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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 失った物の回復、それは緩やかな破滅への序曲 ――

「……意外と、あっさりとなれたんですよね」
 海原・みなもは『LOST』の自分のキャラ職業を見て、苦笑気味に呟く。
 新規職業として入手した『持国天』は、獣化していたみなもの外見を人型に戻し、どちらかと言えば普段のみなもの姿に近い姿だった。
「四天王職業の中でも、オールマイティな位置に属していますし、それなりの強さはあるんでしょう。現にレベルが初期化されたにもかかわらず、以前の職業より力が大して下がっていませんから」
 ステータス画面を見て、みなもは更に苦笑を強くする。
「みなもちゃん、みなもちゃん、持国天は回復系の魔法は一切使えないらしいね。ほら、覚える予定のスキルが色々並べられてるけど、その中に回復系の魔法も技も全然ないんだもん」
 瀬名・雫がライブラリに記録されている『持国天』を指さしながら呟く。
「けど、あたしはみなもちゃんが『持国天』になって良かったと思うよ。だって、外見が前みたいに戻ってるでしょ」
「……そう、ですね」
 瀬名の言葉に、みなもは少し困ったような笑みを浮かべる。
(……あたしの考えすぎでしょうか、何となく嫌な予感がするのは)
 みなもとしても、侵食が少しでも回復するのは嬉しい。
 けれど、この『LOST』はそんな簡単で生易しいゲームではないことを、彼女は身をもって知っている。だからこそ疑いたくなってしまうのだろう。
「それにしても『持国天』の姿のみなもちゃん、すっごく可愛いよねー! 四天王って言うから、もう少し厳ついおっさんみたいな外見かと思ったけど、天女様みたいな感じなんだもん」
「厳ついおっさんって……まぁ、あたしも似たようなイメージは持っていましたから、ちょっとこの外見には驚いていますけどね」
 ひらり、と天女の羽衣のような薄布を手に持ち、みなもは苦笑気味に答えた。
 みなもは直感的に感じていたのだろう。人間の外見はしているけれど、自分自身が人間と似て非なるものに変化しているということに。
(『LOST』はあたしに何をさせたいのか、どこへ導こうとしているのか……きっと、終わりへたどり着くまで分からないような気がする)
 現時点で分からないことが多すぎるから、何も考えられないのかもしれないのだけど……。
「みなもちゃん、持国天の専属武器は錫杖みたいだね。次に得意なのが刀だって。錫杖は魔力アップするものが多いから、魔法を使う時にするとして、接近戦とかは刀の方がいいかもね」
 瀬名のアドバイスに「それでは、装備を整えるので付き合ってもらえますか?」とみなもが言葉を返す。
「もっちろん! そういえば、みなもちゃん、現実でも『持国天』の格好になるのかな? 前の姿も現実世界に影響してたみたいだし、多分、その姿のまま現実世界に投影されるんだよね」
「そうですね、ですが以前の姿よりは随分と楽なので。前は獣の姿でしたし、手足が自由に使える分、こっちの方がマシです」
 それはみなもの本心だった。
(人間の姿に戻れた理由なんて、考えても分からないのだから、考えないようにしましょう。それよりも今は少しでも前に進める情報が欲しい……いつか、この『LOST』を抜け出すために。あたしに与えられた『役目』――……それらを、こなすためにも情報が必要です)
 みなもは自然と手を強く握りしめながら、強く心の中で呟く。
「でも、持国天の職業は少ないから魔法も装備も手探りになっていくだろうね。いざとなったら、あたしがみなもちゃんを守ってあげるから心配しないで!」
 どん、と自分の胸を強く叩きながら瀬名が頼もしい言葉を言ってくれる。
「ふふっ、ありがとうございます。でも、あたしも守られてばかりは嫌ですし……自分の身は自分で守れるように努力しますね」
「……みなもちゃんは沢山努力してるじゃん、これ以上ないくらい努力してるから……少しくらいみなもちゃんの負担を軽くしてあげたいよ」
 瀬名の言葉に、みなもは嬉しさで涙が出そうになる。
(……あたしは、ひとりじゃない。ひとりじゃないから、もう……怖くはない、とは言えないけど、どんな真実が待ち受けていたとしても立ち向かえる……頑張ろう)
 みなもは心の中で呟き、瀬名と共に装備を整えるため、街へと繰り出したのだった。



―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――
海原・みなも様

こんにちは、いつもご発注頂きありがとうございます!
今回は職業説明のシナリオでしたが、いかがだったでしょうか?
楽しんでいただける内容に仕上がっていれば良いのですが……!

それでは、今回も書かせて頂き、ありがとうございました!
また機会がありましたら、宜しくお願い致します!

2015/12/17