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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 求める強さとは ――

「……ふぅ」
 海原・みなもは小さなため息をつく。
 もちろん、その頭の中にあるのは『LOST』のこと。考えの8割が不安であり、みなもはこれからどうやって生き残るかを、真剣に考えるようにしていた。
 今までも簡単に考えていたわけではないが、それでも今よりは楽観的に考えていた部分があるのかもしれない、とみなもは心の中で思うようになっていた。
「みなもちゃん、どうしたの?」
 瀬名・雫がみなもの顔を覗き込みながら、問いかける。
「雫さん……あたし、強くなりたいと思うんです」
「えっ、で、でも……みなもちゃんの場合、強くなりすぎると大変なんじゃ――」
 そう、みなも場合、強くなりすぎると『LOST』に食われてしまう可能性がある。
 そして抜け殻となったみなもはNPCとして『LOST』をさ迷い歩く――。
「はい、強くなりすぎるな――……つまり、これは強さに振り回されるな、という解釈も出来ると思うんです。服に着られるな、酒に呑まれるな、それと同じように自分が扱えるだけの強さならば問題ないのではないでしょうか?」
「……なるほど。ただ、みなもちゃんの解釈と、LOSTの解釈が同じとは限らないよ?」
 瀬名は心配そうに言う。みなもの浸食、苦悩、それらを間近で見てきたからこそ、瀬名はみなもを心配せずにはいられない。瀬名にとって、みなもはかけがえのない友人なのだから。
「分かっています、けどこのままでは何も変わりませんから」
 みなもの強い意志を含んだ瞳を見て、瀬名は黙っておこうと思っていたことを告げることにした。
「最近、とある噂があるんだ。上級職から更に転職できるっていうアイテムの噂……」
「上級職から、更に転職……?」
「四宝伝、と呼ばれるアイテムがあるんだって。ちょっと前に大型アップデートがあったんだけど、その時に追加された職業が4つあるんだって」
 いつもながら、瀬名の情報力は凄いな、とみなもは関心する。
「職業っていうのが、持国天、毘沙門天、広目天、増長天――だったかな」
「四天王、ですね。名前だけで強そうな感じですけど……」
「そのうちのひとつ、持国天のアイテムなら、このすぐ近くの洞窟にあるらしいよ」
 使うか使わないかは置いておき、みなもと瀬名はその洞窟に行ってみることにした。

※※※

「……はぁっ、はぁっ」
 上級職の更に上、の転職アイテムがあるというだけあり、洞窟内のモンスターは強さが半端なかった。
「ひぃっ、あたしのレベルでも苦労するなんて思わなかったなぁ……」
 普段は泣き言ひとつ言わない瀬名が、少し弱気になるほどこの洞窟内のモンスターは強いのだ。
(甘く見ていたわけではないですけど、もう少し楽に奥まで行けると思っていました)
 だんだん減っていくHPを見ると、まだまだ自分は強いとは言えないと思えてくる。

※※※

 それからしばらく進むと――……。
「みなもちゃん、あれ!」
 洞窟の最奥に淡く輝く宝玉を見つけた。
「これが、持国天に転職できる宝玉――……」
「でも、それって、どうやって使うか分からないんだよね。なんか特別な条件があるみたいだし、今すぐ使わなくても大丈夫じゃないかな?」
「はい、あたしももう少し様子を見るつもりです。どんな職業か分からないまま、転職するのは少々危険でしょうし……」
 みなもの言葉に、瀬名も頷く。
「あたしも色々調べてみるよ、何か分かったら教えるからさ」
「はい、ありがとうございます」
 こうして、みなも達は持国天の宝玉を入手した後、ふたりは洞窟を出た。

※※※

「雫さん、今日は付き合って下さり、ありがとうございました」
 みなもは丁寧に頭を下げながら、瀬名にお礼を言う。
「ううん、あたしで協力できることなら、何でもするよ! じゃ、また今度ね!」
 そう言って、瀬名はログアウトしていった。
(この持国天の宝玉、これはあたしにどんな結果をもたらしてくれるんでしょうか)
 手のひらで淡く輝く宝玉に、みなもは得体のしれない不安を感じていたのだった――。




―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――
海原・みなも様

こんにちは、いつもご発注いただき、ありがとうございます!
今回は新しい職業のアイテム入手話でしたが、いかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内相に仕上がっていれば幸いです。

それでは、今回も書かせていただき、ありがとうございました!

2015/11/16