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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― セルフィナの好きなこと、嫌いなもの ――

 この日はいつもと変わらないはずだった。
 肩の凝る仕事を終わらせ、いつものように電車で自宅へと戻る。
(……んふ、んふふふ、いいわぁ……)
 そこらの女性の何倍、何十倍もある豊満な胸は満員電車で追いやられているせいか、ぎゅうっとドアに押し付けられている。
(ハァアン……! この押し付けられる感触、本当に素敵……んふふ……!)
 窮屈な感覚が彼女に恍惚としたものを与え、セルフィナ・モルゲンの甘い吐息、艶やかな表情に周りの男性達はもじもじとしながらも、彼女をちらちらと見つめるばかり。
(んふふ、押し付けられる感覚もいいけど、この遠慮がちに見られる視線もたまらないわ……)
 ぞくぞくと何かが背筋をかけのぼり、セルフィナは青い口紅が塗られた唇に笑みを刻む。
(ふふ、今日はいい感じに夜も眠れそうだわ)
 そんなことを考えていると、ふと窓の外に見えたものがあった。
(あれは、天界の使徒……?)
 窓から見えたのは、一瞬だったけど確かに自分達の敵対勢力である天界の使徒達。
 しかもただ見かけただけなら問題なかったのだけど、誰かを襲撃しているのが見えた。
(……せっかく気持ちいいところなのに、最悪なモノを見てしまったわ)
 高揚していた気分も一気に冷めてしまい、セルフィナは深いため息をつく。
(放っておくわけにもいかないし、次の駅で降りて現場へ向かうしかなさそうね)
 もう一度ため息をつきながら、セルフィナの楽しい時間は終わりを迎えてしまった。

※※※

 先ほど見かけた場所に着くと、まだ天界の使徒達はその場にいた。
 どうやらセルフィナの同族を襲撃していたらしく、彼女の瞳に宿る冷たさが一気に加速する。
「ンフフ、私の楽しい時間を邪魔した報いは受けてもらうわ」
 セルフィナは吐き捨てるように言うと、人間モードからサキュバスへと変身する。
「ンフフ! さぁ来なさい……! 最高に素敵な時間のハジマリよぉ!! んふっ!」
 サキュバスへと変身したせいか、人間モードで抑えられていたセルフィナの胸などが更に大きさを増していく。
「さぁ、どうやってあなた達でうっぷんを晴らそうかしら? せっかく毎日のささやかな楽しみに浸っていたっていうのに……ンフフ!」
 ぺろり、と彼女の赤い舌が唇をなぞる。
 それは妙に蠱惑的で、天界の使徒達もごくりと喉を鳴らした。
「天界の使徒だっていうのに、欲望はそれなりに持っているようね」
 自分の身体を舐めるように見つめる天界の使徒達に、セルフィナはクッと笑う。
「言っておくけど、無事に帰れるとは思っていないわよね?」
 天界の使徒達はセルフィナに攻撃を仕掛けてくるけど、サキュバス時の特殊能力のせいか相手の魔力攻撃を吸収していく。
「言い忘れたけど、この双球には九州した魔力や精力を詰めることが出来るの。あなた達程度の魔力では……私にキズひとつつけることすら出来ないわ」
 サキュバスの女帝という肩書きは伊達ではなく、彼女の魔力の高さ、そして優秀さは目の前にいる天界の使徒達とは比べものにならないほどだ。
「ンフフ! 二度とこの周辺で襲撃なんて出来ないよう、しっかりその身体に刻み付けてあげるわ。私に見つかってしまった運の悪さを呪うことね」
 セルフィナは楽しそうに目を細める。
 サキュバスを象徴する毒々しい色の角、そして巨大な悪魔の羽、けれどそれすらもかすむような豊満な胸を震わせながらセルフィナは笑う。
「ンフフ! そんなに怯えられちゃ、こっちも困っちゃうわ。お愉しみはこれからなのに」
 ニッと笑うと、その色香たっぷりの笑みに天界の使徒達は恐怖を増す。
 その後、天界の使徒達がどうなったのかはセルフィナにしか分からない。
 けれど、多少のうっぷんは張らせたようで、路地裏から出てくるセルフィナの表情は少し晴れやかなもの――……恐らく天界の使徒達がどうなったかは、セルフィナの笑顔を見れば容易に想像できるのだった――……。

―― 登場人物 ――
8581/セルフィナ・モルゲン/女性/28歳/サキュバスの女帝
――――――――――

セルフィナ・モルゲン様

初めまして。
今回執筆させて頂いた水貴透子と申します。
今回はご発注頂き、ありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入って頂ける物に仕上がっていましたら幸いです。
それでは、また機会がありましたら宜しくお願い致します。
今回は書かせて頂き、ありがとうございました!

2016/7/7