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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


アイス少女編

 突如、海から現れた少女は浜辺にいる子供達を襲い血の味を覚えてしまう。
 怪異となった事、その経緯は全て忘却し血を欲するために近くの村へと向かったのであった。

 アリア・ジェラーティはアイスの行商中に気付いたら村に居た。
「……アイス、いる?」
 道行く村人達にアリアは声を掛ける。
 しかし、アリアの事が見えてないかの様に村人達は素通りし、ただ興味本意で子供達が家の影から覗いているだけだった。
 そんな時、背後に気配を感じたアリアは振り向くと、そこには眼球の無い少女が口から血を滴ながら立っていた。
「アイス、いる?」
 と、アリアが問うと少女は首を小さく横に振った。
「ち……」
 微かに言葉を発すると、少女は犬歯を剥き出しにするとアリアの首に噛みつこうとする。
「ち? そんなアイス、ない」
 アリアは首を小さく傾げた。
 流石に身の危険を感じたアリアは、少女の体に触れ氷に変えてしまう。
「あぉぉぉ……」
 氷から低い呻き声が漏れる。
「塩の匂い、海から来たのかな?」
 微かに氷越しでも嗅ぎとれる塩の香。
 そして、少女が立っていた場所には水溜まりが浜辺の出入り口から点々と続いていた。
 地面から消えつつある足跡を辿るアリア。
(手掛かりがあるかも……)
 アリアは、人気の無い浜辺を歩くき回ると、頭部の無い子供の遺体を発見した。
 喉を噛み千切られたと予測し『あの少女は危険』だと、アリアは瞬時に理解をした。
 そして、その手掛かりは海の中にあるというのも……。
「先ずは、この子供の遺体を村人に知らせて……この村で情報を得るしかないね」
 アリアは踵を返し、村へと戻ると子供の死体を知らせ古い言い伝え等が無いか聞き回る。
 聞いても、聞いても、村人達は知らないと首を横に振るばかりだった。
「おぉ……それなりゃ、依代家を尋ねるが良いじゃろう。なにせ、この村を作った家系じゃ」
 村で一番の年長者が、静かにアリアの問いに答えた。
「ありがとうございます。お礼にアイス、いる?」
「ありがとう。依代様のご加護を」
 去り行くアリアの背に、老婆は消え入りそうな声で言った。

「……依代家にようこそ、村の外から来た者よ」
 アリアを迎えたのは、自分と同じか少し下であろう位の歳の少女が黒い無地の着物を身に纏っていた。
「海から、来た……あの、少女に関して何か知っていますか?」
「特徴は?」
「見たことのない花の刺繍がされた白い着物、とても長い黒髪、目が無い位です」
 アリアが特徴を口にすると、目の前の少女は両手で口を押さえ体を震わせた。
「穢れを負いし巫女……いいえ、贄でしょう。数百年前に、この村が壊滅した時に身を捧げた少女がいる、と聞いております」
「どうすれば、良いのですか?」
 震える少女にアリアは平然とした口調で聞く。
「名を、呼ぶ。しかし、呼ぶ側にも条件があります。見届けた者と、双子の片割れとーー……」
「何処にいるのですか?」
 アリアの問いに少女はぎゅっと唇を噛み締めた。
「居ません。争いに巻き込まれ、皆……死んでしまい。その後は分家である、依代家が村を復興させたのです」
「どうしよう。一応、私が凍らせたのに解放する方法がない……本当にですか?」
「はい。その者を、現当主である……私が責任を持って封じ。大切に祭らせていただきます」
 依代家の当主はアリアを真っ直ぐな瞳で見つめた。
「イヤ」
「え、どうして?」
 アリアの言葉を聞いて当主は目を見開いた。
「渡さない。私が、持って帰る。コレクションにするの」
 アリアは無邪気な笑顔で言うと、そそくさと依代家を出て氷漬けの少女を台車に乗せた。
「貴女は、今日からーー……」
 アリアは、ぺたりと少女を覆う氷に手を添え慈しむかのように、優しく、優しく、撫でた。
 しかし、アリアは知らない。
 この少女は、贄になってない方の片割れだという事実を。

「だ、れ……」
 冷たい氷の中で少女は声を発する。
「貴女は、私……アリアのコレクション」
 と、無邪気な声色でアリアは言った。
「帰し、て……名前も……家も……かぞ……っ!」
「ダメ、私のコレクション」
 喉から声を絞り出す少女に対し、アリアは即答し家の中にあるコレクションに加えた。
 たとえ、怪奇であろうと元は人間だ。
 少女は、薄れていく視界、薄れていく意識、体は闇に呑まれ何も感じないまま永遠に、アリアのコレクションとして夢を見続ける。
 村人の業を全てを背負った怪異、解放される事もなくただ氷の中で眠る。
 アリア自身は、この怪異が解放されぬ限り同じ過ちを繰り返す歴史を知らないまま。
 あの、村ではまた同じ怪異が産声を上げたのは、また違うお話。

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【8537 / アリア・ジェラーティ / 女性 / 13 / アイス屋さん】 □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□ ■ 
        ライター通信          
この度は、私なんかの話に参加していただきありがとうございます。
如何だったでしょうか?
怪奇とは、本当に楽しいですね。
ベターではありますが、楽しんで頂けたら幸いです。
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