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<バレンタイン・恋人達の物語2005>
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Sweet Dream 〜はっぴぃ ばれんたいん?〜
〜レディと愉快な僕の物語〜
2月14日……乙女の命運をかけた1大イベント。世の恋する乙女は、思いを寄せる相手へ気持ちを伝えるために様々な努力をするのだという……
そして、それは思いを受け止める男性にとっても、明暗を分ける日でもあった……
「お〜っほっほっほっほ♪用意は万全ですわ」
ここにも、なんだか分からないままに張り切る謎の美女(?)が開け放した、窓の外に向かって高笑いをしていた。
足首まである大正ロマンの香り漂う、シックな女中服とでもいうのであろうか。ワインレッドのビロードのロングのエプロンドレスを着たその姿は、店の主に酷似していた。
「朔夜ちゃん。かっわいぃ〜♪」
「チカちゃん。今のわたくしはクレセント。レディ・クレセントとお呼びになって」
よろしくて?こちらも御そろいのデザイン、但しドレスの丈が太ももの中ほどまでのミニのメイド服を着た少女のエメラルドの様な、その大きな瞳を覗き込みウィンクした。
ハートが飛んだように見えたのは、きっと気のせいだろう。
「うん分かった〜。今日の朔夜ちゃんはクレセントちゃんなんだね」
はーいと、良いお返事を返して千影は、長身の美女の腰に抱きついた。
「チカ様まずは手を洗ってくださいね」
二人と同じデザインのエプロンドレスを着た、黄昏堂看板娘のドレスの丈は丁度膝丈。
「ルーちゃんもかわいぃね♪」
御そろいのメイド服が嬉しいのか、似合う?と、くるくると回ってドレスの裾をとドレスと同じ色のリボンで結んだふわふわの髪を翻す。
「とても、良くお似合いですわ」
そんな、チカの様子にルゥが微笑んだ。
「では、いざケーキ造りにかかりますわ!」
お〜っほっほっほ高笑いする笑い声も軽やかに。魅惑のレディ、本日も絶好調。
『みんな寂しい奴らばっかりだからな、せめて夢ぐらいは見せてやらないと』
というのが、悪友達に向けた準備を始める前の本人の言葉だが、はっきりいって悪夢以外の何物でもない。
何はともあれバレンタインを間近に控え。
黄昏堂の奥に設けられたキッチンは、数々の報告書に麗しのや魅惑のといった形容詞で度々描写されていた、傾国のレディの独壇場になりつつあった。
「おぉーーー!」
助手の千影も可愛らしく拳を振り上げて、やる気まんまんだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「硬いですから、手を切らないように気をつけて下さいね」
「うん、わかった〜」
ルゥに指南され、千影がいたチョコを刻んでいる様子を朔夜が丁寧に小麦粉をふるいに書けながら、微笑ませしそうに見ている。
「チカちゃんだったら、ピーラーの方がいいかもしれませんわ」
以外にチョコレートを刻む作業は力が要るのだ。
「あ、そうですわね」
気配り上手のレディのアドバイスに、はたっとルゥが気付き大きな包丁を握る千影に、良く研いだ皮むきで使う銀色のピーラーを手渡した。
「こちらも、危ないですから気をつけて下さいね」
「はーい」
二人の先生の教えを聞きながら千影も、何時に無く真剣だ。
「出来上がったら、万輝ちゃんに食べてもらうの♪」
「それはいいですわね、万ちゃんは甘過ぎるものが苦手だから、そちらの黒い方のチョコレートを多めに入れるとよいですわ」
えへへ〜、とあげた後の万輝の反応を思い。楽しそうな千影に朔夜がアドバイスを送る。
「これ〜?」
シンの鱗のように黒々を光るチョコレートに、目を輝かせる。
「チカ味見してみた〜い」
「多分チカ様のお好きなお味じゃ、ないと思いますけど…」
カカオ100%のビターチョコのかけらを口に入れてもらった千影がなんともいえない悲しそうな顔をした。
「これ、チョコじゃないよぉ〜」
ルゥの予想通り。甘くないチョコレートは、千影の口に合わなかったようだ。
「これが本当のチョコレートなんですよ、普通お店に並んでいるものは砂糖やミルクを入れて食べやすくしてあるんですの」
「甘くないチョコはチョコじゃないのー」
ぷぅ、と頬を膨らませる千影の様子に、二人の教師は微笑み合う。
「これに、お砂糖を入れて好きな甘さに調節するんですよ」
「甘くなる?」
余程甘くないチョコレートが御気に召さなかったのか、千影は上目遣いにルゥを見上げる。
「はい、チカ様のお好きな甘さにしましょうね」
「やったー」
甘さを抑えた、チョコレートケーキを作る予定は劇甘なケーキに変更されつつあった。
ショリショリと、千影が削ったチョコを、丁寧にルゥが湯銭で溶かしていく。
「とろとろだぁ〜」
「チョコレートはデリケートですから、温度管理が大切なんですよ」
「ふ〜ん」
大きなボールに一杯のチョコレート。砂糖を入れれば甘いペーストが出来上がる。
「いいにお〜ぃ♪」
ふんふんと、鼻を寄る千影が笑みを漏らす。
「つまみ食いしちゃ駄目よ、チカちゃん」
「チ、チカ。つまみ食いなんてしないもん」
卵黄を溶いていた朔夜の言葉に、きらきらと瞳を輝かせ、今にも指を伸ばしそうだった千影が慌てて伸ばし掛けた手を引っ込めた。
大きな問題も無く、ケーキは焼く段階へ。
「えへへ〜、楽しみだね♪」
千影はじーっと、今では珍しくなた薪のオーブンの前に座り込んでいる。
「楽しみですわね」
その隣に、ルゥも座り二人で出来上がり後のデコレーションについて話を始めた。
朔夜がキッチンから出ると、逢魔のヴェスパーが金色のチョコレートらしき小箱を抱えてにこにこと、ご満悦の場に出くわした。
「あら?ヴェスちゃん。ご機嫌ね」
「春日姉ちゃんにもらっちゃった!」
いいでしょ〜。
「なぁにぃ!?」
春日!
「俺の分は!」
「……朔夜。地が出てるぞ」
「そんなことはどうでもいい!」
猫の様に首の根を捕まえた、己の逢魔をずいっと、突き出す。
「これの分があって俺の分がないってことはないよな!」
「そんなに私からもらって嬉しいか…貴様は……」
「チョコの数は男の勲章だ!」
今の貴様はクレセントじゃなかったのか…と呆れながらも、ほれっと、一枚の平べったい赤い物を投げてよこす。
「……これは……」
「見ての通りチョコだ」
某大手菓子メーカーマスコットの天使のマークの入った、板チョコに『義理』の熨斗が貼られている。
「嬉しかろう?」
「…………」
「兄ちゃん……」
力なく項垂れる、魔皇の背中が哀愁を誘う。
「僕の分、一つあげるね」
「ありがとう、ヴェスちゃん!」
やっぱり、魂の半身ね。
「うにゅ〜〜〜!?」
だから何でそこで、もどるのさ!抱きつかれまいと、ヴェスパーはじたばたともがいていた。
「馬鹿兄弟……」
じゃれあう、二人に相変わらずの調子で万輝がぼそりと呟きをもらしたのは言うまでも無い。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「出来ましたわ……」
しっとりと焼きあがった、チョコレートケーキに滑らかなチョコレートをかけて仕上げた、クラシックなチョコレートケーキ。
「きれ〜♪」
千影がほぅ…と見とれる。
「それでは、皆様の所に持って行きましょうか」
ルゥがいそいそと、銀のトレーを取り出してくる。
出来上がったケーキに気をとられ、3人のパティシエは若干1匹の存在を忘れていた。
3人の足元を駆け抜けホワイトチョコで出来た薔薇の花が咲く、芸術のようなケーキに猛然と頭を突っ込んだもの。
「あーーー!シンちゃんずる〜い!!」
「何しやがるこの馬鹿トカゲ!?」
「シン様、お行儀が悪いですわ!」
『我はトカゲではないのである!』
三者三様の悲鳴にシンの主張が混じる。
「…騒がしいね…」
「……ふぅ……ケーキを買いに行くが」
お前達もくるか?
「にゅ、僕は兄ちゃんがいるからここで待ってる〜」
目を離すと、すぐにあの人どっかいっちゃうから。
「そうか」
寂しげなヴェスパーの微笑みにそれ以上は言わず。直ぐに戻る、といい置いて店主は万輝を伴って店の外へ出て行った。
バレンタイ………甘い話には程遠い、黄昏堂で繰り広げられる喜劇は、まだまだ続きそうな予感がしていた。
【 Fin………? 】
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業・種族】
【3689 / 千影 / 14歳 / 女性 /ZOA】
【3480 / 栄神・万輝 / 14歳 / 男性 / モデル・情報屋】
【w3h299 / 栄神・朔夜 / 21歳 / 男性 / 魔皇(黒)】
【w3h299 / ヴェスパー / 13歳 / 男性 / 逢魔(インプ)】
【NPC / 春日】
【NPC / シン】
【NPC / ルゥ】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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変則パーティーでの御参加ありがとうございます。
私の意思すらも、そっちのけでの御参加ほ・ん・と・う・に(強調)うれしく思いますw
皆様らしさを書ききれていればよいのですが・・・
よい息抜きをさせていただき本当にありがとうございました。
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