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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 東を守る神、持国天 ――

「持国天……?」
 海原・みなもは小さくため息をつきながら、パソコンの画面とにらめっこをしていた。
 先日、新たに転職アイテムを入手出来たの良かった、けれど『持国天』という職業はみなもの想像を超えるものであり、どのようなスキルが使えるのか、どんな武器を使えるのかすら分からないのだ。
「あたしに任せて! ……と言いたいけど、これ新しく出始めたアイテムだからあたしも詳しくないんだよね、ごめんね、みなもちゃん……」
 瀬名・雫は申し訳なさそうな表情を見せて、みなもに謝る。
「い、いえ、雫さんが悪いわけではないですし……あたしは今まで『武闘術師』『白蓮・穿牙士』『魔獣(虎)』の職業になってきましたけど、どれも攻撃方法とか分かりやすかった気がするんです。けれど、今回の『持国天』は……」
「分かんないよねぇ、他にも増長天、毘沙門天、広目天、なんかもあるんだよね。確かこの四天王って帝釈天に仕える四天王なんだよね、これを全部制覇すれば帝釈天に転職できたりして」
 瀬名は笑いながら言う。けれど、どのような職業か分からない以上は瀬名の言葉も『ありえない』とは言えなかった。
「それで、どうする? 転職してみる? それとも、やっぱりやめておく?」
 瀬名の問いかけに「いえ、転職はするつもりなんです」とみなもは答える。
 その言葉に、瀬名は少しだけ驚いたような表情を見せた。
「どうしたんですか?」
「ううん、職業が分かってないのに転職するって……みなもちゃん、意外と冒険者だよね。あたしだったら詳しく分かるまでは控えるけどなーって思っただけ」
 瀬名の言葉に、みなもは苦笑する。
 普通のプレイヤーならば、みなもも瀬名と同じ考えを持ったかもしれない。
 けれど、みなもにはどのような事柄で命を落とすか分からない状況なのだ。
 だから冒険者と言われても、みなもはすがるしかない。
 瀬名とみなもの違い、それはこのゲームに自分の命がベットされているか否かである。
「そうだ、図書館に行ってみようよ」
「図書館?」
「職業やアイテムとか、色んな情報がまとめられてる場所があるんだ。そこに行けば『持国天』に関することも分かるかもしれないよ」
 瀬名の提案に、みなもは頷き、ふたりで『LOST』内の中央図書館に向かった。

※※※

「あっ、あった! これじゃない? 新職業『四天王』について!」
 瀬名が『四天王』の情報がまとめられた本を見つけ、ぱらぱらとめくり始める。
「四天王は数に限りがある職業であり、増長天は攻撃特化、広目天は魔力特化、毘沙門天はバランス型、持国天は増長天に次ぐ攻撃力の持ち主で、広目天に次ぐ魔力の持ち主である――って、えええっ、みなもちゃん! 一番いい職業を手に入れたんじゃないの!?」
 持国天の説明を見て、瀬名が少しはしゃいだように叫ぶ。
「他には、何も載っていませんか?」
「えぇと、ちょっと待ってね。あ、あった! 毘沙門天、広目天からは更なる職業『帝釈天』に導かれる者もあり、増長天と持国天は『阿修羅王』への道が開かれる――だって」
 結局ただの説明だけで終わったけれど、ある程度力と魔力、どちらに属するのかは分かったような気がする。
(阿修羅王への道が開かれる、ですか。あたし、どんどん強くなっていくんですね)
 みなもは自分の手を見つめながら心の中で呟く。
(強くなればなるほど、侵食される……果たして強くなっていくのは喜ぶべきなのか……)
 不安がないと言えばウソになる。
 けれど、みなものおかれている状況はある程度のバクチを打たなければ生き残れない、そう文字通りの修羅道を歩んでいるのだ。
(とりあえず『持国天』に転職してみましょう、考えても仕方ないことは考えない、なるようになれ……としか言えませんよね)
 みなもが心の中で呟いた時『ログイン・キー』が淡く輝く。
『うふふ、あなたのそういう思い切りの良さ、私は結構好きよ』
 頭の中に誰かの声が響く。
(今の声は、彼女の……?)
 頭の中に響いてきたのは、みなもに『ログイン・キー』を渡した彼女の声。
 彼女が楽しそうな声を聞かせたということは、まだ自分は大丈夫、確証はないけれど何となくそう思うことが出来た。
「転職アイテム、使います……!」
 みなもはそう呟き『持国天』への転職を行う。
 転職を行った後、その場に現れたのは東洋の衣装を身に纏い、新たな職業に転職したみなもの姿だった――……。


―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――
海原・みなも様

こんにちは、いつもご発注頂き、ありがとうございます!
今回は転職シナリオでしたが、いかがだったでしょうか?
気に行って頂ける内容に仕上がっていましたら幸いです。

それでは、今回も書かせて頂き、ありがとうございました!
また機会がありましたら、宜しくお願い致します。

2015/1202