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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>
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我が闘いの未来に在りし
魔皇・九条縁とその逢魔イーリスは、最近新しく発見されたばかりの遺跡の調査へとやってきていた。
まだ誰も調査を行っていないところであるだけに、装備は万全できた――その、はずだった。
だが。
「くそっ、倒しても倒してもキリがねぇぜ!」
罠らしい罠はなかったのだが、その代わりとばかりにサーバントが次々とやってくる。罠がないだけに、野良サーバントがばしばしと住みついているらしい。
剣を振りかざして襲ってくる様々なサーバントを、縁は、手持ちの真魔皇殻で撃破していく。
その半歩後ろを走るのはイーリス。縁が撃ち漏らしたサーバントにトドメをさし、横道から突如襲いかかってくるサーバントを拳で粉砕する。
数刻前までは静かであっただろう遺跡は、いまは戦闘の喧騒に包まれていた。
襲い来る無数のサーバントたちでは突進する二人の勢いを削ぐことすらできず、二人は着々と遺跡の深部へと近づいて行く。
遠距離から攻撃してくる輩には真ロケットガントレッドを飛ばし、真デヴァイスターで駆けて来る敵に先制攻撃をかまし、真ドラゴンスマッシャーで敵を打ち倒す。
そうやって、どれくらい進んだだろう。
ふいに、遺跡の道が途切れた。右を見ても左を見ても、正面を見ても。道らしきものが見当たらず、あるのは小さな部屋がひとつきり。
「ここが一番奥でございましょうか……」
「にしては、何もないな」
「隠し通路があるのかもしれません」
「ああ。探してみよう」
イーリアより少し先を歩いていた縁が、そのまま部屋の中へと一歩、踏み出した時だった。
部屋が、閃光に包まれる。
「なっ……!」
「縁様!!」
イーリスの叫ぶ声が、縁の耳に遠く聞こえる。
視界が閉ざされ、音が消え――縁は、その意識を手放した。
◆
どれくらい眠っていたのか。
目覚めて周囲の様子を確認して、縁は表情に警戒の色を露にした。そこは明らかに、遺跡の中とは違っていたのだ。
だが外……というのも少々不自然な気がする。
不自然さの最たるものは、空。
夕暮れ過ぎを思わせる紅の空には雲一つなく――それだけなら晴れているだけともとれるが――夕暮れならあるはずの傾きかけた陽もなければ、星のひとつも見えなかった。
ただ、紅、一色。
しかしその空以上に縁を驚かせたのは、無数に突き刺さる剣。まるで墓標のように大地に突き立つその剣は、縁が立つ場所を中心にぐるりと大きく円を描いており、中の広場がなんとなく……決闘場のように思える。
「イーリス……いないのか?」
これといって視界を塞ぐものはないのに、イーリスの姿はなかった。
おそらく自分が、どこかに飛ばされてしまったのだろう。とにかく脱出方法を探さねばと、歩き出したその時だった。
突如、ディアブロを人間大にしたような騎士が、縁の目の前に現れたのだ。
「……何者だ?」
すぐには襲ってこない騎士に声をかけてみると、騎士はスラリと腰の剣を抜く。縁は応じて戦闘体勢をとったが、騎士がすぐに襲ってくる様子はなかった。
縁が訝しげに騎士を見つめたその時。
『汝が闘いの訳を示せ』
……それは、騎士の声だっただろうか。目の前というよりは、空間から響いたような声と同時に、騎士が、剣を構えた。
今度は一瞬のタイムラグすらなく、一気に間合いを詰めてきた騎士の剣を咄嗟に避けて、縁は改めて武器を構えなおした。
右に、左に。重そうな剣にも関わらず、騎士は軽々とそれを扱い、縦横無尽に縁に襲いかかってくる。
縁もそう簡単に負けるほど弱くはない。
だが。
騎士は、強かった。
手持ちのどの魔皇殻も騎士の剣に砕かれ、隙をついて放ったダークフォースもことごとく蹴散らされる。
「くそっ……!」
自分は、こんなところで負けるわけにはいかないのに!!
想いが身体を支配する。
あちこちについた傷の痛みも、体力の消耗した肉体も。
どれも、今の縁の動きを妨げる要素にはならなかった。
けれど元より騎士のほうが上手なのだ。とうとう縁が、ガクリと大地に膝を折る。
まだ、闘える。否、まだ、負けるわけにはいかない。
闘おうとする――闘い続けようとする縁の思考に応えるように、声が、響いた。
『汝が闘いの訳を示せ』
闘いの直前、問われた言葉。
目の前。
剣を振り上げたその形で、騎士は動きを止めていた。
「……生きるために」
知らず、口を開いていた。
二度目は、はっきりと意識して。
「生きる目的を知るために」
告げる。
「俺が俺のまま行き抜くために」
力強く答えて、立ちあがる。
ふいに大地に光が灯った。
大地に刺さった剣の一振りが光をまとい、縁の手へと滑り込んできたのだ。
砕けた魔皇殻を吸収し、剣がその形状を変えていく。
……剣は、苦手のはずだった。
しかしその剣は何故かしっくりと、縁の手になじむ。
「勝負は、これからだ!!」
叫ぶ声に勢いをつけ、騎士の元へと全力で駆けた。
再度動き出した騎士は、先ほどと変わらぬ鋭い剣で応酬してきたが、しかし。恐ろしく手に馴染むこの剣は、騎士以上の剣技を縁にふるわせた。
二度、三度。
打ち合い、そして勝負の時は一瞬だった。
渾身の力で振り下ろした剣が、騎士の身体を真っ二つに両断したのだ。
――と、同時。
何故か唐突に、世界が遠のく。
視界が閉ざされ、音が消え――ここに来た時と同じように、意識が途切れる。
◆
「――縁様」
遠くから声が聞こえる。
「大丈夫でございますか、縁様!」
聞き慣れた女性の声……イーリスの声だ。
「イーリス!?」
飛び起きた瞬間、目の前にイーリスの姿。周囲を確認すれば、そこは遺跡の外だった。
「突然、縁様がお倒れになられて……。あの場に留まるのは危険と判断して、遺跡の外へ戻ってきたのです」
「そうか……」
あれはいったい、なんだったのだろう?
そう時間は経っていないようだが……まさか、夢? だがそう考えるには、あまりにもリアルすぎる夢だった。
「一旦戻るか」
縁が立ちあがりかけた時、物影からサーバントが襲いかかってくる。
咄嗟に応戦しようとしたその、瞬間――縁の手に、剣が現れる。
あの不思議な空間で手にした剣だ。
あれはやはり、夢ではなかったのだ。
「縁様、それは……」
「ああ、真魔皇殻だ」
イーリスを隣に、自らの手には新たな魔皇殻を携え。
縁は、襲い来るサーバントへと向き直った。
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