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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>
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夢見る恋
例えば、夢に見るほど。なんて、ありきたりな言葉。そんな恋なんて無いと思っていたんだ。
そう、君に会うまでは。
君に会い、君に恋をして、君に愛されて。その夢に見るほど…、その意味をようやく知ったんだ。愛し、愛され、抱きしめて、抱きしめ返される。幸せな恋を教えてくれた君の笑顔が何よりの宝物だと伝えたら笑うだろうか?それとも、真っ赤になる?
どんな表情でも見せて欲しい。
きっと、君の表情全てを愛してしまうから。
「うわぁっ!!ティア、それはいいってっ!!」
重たい荷物を運んでいたティアを見て、リョウは慌てて制止する。
「でも、これくらい」
「ダメっ!俺が運ぶから、ティアは休んでろって」
そう言うとリョウはてきぱきと仕草で、荷物を片付け始める。結婚して、恋人と言う立場から夫婦という立場に変わってもリョウのティアに対する態度は変わらない。むしろ、恋人の頃よりも大分甘くなっているようだ。
ずっと、一緒にいよう。
ふとした瞬間に思い出すのは、お互いに誓い合ったその言葉。昨日の事みたいに思い出せる、あの日の誓い。ステンドグラスから差し込む光が綺麗で、交わした口付けは何時もよりも甘くて、幸せで泣きそうになっていた。
永遠なんて、信じていない。
永遠なんて見た事もないし、触れた事すらないからだけれど。明日も、明々後日も一緒だと思える気持ちがとても心地よくて。嬉しくて、愛しい。だからこそ、ずっと、一緒にいよう。そんな言葉で綴られた約束が胸を幸せにしてくれる。
「大分、片付いたね」
荷物を片付け終わり、一息吐いたリョウの背中に抱きついたティアは嬉しそうに頬を摺り寄せた。何時もの甘える仕草にリョウの笑みが深くなる。甘えられるというのは、何時も思う事だが心地が良い。甘えるのも、甘えさせるのもお互いの存在を許しあっていると言う無言のシルシのようだからだ。
「そうだな。後は、まあ追々考えていこう」
一緒に住んでいる部屋の模様替えをしよう。と言い出したのはティアだ。夏も本番に近づいたし、いらないものや、雑多になっているものを片付けようと提案したのだ。
その結果、部屋はかなり片付いた。片付いたが、提案者のティアよりもリョウの方が動いた結果が残った。何せ、ちょっとでも重いものを持とうとするとリョウが血相を変えて飛んできて荷物を攫うのだ。それが何度も続けば、必然的にリョウが多く動くことになるのは誰が見ても分かる事だ。
「本当に、無理しなくてもいいのに。私だって多少重いものは持てるのよ?」
「知ってるって。ただ、俺がティアに重いものを持たせたくないだけだ」
くるり、と体を回転させてティアを真正面から抱きしめる。大きな胸へと抱きしめられる、何時もと同じ暖かな感触に微笑がもれる。一回りも小さい暖かな華奢な体。守りたいと、抱きしめるたびに思う。愛していたいと、体全部で思う。
この気持ちは、きっと一生かかっても伝えきれないのではないだろうか。でも、伝えられずにはいられない。何時も、毎日、ずっと伝えていたい。知って居て欲しい。
こんなにも愛していることを。
「ティア」
「何、リョウ?」
目を合わせば、笑みが零れ落ちる。
こんな自分を知らなかったし、ティアに会わなければきっと知る事もなかった。優しい愛を、気持ちをくれるティアはリョウにとって、もう無くては生きていられない存在だ。
好き、愛している。言葉に出来ない感情が、何時だって零れて止まらない。
どんな事からも、どんな者にも傷つけさせたくない。髪の一筋だって、愛しさで守ってあげたい。真綿で包む様に何時だって甘えさせたい。リョウにとってティアが世界の全てであるように、ティアにとってリョウが世界の全てであるように。世界はお互いの存在でできているように、いつも慈しみ一緒にいたい。
「愛しているよ」
「私も…愛しているからね」
愛しさに眩暈や、切なさ、苦しさを覚えて。時折、あまりの幸福さに涙さえ零れそうになる。
一緒にいたい、ただそれだけで生きている。
何気ない日々の中で、何時も何時も………想いを上書きしている。
頂上がない気持ちの行方は、何時だって相手に向かっているのだ。
「ふふふ、変ね。何時も言っているのに、何だか今日は特別みたい」
「そうだな」
特別な毎日なんて、なくてい。
一緒にいる毎日が、特別だから。
「ねぇ、リョウ」
繰り返される毎日の中で、その真ん中に笑って、幸せそうに居て欲しい。
「一緒にいてね、ずっと」
「もちろんだ。ずっと、一緒だ。俺とティアは、ずっと」
例えば、夢に見るほど恋しい、なんて。
そんな気持ち知らずに過ごしていた。君に会い、恋を知るまでは。
恋を知った、愛を覚えた。だから、もう手放す事なんて出来やしない。
ずっと、恋をしよう。愛を囁いていこう。
夢に見るほど、君に恋を毎日している。
そう伝えたら、どんな顔をするか?なんて、考えながらリョウは唇を開いた。
何時だって相手に伝える言葉は、優しい音で奏でられている。
そう、夢を見ているように。
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