<あけましておめでとうパーティノベル・2005>


来たれ! 宴会の有志たち!

□ 大衆食堂『こめこめ』 幹部会
大衆食堂『こめこめ』はちょっぴり広めの店内に、可愛いウェイトレスさんやらかっこいいウェイターさんやらがお出迎えする庶民派な食堂である。
そんな『こめこめ』の大晦日。
従業員全てが帰った店内に、店長とオーナーの2人を目の前に佇む男がいた。
そう。彼こそが『こめこめ』宴会部長である志羽翔流、その人だ。
そんな彼は新春に備え、ある提言をオーナーと店長にしていた。

「・・・集まると思うのか?」
「頼む! 俺1人じゃ宴会芸にも限度があるのわかるでしょ?」
「でもぉ、新春の初挨拶でこけたらシャレにならないからね〜・・・」
オーナーと店長は一様に渋るが、翔流は必死に説得する。
「絶対! 成功させますから、このと〜り!! な!?」
「・・・翔流がそこまで言うのなら・・・」
「オーナーがOKなら、あたしが文句言う筋合いはないわね。あ。でも万が一って事もあるし・・・」
店長がにやりと笑う。
翔流は思わず息を呑んだ。

「新春開店イベントで宴会芸披露者募集の件、失敗したら翔流さんがガングロコギャルになるってことで・・・ど?」


□ 新春イベント 開幕

「新年明けましておめでとうございます! 大衆食堂『こめこめ』の大宴会! どちら様も用意はよろしいですかぁ!?」

いつもは予約席として常連のために空けてある奥座敷を、今日のこの日のために羽子板やミニ門松で正月らしく飾りつけて宴会場へと仕立て上げた。
従業員一同晴れ姿でお客を招き入れ、新春の喜びが一層高まる。
そして、その脇には一枚の立て看板が置いてある。

『宴会芸・飛び込み披露者募集! 有志よ集え! 志羽翔流まで』

「なにこれ?」
ロンギヌスが翔流の隣で人々を迎えいれつつ怪訝な顔で聞いた。
「俺のコギャル危機・・・ってヤツだ」
「はぁ?」
よくわからない受け答えをして、翔流は愛想良くお客を迎えいれた。
果たして・・・有志は現れるのか!?


□ 1番手 魔皇・志羽武流
「あー・・・お客さん全員入ったか? じゃ、始めますか!」
ポンポンッとマイクを叩いて、調子を見てから翔流は宣誓の声をあげた。
結局、最初の1人が現れないまま開幕を迎えてしまった。
だが、翔流にはアテがあった。

「長らく待たせたな! ただ今より『こめこめ』新春イベントを開幕するぜ!!」

沸きあがる歓声とヒューヒューとなる口笛。
これがなければ宴会は始まらない。
「ではトップバッターの・・・志羽武流!」

「えぇええぇええぇぇぇぇ!?!?」

素っ頓狂な声が会場のどこからともなくこだました。
「ちょちょちょちょ、ちょい待ち! わい、何も聞いてないし! ていうか、さっき有志募集ってなってたやん!」
突然名指しの指名を受け立ち上がった青年、武流は翔流に走りよると低い声で耳打ちした。
「まぁまぁ落ち着け。・・・内緒にしてたんだが、これは『こめこめ』最大の存亡の危機なんだ。おまえがまず皆に手本を見せてやることできっと有志は現れるはずだ。大丈夫。関西弁でちょちょっと面白いこと喋ればいいんだって。な?」
肩に腕を回し、グイッと首根っこを引っつかんだ翔流は武流にそう吹き込む。
もちろんそんなのは大嘘なのだが、そこは従兄弟同士の勝手知ったるなんとやら。
「わい、ここで遊んどる暇ないんやけど・・・」と武流が嫌々ながらも頭の中でネタを考えている姿で、翔流の作戦勝ちだという事が伺える。
いつの間にか、でかくて派手な蝶ネクタイを首に結び、いざ出陣する武流。
舞台の上に立ち、武流は見てしまった。

そこに広がる、自分に向けられた沢山の観客の期待に満ちた目を・・・。

「あ・・・」
そう言って固まった武流。
その顔がみるみるうちに青くなっていくのが翔流にもわかった。

「こ、この茶碗はあんたの? ちゃ〜わ(ちゃうわ)ん・・・」

そういって、武流はぶっ倒れた。
会場に吹きすさぶ寒風に、翔流は思わず武流に駆け寄って言った。
「武流! こんな寒いところで寝ちゃダメだろ! 死んじまうぞ!!」
その一言で凍り付いていた観客から笑い声が起こった。
「・・・よっしゃ、まずは上々の手ごたえ!」
『こめこめ』従業員に担架に乗せられ退場していく武流を背に、翔流がガッツポーズを取った。
「貴様は悪魔か」

舞台袖でロンギヌスがそう呟いていた・・・。


□ 2番手 逢間・風閂

「参加させてもらっていいか?」

武流の搬送に伴い、会場にはつまみと飲み物が配られた。
幕間の舞台袖、翔流が1人次の出し物について悩んでいる時、光は差した。

それは常連客の1人で逢魔の風閂である。

長身で寡黙の風閂が自らこのような宴会芸を披露したがるとは思えない。
「・・・本気?」
「もちろんだ。主がそれを望んでいる」
「なるほど。で、何が出来る?」
「・・・」
風閂の目が怒ったような困ったような、微妙な感情を表した。
その目が『何も出来ません』と語っていることに、翔流は困惑した。
翔流は少し考えて、足元にあった紙袋からなにやら引っ張り出した。
「これは俺が切羽詰った時用に用意した宴会マジックセットだ。だけど、これをおまえに委ねる。ボタン押すと花が飛び出たり、鳥が飛んだり、水が出たり・・・」
ごちゃごちゃとした説明をしつつ、ふと風閂を見ると厳しい表情で翔流の手元を見ている。
なんだか物凄い不安が翔流の心を駆け抜ける。
本当に任せてもいいのだろうか・・・?
だが、もはや次の人材がくる気配はない。
翔流は腹をくくった。
「これ以上説明の時間がねぇから、とりあえず色々やってみな。よし、行ってこい!」

どん! と背中を押し、風閂を舞台へと押し出す。
ひゅーひゅー、と口笛や歓声が上がる。
どうやら少し酒が入った人間も居るらしく、最初とは違う野次らしきものが混じっていた。
「・・・むむ・・・」
マジックセットを持ち、突っ立つ風閂は困惑しきっている。
ちらりと袖に居る翔流や他のスタッフに視線をやるが、助け舟はない。
「どうしろというんだ・・・」
そう呟いた風閂にさらに野次が飛ぶ。
「でかい兄ぃちゃん! ロケットパンチやってくれよ、ロケットパンチ!」
「ろ、ろけ???」
ぽかんとした顔をした風閂に、野次が段々とロケットパンチコールへと変わっていく。

『あそーれ、ロケットパンチ! ロケットパンチ! ロケットパンチ!!』

会場一丸となり、風閂にロケットパンチをコールする様はまさに異様。
そして、風閂は言った。

「『ろけっとぱんち』 とはなんだ?」


□ 乱闘寸前
会場は、まさに酔っ払いの巣窟だった。
いくら正月で無礼講とはいえ、少々行き過ぎていたかもしれない。
そして、その無礼講に乗じて引き金は引かれた。

「何だおまえ、そんなことも知らねーの? バッカじゃん!?」

その言葉に、寡黙で堅物な風閂がキレた。
「そこに直れ!! 叩き切ってくれる!!」
「ちょ、ちょっと待った風閂!! スタッフ! 風閂を取り押さえろ!!」
お客に掴みかかろうとした風閂を見て翔流は叫び、舞台へと駆け上がる。
だが風閂は素手でも強い。
押さえ込むのがやっとで、怒りを納めさせることなど到底無理なことのように思える。
「お、俺の立場が・・・!」
会場は一気に悪い雰囲気になっている。
一触即発とはまさにこのことであろう。
とにかく、なんとしてもここは風閂をとめる必要があるのだ。
・・・と。

パンパンパンパン!!!!!

派手な音がして、一瞬空気が止まった。
そして、聞きなれた声が会場に響いた。
「だらしないぞ貴様等! 特に翔流!」

「・・・え?」

振り向くとそこには、見慣れた顔に見慣れぬ格好の女が立っていた。
いや、それこそが翔流の逢魔・ロンギヌスであると翔流が気付くのに3秒ほどを要した。

なぜならいつもの女王様然りな服ではなく、その身に纏っていたのは『卍』を刺繍した軍服だったのだ!

「ロ・・・ロン?? その格好は・・・」
翔流がそう訊くと、ロンギヌスはフンッと鼻を鳴らした。
「翔流の事だからきっとこうなるだろうと、わざわざ用意しておいたのだ」
「なんで軍服なんだよ・・・。で、ハリセンもか?」
翔流がロンギヌスの手に収まっている超特大ハリセンを指差した。
先ほどの『パンパン!』という音はどうやらこのハリセンから繰り出された音らしい。
「宴会においてハリセンは必需品だ」
「いや、全然必需品じゃねぇって」
ロンギヌスが断言したので、翔流はすかさず突っ込んだ。
そのやり取りで、少し会場に笑いが起きた。
どうやら少し雰囲気がほぐれたようだ。
翔流がホッとため息をついたとき、ロンギヌスは押さえ込まれている風閂に近づき囁いた。
「貴様の主があちらでお待ちだ」
「な、なに!?」
風閂が慌ててロンギヌスが指差した方を見ると、ふくれっ面をした少女が怖い目で風閂を睨んでいた。

「はい、ご退場〜!」
にやりと笑ったロンギヌスの号令と共に、風閂はスタッフに両脇を固められたまま素直に舞台を下りたのであった・・・。


□ 4番手 ロン&翔流

「さて、風閂は退場したし、残るは翔流だな」

パンッ! といい音をさせてロンギヌスが翔流を振り返った。
「ちょ、ちょっと待て。俺は何もしてねぇじゃねぇか」
「何もしていないことが良いことじゃないだろ? むしろ、今回貴様が言い出したことなのに翔流自身は何もしていないというのは非常に悪いことだと思うが?」
ニコニコといつもではありえない笑顔を浮かべるロンギヌスに、翔流は焦りを隠せない。
「わかった。ここはひとつ冷静になろうじゃねぇか。つまりアレだな? おまえはこの俺に何か芸をやれと」
「物分りがいいじゃないか」
ウンウンと頷くロンギヌス。
だが、翔流は言葉を続けた。
「だけど、ロンだってなにもやってねぇだろ? だから、ここは1つ。俺は宴会部長としておまえに命じる」
「・・・なにを?」
怪訝な顔をしたロンギヌスに翔流はニヤッと笑った。

「今この場で宴会芸やってくれ」

「バカもの!!!」
すぱーーーーーん!!! といい音がこだまし、クリティカルヒットが翔流の頭に炸裂した!


□ かくて宴会は・・・

「・・・ど突き漫才やな」
巻き起こる笑い声を遠くに聞きながら、舞台袖の片隅に寝かされた武流がそう呟いた。

「最初からあの2人でやれば良かったのではないか・・・?」
主にこってりと説教されつつ、風閂はそう思った。

「む〜。翔流さんのコギャル化計画はお流れだね」
店長が会場をそっと覗き見て、ため息をついた。

舞台の上ではハリセンが炸裂しまくり、観客の笑う声が絶えることはない。
「また来ますね!」
帰り際のお客の顔は誰も彼もが楽しげで、送り出したスタッフたちも宴会が成功だったことを確信した。

「ささ。ちょっとだけど、皆の為に用意したから食べていってね♪」
宴会を無事に終えたスタッフたちに、店長が気を利かせて小さな宴を用意していた。
「では、本日の大宴会の功労者、志羽武流、風閂、ロンギヌス、そして志羽翔流宴会部長に拍手!」
店長がそう言って翔流たちを労い、酒の入ったグラスを翔流に渡した。
「じゃ、翔流宴会部長、乾杯の音頭よろしくね」
翔流はそれを受け取ると、高々とグラスを掲げた。


「今年も1年、よろしく頼むぜ!! かんぱ〜い!!」


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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛

w3a046maoh  / 志羽・翔流 / 男 / 22 / 魔皇・孤高の紫

w3a046ouma / ロンギヌス / 女 / 年齢 / 逢魔・ナイトノワール

w3b587maoh / 志羽・武流 / 男 / 22 / 魔皇・修羅の黄金

w3g785ouma / 風閂 / 男 / 30 / 逢魔・レプリカント


□■         ライター通信          ■□
志羽翔流様 ロンギヌス様 志羽武流様 風閂様

初めまして、とーいと申します。
この度はパーティーノベルのご依頼ありがとうございました。
アクスディアとは縁のないライターにもかかわらず、選んでいただけたこと本当に嬉しく思います。
初めての世界でしたので、調べたりないことや理解の足りない部分もあるかと思いますが少しでもお楽しみいただければ幸いです。
もし「ここは違う」という部分がありましたら、遠慮なくリテイクしてください。
それでは、今年一年がPC様・PL様にとって良い年でありますように。