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<東京怪談ノベル(シングル)>


 スイーツ・ドリーム・ワールド

「わぁ〜凄い!!」
 ファルス・ティレイラは、空を飛びながら物珍しそうに周囲へと視線を巡らせていた。
 周囲にはチョコレートの噴水に、色んな種類のビスケットで出来た可愛らしい家が幾つも立ち並んでおり、数メートル先には砂糖菓子で出来た美しく綺麗な城があった。

 数時間前。
 ティレイラは偶然にも魔法の本を手に入れた。話に聞くところによると、これは本の中に入り込む事が出来るらしい……。
 まだそのような不思議な本にお目にかかった事がなかったティレイラは強い好奇心を抱き、本の頁をめくった。
 すると淡い金色の光に包まれ、気がつくとこのお菓子で出来た世界にいたのだった。

 ティレイラは砂糖菓子で出来た時計台の近くに降り立った。そして彼女はそれに近づき時計台の壁を人指し指でスッとなぞった。
 指先には茶色い粉が付着しており、それを舐めた。口の中に砂糖の甘さが一気に広がる。
 (甘い……やっぱりこれ砂糖菓子なんだ)
 時計台を見上げながらティレイラはこの街の全てがお菓子で出来ている事を改めて認識させられる。
 散策をしょうとその場から歩き出したその瞬間、ある視線に気づいた。視線を動かすと、そこには一人の可愛らしい妖精の姿があった。
 黄緑色の可愛らしいミニドレスを身に纏い、美しい金髪をポニーテールにした妖精だった。妖精はティレイラに微笑を向けると、彼女の方へと向かい、そして話し掛けた。
「こんにちは。お客様ね、久しぶりのお客様だから歓迎するわ。とびっきりのお菓子をあなたにご馳走したいから着いて来て」
 一方的にそう告げると、妖精は踵を返しその場からさっさと歩き出した。
「あっ……ちょっと……」
 ティレイラはそう言いながら一瞬だけ戸惑い、だが慌てて妖精の後を追いかける。
 妖精はチラリと視線を動かし、慌てて自分の後を追うティレイラを見、小さくほくそ笑んだ。


 たどり着いた先は透明で、綺麗な飴細工で出来た館だった。
 あまりの美しさに思わずティレイラは呆けてしまう。そんな彼女へと館の扉を開けながら妖精は彼女に中に入るように促す。
「こっちよ」
「あ、はい!」
 妖精の後に続くようにティレイラは室内に足を踏み入れた。
 室内も同じように飴細工で出来ている為、彼女が今歩いている廊下を全て含めて透明度が高く、以上なくらいの美しさを表していた。
 暫くしてある一つの部屋に通されたティレイラは妖精の指示で近くのソファへと腰を掛けた。そして妖精も同じように彼女の前の席に腰を掛ける。
 すると目の前のテーブルの上から淡い光と共に一瞬で紅茶とケーキが現れた。そのケーキはガトーショコラであり、そのケーキの上には生クリームと共にラズベリー、苺などが乗っていた。
一言で言ってしまえば可愛らしいケーキだった。しかも紅茶の上には小さな薔薇の形をした砂糖が浮いている。

 食べるのが勿体ない。
 そう思わせるには充分なものだった。

「わっ、可愛い!!」
 思わず感嘆な声を上げるティレイラ。それに対して妖精は微笑みを浮かべた。
「気に入ってくれて嬉しいわ。さぁ、召し上がれ」
 そう言う妖精の言葉にティレイラは彼女の顔を見、一つの疑問が頭を過った。

 どうしてこの妖精は自分の事を歓迎してくれるのだろうか?
 いくら久しぶりの客だと言っても普通ここまで歓迎されるものだろうか……?

 だが目の前の妖精は嬉しそうに笑っていた。
(考えてすぎだよね……)
 そう思い思考を立ちきりティレイラは、
「それでは、いただきます」
 と言いながら、ケーキを一口食べた。すると濃厚なチョコレートの味と共に甘酸っぱいラズベリーが合わさり、絶妙な味わいを醸し出していた。
「美味しい!」
 感嘆な声を上げ、上機嫌でティレイラはケーキを食べていった。


「ねぇ、見せたいものがあるの」
 ケーキを食べ終わったティレイラに妖精はそう告げ、別室へと案内をした。
 そこは一見パッと見、殺風景な部屋だった。辺りを見渡すティレイラの背後から妖精はいきなり魔法で作り出した水飴の膜をティレイラへとバシュ!! とした音と共に浴びせた。
「な、何!?」
 驚いたティレイラの翼や尻尾が膜に包まれると共に甘い香りを発しながら、次第に体の感覚が少しずつ失われていく。
 ティレイラは必死で膜から逃れようとするが、すでに固まった翼と尻尾の重さでバランスを崩してしまう。と、その拍子に一気に膜が彼女の全身を包み込む。
「誰か……誰か助けて!! いやぁぁぁ」
 膜の中で必死に抵抗しながらもティレイラは涙目で叫んだ。
 その時、小さなクスクスとした笑い声と共に楽しそうにティレイラの姿を眺める者がいた。それは自分を歓迎した妖精だった。
「良い格好ね、とても良く似合っているわ」
 妖精は楽しげに、彼女をからかうように言うと掌をティレイラに向け、再度水飴の膜を放った。
 再び膜を浴び、ティレイラの抵抗は空しく身体に甘い香りを漂わせながらティレイラは飴の塊化とした。それは美しく、可愛らしい飴細工の少女そのものだった。
 妖精はカチカチに固まった事を確認するかのようにティレイラに抱きつくと、物色をすると共に満足気に小さく呟く。
「大成功ね」

 悪戯好きの妖精はティレイラが散策をする姿を目にした瞬間、最初から彼女に目をつけていたのだった―――。

 魔法が溶けるまでこの少女はこの美しく、綺麗な姿のままだ。
 妖精はティレイラの頬に手を優しく当てると嬉しそうに微笑んだのだった。



―― 登場人物 ――

ファルス・ティレイラ

――――――――――

ファルス・ティレイラ様

こんにちは。せあらです。
この度はご指名の方を頂き本当に有り難うございました!
今回ティレイラ が悪戯好きの妖精に目をつけられて……と言うお話しをとの事でしたのでそのように書かせて頂きました。
少しでも楽しんで頂けましたら嬉しく思います。
そしてまたティレイラの物語を書かせて頂き本当に有難うございます。心から嬉しく思います。本当に有難うございました。

せあら