コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 限定クエスト・奉仕活動 ――

「…また、ですか」
 松本・太一は小さなため息をつきながら、画面に表示された文字を見つめる。
 NPC僧侶の装備を手に入れたことがクエスト発生のフラグだったのか、街中で色んなNPCから雑用を頼まれるようになってしまったのだ。
(そのたびに報酬を貰えるから、別にいいんですけどね……)
 雑用の内容も手紙を届けてほしい、店の手伝いをして欲しい、などの日常的な物ばかりで、あまり危険なことはしたくないと考えている松本にとってはそれなりに楽しいクエストだった。
(しかし、いつまでこれ頼まれるんでしょう……既に1週間は経過してる気もするんですけど)
 そう考えながら、先ほど年配の男性NPCから頼まれた自宅の雑草取りの仕事を黙々とこなす。
(ただ、気になるのは……)
 ログアウト中も雑用クエストをこなしていると処理されていることだ。
 普通ならログアウトすれば、勝手にキャラが動くことはない。
 けれど、このLOSTの場合――……というより、松本の場合が特殊と言うべきだろうか、彼のキャラはログアウト中もクエストをこなしていて、お金や経験値などが僅かに上がっている。
(ログインしていればクエストを受けるかどうかの表示がされますけど、ログアウト中は無作為に選んで、勝手にクエストをこなしている……という感じでしょうか)
 楽に報酬を入手できるのは嬉しいけれど、この状態がいつまで続くのだろうか、という不安もある。
「……ちょっと、ネットで調べてみますか」
 頼まれた雑用を終えた後、一度ログアウトをしてネットで情報を集めることにした。

※※※

 あれから数時間が経ち、パソコンの見すぎで目が痛くなった頃、休憩をする。
「NPC僧侶の装備って、あまり使っている人がいないんですかね……」
 どれだけ調べてみても、NPC僧侶の装備を使って、雑用クエストが多発している人の情報を得ることが出来なかった。
(何か情報が得られれば、と思ったんですけど……仕方ないですね)
 松本はそう考えながら、再びLOSTにログインする。
 すると僅か数時間の間に結構な数の雑用クエストをキャラがしていたらしく、経験値やお金が結構増えていた。
「あれ……? 新しいスキルが増えてる」
 スキル欄に見慣れない名前が表示されていて、よく見ると『危機回避』のスキルを新たに入手していたらしい。
「危機回避……。名前だけを見れば、結構お役立ちなスキルに見えるんですけど、実際はどうなんでしょうね」
 首を傾げながら、松本が呟くと街の中を走り回る馬車に気づいた。
(うわ、あれに当たればダメージとか受けそうですね)
 松本はキャラを操作して、馬車の走る所から逃げようとしたが、その間に馬車が近づいてくることの方が早かった。
「……っ」
 ダメージを受けるのも覚悟した時、画面状に『危機回避 発動』と文字が表示され、馬車が道路上に横転するのが見えた。
「……危機回避のおかげで、馬車とぶつからずに済んだ……ってことでしょうか?」
 そうとしか考えられず、結構嬉しいスキルを覚えたのかもしれないと松本は心が弾む。
(えぇと……多少の危険は回避することが出来るが、スキル以上の危機に直面した時は効果が発揮されない――ですか)
 スキル説明を読むと、少しの危機しか回避できないようだが、それでも松本にとっては嬉しいスキルであることに変わりはなかった。
(他にもログアウト中の雑用クエストで他のスキルの熟練度も上がってますね……)
 最近は仕事が忙しくなってきたところだったし、これは嬉しい誤算だった。
(ログアウト中の上昇にばかり任せるわけではないですけど、これで少しずつでも強くなっていければいいんですけどね)
 いつまで続くか分からないけれど、受けられる以上はこの『NPC僧侶の装備』の恩恵にあやかろうと考える松本なのだった。



―― 登場人物 ――

8504/松本・太一/48歳/男性/会社員・魔女

――――――――――

松本・太一 様

こんにちは、いつもご発注頂きありがとうございます!
今回は雑用クエスト・ログアウト中の熟練度上昇の話でしたが、
いかがだったでしょうか?
新しいスキルも覚えさせてしまいましたが、
だ、大丈夫だったでしょうか……?
気に入って頂ける内容に仕上がっていましたら幸いです。

それでは、今回も書かせて頂き、ありがとうございました!
また機会がありましたら、宜しくお願い致します!

2017/2/4