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ラミアの魔法使い
『松本・太一 (まつもと・たいち)』は、頭を抱えていた。
目の前には分厚いルールブック、そしてまっさらなキャラクターシート。
週末のセッションに向けてキャラクターを作る必要があったが何も思いつかない。
―― ルールブックを確認すればおのずとキャラクターも思いつくのではないか?
脳内でそんな声がする。
「いえ、ルールブックを読む時間はおそらく……」
ない、そもそも人が撲殺できるほどの厚さのルールブックである。熟読しようと思えば一週間はかかる。
「WW3ですか」
ワンダー・ワールド3。いわゆる剣と魔法のファンタジーで魔族と人間が争っている世界のお話だ。
その中で自分たちは冒険者となり、世界を旅しながら目的を果たしていくことになるというのがストーリーライン。
「しかし、キャラクターは全く思いつきません」
そんな太一を見かねて脳内の声が告げる。
――ではこちらで考えてやろう。
太一はその声に耳を傾けた。
* *
ラミアの魔法使いと呼ばれるものがいた。
その下半身は蛇で、上半身はうら若き女性。
その手に本と杖を携え地平線を眺める賢者。
彼女はかつて、人間の少女だった。
森と共に生きる小さな村の、村長の娘とした生まれた彼女は、たぐいまれなる知性と、命を愛する心を持っていた。
だから、当然と言えば当然なのだろう。
魔物の子を助けてしまう、そんな出来事が起こるのは時間の問題だったのだ。
彼女はラミアだった。
体に裂傷を負い、衰弱していたラミアを少女は助けた。
食べ物を運び、寒い夜は彼女を温め、ようやく話せるまでに回復したラミアは少女に礼を告げた。
少女は話せるようになるとラミアになぜ森で倒れていたのかを尋ねる。
ラミアはその言葉に淡々と答えた。
自分は魔物の国の王女で、人との争いを止めるためにきた。
少女は息をのんだ。
近いうちに戦争が起きる。だが自分の身柄が人間たちの側にあれば魔物側もうかつには手が出せない。だから自分を王国まで連れて行ってほしい。
そう、ラミアは告げた。
少女は考えさせてほしいと告げて、一晩寝ずの夜を過ごす。
その結果起きたのは、ラミアの姫の死だった。
追っ手に殺された姫。
その冷たくなった体を抱き留めて少女は涙を流した。
もう二人は友人と呼ぶにふさわしいくらいの間柄だったのだ。
そして彼女の気高い理想に感銘を受けていた。
だから昨日すぐに行動しなかった自分を恥じた。
だが、泣いてばかりもいられない、このままでは戦争が始まってしまう。
そう少女は考える。
幸いなことに死体は回収されなかった。
だから少女は決意した。
自分が姫になろう。
ラミアがもっていた本の中に人を魔物へと変える術が記されていた。
それを実行した少女は、姿をラミアと変え。
ラミアの王女が人間に囚われているという噂を全世界に流して王国へと下った。
それから彼女は魔物と人間の融和のために活動し続けている。
* *
――装備は当然ビキニアーマー。戦場を駆けながら美しい体で戦士たちを魅了し鼓舞する指揮官タイプでもある。
「なんでまた女性なんですね」
そう太一は溜息をつくと椅子に沈んだ。
「しかも、魔物……」
――サプリメントに魔物でもキャラクターが作れるように、データが記載されていたからね。
「だめとは言われてませんが……これは」
なかなかロールプレイが難しそうだと思った。
そもそも女性役をやるというだけで恥ずかしいのに、これは……
「まぁ、でも他にやりようはなさそうですね」
そうため息をついてステータスを振っていく太一。
あとは長年の感とノリでどうにかしよう、そう心に刻んで。
ただ、この時事故が起こり魔法使いとしてはかなり知力が低くなってしまったのだが、それはまぁ、TRPGあるあるということで。
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『松本・太一 (まつもと・たいち)』
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はOMCご注文いただいてありがとうございます。
鳴海です。
今回はTRPGということで、文字数の関係でさわり程度になってしまいますが。一つお話をかいてみました。
気に入っていただければ幸いです。
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