりしながら呟く。
「すみません、あたしがアクション苦手で雫さんが一生懸命探してくれていたのに……」
「あ、ううん! 気にしないで! 元々非公式の物だし、どうかなーって思ってたやつだから。また今度、みなもちゃんに合いそうな奴があったら持って来てあげるからね」
 そんな瀬名の言葉を聞いて、みなもは嬉しさで泣きそうになる。
(あたしは、幸せですよね……)
 LOSTの異変に巻き込まれてはいるけど、一人じゃない。
 怖かったら相談出来る人がいる。
 悩みを打ち明けられる人がいる。
「ん? みなもちゃん、どうしたの?」
「……いえ、雫さんがいてくれて、本当に良かったなと思っただけですよ」
「えっ……! や、やだなぁ、もう! そういうこと言われると照れちゃうんだけど!」
 雫がみなもの背中を叩きながら、照れくさそうに言葉を返す。
「『LOST』のアクション性って、結構難易度高いから色んなコミュがあるんだ。苦手な人同士が書き込みする場所なんだけど、その辺をもう1度詳しく調べてみるね」
「ありがとうございます、あたしも色々と調べてみますから……」
 こうしてアクション簡略化の作戦は失敗したけど、瀬名というありがたい存在に再度感謝をする機会を得たのだった――……。


―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――
海原・みなも様

こんにちは、いつもご発注頂き、ありがとうございます。
今回は操作性の内容でしたが、いかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていますと幸いです。

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました!
また、機会がありましたら宜しくお願い致します!

2015/9/4