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<あけましておめでとうパーティノベル・2005>
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百人一首を紅に染めて
○あけましておめでとうございます
日本という国で年を越したからには、この挨拶は誰であっても変わらない。この挨拶を交わして、新しい一年が始まる。
それは、魔皇や逢魔であっても不変なわけで。今日もそこらかしこでかわされる、『あけましておめでとうございます』。
そして、ここ魔皇のための神社である八代神社ではとりわけその挨拶が多く交わされていた。
いまだ、神と魔の戦いは終わりを見せない。状況は進展すれど、まだまだ先は見えてこない。
それでも、こうして皆新年を祝いたい気持ちだけは変わらず、多くの魔皇や逢魔が神社を参拝に来ていた。
チャリーン。
誰かが賽銭箱に小銭を投げ込む音が聞こえる。『魔』であろうとも、こういう『神事』は変わらない。
しかし、そこにいるべきはずの人物がいない。
そう、神社と言えば巫女さん、巫女さんといえば神社!これはもはや神も魔も何もない、世界の常識!
巫女さんのいない神社など、甲羅のない亀、油揚げのない稲荷寿司、一富士二鷹、なのに茄子がなくてなんか不吉なそんな感じ!
…こほん。兎に角、それだけ巫女さんは大事なのだ。新年早々、巫女さんを見たいがために神社にきているような輩もいるわけで、巫女さんの需要は非常に高い。
さて、この神社の巫女さんは何をしているのだろうか?
「おねぇちゃん、それは私が取ったんだよー!」
「いーえ、これは私がちゃんと先に取りました。そうですよね、御姉様?」
参拝客で賑わう境内、そこから少しだけ離れた母屋にて、熱戦が繰り広げられていた。巫女さん三人が座って何かをしている。
「ふむぅ…微妙じゃなぁ」
御姉様と呼ばれたのは、その母屋にいる者たちの中でも一際小柄な白神朔耶。朔耶は地面を見ながら少し唸る。
「えー私だよ、ねぇおねーちゃん!」
「私です」
先ほどから言い合いをしているのは逢魔のベルティア、そして水神操。一つの札をめぐって二人はずっとこの調子だ。
新年ということで、やはり正月らしい遊びがしたいと言い出したのはベルティアだった。丁度仕事の合間の休憩時間、ならばと始まったのが百人一首だった。
しかし、二人とも相当の実力を持つ魔皇と逢魔ということで、勝負は非常に白熱したものとなった。白熱しすぎて、三人はすっかり自分たちの仕事を忘れていた。
外では巫女さんがいないために御神籤も引けない、破魔矢も買えないと大混乱。しょうがないので、女装が得意な魔皇が巫女さんに扮して一人頑張っていたりする。
「操、朔耶、早く戻ってこーい!」
そんな彼女(彼?)の叫び声が境内には響き渡っていた。
でも、そんな叫び声は彼女たちには届かない届かないどうにもうこうにも聞こえない。
操とベルティアの言い合いはさらに熱さを増していた。
「むーおねぇちゃん、そんなに私に負けるのが嫌なわけ?」
「なんと言われようが、これは私が先にとったの」
「うー…そんなに頑固だとあの人に嫌われちゃうよー」
「…何であの人のことが関係あるのかしら、ティア?」
あの人とは、操の夫。その夫をめぐって、過去に一悶着あったりするわけで。二人はその頃からのライバルなのだ。
ギャーギャーピーピー、あまりのうるささに朔耶は一人頭を抱えた。
「相変わらずっすな、二人とも。師匠、大丈夫っすか?」
「…うるさいと思ってきてみればこれかい」
そんなある意味何時もどおりの二人を見ながら、柳原我斬が朔耶に声をかけてきた。その横で榊原信也が呆れていた。
「全く…本当によくもまぁあそこまで言い合いが出来るもんじゃ」
いまだに終わらぬそれを見ながら、朔耶は深く溜息をついた。
「俺は楽しいからいいと思うがな」
そんなことを言うのは、お茶を静かにと飲む御白空也。どうやら二人の言い合いをお茶請けにしているらしい。
「ある意味名物だからな。あれはここの」
「あそこまで思われるっていうのは男冥利につきるってもんだな」
何時の間にいたのか、風羽シンが呟き、朝倉秀治がうんうんと頷く。…何か微妙にずれているのはきっと気のせいではなく。
朔耶は、シンの呟きに苦笑を返すことしか出来ない。確かに、あの二人の対決は最早名物ものになってきているのは確かだ。
「…とりあえず、ご苦労さん」
そんな朔耶の様子に、シンも苦笑を浮かべた。
「だーかーらー!」
「私です」
それから数分、やはり終わる気配を見せない二人の言い争い。何時しか、それを眺めながら皆のんびりしはじめていた。
「百人一首かぁ…」
「あ、楽しそうだね☆」
「やるか?」
外での参拝を終え、母屋の中に入ってきた火宮ケンジと沢渡明がそれを見るなり反応を見せる。
「まぁ俺なら負けないけどな」
「えーあたしの方が勝つよー」
ラブラブイチャイチャ。それを見ながら朔耶の米神がピクピクと動く。二人は恋人同士なのだからそれも仕方がないが、朔耶にとってみれば、横では操とベルティアの言い争いもありかなり鬱陶しい。
「百人一首ですか…まぁ今やれば、私の一人勝ちですね」
自信たっぷりに言い切ったのはヘルバート・ヒューズレッド。何処からそんな自信が出てくるのか甚だ疑問である。だって、基本的にやられ役のポジションだし。
「ぐぅ…そ、そんなことはありません、百人一首ならば私の独壇場ですよ」
「…いや、誰に言っておるんじゃ?」
何処からか聞こえた(ような気がした)やられ役という言葉に、ヘルバートは過敏な反応を見せる。
「ほほー…誰にも負けないと?」
「えぇ、誰にだって負けません、私以外は全員負け犬となりはて…げっ」
自信たっぷりに言いかけて、振り向いたヘルバートは思わずビビる。その場にいた全員が自分のことを睨んでいたからだ。
どうもこの場にいたメンバーはかなり負けず嫌いも多いらしく、ヘルバートの発言はかなり気に入らないらしい。
「それじゃあその実力ってもんを見せてもらおうじゃないか、ん?」
シンがずずいっと前に出る。そこから先は予想せずともすぐに分かる。
「まぁ百人一首なんて要は」
「そういう偉そうな薀蓄たれるのに限って弱いんだよな」
「はっ、結局俺には勝てないってこった」
「…茶がうまい」
「ケンジー☆」
「うわぁ何やってんだ明!?」
ピクピクピクピク、ブッチン。
やたらと大きく何かが切れる音が響き、一瞬母屋に静寂が訪れた。
「あーーーーうるさーーーーい!!」
あまりのうるささに、遂に朔耶がキレる。
「そんなにやりたいんじゃったら貴様ら全員百人一首で決着つければよかろう!!そうすれば文句ないじゃろうがー!!」
『は、はい、すいません…』
血管が切れて血が噴出しそうな朔耶のキレっぷりに、思わず皆声を合わせて謝ってしまった。
* * *
『はい、こちらリポーターです…って、なんで私がこんなことを…』
数時間後、神社の境内には特設ステージが設けられていた。観客席には、なんだなんだと珍しいもの見たさに参拝客たちが集まっていた。
朔耶の提案で決まった百人一首大会のステージだった。えらく本格的なステージに、参加者たちは戸惑いを隠せない。
ちなみにリポーターは女装好きの魔皇、巫女さん姿がよく似合っている。
『私は女装好きじゃない!!』
まぁそんなのはさておき。こうなってしまった以上、朔耶はルールなどをこと細かく決定していた。
『ではルールを読み上げる』
ルールは以下の通り。
・勝者はもっとも多く下の句をとったもの、もしくは最後まで立っていたもの。
・競技範囲は裏山を含む神社全敷地内。(見えない位置でのダウン確認などのため、各人には小型カメラを設置する)
・一度でもダウンしたものは失格となる。
・上の句は、参加者全員の体に貼り付ける。貼り付けるのは一人五枚、貼り付ける箇所は自由。
・魔皇殻、DFの使用は自由。
・お手つきにはペナルティあり。なお、この際にダウンしても失格となる。
・二人が残り、かつ取った上の句が同数であればサドンデスを行う。
・百人一首自体は百人一首の大会用公式ルールに基づく。
・札の横取りは禁止。
・倒れたものが持っていた札は運営本部で回収、これの横取りも禁止。
・割と何でもあり。
・ルールはわし。
「…………。
ちょっとまて、最後のはなんだー!?」
一応黙って聞いていたが、あまりのおかしさに思わず信也が叫んだ。しかし朔耶は答えない、無視、完全無視。
「おい無視かい!」
「…やめとけ、朔耶は本気だ」
信也をシンが止める。さっきのキレっぷりから見て本気なのは間違いない。他の参加者は既に諦め気味だ。
そんな参加者をよそ目に、朔耶はさっさと開会式(?)を進めていく。
『本日は特別に上の句の読み手を呼んである、さぁいでよアイアンリーダー!』
どっかの司会者よろしく朔耶が叫ぶと、ステージの真ん中がパッカリと割れて、中からドライアイスのスモークが大量に!そしてそこから誰かが上がってくる。…いや、何時どうやってこんなステージを作ったんだっていうツッコミはなしの方向で。
驚く参加者の前に、少しずつ読み手の姿が現れ始める。
「…げふっ、ごふっ」
あ、スモークたきすぎでむせてる。むせながら登場したのは、赤い髪を結い上げ、そこにに金刺繍の黒い和服&眼鏡という超目立つ格好の女性だった。
『あーテステス、テステス。…こほん。
皆さんおまちかねー!!全世界一億五千万人(くらいいたら楽しいだろうなぁ)の魔皇逢魔の皆さんこんにちは!!
私が今日の読み手魅繰屋虹子、あー魅繰屋、魅繰屋虹子でございます、よろしくぅ!!』
『なおメディック(医療班)はわしが担当する。実況はわしと虹子じゃ、さぁ皆のもの、やりあえい!!』
ワァァァァァ!!
観客のボルテージも鰻上り、何故か分からないが物凄く盛り上がって、百人一首デスマッチが始まった!
○勝ち抜けデスマッチ!
「わ…私が何故…!?」
ヘルバートは一人焦っていた。
「くぅ…私の作戦は完璧だったはず…ちぃ!」
呟きながら何かに気付き、咄嗟に体をひねる。そのすぐ傍を閃光が駆け抜けていく、秀治のバスターライフルだ。
「何故…!」
何処で何を間違えた?
ヘルバートは一人焦っていた。
* * *
「では、この中から各々五枚ずつ選ぶがよい」
参加者10人の前に、テーブルの上に裏向きでおかれたかるた100枚があらわれた。
本来、公式大会では一対一が基本であり、各々が25枚ずつを選びそれをお互いに自陣として並べ取り合う。今回は人数が多いため、数を少なくして行われることになった。
『…一字決まりを引いたやつはマークしておくべきだな』
各人が選んでいく中、シンは冷静に考えていた。
一字決まりとは、文字通り一文字目で使われる文字がそれ一枚だけで、一文字目を聞けばすぐにわかる歌のことである。札の横取りが禁止であり、また乱戦必至のこのルールの場合、一枚の札が勝敗を決することが十分予想される。
『一字決まりは七枚、なら確立として出てくる一字決まりは三〜四枚…』
そして、それと同じことを操も考えていた。操としては、ベルティアと自分の夫を賭けて戦うわけだから何が何でも負けるわけにはいかない。必死になるのも当然である。
『…一字決まりは確実に狙われるだろうな、なら』
『自分に来たときは速やかに確保して、戦いのカードにするべきではないか』
信也と空也もやはり同じようなことを考えていた。
「各人行き渡ったな?では、各々自由に貼り付けて、お互いの札を確認するがよい。時間は15分じゃ」
朔耶が言うと同時に、各人自由に自分の体に札を貼り付けていく。
「ケンジーほら見て見てー♪」
「ぶっ、お前何処に貼ってんだよ!」
「えーいいじゃーん」
明は、その胸の前面に札を貼り付けていた。男が多いため、これは非常に効果的だと言える。胸にタッチングしてしまった男は…まぁどうなるかは想像に難くはない。
「……」
あ、操がちょっとうらやましそうに見てる。
「えーと、俺の札は…何々、むらさめのー…」
ケンジは、自分の札を見ながら何度も言い返し覚えていく。そして、それに激しく反応する集団がいた。
『『『『カモ発見!』』』』
先ほど、一字決まりのことを念頭において考えていた四人だった。
明らかにケンジは一字決まりのことを知っている様子はなく、故に一文字目で反応してくるということはまずないだろう、これはチャンスだ。
「んーと、あたしは…せをはやみー…」
『『『『もう一匹発見!』』』』
どうやら、一文字決まりの札はうまい具合に何も考えてなさそうな(失礼)連中に行き渡ったようだ。
「めぐりあえて…めぐりあい宇宙か、ふっ、俺にぴったりじゃないか」
「さびしさにー…んー…覚えるの面倒くさいー…」
今回でた一字決まりの数は5枚、それぞれケンジ、明、秀治、ベルティア、ヘルバートが持っている。
『フフフッ…一字決まりが一枚きましたか、これはチャンスですね…』
その頃、ヘルバートも碌でもないことを考えていた。
一字決まりを鍵と見る五人の目が、ハンターのごとく怪しく輝いていた。
ちなみに我斬は。
「ふむ…お、これは知ってる…確か蝉丸だったか」
一人マイペースだったり。
「ふっ…勝負だ、燃えてきたぜぃ!板前ッ!怪人ッッ!サバッキ〜〜ングッッッ!!」
…訂正。滅茶苦茶燃えております。
『終了ー!』
マイクから札確認の時間終了が告げられる。さぁ、いよいよ競技開始だ。
『正々堂々、思う存分やりあうがよい、では、開始!』
朔耶の掛け声と共に、各々思うように散っていった――――。
* * *
まず、中央ステージの上に残ったのはケンジ、明、秀治、空也、我斬、ヘルバートの六人。ステージから少しだけ離れたところに信也とシンが陣取り、テラーウイングと自らの翼で操とベルティアが上空へと舞い上がった。
其々の思惑が絡み合い、会場内は独特の緊張に包まれた。
『えーそれじゃ今から読み上げていくからなー。と、これから読む句は関係ないから、次の句からとっていくように』
公式ルールとして、まず句を読み上げる前に、百人一首とは関係ないものが一句読まれるのである。
『難波津に〜咲くやこの花冬ごもり〜今を春べと咲くやこの花〜…と。
さーじゃあ行くぞー!』
虹子の声に、一瞬会場が静まり返った。
『夢のかよひ路 人目よくらむ〜…』
まずは、下の句。そして、一秒を置いて上の句が読まれるのがルール。そして、下の句を読んでいる間は各人動いてはいけない。
『住の江の〜…』
『『『『『きた!!』』』』』
虹子が上の句を読んだ瞬間、瞳が光る輩五名。そして、それを持っているのは他でもない、そのうちの一人ヘルバートだった。
『ふふふっ…これをケンジに進呈してさっさと逃げるのです。こうすれば私には攻撃はこない!』
…姑息だった。何処までも姑息だった、さすがはやられ役ヘルバート、面目躍如といったところか?
「やられ役ではありません!…おっと、さぁケンジ、さっき読まれた句はこれですよ、どうぞ」
「…なんで俺に?」
「ふっ、私とケンジの仲じゃありませんか」
「でも…」
ヘルバートはそんなことを言いながら札を見せるが、今までの経験上こういうときは碌なことを考えていないとケンジは理解していた。当然勘繰るのは当たり前である。
しかし、あれこれ考えていても始まらないので、ケンジはとりあえず受け取ることにした。
「じゃ、じゃあ」
と、ケンジが腕を札に伸ばしたとき、ケンジの前を一つの閃光が通り過ぎていった。
「「…へ?」」
「ちっ、はずしたか」
間抜けな声を上げて二人が横を見ると、そこにはテヴァステイターを構える秀治の姿があった。
「ちょっ、どうして…」
「うるせぇ、さっきてめが俺たち全員に勝てるって言っただろうが。要するに喧嘩売ったってことだろ?」
「え、いや、そういう意味では…」
と、他のところからも殺気多数。ヘルバートが周りを見渡すと、ケンジと明以外全員が自分のことをじっと見ていた。
「…えーと…頑張って、ヘルさん」
札だけ受け取って、ケンジはさっさと退避していった。なんと薄情者なのか!
「いや、俺死にたくないし」
その判断は正解です。
そんなこんなしている間に、ヘルバートの元へと他の参加者がジリジリとにじり寄っていた。
「あの、皆さん?私は決して喧嘩を売ったわけでは…」
しかし、そんなことは誰も聞くはずもない。
「いいや、てめぇが売った、俺が買った!だからてめぇをボコる、徹底的にな!!」
秀治が言い放つと、他の皆さんもうんうんと頷き。どうやら、既に皆さん殺る気満々なようで。
「…ま、諦めろ」
冷静なはずの空也と信也もかなり殺気に満ち溢れているあたり、本気なのだろう。
「ってーことで…逝ってこいやー!」
「いやー!?」
こうして、一方的なヘルバートハンティングが始まった!
で、皆が集団でヘルバートを狩っている頃、朔耶と虹子は少々退屈していた。
『盛り上がっておるのー』
『そうだなー俺もあの中に入りたいなー。あ、そこの蜜柑とって』
実況席の二人はのんびりとコタツでお茶を飲む始末。
「ちょ、こんなのはいいんですかー!?」
『面白いから許可』
「ひどー!?」
ヘルバート必死の叫びも、朔耶の一言が全てぶち壊す。ってか鬼だあんた。
「秀治、やつの足を止めろ」
「任務了解!後は撃って撃って撃ちまくる!」
「いやぁぁぁぁ!!」
空也が言えば、同時に秀治の両手のデヴァステイターが火を噴く。それをヘルバートは必死に避けていく。普段は対立しているのに、こういうときだけコンビネーションが抜群なのが不思議だ。
「な、何故私がこんな…!」
「そりゃ、喧嘩を売る相手が悪かった、それだけのことだ!」
「ひぃ!」
何時の間にか目の前にいたシンの手から放たれたドラゴンスタッフの炎に、その身を少しだけ焼かれながらもさらにヘルバートは逃げ続ける。
しかし、そんな彼の運命もそこまでだった。避けて上体がそれているとき、その瞳は自分を狙う信也と我斬の銃口を捕らえていた。
「ちょ、まっまって…」
バキューン。勿論二人が止まるはずもなく、容赦なく撃たれました☆
「ついでにこれも〜☆」
そして、さらに追い討ちで明がマルチプルミサイルを放った――――。
『おーヘルバートが襤褸切れのように飛んでいくのー』
『これは新年早々縁起がいいな!』
朔耶と虹子は、ポーンと飛んでいくヘルバートを見ながら楽しそうに笑っていた。何処までも鬼のような実況だ。
『えー…ヘルバート失格、と』
何処までもいいところなく、ヘルバートリタイア!
「…明、お前容赦ないな」
「えへへへ☆」
逆らわないほうがいいかなぁ…としみじみ思う彼氏ケンジだった。
* * *
「…すっきりしたな」
「うんうん」
各人がヘルバートを吹っ飛ばした余韻に浸っている頃、実況が動き始めた。
『それじゃ次の句詠むからなー』
「え、ち、ちょっとまっ」
勿論そんな言葉を虹子が聞くはずもなく。
『人づてならでー言ふよしもがなー』
つらつらと読まれた下の句に皆あせる、特にヘルバート攻撃組。
『いまはただー思ひ絶えなむとばかりをー』
ちなみにこれ、実は空札だったりする。あくまで競技に使用されるのは50枚であり、残り半分は空札として読み上げられるのだ。
しかし、余裕のない人間には中々それが分からなかったりする。特に、あまり考えない(失礼)人間は。
「おい秀治」
「あぁ、なんだ?」
必死にその上の句を探す秀治に、空也は話しかけた。
「実はな、さっきの上の句は俺の背中にある」
その一言に秀治の瞳の色が変わった。
「取りたいなら取ってもいいぞ、取れたら、だがな」
誘うような空也の言葉。勿論それに黙っている秀治ではない。
「言ったな…?後悔すんなよ!」
「あぁしないさ」
怒鳴りながら秀治が走り出すと、空也はその懐から黒い手帳を取り出した。それを見て秀治の動きがぴたっと止まる。
「そ、それは…」
「お前ならこれが何か分かるよな?」
ニヤリと空也は笑った。
『おー空也選手が何か手帳のようなものを取り出しました!朔耶、あれはなんだ?』
『んー確か秀治の悪行(とかいて女関係と読む)がつらつらと書かれた手帳…じゃったかな?』
『なるほど、そりゃ大変だ』
実況席はあくまで和やかに進んでいた。
しかし、秀治にとっては一大事である、まさかこんな大舞台でそれを出されるとは思ってもみなかったのだから。
ちなみにこの中継、全世界一億五千万(希望)の魔皇・逢魔にネットワークを通じて配信されているので、ここでバレようものならもう秀治は生きていけないかもしれないのだ!
「ぐっ…そ、それが何だってんだ!大体それが本当かどうか、ここにいるやつらには分からねぇだろ!」
それを聞いた空也の顔には、さらに深い笑みが浮かぶ。そして、見下したような瞳で言い放った。
「……ふっ……お前の言い訳とこの手帳、どちらが信憑性高いかなど分かっているだろ?」
相手の弱みを握るという、絶対的有利。既に勝負は最初から見えていた。
「…では順番に読み上げていってやろうか?四月十日…」
「わぁぁぁぁやめぇ!?」
「はいそこ」
「ひでぶっ!?」
読み上げるのを聞いて一瞬怯んだ秀治に、空也は問答無用で撃破弾を叩き込んだ。…いや、あんた鬼でしょ?
フラフラと秀治が立ち上がると、再び空也はページをめくる。
「さて次は…六月七日…」
「あぁぁだからぁ!!」
「もう一発」
「うわらばっ!?」
そして、先ほどと同じ光景が。
それから数度、それが続く。最早秀治は空也の玩具と化していた。
「まだだ…まだ終わらんよ…!」
しかし秀治はしつこく立ち上がってきていた。それを見た空也は、うんざりしたように少し息を吐く。
「よく立ち上がるな…まぁいい、手帳と札をやろう」
「や…やったぜ…俺のぉ…勝ちだ…!」
言われるがままに、フラフラとその手を伸ばし札に触れる。その瞬間…。
『はい、秀治お手つきじゃな。罰ゲーム!!』
『だーっはっはっは!お手つき・オア・ダイ!』
まってましたとばかりに実況の二人の顔が途端に笑顔になった!
「えぇぇ、これさっきの札だって…」
「…よく見ろ、全く関係ない札だ」
空也に言われるままに札を見て、秀治は固まった。
『さー皆おまちかねの罰ゲームじゃ、虹子用意はよいか?』
『まかせんかーい!!ポチッとなー♪』
虹子が何かのボタンを押すと、秀治の上に金盥が現れた!ちなみに持っているのは先ほど吹っ飛ばされたヘルバートで、テラーウイングで飛んでいる。
「なんで私がこんなことを…」
ヘルバートの愚痴など誰も聞くはずもなかった。
『では逝ってみよう、金盥!!』
「はいはい…」
虹子の合図とともに秀治に向かって金盥が落とされた――――。
「くっ…魔皇の俺にそんなものなんtぷべっ!?」
秀治が何か言おうとしたが、金盥が直撃してよくは聞こえなかった。
ちなみにこの金盥、魔皇や逢魔にしてみればなんら人畜無害な感じがするが、実は逢魔の工房作であり、その道のプロが作った一品である。故に魔皇に対しても問答無用の破壊力を持つ!…その道のプロにはツッコミなしの方向で。
ドサッ…。
その一撃で秀治はダウン。そして、そんな秀治を見下ろしながら空也は言った。
「…あぁ、この手帳はやるが、コピーだからな」
何処までも鬼だ、この人。
「ん…? 俺の、涙か…」
多分、それはあなたの心からの涙だと思います。
「…そろそろ潮時か。棄権する」
元々秀治をいじる目的で参加していた空也にとって、彼が失格になった今特に続ける意味はなかった。
『えー…秀治に空也、失格と』
『やっと三人失格かぁ。もっと失格しないかな?』
しないかなってあんた。
秀治に空也、共にリタイア!
「…やっぱり、朔耶御姉様と虹子さんは要注意ね」
それまでずっと上空から眺めていた操がボソッと呟いた。
さて、その朔耶だが、今日は実況であるが、同時にメディックでもある。母屋に作られた救急室に、先ほどの秀治が運ばれて中に入れられていった。
『…ま、まて、朔耶お前何する気だ!?』
中から秀治の切羽詰った声が聞こえる。
『何?勿論手当てに決まっておろうが』
『う、嘘だ、や、やめろぉぉぉぉ!!』
中では一体何が行われているのだろうか?秀治の悲鳴が鳴り響き、そして何も聞こえなくなった。
これを見ていた参加者一同、あそこにだけは絶対に行くまいと心に硬く決意するのだった。
「さようなら、秀治…あなたのことは忘れません」
ちなみに、ヘルバートも朔耶の手当てを受けていたりする。顔面を真っ青にしながら秀治を見送る(?)その姿からは、何かに対する恐怖しか感じられなかった。
* * *
そんなこんなで、大会はある意味順調に(?)進んでいった。
「…へっ、アラストルで身につけたゲリラ戦術…たっぷりてめぇ等に味あわせてやるぜ!」
現在トップを快走するのはシンだった。元対ゲブラー特殊部隊『アラストル』の隊員である彼の実力は、全参加者中でも抜きん出ていた。
孤高の紫ならぬ『孤高の黄金』とまで称される彼のスピードに、中々ついていけるものはいない。ブレードローラーで強化されたその機動性はまさに疾風怒濤!…でも、持ってる隊員章が九州のギャング『荒奪』のものだったりするのはご愛嬌。
しかし、そのシンをほうっておかない男が一人いた。一人彼についていけるスピードの持ち主。
「シン殿、今日こそは孤高の紫としてあんたを越える!」
「我斬、やっぱりてめぇか!」
超スピードで二人が交わる。普段から孤高の黄金と孤高の紫としてライバル関係にある二人…いや、勝手に我斬が思ってるだけ?
まぁそれは兎も角、この二人が本気になったら他の参加者など置いてけぼりの超スピードで勝負が進む。
「ちぃ…何処にいった…?」
二人の主戦場は裏山へと移行していた。最早百人一首などお構いなし、本気モードである。
「…!そこかぁ!!」
何か動く気配を我斬が察し、その瞬間手にあるデヴァステイターが火を噴いた。
「はっ、やるじゃないか!」
森の中を駆け抜けながら、その閃光をすんでのところでシンは避ける。我斬に生えた二本の触覚を見ながら。
我斬はデヴァステイターを撃ちながら、シンを森の奥へと誘導していく。目指すはさらに木々が覆い茂る森の奥。
「かかったなシン殿!」
シンの目前に木が迫る。シンのそのスピードでは、木々への直撃は避けられない。そこへ我斬のデヴァステイターが放たれる!
「甘ぇんだよ!」
木に直撃する寸前、シンは身を捻ってシューティングクローを他の木へと巻きつける。そして、それを利用して一気に方向転換をやってのけた。
「な…!ならこれはどうだ!」
「ちぃぃ!!」
二人の声と共に、凍てつくような光を放つ魔弾がお互いの手から放たれた――――。
『ん?…カメラが映らなくなったのう』
『故障じゃないのか?』
のーんびりと二人の様子をモニターで観察していた朔耶たちが、カメラの異常に気付く。
映らなくなったのも当たり前、お互いの凍浸弾が直撃してしまったのだ。
『…ま、しょうがないかの、放置するか。ではさっさと次じゃー』
『それじゃ読み上げるぞー』
見えなくなったらはいそれまで。二人とも放置決定!
* * *
さて、今までほとんど目だっていない人物がいたのを覚えているだろうか?
そう、それは。
「…なんで俺にカメラが?」
直感の白、榊原信也その人である。
いやいや、影が薄い、老け顔ということなかれ。これは立派な彼の作戦なのだ。
『何気に信也、老け顔の癖に頑張っておるのう』
『うん、今とった札は五枚か?』
「えぇいそこ、老け顔老け顔ってうるさい!」
ちょっと気にしていることをズバズバと言われ信也が叫ぶ。まぁ年不相応な落ち着き具合も相まってしまっているのだから、言われるのもしょうがないだろう。
そんなことはさておき、彼の作戦はこうだ。
兎に角逃げる、逃げる、逃げる。何はなくとも逃げる、一が逃げるで二が逃げる、三四がなくて五に逃げる。そして、こっそりとロケットガントレットを飛ばしては札をかっさらっていくのだ。
実にこれが効率がいい。
逃げ回るから自分の札は中々取られないし、操とベルティア、シンと我斬、明とケンジといった具合に対立図が出来上がっているため、漁夫の利を得ることは意外に簡単だった。
しかーし、世の中そんなに甘くはない。そう、甘くはなかった。
『なげけとてー月やは物をー思はする〜…』
虹子が次の句を読み上げる。と、その瞬間、皆の視線がいっせいに信也へと向けられた。
『…な、なんか身の危険を感じるのは気のせいかな…』
何か、嫌な予感がする。信也は逃げ出そうと、こっそりと歩き始めた。
「どっこいっくのっかな〜?」
「信也さん…何時までも逃げられないぜ?」
その前に明が、そして背後にケンジが立つ。
「な、何でお前ら…ちっ」
二人に挟まれ、しょうがないく空へ逃げようかとテラーウイングを広げた瞬間、その上空から光が降り注いだ。
「どわぁぁ!?」
すんでのところでそれを避ける。信也が見上げれば、操がそこで魔鏡を構えていた。ついでにその隣ではベルティアが逢魔の短剣を構えていたりする。
「ちょ…なんでいきなり俺を?」
聞かれ、一瞬ケンジが戸惑い、そして朔耶を指差した。そこには…。
『逃げすぎで面白くないから、信也を殺れ』
『逃げ、かっこ悪い』
などと書かれたカンペが掲げられていたりする。
「ちょーーーーーっとまたんかーーーーい!?」
しかし、やはり信也の叫びなど無視、完全無視。『ルールはわし』という言葉が、重く突き刺さる。
「まぁそういうわけだから☆」
「朔耶さんには逆らえねぇんだ」
「朔耶御姉様直々の命令だから…」
「おねーちゃんのために逝ってね♪」
そして。ミサイルで飛んで、ランスが刺さって、魔力の弾にボンボンとはじかれて、黒い旋風で絡められて、また全員から攻撃喰らって、「地獄のギロチン!」とか「螺旋アロー!」とか聞こえて、悲しくたって男の子だもん。
後に残ったのは、襤褸切れのような信也だった。
榊原信也リタイア!!
そして、ダウンの後は恒例。
『や…やめ…ぎゃあぁぁぁぁぁぁ…』
救急室から悲鳴が響き、そして何も聞こえなくなった。
○長き戦いの終わるとき
こうして、残りは操、ベルティア、ケンジ、明の四人となった。
しばらくはそのまま空札続きで膠着状態が続いたが、遂に動きを見せた。
『さびしさにー宿を立ち出でてながむれば〜…』
虹子の読み上げた句、それがベルティアの持っていた一字決まりだったのだ。それについては、最初から操がマークしていた。聞いた瞬間その身体が動く。
しかし、しかしである。ただで取られないのがベルティアだった。操が動いた瞬間、自分の体に札があるのだなと直感的に理解し、色々と(いらないことを)考え始めた。
「おねぇちゃん、欲しいのはこれだよね?」
ベルティアが自分の札を挑発するように操に見せ付けた。
「…気付いてたの」
「もっちろん♪でも渡さないよーあの人との甘い一夜がまってるんだもん」
「そんなことはさせないわ!」
石の翼で高度を上げたベルティアを、操が追いかける。ナイトノワールの石の翼と、魔皇のテラーウイングでは元々速度差がありすぎ、すぐさま追いついた。
「さぁ、逃げ場はないわよ、ティア」
操がじりじりとベルティアとの距離を詰める。しかし、追い詰められたはずのベルティアは、余裕の笑みを崩さなかった。
「やってみればー?」
「言ったわね…」
あくまで挑発的なベルティアに、冷静なはずの操にも少し頭に血が上る。
こんなものさっさと取ってしまえばお終いだと操は動いた。その瞬間、
「これなーんだ?」
「あ゛」
ベルティアが一枚の写真を取り出し、それを見た瞬間操が固まった。
『あれはなんだー?カメラ、ズームイン!』
虹子の合図と共に、カメラがズームアップしていく。画面に映し出されたそれは…。
「だめだめだめだめだめーーーー!!」
見えた瞬間、操が必死でその写真を隠してしまった。
『朔耶、あの写真は?』
『…操の名誉のために伏せておくよ』
実は、あの写真操のコスプレ写真を写したある意味超レアな一品である。あまりに恥ずかしい思い出のために、操にはクリティカル級のダメージがいくのだ!
「隙あり☆」
「…し、しまっ!?」
操が動揺した瞬間、ベルティアは既に黒き旋風を使用しその体を絡め取っていた。
「これで終わりだよ♪」
そしてその操の体を掴み、
「チェンマイ」
それ以降は危険なのでカットさせていただきます。
まぁ兎に角、ムエタイの技のようなものをかけられ、操はおち…ようというところで、ベルティアの裾をガシッと掴んだ。
「おちるなら一緒よ!」
「いやー!」
そして、仲良く二人して落ちていくのであった。
「…へ?」
で、そんな二人の真下にはケンジと明がいた。
「あー二人が落ちてくるよー」
「そうだなぁ…ってそうじゃなくて、明、危ない!」
落ちてくる二人にはかなりの速度がついており、ケンジは咄嗟に明を突き飛ばした。
ズドーン☆
盛大にケンジの元へ二人は落ちていった。
「いつつつ…」
しかし、操とベルティアはもつれるようにダウンしたが、ケンジはギリギリのところで倒れずに立っていた。しかし、それが彼の悲劇へとつながる。
ムニ。ムニムニ。
はい、まさにお約束。
「何処触ってるんですかー!!」
「エッチー!!」
「いや、今のは不可抗力でへぶっ!?」
ケンジの言い分など聞いてもらえるはずもなく、操とベルティアに問答無用で殴り飛ばされた。
さらに、
「もーケンジの浮気ものー♪」
「だ、だから違うって言ってんだろ、って痛い痛い死ぬぅ!?」
明にランスで突き刺され、ガントレットで殴られ、ミサイルで吹っ飛ばされた。
『…えーケンジ、さっき落ちてきたのを受けた際に札に手が触れておる、よってお手つきじゃ』
モニターを見ながら朔耶が言った。それを聞いた明に吹っ飛ばされながらケンジは、
『あぁ…刻が見える…もうなんでもいいや』
などと諦めていた。
『ふふふっ…きた、やっときた!お手つきデース!!』
そして、これに喜び勇んでいたのが虹子だった。最初の秀治以来、全くお手つきをしたものがいなかったのだ。
『では逝ってみよう、何処かへ!!』
虹子が合図をすれば、リタイアした秀治、ヘルバート、信也が何か色々と用意し始めた。
用意されたのは、やたら凶暴な犬やら濛々と煙の上がる湯船やらダーツ(逢魔の工房製)やらetcetc…。
「茶が美味い…」
これから逝くケンジをお茶請けに、空也がしみじみと呟いた。
それから、ケンジを見たものはいない…。(嘘)
操、ベルティア、ケンジ、皆まとめてリタイア!!
『おお…なんと予想外…げふっ、いや、なんでもない。優勝者は、最後まで立っていた明じゃ!』
「ほえ?」
こうして、ほとんど何もしてないものが優勝するというオチがついて、大会は幕を閉じた。
* * *
「えへへ、なんか知らないけど優勝しちゃった☆」
副賞の新年豪華料理セットやら何やらを受け取り、明は能天気に笑った。
「よかったな…俺、思いっきりとばっちりうけまくったけど」
トホホ…とケンジは少し泣きたい気分だった。
「まぁ面白かったからいいんじゃね?」
「そうだな。お前の悪行もネットワークに流れたことだし」
空也の一言に、秀治はがっくりと肩を落とした。それを見て、周りにいた参加者全員が笑った。
「今日は目一杯楽しませてもらった、また次があるときはよろしく」
「「「「「「「「絶対次はありませんから」」」」」」」」
確かにあんたはあぁだったから楽しかっただろうよ、と内心思いながら全員虹子に即答していたり。
「…そう言えば、何か忘れているような?」
「え、おねぇちゃんどうかした?」
何かを考える操に、ベルティアが聞いた。
「何か忘れてる気がして…」
「あぁ、俺も思った。何か忘れてるような…」
「…何を忘れているんでしょうねぇ?」
同じく考え込む信也とヘルバート。
「ほれほれ、まだ正月は終わっておらんぞー。忙しいんじゃから片づけを手伝えい」
「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」
そんな彼らを、朔耶の一声が動かした。
「はぁはぁ…やるじゃねぇか…」
「…シン殿こそ…」
「きやがれぇぇ!」
「うおお、サバキ〜ングッ!!…ストラ〜〜〜ッシュ!!!」
その頃、すっかり忘れ去られてしまったシンと我斬は、大会が終わったことなど全く知らずに未だに戦い続けていた。
既に日は落ち、森の中には鬱蒼とした闇が舞い降りていた。
しかし、それこそ好機と二人はまた距離をとり、お互いの動きを読みあう。もう、戦いは終わっているのに…。
数日後、彼らが変わり果てた姿で戻ってきたのは言うまでもない…そう、戦いなど終わったはずなのにずっと一人で戦い続けた彼の人のように。
<END>
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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛゜
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【w3e749/白神・朔耶/女性/9歳/魔皇・修羅の黄金】
【w3b295/水神・操/女性/19歳/魔皇・残酷の黒】
【w3b888/柳原・我斬/男性/20歳/魔皇・孤高の紫】
【w3c350/風羽・シン/男性/26歳/魔皇・修羅の黄金】
【w3d139/ベルティア/女性/16歳/逢魔・ナイトノワール】
【w3d861/御白・空也/男性/20歳/魔皇・孤高の紫】
【w3f592/魅繰屋・虹子/女性/27歳/魔皇・激情の紅】
【w3h058/朝倉・秀治/男性/15歳/魔皇・孤高の紫】
【w3h739/火宮・ケンジ/男性/21歳/魔皇・激情の紅】
【w3h956/榊原・信也/男性/19歳/魔皇・直感の白】
【w3j344/沢渡・明/女性/19歳/魔皇・修羅の黄金】
【w3j414/ヘルバート・ヒューズレッド/20歳/魔皇・孤高の紫】
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■ ライター通信 ■
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というわけで、『百人一首を紅に染めて』お送りします。
予定よりも遅れてしまい本当にすいません!(土下座
えー今回は楽しく馬鹿な戦いということで、色々とはっちゃけてもらっています、キャラのイメージと違う!って言う人は…そういうことだからと諦めて(ぇぇ
何にしても、書いていてとても楽しかったです。
楽しんでもらえると幸いです。それではまた、お会いすることがありましたらよろしくお願いします。
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