■【火の島鳴動】【翡翠・紫の夜】第9話 桜島神幸祭■ |
商品名 |
流伝の泉・キャンペーンシナリオ |
クリエーター名 |
シーダ |
オープニング |
「四国や北部九州は対処療法で行くしかないな‥‥ 問題は主戦派のそろった南部九州だ。今では緋の焔の勢力圏として地盤を固めつつある。それぞれのテンプルムの意見調整のために各神殿が呼応して部隊を動かすところまで入っていないようだが、セフィロトの樹に代わる組織が現れるのは時間の問題‥‥」
紫の夜の根回しと実施のために鼎抜きではあったが、その場での全権を委ねるという形で行われた翡翠の密たちによる会議。結果、それは情報交換とそれぞれの地区の神帝軍のスタンスの確認に終始して大した進展は見られなかった。それは実質それぞれの地域で対処するしかないということだ。結局、北部九州、沖縄を含む南部九州、四国と大きく区域を分け、それぞれを天神の密・黒木、鹿児島の密・十文字隼人、パルステラの3人が受け持って各自対処するという方向性で決着した。
しかし、穏健派テンプルムとの和平交渉、その話し合いの過程で問題になるとわかりつつも鹿児島テンプルムは捨て置けない。特に翡翠の森を徹底的に焼いた緋の焔だけは‥‥ それが翡翠の創意であった。これを無視するわけにはいかず鹿児島テンプルムの攻略は実施されることとなった。作戦としての意義を見い出すなら、ペトロのときと同じく頭を潰すことで主戦派に状況が傾かないようにしようというものである。
「他の地域での交渉への影響を無視しても、緋の焔と鹿児島テンプルムだけは落とす」
隼人の発言を最後に、5月15日の紫の夜での魔凱の割り振りを決め、会議は終了した。
鹿児島テンプルムの攻略に当たって、要塞化しているあの地を攻めるのは非常に困難だった。多数のサーバントたち、オルガユニットを中核とするネフィリム部隊、そして精強で知られるマグマイト部隊、鋼のジム・スミス、鹿児島テンプルムのコマンダーであり圧倒的な強さを示した緋の焔‥‥ テンプルムを攻略するとなると、さらにマザーとの対決も残っている。前途多難ではあったが、やるしかない。そんな逢魔たちの決意を支えるように多くの魔皇たちが攻略戦に参加してくれることになった。
神幸祭。九州では福岡県あたりで行われる祇園会の流れを汲む祭りである。神様が降臨するときの目印となる美しい山車を引き回し、野を翔け、川を練り渡って緋色の幟を揺らす。悪疫退散の祭りとして始まったこの壮烈な水合戦は、穢れをはらう儀式として知られている。日本の神は、山車を乱暴に引き回したり、神輿や山笠の喧嘩が好きである。勇猛果敢、血沸き肉踊る祭りで大いに遊ぶのだ。神帝がそうであるかはわからないが、桜島を山車、マグマイトを幟に見立てた洒落者がいた。
「桜島神幸祭の始まりだ!! 全騎、突撃せよ!!」
5月15日、翡翠の司・鼎は蒼嵐の黒城を訪れていた。
「歩美の留守というのにすまぬな」
鼎は翡翠の密たちを連れて黒曜石の間で何かを待っている風である。
「いえ‥‥ あぁ、どうやらこちらの用意が整ったようです」
蒼嵐の密が席を立つと鼎たちはその後に続いた。そして案内された場所、それは儀式の間であった。この時期に行うといえば、当然ながら紫の夜の儀式。ペトロとの決戦で翡翠を失い、緑城は当面は再建不能となっており、紫の夜を実施する術を持たない鼎は瑠璃か蒼嵐を頼るしかなかった。そんな折、隠れ家同士が近いこともあって早速行われた歩美との会談で互いの状況を確認していくうちに、翡翠には儀式の間、蒼嵐にはある作戦でレギオンが必要だという結論に至った。利害が一致すれば交渉は容易く成立する。歩美の好意もあり、翡翠への黒城の儀式の間の間借りと全面的な支援を引き換えに蒼嵐へのレギオン貸与が行われた。
かくして翡翠の紫の夜は発動し、桜島へ着実にかなりの数の殲騎の一団が押し寄せている。
「奴らなど蹴散らしてやるわ」
美しい少女の顔に残虐な笑みを浮かべた鹿児島テンプルムコマンダーの緋の焔はマグマイト・ヴァーチャーの格納庫へ向かおうと立ち上がった。
「お待ちください。新たなるセフィロトの樹を建てるためには焔様は欠かせぬ存在。よもや魔皇ごときに引けをとるとは毛頭考えてはおりませぬが、敢えて危険を冒す必要はありますまい。我らマグマイト部隊に汚名返上の機会をお与えください」
「‥‥ わかった。しかし、いつまでも失敗に付き合ってはおれぬ、そのときはお前たちの命で償ってもらう。それでも良いのだな」
相変わらずの断定口調の質問‥‥ グレゴールたちに肯定の返事しか残されてはいない。
「では、全部隊はマグマイト隊の指揮下に入り、出撃せよ」
焔の命が下り、鹿児島テンプルムは戦闘態勢に入った。しかし、鋼のジム・スミスだけはその場を離れようとしなかった。
「ジム、お前は行かないのね」
「ハッ、テンプルム内部を守る手錬も1人くらいはいたほうが良いかと‥‥」
「嘘ばかり。聖鎖や白銀のトーガは広いところでは戦いにくい‥‥ということですね。いいでしょう。あなたにはマザールームを中心とした重要区画の防衛を命じます。好きにしなさい」
ようやくジムは焔の側らを離れた。ホールに1人残った緋の焔は玉座に座り、いくつものスクリーンに映し出された戦況を楽しそうに眺め始めた。
「フフ、楽しませてほしいわね」
錦江湾上空で殲騎とネフィリムが戦闘を繰り広げられているが、約1週間前の紫の夜で多くのネフィリムを破壊された痛手が大きかったのか、出撃しているネフィリムは意外と少ない。新兵器オルガユニットを装備したネフィリムも少なく、先の瑠璃の紫の夜で指宿組の与えたダメージは確実に効果を表していた。
「進め!! 一気に押し込むぞ!!」
ネフィリム部隊は徐々に押されていた。マグマイト部隊こそ有利に戦闘を続けているが、防衛戦ではそれが勝利につながらないことは明白である。それでも、錦江湾での戦いは魔皇たちに優勢に進んでいることに違いない。
「くそっ、緋の焔は姿も見せやがらねぇ」
「馬鹿言え! 今、あんなのに出てこられたら逆転される。もう少し引っ込んでほしいな」
いつしか、魔凱殲騎がズラリと並ぶ指宿組と鹿児島テンプルムの精鋭マグマイト部隊が桜島南岳の上空で睨み合う構図ができ上がっていた。他の殲騎隊は、ネフィリム隊を撃破、あるいは撤退させ、バーニングドラゴンやサラマンダー、キメラなどの掃討に入っている。
『ここは通さぬ。テンプルムと我らマグマイト部隊さえ健在ならば鹿児島テンプルムの再建は可能と焔様はお考えだ。沖縄、熊本、宮崎、それらのテンプルムの戦力を糾合して新たなセフィロトの樹を立ててやろう。状況次第では久留米や小倉なども勢力下に引き込めるだろう。ククク‥‥ その折には、姫島にある隠れ家の入り口を暴き、攻め込んでやる。翡翠もなく、紫の夜も2ヶ月ほど待たねば行使できぬ。そのとき、お前たちに反撃する力は残っているかな? つまり、この紫の夜さえしのげば我々の勝ちという訳だ!!』
しかし、指宿組はマグマイトの挑発とも思える台詞を完全に聞き流した。それは翡翠の密たちも想定していたことだったからだ。魔皇たちは事前に聞いていたからこそ冷静を保っていられた。鹿児島の密の長である十文字・隼人を中心とした南九州方面部隊は、緋の焔をたたくこと、その1点に作戦の目的を絞っていた。だからこそ緋の焔戦に投入するために主力部隊の指宿組を温存してここまで戦ってきたのである。激戦の末、強大な鹿児島テンプルムの戦力をあらかた裸にしたとはいえ、残る魔皇の戦力は少ない。
「翡翠の興亡はこの一戦にあり!!」
隼人の通信を機に指宿組がマグマイト部隊に突撃をかけ、別働隊が他の場所から神殿内部への突入を敢行する。緋の焔の動向が気になるが、残った戦力で戦うにはそれしか手は残されていない。紫の夜の時間があまり残されていないからだ。激戦の決着が神魔のどちらに傾くのか、それはまだわからない‥‥
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シナリオ傾向 |
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参加PC |
柊・日月
キサラギ・アオイ
筧・次郎
小沢・澄子
ジェフト・イルクマー
白鐘・剣一郎
真田・一
御剣・神無
刀根・香奈
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【火の島鳴動】【翡翠・紫の夜】第9話 桜島神幸祭 |
●【火の島鳴動】【翡翠・紫の夜】第9話 桜島神幸祭
●炎戦士たち
9騎の殲騎と9騎のマグマイト・パワーが桜島上空で互いの距離を縮める。そこに魔凱殲騎の姿はない。
「全員突撃、ガンパレード!!」
精鋭部隊相手に2度も同じ作戦は通用しない。白鐘・剣一郎(w3d305)は敢えて魔凱を温存する作戦を提案し、不意を衝いて魔凱殲騎を召喚する案を仲間は支持してくれた。
(「これで九州の行く末が決まるんじゃ、私も頑張らないとね」)
逢魔・沙玖弥(w3d305)は、この一戦にかける主の想いを痛いほど感じていた。
「爆竜合体!」
特撮好きの小沢・澄子(w3c669)ならではの気合入れをし、殲騎・ヴォイド1に魔凱パーツが組まれていく。
「一さん。この一戦‥‥頑張りましょう。緋の焔を討つため、翡翠の民の想いをこの魔凱に託されたのですから」
「わかっている。いくぞ!!」
逢魔・シェリル(w3e178)の決意を背中に感じながら、真田・一(w3e178)は魔凱を指にはめた。
「目覚めよ、御剣の血よ」
「‥‥2人も、妻がいるんですからね」
「わかってるさ。結婚早々、死ぬわけにもいかないでしょ」
御剣・神無(w3f465)と逢魔・カグヤ(w3f465)も魔凱をはめた。
ナイトノワール魔凱殲騎だけで構成された高速機動部隊であるA班、小沢の魔凱殲騎・ヴォイド1、真田の魔凱殲騎・閃輝、御剣の魔凱殲騎・ツァウベルフリューゲルが最大速度まで加速して強襲をかける。しかし、相手は鹿児島テンプルムのTOPエースばかりである。不意は衝かれても、先のオルガ隊のように混乱したりはしない。火炎放射は衝撃波で吹き飛ばされる‥‥と、戦訓を活かして無用な攻撃は仕掛けてこない。逆に3騎ごとに集団を組み、魔凱殲騎の軌道を予測して、進路に先回りして数騎がかりでA班を迎え撃った。閃輝が爆撃の要領で真ワイズマンクロックを放ち、至近を通過したマグマイトにシェリルが黒き旋風を放つ。
「ラクシュさんや瓜生さんは来ず、ですか。寂しいですね」
「あいつらにはあいつらの戦いがあるのさ。それより死角をカバーしてくれ」
真クロムライフルを連射しながら殲騎を突っ込ませる小沢が逢魔・透(w3c669)に釘を刺した。集中力を欠けば、どこにでも危険が口をあけている。そんな戦いなのだ。
「相手にしてる余裕なんざあるかぁっ!!」
ツァウベルフリューゲルが超高速の徒手攻撃を敢行する。速さの乗った攻撃の力は半端じゃないが、当てるのも半端でなく難しい。両手に戦篭手を装備した格闘仕様マグマイト3騎のうち1騎に的を絞り、真狼風旋<ハウンドヘイスト>を発動させ、真ロケットガントレッドを撃ち出した。直撃を受けたマグマイト1騎が吹き飛び、残り2騎の拳を掻い潜る。離脱時に透とカグヤが忍び寄る闇を放った。
『後続が来る。離脱した3騎にも気をつけておけよ!!』
マグマイト部隊に油断はない。しかし、魔皇たちの作戦の方が1枚上手だった。
A班から少し遅れてB班の柊・日月(w3a201)のレプリカント魔凱殲騎・ファントムヴローと筧・次郎(w3a379)のレプリカント魔凱殲騎・ゴキブリが魔凱パーツを装着した。巨体にそれぞれC班の白鐘の殲騎・封神皇とキサラギ・アオイ(w3a266)の殲騎・スニークスター、刀根・香奈(w3g543)の殲騎・双月とジェフト・イルクマー(w3c686)の殲騎・アストレイリーズを載せて加速を開始した。
「私達は長生きする予定ですからね。こんな所で死ねませんよ」
柊はクローに装備した真シルバーエッジに真魔炎剣<フレイムパニッシュメント>を付与した。
「炎の神殿にはだんな様が向かっていますわ。いずれ緋の力は落ちますよ。皆さん頑張りましょうね」
刀根が自分を奮い立たせるように皆を勇気づけた。
「いよいよ、桜島周りの因縁に決着をつける時がきたようですね。桜島神幸祭、存分に暴れさせてもらおうじゃありませんか。砕け燃え散るマグマイトを篝火として」
筧がアームドベースを開放する。
「ロック‥‥」
得意の手帳は今回役に立たない。逢魔・鳩(w3a379)は主の道具‥‥目となり耳となることに徹していた。魔力の闇から逃れるマグマイトへ全砲門を開き、滝のように火線が延びる。バッバババ、ズズンッ!! マグマイト隊は圧倒的な火力に防御するしかない。その隙にC班がB班から降りた。スニークスターが真ラミナデルハルバードを横に構え、隊列を乱したマグマイトの1騎に斬りつけた。双月が真ブレストミサイルの着弾で体勢を崩したマグマイトに真ランスシューターで防御を固めながら接近する。膝関節を真ブレードローラーで蹴りつけ、更に体勢を崩したところで盾の槍をマグマイトの胸に撃ちこんだ。不自然な体勢からくる反撃を真ランスシューターで受けると距離を取り直す。
「手堅くいくか!」
アストレイリーズが真ショルダーキャノンと真マルチプルミサイルを交互に発射して、弾幕で敵を追い込んでいく。そこへA班が3方から突入し、マグマイト隊を囲むようにレプリカント魔凱殲騎2騎が周回する。魔炎を帯びた真ジャンクブレイドを構えた閃輝は、圧倒的な速度に加えて真テラーウィングによる姿勢制御を行い、敵に着実にダメージを与えていた。衝撃波と置き土産の真ワイズマンクロックで陣形を崩し、一撃ごとに離脱していく。カウンター攻撃は間合いを取られ決まらず、もう少しで届くというところまで詰めても真闇影圧<シャドウグラビティ>で押さえ込まれた。
「隠し玉‥‥です♪」
筧は嬉しそうに笑みを浮かべた。
●緋の焔
A班の一撃離脱とB班の弾幕による援護は、今回も効果的だった。緒撃以降、マグマイト隊は未だに体勢を立て直せずにいる。
「ガイザックほど強くない!! 必ず勝つ」
白鐘の指揮により、陣形から綻びた敵騎をA&B班の攻撃軸線上に追い込んで1騎ずつ始末していた。突撃を繰り返したA班にダメージが目立つものの、ここまでは指宿組のイメージ通りに事が運んでいた。
「残り3騎になったわ」
「そろそろだな‥‥ C班は警戒シフトに入るぞ」
ヴァーチャーの奇襲を警戒し始める。
「真スニークスター☆モードチェーンジっ!」
逢魔・シオン(w3a266)が嬉しそうに魔凱をはめた。魔凱パーツが召喚され、シャンブロウ魔凱殲騎・スニークスター、そして凶骨魔凱殲騎の封神皇と双月が現れる。ここまでで魔皇たちに脱落した殲騎はない。
「来ます! 強大な力!」
「ヴァーチャーが来ました〜! 緋の焔です!」
「桜島の火口からよ!!」
祖霊招来を行った沙玖弥、逢魔・シオン(w3a266)、逢魔・陽子(w3g543)が叫んだ。
「来た。皆、準備はいいか?」
「いよいよ緋の焔との決戦ね。武者震いがするわ」
白鐘の問いに、キサラギをはじめとして仲間の応の返事が返ってくる。返事と同時に火山雷を警戒して各騎散開した。
「さあ、噂に名高いお嬢ちゃんのお出ましですね♪ 楽しいデートの始まりです♪」
筧は強敵の出現を楽しんでいた。戦いの中で恐怖は薄れ、歓喜の感情が芽生えていた。
(「この中で恰好のターゲットは多分俺だ‥‥ どうする。考えろ」)
近づけさせない。ジェフトには、それしか考えつかなかった。ただ1騎、魔凱なしの殲騎で参戦したジェフトが採りうる最善の策といえよう。幸い殲騎はまだ戦える。彼は騎体をマグマイト・ヴァーチャーへと向けた。
『あなたたちの出番はここまで』
『焔様ぁ!!』
マグマイト・パワーから噴出した炎が焔のヴァーチャーに吸い込まれ、マグマイト3騎は桜島に落下していった。
「ああ、血が躍りますねぇ。派手なのは柄じゃありませんが、嫌いでもありません。砕けて死んでいけ、傲慢なエイリアンめ」
筧の感情は破綻寸前である。
『私に勝てるわけないでしょう? 私がヴァーチャーに乗っているのですもの。そんなことも判らないのかしら?』
機嫌がいいのか、いつもの断定口調の質問はない。
「天都神影流、白鐘剣一郎‥‥ 封神皇推参っ!! 多くを語るつもりはない」
封神皇はヴァーチャーと正面から対峙した。
「白鐘さん、無茶はしないで下さいね。生きてこの翡翠の地を再生させるためにも」
双月が封神皇の側へ寄る。
『いいわよ。相手になってあげるわ』
ヴァーチャーの6枚羽が輝きだし、周囲に赤紫の雲のような物が発生する。
「「「大地の放つ雷!!」」」
祖霊の声に思わず陽子たちが叫ぶ。
「雷雲です。一撃離脱を」
シェリルの声に反応した真田は、すれ違いざまに真ワイズマンクロックを放った。隙は大技の後とよく言うが、今回は放つ前の一呼吸が最大の隙。事前の分析でそう判断されていた。ファントムヴローが全弾発射し、ゴキブリも後背をとりながら真狙撃弾<スナイピングシュート>を放って離脱する。スニークスターも散開しながら真狙撃弾を放った。これで火山雷が防げれば御の字。しかし、そううまくはいかない。
「火山雷‥‥来るわよ、剣一郎クン!」
「了解。悪いが、その一撃は御免被る」
真テラーウィングで突風攻撃をかけながら封神皇を下がらせ、雷がヴァーチャーに集まった瞬間を狙って大鎌を投げた。雷撃は避雷針代わりに投げた大鎌に当たり、大技が不発に終わった。
『やるわね。でも大鎌なしで、どう戦うつもりかしら』
緋の焔が封神皇を狙おうとした瞬間、時空飛翔して上空1kmで魔凱殲騎を召喚終えていた刀根と陽子は真狙撃弾を撃った。仲間たちも再び包囲網を作り、援護射撃を開始する。ミサイルをかわしながら迫るヴァーチャーへ封神皇は真ジャンクブレイドを構えて立ち向かう。
「天都神影流、双翔閃・連環舞!」
兆予見撃<メガフォーリサイト>を使ったのを見計らって、研鑽を重ねた剣技を叩き込んだ。双月が真六方閃<ヘキサレイ>を撃ちながら背後を取って大鎌の一撃をくらわせ、スニークスターが真ラピッドクロスボウを連射した。一斉に加えられたその一撃一撃に火炎剣が届く範囲で反撃が繰り出される。
「何っ? 効果時間があるのか!」
魔皇たちは兆予見撃<メガフォーリサイト>を予見撃<フォーリサイト>のダメージ強化版と読み違え、完璧な連携を重視した同時攻撃が仇になっていた。すぐに包囲戦に移ったが、このダメージが完全に予定を狂わせ、決め手を欠かせ‥‥そして消耗戦に突入した。
「日月様‥‥」
自らの傷を省みず逢魔・ぺトルーシュカ(w3a201)が魔皇様への想いの能力で柊を回復させる。ファントムヴローは片方のウェポンベイを失っていた。幻影の籠手を使ったフェイントも通用しなかった。
「九十九式神技、神薙」
「神速は‥‥2度と目に映ることはないでしょう」
真狼風旋<ハウンドヘイスト>を用いた超高速連続攻撃‥‥の筈だった。だが、ヴァーチャーはそのほとんどをかわし、反撃してくる。ツァウベルフリューゲルは戦篭手の一撃を食らって落下を始めた。
そのとき桜島から巨大な噴煙が上がった。
「要パパや雪嶺君がマザーを倒してくれた。今のうちに力の弱った焔を!!」
陽子が刀根に抱きついた。各騎のミサイルや弓が一斉にヴァーチャーを襲うが、その動きに鈍さは感じられない。
『フフフ‥‥ アハハハハ!! あなたたちの作戦ってマザーからのエネルギー供給を断って、弱った私を討とうということなの? フフッ‥‥ アークエンジェルは自らの神輝力で活動しているの。テンプルムは下級天使の統括や感情搾取に必要なだけなのよ。ククッ』
魔皇たちの顔が青ざめる‥‥
『テンプルムなんて落とされても、惰弱な周辺のテンプルムを接収すればいいだけのこと。随分と楽しませてもらったわ』
噴煙を上げる桜島をバックにマグマイト・ヴァーチャーが火炎剣を構えなおした。
『そろそろ、あなたたちの最期‥‥ テンプルムと引き換えに魔皇たちも随分と掃除できたし、私がいれば鹿児島テンプルムの再建は可能なの。残念だったわね‥‥ なにっ!? 新手なの?』
ヴァーチャーの左腕を吹き飛ばすのと引き換えに、突如現れた凶骨魔凱殲騎は撃破された。
「彩門!!」
この綻びからヴァーチャーの優位が徐々に失われていく。
●決戦
ヴァーチャーとの戦闘は熾烈を極め、既に封神閃、ヴォイド1、アストレイリーズの3騎しか残されてはいない。アストレイリーズは真狼風旋<ハウンドヘイスト>を用いても互角とはいえず、距離をとるために放った真獣刃斬<ハウリングスラッシュ>は火炎剣に弾かれた。
「出力、維持できませんわ!!」
逢魔・セラティス(w3c686)は叫びながら凝縮する闇を使った。ヴァーチャーの火炎剣がアストレイリーズに迫る。
『これで終わりね‥‥ ?』
神聖なる光を宿すはずだった火炎剣は、その輝きを帯びなかった。最後の力を振り絞ってアストレイリーズはヴァーチャーに真ジャンクブレイドを叩きつける。
「チャンスは無駄にはしない」
「大丈夫。信じて‥‥ 私たちがきっと勝つことを」
「勝負だ焔。我は神を封ぜし皇なり!!」
気合一閃、白鐘は自らの流派の奥義を叩き込んだ。
「天都神影流奥義、封神閃・断空牙ぁっっ!!」
ついに騎体が割け、ヴァーチャーが爆発した。
「やった‥‥」
魔皇たちが一瞬気を抜いたその時、爆炎の中から少女が躍り出た。緋色のワンピースは焼け落ち、その胴には緋色の竜の如き鱗が見える。
「まだ終わらない!!」
大剣を振るうとヴォイド1の翼を斬り飛ばす。
「終わらせて、後の仕事は地球を守る五人の刑事に任せたいですよ」
「透、これが最後の大アバレだ!」
覚悟を決めた小沢が真クロムブレイドを振るう。大剣を弾き飛ばされながらも殲騎の胸部に取り付いた緋の焔には、既に下半身がなかった。
「魔のなき世界をぉぉぉぉ」
恐怖に魔皇たちが絶句する中、緋の焔は霧となって四散した。
「全く‥‥最初はただのイッシー調査だったのにな。まさかこんな大勝負に最後まで付き合う事になるとは思わなかったぞ」
小沢はいつの間にか眠ってしまっていた。
「佳苗も待ってる‥‥ 帰るかぁ‥‥」
気絶しているカグヤ背負い、御剣は殲騎の残骸から脱出した。セラティスは座り込んだジェフトの胸に寄りかかるように静かな寝息を立てている。そして、気を失ったシェリルを抱えるように意識を失う真田。誰一人として無事なものはいない‥‥ だが、欠けた者もいなかった。それがどういうことを意味するのか考える余力すら指宿組には残されてなかった。
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