■【踊る大魔皇帝国】防衛! 旭川最終防衛ライン!!――北海道■
商品名 流伝の泉・キャンペーンシナリオ クリエーター名 三浦SAN昌弥
オープニング
 北海道――。
 日本の最北にある地方で、自治体でもある。本州の次に大きな北海道本島と周辺の小さな島からなり、北東はオホーツク海、北西は日本海、南は太平洋に面している。北海道本島北端の宗谷岬は、宗谷海峡をへだててロシアのサハリンと、東端の択捉島はロシア領千島列島のウルップ島と隣あう。
 管轄市町村は34市154町24村で、市以外を扱う行政機関として14の支庁が置かれている。
 道庁所在地は札幌市。北方領土を含む面積は8万3452平方キロメートルで、日本の全面積の約22パーセントを占める。しかし人口は北海道全体で568万人ほどに過ぎず、日本全国の5パーセントほどにすぎない。
 明治期以前、北海道には先住民族のアイヌが住み、本州系日本人(和人)には蝦夷地とよばれていた。しかし、アイヌがはるか古代からずっと北海道にすんでいたかは不明で、アイヌ文化の起源は歴史研究のテーマのひとつとなっている。
 第二次世界大戦前まで、北海道は本州の植民地的な性格をもっていたが、1946年の道府県制公布と翌年の地方自治法の施行によって、『内地』の府県と同じ地方自治体となった。また海外の植民地を失った日本政府は、未開発の資源が豊かな北海道に着目した。そして1950年、『北海道開発法』が制定され、総合的な開発がすすめられることになった。
 総理府の外局として北海道開発庁(2001年1月、中央省庁再編で廃止)が設置され、『北海道総合開発計画』にもとづいて開発は進められた。これによって、新篠津泥炭地開発、根釧(こんせん)パイロットファーム建設、十勝川の電源開発、青函トンネルの建設、苫小牧工業港の造成などの事業がおこなわれた。現在は第5期計画が策定され、空港・港湾の整備のほか、バイオテクノロジーやエレクトロニクスなどの高度技術をとりいれた産業開発が計画されている。

 まあつまり、北海道とはだだっ広くて人口密度の少ない、開発の余地のいっぱいある土地ということだ。

    *

「敵に動きがありました」
 かつて『密』の情報集積地だった喫茶『志乃』で、逢魔の『伝』は本題を切り出した。
「函館テンプルムが戦闘準備を進めているようです。すでに臨戦体勢を整えていて、いつでも出れる状況になっているみたいです」
「目標は?」
 魔皇の一人が問う。
「やはり、この旭川かと」
 簡潔な答えだった。
「防衛線は岩見沢に敷設しようと思います。葛城長官がそのほうが良いと申し出てきたので。陸自からはヘリと戦車隊、特科連体が出張ってくれます。今回も、問題なければ1000人規模の援護が得られるわけですが、前回とは事情が違うことがあります」
 伝が、一呼吸置いた。
「アークエンジェルが出張ってきます。指揮を執り、前線で戦う模様です。それも2名」
 空気が、引きつった。アークエンジェルといえば、テンプルムの首長で強力なエンジェルである。過去何度か倒されているが、いずれも辛勝。それが2人いるというのだ。
「ネフィリムに対して自衛隊は有効な攻撃手段を持ちません。戦車砲では追尾が不可能ですし、ミサイルなどはダークフォースを付与できません。私たちがやるしかないのです」
 不可侵領域内での素身での戦闘。それがいかに危険な行為かは、かつての報告書が例を示している。
「正々堂々と戦う必要はありません。むしろ策を弄さねば勝てないと思います。こちらの兵力は魔皇さまが2300人。逢魔が6000人。ユディットの兵力はネフィリムが80騎余……サーバントは敵に逆操作される可能性があるので出さないほうが良いそうです。敵兵力は調査中ですが、ネフィリムは100騎は出てくるかと……」
 多いか少ないかは、微妙な数字であった。
「負ければ明日はありません。なんとしても、勝って下さい!!」
シナリオ傾向 雪花・一葉・自衛隊・戦闘・不可侵領域・北海道独立計画・魔皇意思決定機関
参加PC 八神・武斗
二神・麗那
暁・夜光
メレリル・ファイザー
ツルギノ・ユウト
無漏路・大悟
ゼスター・ヴァルログ
ジェフト・イルクマー
河崎・丈治
斑鳩・八雲
クリス・アンドウ
御剣・神無
番場・長太郎
篠崎・公司
ショウイチ・クレナイ
津和吹・拓斗
琥龍・蒼羅
常磐・命
【踊る大魔皇帝国】防衛! 旭川最終防衛ライン!!――北海道
【踊る大魔皇帝国】防衛! 旭川最終防衛ライン!!――北海道

●戦場は岩見沢
 岩見沢市は北海道中央部、石狩平野東部にある人口8万人ほどの都市である。空知支庁所在地で、東半分は夕張山地、西側は沖積平野からなる。かつては米所として知られた土地だが、現在はタマネギ栽培を主にしており、地域の広さのわりに人口密度はきわめて少ない。
 旭川の魔皇軍と離反自衛隊第2師団および第5師団、そしてエグリゴリ勢力は岩見沢周囲に展開し、敵の出現を待っていた。
 敵――すなわち神帝軍。すでに偵察部隊からは『函館動く』の報せが来ており、敵が用意していた兵力を予定通り動かしたことが分かっている。状況に変化があるとすれば、過日の事件で函館は『聖鍾』を手に入れそこね、威力偵察によりその兵力が露呈していることだろう。
 当初、今回の戦闘は魔皇・琥龍・蒼羅(w3h554)と魔皇・篠崎・公司(w3g804)の提案により次のように編成されるはずだった。

■部隊配置
【自衛隊】
 戦車隊:道央自動車道上に展開
 特科隊:道央自動車道東側の山林周辺に展開
 普通科:戦車隊及び特科隊付近に展開
 攻撃ヘリ隊:旭川隊及び飛行班と同じく上空直援
【魔皇部隊】
 飛行分隊:旭川隊及び攻撃ヘリ隊に混ざって上空直援
 対サーバント分隊:岩見沢市内及び、自衛隊各隊付近に展開
 砲撃分隊:岩見沢市内に展開
 狙撃分隊:岩見沢市内に展開
【逢魔部隊】
 飛行隊以外の各隊に同行
 観測班:坊主山、三角山、三笠山の山頂に展開
【エグリゴリ】
 旭川隊:上空直援

 だが、敵兵力の中でサーバントの数が補強されていること威力偵察によってわかり、エグリゴリ兵力から対サーバント対処部隊が新たに編成された。主な構成員はグレゴールである。
 その日、払暁。
 戦闘はサーバントと普通科連隊の銃撃戦から始まった。

●岩見沢戦線異常アリ
「いよいよおいでなすった」
 魔皇・八神・武斗(w3a036)は、砲撃部隊の一員として岩見沢市内に陣取っていた。すでに敵の『絶対不可侵領域』は張り巡らされ、魔皇の力は大きく制限を受ける。あとは、魔皇としての覚醒度が勝負だ。今までの実戦を経てそれ相応の域に達したと武斗は思っているが、十全とは言いがたい。
「まるで『人間大砲』ですね」
 両肩に真ショルダーキャノンを装備した武斗を、逢魔・レプリカントのミコト(w3a036)はそう評した。
 初弾は真狙撃弾<スナイピングシュート>であとは集中砲火。ネフィリムを一騎でも多く落とすつもりだった。
 魔皇・二神・麗那(w3a289)は真テラーウィングを装備し、魔皇飛行分隊に所属していた。逢魔・凶骨のディルロード(w3a289)とは、別行動である。ディルロードは逢魔の援護部隊だ。装備は真グレートザンバーに真ワイズマンクロック。狙うはネフィリムの首級である。
 魔皇・暁・夜光(w3a516)は岩見沢市街に陣取ってサーバントを待ち受けていた。
「さぁ、では楽しみましょうか。……此処から先へ行くには三途の川を越えるも同然と知りなさい。さもなくば、こちらの軍門に降るかです」
 雲霞のごとく現れるサーバントを前に、夜光が言う。彼と共に歩むは、エグリゴリの面々たちである。サーバントを逆操作するつもりなのだ。彼の逢魔・インプの魅闇(w3a5169は、今ここにはいない。後方で後方の仕事をしているはずである。
 魔皇・メレリル・ファイザー(w3a789)と逢魔・シャンブロウのモーヴィエル(w3a789)は、市街でサーバントを相手に戦っていた。真ディフレクトウォールと真怨讐の弓、真戦いの角笛を装備し、DFを放って戦う。
「とにかく撃ちまくれ! 俺達に興味を持たせるんだ!」
 魔皇・ツルギノ・ユウト(w3b519)が叫んだ。彼は砲撃班の指揮を取って、サーバントの対処に当たっていた。逢魔・ナイトノワールのフィアナ(w3b519)から報告される現状を聞き、隊に射線を取らせる。
「飛んでいる敵には飛んでいく方向より少し前に撃て! とにかく砲撃の手を休めるな! 相手に攻撃する隙をなるべく与えないんだ! 相手の攻撃は良く見て避けろ!」
 ユウトの檄が飛ぶ。
 魔皇・無漏路・大悟(w3b901)は、その砲撃班で武勇を振るっていた。敵を前に撃つ撃つ撃つ。逢魔・ウインターフォークのポピー(w3b901)も、軽機関銃を手に援護に入っていた。一発だけ大悟の後頭部を撃ってしまったのはご愛嬌。
 その時、<相克の痛み>がポピーの胸を打った。この近くに、エグリゴリは居ないはずである。
「<氷の壁>!」
 ガン!
 サーバントの中から飛来してきたシャイニングフォースによる攻撃を、ポピーが防ぐ。
「あれが指揮官!」
 大悟が攻撃を集中させた。他の者もそれに倣う。
「生きるか死ぬか、それが戦の掟だ」
 魔皇・ゼスター・ヴァルログ(w3c305)と逢魔・ナイトノワールのソフィア(w3c305)は、戦車隊に随伴しその援護を行っていた。強力な火力を発揮することが知られているため、神帝軍から戦車隊は目の仇にされている。今回はもっとも多くのサーバントが差し向けられ、苦戦していた。普通科と魔皇たちで戦線を組んだが、今ひとつ対処できていない。<忍び寄る闇>も、数が多すぎては意味がない。
「うおおおおおおおおっ!!」
 魔皇・ジェフト・イルクマー(w3c686)率いる対サーバント分隊が、その場になだれ込んだ。逢魔・ナイトノワールのセラティス(w3c686)の連絡を受けたジェフトたちが、救援に駆けつけたのである。
「戦車に大砲を撃たせろ! もうテンプルムは肉眼で見える!!」
「数が多すぎだぜ! どうする!!
 自衛隊からMINIMI軽機関銃を借りて戦っていた魔皇・河崎・丈治(w3d312)が叫んだ。逢魔・ウインターフォークのミズキ(w3d312)も、心配そうな表情だ。魔皇に比べ人間は脆弱すぎ、ただの獣のようなサーバントにも命を奪われる。
「了解しました。すぐ援護に向かいます!!」
 魔皇・斑鳩・八雲(w3d939)は逢魔・セイレーンのティスホーン(w3d939)からの情報を受け、戦車隊の援護に回った。数で圧す神帝軍の戦術は、変わっておらず予想の範囲内だが、戦車隊を狙ってくるようになったのは予定外だ。向こうも、こちらの手の内を読み始めたらしい。
「もう少し寄って来い……」
 魔皇・クリス・アンドウ(w3e363)は市内の建物の上に陣取り、ヘリがネフィリムを引っ張ってくるのを待っていた。引き寄せて各個撃破。殲騎の使えない現状では、こちらも多数で一騎にかかるしかない。この周囲には、クリスと任務を共にする魔皇たちが射撃体勢で待っている。
 そして、ネフィリムが来た。
「撃て!」
 十数箇所から一斉に、火線が放たれる。それはネフィリムに命中してそれを撃破した。質より量であった。
「沈め! 九十九式、連双牙!」
 魔皇・御剣・神無(w3f465)が必殺技を決める。ネフィリムに打撃を与え、そして離脱した。ここは前線である。逢魔・ナイトノワールのカグヤ(w3f465)は逢魔部隊の指揮を取っているはずだ。
 バン!
 ネフィリムからのSFの攻撃が、神無を打った。もんどりうって地面に転がった神無にとどめをさそうとするネフィリムに、今度は肩を紺色に塗ったネフィリムが立ちふさがる。
 ドン!
 先のSFに数倍する威力の攻撃が、敵ネフィリムを撃砕した。
「大丈夫ですか?」
 ハッチを開けて声をかけてきたのは、テラビムだった。それに神無は、親指を立てて笑みを浮かべた。
 魔皇・番場・長太郎(w3g784)は逢魔・凶骨のユマ(w3g784)と共に戦車隊の援護をしていた。真マルチプルミサイルで弾幕を張り真ショットオブイリミネートで接近してきた敵を葬る。ユマも、真クロムブレイドで戦っていた。
「もう少しじゃ! 気合入れていけ!」
「うん! 魔皇様!」
 戦車隊の射程まで、あと10分。
「狙撃隊は着実に戦果を挙げている……そろそろ来るな」
 司令所で、魔皇・篠崎・公司がつぶやく。その側には逢魔・インプの美影(w3g804)が居る。
 そして、『それ』は来た。2騎のネフィリム。型はノーマルだが赤と青の塗り、そしてそれから発せられるものが違った。
 ――アークエンジェル。
 魔皇・ショウイチ・クレナイ(w3h134)が、喉を鳴らした。
「さあ、皆さん、ここが正念場です! 旭川テンプルムを……ユディット様、テラビム様をお救いましょう!……ここを守りきれば、もしかしたらご褒美をもらえるかも! スノーホワイト、いってきますよ!!」
 逢魔・ウインターフォークのスノーホワイト(w3h134)を戦車隊に置いて、ショウイチは出立した。それにエグリゴリ=ネフィリムと魔皇たちが続く。
「あのネフィリム達に向かって集中砲火を!」
 魔皇・津和吹・拓斗(w3h462)が叫んだ。逢魔・ナイトノワールのクリスタ(w3h462)は戦車隊の援護に忙しい。
 ドンドンドンドン!!
 本格的な砲撃が始まった。今まではサーバント対策の榴弾だったが、ダークフォースを身にまとった砲弾が、黒い緒を曳いて飛んでゆく。濃密な一斉射撃である。一発二発は当たるはずだった。
 しかし――。
 ギン! グン!
 砲弾は、ネフィリムの張った結界に弾かれた。
「何っ!」
 拓斗が驚く。その拓斗を、白いネフィリムが二騎追い抜いていった。ヴァーチャーと、もう一騎はテラビムのものだ。
『脆弱なダークフォースではアークエンジェルの防御は破れません。彼らは私たちに任せて下さい』
 テラビムが言う。そして戦闘に入る。
「しょせんは『人間』のダークフォースか……」
 魔皇・琥龍・蒼羅が、その様子を冷ややかに見ていた。彼は部隊編成に深く関わっていたが、その後は前線で狙撃を担当していた。
「戦線は持たせる! テンプルムが来るまではな!」
 魔皇・常磐・命(w3i684)に向かってそう言ったのは、エグリゴリのグレゴールを率いてる神崎明日香だ。
「今、桜から報告が入りました。テンプルムが射程に入るそうです」
 命が言う。逢魔・ナイトノワールの桜(w3i684)は、ヘリに同乗し戦況を伝えてくる。
 戦車隊の戦いは、佳境を迎えていた。
「軸線あわせ! 照準! 撃てぇ!」
 斑鳩・八雲の掛け声で、戦車隊から砲声が一斉に上がった。七十余の火線が、一斉に函館テンプルムを直撃する。射線上のサーバントやネフィリムは、撃破された。
「命中! 命中! 命中!」
 指揮所から、一斉に歓声が上がる。
「砲火を一箇所に集中させて下さい! 狙うはテンプルム基幹部です!」
 篠崎・公司が叫んだ。戦車が照準を微調整し、偵察で判明していた基幹部を狙う。
 号砲一閃。集中砲火がテンプルムに叩き込まれた。毎秒5mぐらいの速度で、砲弾がテンプルムの外殻をえぐってゆく。
「砲弾が尽きるのが早いか……テンプルムが音を上げるのが早いか……」
 公司が状況を見ながらつぶやく。
「テンプルム、増速しました!」
「特攻か!?」
 そこで公司は、敵の意図に気が付いた。
「しまった! 敵の目的は自衛隊だ! 全車移動! 退避――」
 しかし、戦車隊は高速道路の上である。容易に逃げる事は出来ない。
「人員だけでも逃がせ! 総員退避!」
 ばらばらと逃げ出す自衛官たち。しかしサーバントに阻まれる。魔皇たちも逃げるのに必死だ。
 そして。
 テンプルムは地上に落下した。
「やられた!」
 公司がインカムを机にたたきつけた。双方とも失ったものは大きい。しかし、敵にはまだ札幌メガテンプルムがある。そして不可侵の壁『楽園』――。
 作戦は成功したが、より打撃を受けたのは魔皇たちと言えるだろう。
「次は――札幌が来る」
 公司は、自分に対する憤りを抑えられなかった。
 戦いは続く。