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<東京怪談ノベル(シングル)>


第一章 出発
 滅びてしまった町の隅。とある路地のその隙間に。
 ひっそりとそびえる教会があった。
 教会とかろうじてわかる程度の原型を残し、かつて大きな災害で焼き払われたそれは。煤によってところどころが黒く染まっている。
 それは内装も同じで、茶色くとろけたステンドグラス越しに歪んだ光が、焦げた椅子や天使の像を照らし出す。
 そんな朽ち果てた教会の左端、そこには真新しく増設された懺悔室が存在した。
 黒塗りの仰々しい箱からは、まるで神に対する配慮など感じられない。
 そんな懺悔室の扉を、見目麗しい女性が内側から開いた。彼女こそ 武装審問官 『 白鳥・瑞科 』であった。
 彼女は優雅に瓦礫から一段降りる、そしてひとつ微笑むを向けると廃墟の中心にあったトランクに歩み寄った、そのトランクを手に取る、中には依頼主からの前金として。最先端の装備が詰まっていた。
 瑞科はあたりに人の気配がないことを確認するとさっそく着替えを始める。衣服の留め金をはずし、ストンを服を落とした。真っ白な肌が露わになり、流れるような茶色い髪が肌にまとわりつく。
 その神秘的な青い瞳がそらに向けられると熱で歪んだステンドグラスが目に入った。
 それは本来天使がこの世に舞い降り、それを祝福している絵を模しているはず。
 だが、茶色に変形したそれは、悪魔の訪れに、恐怖する人々を映しているようだ。
 瑞科は思わず笑った。まるでこれから行く先を暗示しているかのよう。
「大丈夫ですわ、私はどんな邪にも魔にも屈しません」
 瑞科は司祭の言葉を思い出す。
 今回の任務は打ち捨てられた古城、そこに居座る邪教団の壊滅任務であった。
 その邪教団は強力で、何人もの武装審問官が生きて帰れなかった。そのため相手の情報はほとんどない、そんな死地に赴くような任務であるにも関わらず、瑞科は笑みを絶やさない。
 むしろ、花畑を見つけた少女のように晴れやかな表情をしている。心躍らせているのだろう。
 そうこうしているうちに、瑞科は耐衝撃性のラバースーツに身を包んだ。
 光沢のあるそれは瑞科の体のラインを浮かび上がらせ、より一層美しく見せる。
 そして上からコルセットを装着、大きく胸を持ち上げて、両脇から撫でるように豊満な胸を入れた。次いでニーソックスに足を通す。それをガーターベルトで固定。
 次いでシスター服に身を通す、衣擦れの音。肌に滑らかなその感触を楽しむように、瑞科は袖を通した。
 大きく刻まれたスリットからは、細くしなやかな太ももが覗く。
 そして、瑞科の肌より白い純白のケープ、そしてヴェールを纏った。
 編上げのロングブーツに足を通す。ヒールは高く柔肌に食い込むようにブーツはフィットした。
 最後に白い薄手のロング・グローブを腕に通す、それは金の意匠が施され、その上からはめた黒いグローブは銀の意匠が施されている。
 世界最高峰の退魔用装備、それを身に着け終わった彼女は愛刀を腰に差す。
 これほどの装備を許されるのは世界広しと言えど彼女しかいないだろう。
 そしてこれより先は彼女でしか生還しえない闇が待つ。
「ふふふ、楽しみですわ」
 そう唇に指を沿えて微笑む瑞科。
 じきによるが来ようとしていた。

第二章 正面突破

 古城には橋が架かっていた。夜な夜な近くの村から男がおびき寄せられるため、解放されているのだろう。
 その橋の真ん中を瑞科は遠慮なく通る。
 強大な魔力が城内部を渦巻いていた。
 瑞科は直感的に理解する、これは人がため込める力、その限度を超えていると。
「悪魔か、もしくは邪神くらいはいそうですわね」
 そして瑞科は駆ける。石造りの廊下をヒールで打ち鳴らし。ここにいるとアピールするように城を駆けた。
 目指すのは最奥、この混沌とした魔力の中心である。
 だが、敵もやすやすと通してくれるわけではない。
 瑞科は足元に違和感を感じる、すると壁から打ち出された矢が瑞科の顔面に迫る。
 それを瑞科は剣で切り伏せた。
「この程度では……」
 時間稼ぎにもならない、そう相手も感じたのか、次に行く手を阻んだのは。通路わきに並んでいた古びた甲冑である。
 彼らは手にハルバード、ランス。長剣を構え瑞科に殺到する。
 しかしそんな雑魚ども瑞科の敵ではない。
 直後瑞科の動きが変わった。
 姿勢を前に、屈みこむように剣撃を掻い潜り、その手に握る剣の石突で甲冑の腹部を強打。迫る槍を切り飛ばして、剣を投げ甲冑を壁に縫いとめた。
 次いで瑞科は壁を駆けて甲冑の後ろに回り込み足払いをして壁に突き刺さった剣を引き抜く。
 迫る大剣の一撃をその刃で軽々とはじきあげると無防備になった腹部に三撃。その刃を突き立てた。
 地面に寝そべる甲冑の心臓に刃を突き立て。
 そして振り返ると、廊下の向こうから迫るのは、羽もつ小鬼。ガーゴイルである。
 瑞科は優しく微笑むと壁を走った。
 飛来するガーゴイルを一体、また一体と切り伏せて、どんどん先へと進んでいく。
「眠りなさい、次は忌まわしい存在として生まれぬように祈りながら」
 やがて瑞科は大きなフロアにたどり着く。おそらく礼拝堂だろう。
 周囲に長椅子、そして紫を基調としたステンドグラスは悪魔を崇拝する魔導師に書き換わっている。
「おびき寄せられましたか……」
 瑞科はぽつりとつぶやいた。
 見つけてしまったからだ、天井の梁にぶら下がる無数のガーゴイルを。しかし。
「お相手いたしましょう」
 瑞科は汗を浮かべることもなく剣を構えた。
 そして、雨のように殺到するガーゴイルたち。
 それを瑞科は全て捌いて見せる。
 切り上げ切りおろし、翼を切り落として半歩下がり、地面に激突したガーゴイルを踏み潰して、直上に突き上げた剣は同時に三体の小悪魔三体を同時に切り裂いた。
 剣滴る紫の血。それを振って払い、新たな異音を聞いて礼拝堂入り口を見つめる。
 その奥に見えたのは鈍い鋼の輝き。
 甲冑を身に纏った使い魔が無数に列をなして殺到してきた。
「さすがに面倒ですわね」
 そう瑞科はガーゴイルの襲撃を拳で払うと、その剣を重たく下段で構えた。
 直後その剣の周りだけ景色が歪む。
 まるで陰炎が立ち上っているかのようだったがそれは違った。
 彼女の能力重力弾を高密度でチャージしているのだ。 
 そして。
「はぁ!」
 上空に向けて一閃。
 その重力の塊は天井にぶつかると。派手にそれを吹き飛ばした。




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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『白鳥・瑞科 』
『サキュバス(NPC)』