<Trick and Treat!・PCゲームノベル>


【恋する漢女】この世で誰よりもたくましく!

「君よりたくましい人は他にもいっぱいいたよ」

 クスリと、リゼルは林に負けない微笑みを返す。

「そうか、そんなのはいらないよね。僕はこの世で誰よりもたくましいんだ!」

 はちきれんばかりの体で木佐屋 林は激走した。

 リゼルはその様子をみながら、林と戦わせる遊び相手をもっと探してくることにする。
「今夜は楽しくなりそうだよ」
 さまざまな世界へリゼルは旅立った。



〜夕食帰りに甘い罠?〜

「立冬も過ぎて、ずいぶんと冷え込んできたな」
 風閂は少し身震いをする。
 今夜は鍋らしく、大根、ねぎが鋼鉄の腕に握り締められたビニール袋から顔を覗かせていた。
「おにーさん、ちょっとおにーさんってば」
 2m近い風閂の腰くらいから声が聞こえていた。
 その主は、オレンジ髪で金色の目をしている換わった人物。
 ぱっと見では少年か少女かもわからない。
「ん? なんだ?」
 下を向く風閂、そのときチョコレートを口の中に入れられた。
 味は甘く、どこか懐かしい味。
「トリック オア トリート、いい夢を〜♪」
 オレンジ髪の人物―リゼル―はそういうとにやりと微笑んだ。
「な、何を……」
 何かを言おうとしたが、それが何なのかわからない。
 ただ、朦朧とする頭の中でリゼルの笑い声だけが響いていた。
 
 
〜ザ・マッスルブラザーズ(仮)〜

 リゼルの行ったとおり、筋肉に自身のありそうな人たちがいた。
 だが、そのすべてを林は倒していく。
 服は腰に布をまいただけ、それだけ自分の体のすばらしさをアピールしたくてたまらなかった。
 そんなとき、目の前に倒れている男達がいた。
 どちらも林に負けないたくましい体をしている。
「どちらも目障りだよ……目障りなものは潰してしまえばいいんだ」
 何かに取り付かれているかのように林は倒れているロック・スティルと風閂に近づいた。
 そのただならぬ気配にロック・スティルはたちあがる。
「つぶれてしまえっ!」
 巨大な肉食獣のような勢いで二人へと襲い掛かる。
「起きろ、やられるぞ!」
 ロックの声に目を覚まし、風閂は林の拳をよける。
 ズガァンと地面を砕き、破片が飛ぶ。
「もう、一発で終わらせてほしいな。この体が汚れてしまうじゃないか」
 巻き上がる砂煙のなか、林はその姿を現す。
「俺はロック・スティル。どうやら、アンタも変なヤツのお菓子にやられたか」
 ロックはキャップをかぶりなおし、自己紹介をすませて林へと向き直った。
「今回はオカマじゃないか……俺は風閂だ」
「『今回は?』」
「気にするな、今はあいつの相手をすることが先だ!」
 ぐっと構えて、林へ向きなおす。
「そうだな、お前もあいつもそこまで鍛え上げるには苦しいこともあっただろうに……」
 ロックは訓練時代を思いだしながら、戦闘態勢に入る。
「誰よりも、何よりも逞しいのは僕だけで十分だよ」
 ギリシャ神話にでてくる人物の彫刻のような体を高揚させ、林は二人をにらんだ。
 気迫がぶわぁっと広がったかのようにロックと風閂は感じた。
 背筋に冷たい物が流れる。
「時間があれば真剣勝負を一対一でしたいものだ」
 風閂は呟き、林へ攻撃を仕掛ける。
 胸板への一撃をそのまま林は受け止めた。
「なんと!」
「お返しだよっ!」
 掬いあげるようなアッパーを風閂にすると、風閂の体が宙に舞った。
「おっと、悪いが二人いること忘れちゃいないか?」
 風閂を前に立たせ自分を隠して接近していたロックは林の顔面に肘うちを食らわせた。
 ベキリと嫌な音がし、林の鼻がおれる。
 風閂はその間にも受身をとり、林の背後へと回っていた。
「いいパンチだったが、腕はそれほどでもない」
 よろけた林を足払いし、倒す。
「ぐぅわぁぁ、僕の顔がぁぁぁぁ!?」
 倒されて苦しそうにもがく林。
「たかが顔面くらいで、うだうだ抜かすな」
 ロックが、着地しもがく林を一瞥した。
「ゆるさない、ぐちゃぐちゃにしてやるぅぅ!」
 鼻がまがり、そこから鼻血をだしている林が怒りにほえた。
 筋肉がさらに盛り上がり、熱い蒸気を発しだす。
 立ち上がった林はロックに向かって突撃をする。
「訓練じゃなくて、ドーピングか……どうりで動きが素人なわけだ」
 ロックが呟く。
「真の男とおもっていたが、そうではないか……倒させてもらう」
 風閂もせっかくの好敵手と思っていた相手がクスリによる強化と聞き、嘆いた。
 林の攻撃をロックが、ガードする。
 しかし、それでもズザザザと後ろへ下げれられた。
「何てパワーだ。手がしびれる」
 ジーンと来る痛みにロックは口元を歪めた。
「先ほどのが渾身と思うな!」
 風閂も林の背後から拳と蹴りの連続攻撃をくりだした。
 だが、本気であるにも関わらず、林の体への手ごたえを感じない。
「く、見た目だけではないか……」
 すぐさま距離を開けようとするも振り向きざまの張り手をくらい、吹き飛んだ。
 体が回転するも、受身をかろうじてとる。
 片腕と両足によるバランスをとるも、腕が肘がかぶるくらい土に埋まった。
「ロック殿、同時にかかるしかないか」
「おう、タイミングは任せる」
 風閂とロックは声を合わせ、半ば狂乱している林に対して、動いた。
 初めてだというのに、風閂と蹴りとロックのパンチがそろう。
 蹴りでバランスを崩した林にロックの追い討ちのラリアットが続く。
 そのままロックがとどめの投げを決めた。
 腰の布が落ちるも、風閂がそっと倒れた林にかけなおした。
「せめてもの情けだ……本当にたくましくなるための鍛錬を忘れるでないぞ」
 風閂はそれだけいうと、ロックに向き直る。
「そちらは本当の武人のようだな」
「ただの、軍人くずれさ」
 キャップをかぶりなおし、ロックはいう。
「いつか、真剣勝負をしたいものだ」
「そうだな、機会があれば……だ、くっ」
 突如、ロックの足取りがふらつく。
「どうした!? うぅぅ」
 風閂も、もやもやしたものが頭を覆ってくる感覚にとらわれた。
 そのまま目の前が真っ白になり、風閂の意識は途絶えた。
 
〜やっぱり、こうなるのね〜

 風閂がはっと気がつく。
 そこは買い物帰りの街角。
 林もロックも、また奇妙な風景もない。
「今のはいったい……あぁ!? 食材が!」
 夢かと思ったが、ぐしゃぐしゃになった大根などが物語っている。
 「ロック・スティルという猛者(もさ)、また手合わせしたいものだな……」
 残骸をあつめながら、風閂は呟いた。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
w3g785ouma/ 破壊武士・風閂 / 男 / 35歳 / レプリカント
0709/ ロック・スティル / 男 / 34歳 / 一般人

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 どうも、相変わらずの参加感謝しています。
 今回は他の方もいましたので、こういう展開のほうがいいかなと思って調整しました。
 
 次回のご参加もおまちしております。
 ネタができ次第なのですが〜(苦笑)