<ホワイトデー・恋人達の物語2007>


【恋する漢女】まちょまろでー
〜ああ、無情
3月14日 某所

ホワイトデー。
それは男が送られた愛に対して、こたえる日。

しかぁし、男でも女でもない漢女(おとめ)はどうしたらいいのか。
ホワイトデー、いや『まちょまろでー』に告白するのだ!

「やはり、渡す相手はみつからないでおじゃるわね……」
 はふぅとため息をつく奇妙な人間。
 その人間んはこの寒さだというのに半そでシャツ一枚で、首から銀色のアクセサリーをたらしていた。
 さらには、裾がぼろぼろになった土色のズボンにがっしりとした体つき。
 とどめに、そのかおはおしろいでぬられたかのように真っ白で、髭のそり残しがちょっとお茶目と自称する男(戸籍上)。田村・麻呂その人だった。
 腰を妖しくくねらせながら双眼鏡で獲物(ターゲット)を探しているすがたは、真冬の街中では目立つ。
 誰もが、そこにないものとしたいのか田村の半径10mには人の姿はない。

「!」
 そんな田村が動きを止める、どうやら獲物がみつかったようだ。
 舌なめずりをしかけ、ハッとやめる。
「目標補足、田村二等陸曹突貫します!」
 直立不動で敬礼をし、高らかに叫びをあげると田村は駆け出していくのだった。

〜今日の贈り物はなんにしよう〜

「さて、主(あるじ)よりいただいたチョコレート……そのお返しをしたいものだな」
 いつもの商店街でこれまたいつもの買出しの途中、ホワイトデーセールとして売り出されている品々を風閂(かんぬき)は眺めていく。
 ただ、その口ぶりが示すように、いでたちは紋付袴の古風なもので、現代では浮いて見える。
 ただ、毎日かよっているので街の人は実にみなれたものだった。
「クッキーにマシュマロ、チョコレート……甘いものばかりで俺には判断がつけづらいな」
 値段と懐とを相談しつつも、選んでいく風閂。
 すると、背後からドドドッドドッという足音が聞こえてきた。
「この足音、まさか、まさかな……」
 そんなことはないと自分に言い聞かせ、ほんのちょっとの希望をいだきながら、風閂はゆっくりと振り返り、信じられないものをみた。
 なんと、駆けて来くる人物はモンローウォークをしていた……。
「ええい、また『おかま』かっ!」
「ぜんりょぉぉぉく、とっかぁぁぁぁんっ!」
 野太くて、男らしい声が響く、もっともモンローウォークをしている男が発しているのだが。
 砂煙をあげながら、モンローウォークをして、風閂に迫り来る変なやつ。
 近づくほどに、おしろいで塗られた顔、髭剃り跡などがくっきりと見えてきた。
「ええい、なぜこういう人種にあうのか……」
「見知らぬサムライさぁん、麿(まろ)の愛を受け取ってほしいでおじゃるぅ〜〜」
「日本語がおかしいわっ! 恥(ち)れものがっ!」
 屈強な成人男子の上腕二等筋の形をしたマシュマロ。否、まちょまろをもって突撃するも、風閂に一本背負いをされた。
 だが、瞬時に受身をとった。
 宙を舞いながら、まちょまろを庇う。
 くるりと、身を曲げて着地する。
「相変わらず、なんでこのようなテダレばかりが……」
 頭痛を得ながらも、商店街の広場のようなところに移動して、肩を鳴らす。
「さすが、見込んだひ・と。まちょまろを食べてもらうわよん」
「俺は甘いものはこのまん、ゆえに……」
 腰をくねらせ、迫ろうとする田村に対し、風閂は一呼吸を置く。
 ぐっと草鞋に体重をかける。
 右拳を田村につきつけ、目を見開いた。
「この俺を倒してからにするがいい!」
 偶然か必然か春一番が吹き荒れた……。

〜激突する恋のCQC〜
 自転車などがたおれ、木々がゆれる。
 じりじり、二人は距離を詰めずに円を描くようにうごく。
 映画のように、緊迫した空気が流れ出す。

((こいつ……できる))

 二人の思いは一緒だった。
 一歩前にすすめば、もう一方は下がる。
 まさに、一進一退。
 逡巡の後、動いたのは田村だった。
「愛のまちょまろあたっくっ!」
 何を思ったか投げつけだす。
「このようなもの、払いおとせばっ」
 腕を振るって、払おうとしたとき、すでに田村は間合いに来ていた。
「なにぃ!」
「クローズ・クォート・コンバットゥ!」
 がっちっと風閂の腕をつかむ。
 腕をひねり上げて、風閂を瞬時に地面へと押さえこんだ。
「なにぃ!」
「ふふん、近接戦闘をあたしに挑むなんてだ・め・よ。うふっ♪」
 投げキッスをされ、吐き気を覚える風閂。
「ええい、おかまでなければ好敵手であっただろうに」
 隻腕の風閂には、腕をかためられたら、脱出手段はすくない。
「ふふん、好敵手なんて物騒なものより恋人がいいでおじゃるわぁん」
 じゅりゅりとよだれをすする音が頭上から聞こる。
 全身に悪寒が走った、走馬灯まで流れ出した。
「いや、俺は貴様のようなものをパートナーには認めん!」
 風閂はぐっと、腕に力をこめ、飛ばした。
「な、なんでおじゃるか!?」
 急に飛び上がった腕に驚き、田村は尻餅をついた。
「すきありぃぃっ!」
 たちあがり、蹴りの嵐を見舞う。
 一発、二発、三発。
 ローからミドル、ハイへと繋がる連撃が決まった。
「くぅ……」
 ぐらりと田村の巨漢が揺らいだ。
「とどめだ、天国へゆき心をあらためるがいいっ!」
 いつの間にか戻ってきた腕を装着すると、風閂は渾身のアッパーを田村へと見舞うのだった……。

〜スベテを水にながして〜

 そのご、固まっていたときが動き出した。
 まるで、何事もなかったかのように……。
 いや、忘れようとしているかのように人々は日常を繰り返す。
 身なりを整えた風閂はふと呟いた。
「食べ物よりは、何か形に残るもののほうがよいな」
 また彼も日常へと帰り行く。

ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 w3g785ouma/風閂/男/35歳/レプリカント

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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どうも、橘です。

えー、なんというか今回もほんとありがとうございます。

毎度毎度アホな戦いにお付き合いいただいて感謝しております。

もうすぐハルですね。恋の季節です。気をつけてください(何)