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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 妖精の仕返し ――

 今回、ファルス・ティレイラはとあるホテルの支配人から悪戯をする妖精を追い払って欲しいという依頼を受けていた。
「うーん、悪戯って言っても可愛いものばかりだから追い払うのもちょっと気が引けるなぁ……」
 宿泊客を少しおどかしたり、服を引っ張ったり、その程度の悪戯ばかりなのだけど、宿泊客達からは不気味に思われ、今回ホテルの支配人が依頼するに至ったようだ。
「あっ、いた!」
 ファルスが小さくため息をついた時、ひょっこりと悪戯妖精が顔を見せる。
「あのね、あんまり悪戯をしないで欲しいんだけど……」
 出来れば穏便に話を進めたいため、ファルスは出来るだけ優しく話しかける。
 けれど、妖精はファルスの提案を受け入れる様子はなく、おかしそうに笑いながら小学生がするようなスカートめくりをしてきた。
「きゃっ! も、もう! 人が大人しくお願いしてれば調子に乗って……!」
 妖精の態度にムッとしたらしく、ファルスは妖精を追いかけ始める。
「あっ、待ちなさい……!」
 宿泊客の男性に悪戯を仕掛けようとしたところを、ファルスが妖精を掴んで阻止をする。
 これを何度か繰り返すと、妖精も悪戯が出来ない、と判断したのか、ひどく怒ったような表情を見せてどこかへと立ち去ってしまった。

 ※※※

 しばらく妖精が悪戯をしないか見回っていたが、その様子もなく、ファルスはホテルの支配人に依頼完了の報告を行う。
(ちょっと可哀想かもしれないけど、ホテル側からすればやっぱり迷惑だもんね……)
 もし、次に会うことがあったら一緒に遊んであげようかな――……なんて考えながら、ファルスはホテルの支配人の好意で入らせてもらうことになった大浴場へと向かい始めた。

 ※※※

 日ごろの疲れを温泉で癒していると、ふと見慣れないシャボン玉がふわふわと現れ始めた。
 何事かと思っていると、先ほどの妖精がファルスをからかうようにふよふよと飛んでいる。
(……このシャボン玉もこの子の仕業ってことね)
 小さくため息をつき。ファルスは尻尾と翼を出して妖精を追いかけ始める。
 ファルスの飛ぶ速度は予想以上だったのか、妖精はシャボン玉を盾代わりに自分の前に出現させる――が、ファルスは突き破れると思い、そのまま避けることなくシャボン玉に向かっていく。
「えっ!?」
 けれど、シャボン玉はファルスを包んだまま、突き破ることを許さなかった。
「ちょっ、な、何これ……!」
 シャボン玉から出ようと、ファルスは強めに叩いてみるがボヨンと手が跳ね返るばかりで、シャボン玉から出ることも出来なくなってしまった。
 妖精はそんなファルスを満足気に見ながら、軽くシャボン玉を叩く。
「わっ、なっ……!?」
 妖精がシャボン玉を叩くと、僅かにシャボン玉のサイズが小さくなったのが分かる。
「わっ、わわっ……!」
 ぽんぽん、と妖精がシャボン玉を叩くたびにシャボン玉が小さくなり、ファルスはシャボン玉の中でぎゅうぎゅう詰めになってしまっている。
「ちょ、ちょっと、ここから出しなさいってば……!」
 けれど、妖精はファルスをシャボン玉から出すことはせず、窮屈そうな彼女の姿を見て、楽しそうに笑っている。
 そして、困っているファルスの姿を見て満足したのか、妖精はどこかへと消えてしまう。
「ええっ……! わ、私、このままで放置なの……!? ここから出してよぉ……!」
 大浴場でファルスの悲痛な叫びが響くけど、宿泊客も来ない時間帯を借りているため、誰の助けも来ない。
(うう、こういう姿を見られるのも恥ずかしいけど、このままこうしてるのもつらい……!)
 結局、遅いことを心配したホテル支配人に発見されるまで、ファルスはずっとこのままでいさせられることになったのだった……。


―― 登場人物 ――

3733/ファルス・ティレイラ/女性/15歳/配達屋さん(なんでも屋さん)

―――――――――――

ファルス・ティレイラ 様

こんにちは、いつもご発注頂き、ありがとうございます。
今回は妖精の仕返しにあってしまう、という内容でしたが
いかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていましたら幸いです。
それでは、今回も書かせて頂き、ありがとうございました!

また機会がありましたら宜しくお願い致します。

2016/12/28