■猫耳病の謎を追え! その3ニャ☆■
商品名 流伝の泉・キャンペーンシナリオ クリエーター名 マレーア
オープニング
●魔皇捕獲作戦
 聖マジョンナ病院は忙しい。
「急患よ急ぎなさいぃぃーっ!!」
 担架に乗せられて集中治療室に担ぎ込まれたのは、仮面かぶったまま意識不明のグレゴール。先の野球場での戦いの負傷者が次々と運び込まれて病室のみならず廊下にまであふれ、さながら野戦病院の有様だ。
「はぁ‥‥これでは研究どころじゃない」
 ぼやいているのは、実は正体魔皇で病院に潜入中の研究員、猫観である。
 集中治療室のドアが開いて、女医グレゴールのマジョンナが現れた。
「あらドクター猫観、応急手当は済んだかしら?」
「ええ、一応は」
「そう。じゃあ時間も遅いし、もう帰ってもいいわよ」
「患者さんたち、大丈夫でしょうか?」
「放っといても死ぬような連中じゃないわ」
 出入口のドアの向こうに姿を消す猫観。それと入れ違いにやって来たのは、地獄のミストレスことヘルカッツェであった。
「お姉さま〜☆ ヒマだから遊びに来ちゃった〜☆」
「もぉお前ったらこの忙しい時にぃ!」
「ところでさ〜、あの猫観って研究員だけど、なんか怪しくない? 素振りからして魔皇のスパイのような気もするんだけどな〜」
「そんなことは百も承知よ!」
 つっけんどんに言い返すマジョンナ。
「だけど猫観を絶えず監視していれば、ヤツは必ず尻尾を出すはず。そうすれば魔皇に切り込むチャンスが生まれるわ。ということで、これも計算のうちよ」
「で、プロジェクト・猫耳のことなんだけど〜」
「ああ、それなんだけど‥‥サーバント使って動物実験したり、グレゴールで人体実験してみたけれど、ついぞ目的とするウイルスを造り出すことはできなかったわ。風邪のように感染力が強くて、あっという間に広まって、それこそ町中の人間を一人残らず猫耳に変えてしまうほどに強力な猫耳病ウイルス・サーバント、それを造り出すには何かが欠けていたというわけ。こうなったら、残された手段は一つしかないわ!」
「お姉さま、まさか!?」
「そう。魔皇を捕まえて実験体にするの。強大な魔力を備えた魔皇の肉体を使ってウイルス・サーバントを変成させれば、目的のウイルスを作り出せる! というより、考えられる方法はそれしかないわ! そうと決めたら、さっそく準備よ」
 マジョンナ、パソコンに向かうと通信モードに入った。
 ムチムチのミニスカ制服を着た女が画面に現れる。
「あらマジョンナ、この私に何の用かしら?」
「お姉さまの力を借りたいの。例のアレは?」
「ああ、これのことね」
 画面がズームアウトし、女の背後に鎮座する巨大な物体の姿が明らかになる。
 戦車だ。少なくとも見た目には、回転砲塔を備え、キャタピラ走行する鋼鉄の塊すなわち戦車そっくりだ。
「この鋼鉄の淑女・ドロンジの一大傑作、対魔皇決戦兵器・重戦車ティーゲルの実戦投入、ワクワクするわね〜」
「グマァァァ〜ッ! シャァケベントォォォーッ!!」
 戦車が吠えた。‥‥なぜだろう?(白々しい棒読み)
「しずかにおし!」
 ドロンジ、ピンクのブーツでガンと戦車をけとばす。戦車はおとなしくなった。
「いいえお姉さま、魔皇の殲滅ではなく魔皇を捕獲して欲しいの。それも生きたままで」
「魔皇を生きたままで? ‥‥となると改造が必要ね。砲塔両側にマジックハンド、後方に収容車両を取り付ける。こんなところかしら?」
「頼むわお姉さま。できるだけ早くお願いね」
 ところが会話の一部始終は、部屋の外で聞き耳立てていた猫観に筒抜けだったりして。
「‥‥まったく。どこまで計算してるんだか」

●ニャンダラケ増殖中
 ところが、神帝軍が必死に研究を進めている強化猫耳病ウイルスは、実は魔皇たちの手によって造り出されていたのである。それも偶然ともいうべき成り行きの結果で。
「うう〜、頭痛ぇ〜。体だるい〜。熱がぁ〜」
 ソファでうめいているのは、記念すべき魔皇の猫耳病患者第2号。
「頭痛、発熱、体のだるさ、この風邪のような症状は、体の免疫系が猫耳病ウイルスと戦っている証拠さ」
 魔皇ドクターが解説しながら、二つの顕微鏡写真を示す。
「こちらが魔皇の猫耳病第1号、小野澤瑞貴の血液サンプル。ご覧のように抗体の数が非常に少ない。で、こちらが第2号のサンプルだが、もうこんなに抗体が出来ている。抗体の数の差は個人の体質の差によるものだが、この抗体があって初めて、血清による猫耳病の治療が可能になるわけだ」
「つまり、俺の血液が役に立つってことね。で、この症状はいつまで続くんだよ?」
「それは分からない。が、そのうち治るだろう」
「で、あれはどうする? あれを神帝軍に渡すわけにはいかないだろう?」
 にゃああああ! にゃあああ! にゃあああ!
 あの猫耳病の感染源の植物サーバントを保管している部屋がやけに騒がしい。逢魔ドクター、扉を開けて中をのぞいて言葉を失った。
 花の代わりに猫の首を生やした植物サーバント、いやこれはもうニャンダラケというべきか。その数がいつの間にか1本から5本に増えている。
「‥‥おい、増殖してるぞこいつら」
シナリオ傾向 スチャラカ・出たとこ勝負
参加PC 二神・麗那
榊・紫翠
メレリル・ファイザー
紬・玄也
奉丈・遮那
風羽・シン
ジェフト・イルクマー
北原・亜依
ケヴァリム・ガルゥ
神無月・玲香
竜崎・海
風間・総一郎
緋月・玲
早坂・榮
焔・龍牙
猫耳病の謎を追え! その3ニャ☆
●対魔皇決戦兵器
 魔皇のアジトのお昼時。
 漂ってくるいい匂いに感づいて、ニャンダラケのニャンコの首が合唱を始める。
 にゃあ! にゃあ! にゃあ!
「はい、あ〜んして」
 今日の料理はイタリア料理。逢魔・ノシューア(w3i842)が鶏肉のトマト煮の一欠片を口元に運んでやると、ニャンコの首がパクっとかぶりついた。
「‥‥へえ。こいつら、お肉を食べるんだ」
 ケヴァリム・ガルゥ(w3d147)が感心したように見つめている。
「ガルゥさん、しっかり食べて体力を回復してくださいね! シンヤくんリカちゃんレイさんもこちらに来て一緒にどうぞ」
 焔・龍牙(w3i842)が訊いてきた。
「ガルゥ、調子はどうだ?」
「うにゃ〜。慣れない風邪症状でフラフラで〜す」
 龍牙、今度は緋月・玲(w3h207)に訊く。
「どうだ玲、血清は生成できそうか? 血清がないと何も出来ないからな!」
 ノシューアが隣から龍牙を小突いた。
「龍牙! そんなに急かさない!」
 緋月が食事しながら答える。
「血液サンプルを取り、ひとまず抗体の分離には成功した。あとはこの抗体が人間にも効くかどうかを確かめるだけだが‥‥」
 すると、点けっぱなしのテレビが緊急速報を告げる。
「山口市民の皆様、魔皇警報の発令です。山口市○○町○−○−○、○○マンション○○○号室に魔皇のアジトがあることが、神帝軍の調査により判明しました。これより神帝軍との間で激しい戦闘が予想されますので、付近の住民は直ちに避難してください」
「ついに来たか!」
 素早く決戦モードに切り替わる魔皇たち。ジェフト・イルクマー(w3c686)が、逢魔・セラティス(w3c686)が、花粉対策の防塵マスクを装着し、厳重に目張りした段ボールの中にニャンダラケを詰め込む。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥。重々しいキャタビラの音が、地響き轟かせて近づいてきた。
「龍牙、グレゴールが来ました。それも戦車に乗って」
 窓から外を伺ったノシューアが龍牙に報告。
「分かった、ノアはシンヤ達を連れて避難してくれ」
 戦車はアジトのマンション前で停車。砲塔が回転し、砲身をアジトに向ける。
 その戦車の姿を一目見て、魔皇たちは言葉を失った。猫の首そっくりの砲塔。猫足デザインのキャタピラカバー。しかも砲塔両脇に巨大なマジックハンド。さらにナンバープレート付き。
「な?! ‥‥ナンバープレートがちゃんと【にゃまぐち】になってる‥‥しかも登録済みだと? ‥‥あの機能美を追求した無駄のないデザイン‥‥猫をモチーフとしながらも力強いボディ‥‥そしてあのエンジン‥‥何というか‥‥非常に格好良い‥‥」
 ジェフト・イルクマーが脂汗を垂らしながらつぶやいた。
「感心してないで、攻撃しましょう」
 今にも飛び出さんばかりのセラティス@狐耳付きをジェフトが制する。
「向こうが攻撃してこない限り俺は手を出さない。‥‥いや、だって勿体無いし」
「ジェフトさん‥‥時々あなたの事を理解し難くなります」
 戦車の上に人の姿が見える。ピンクのミニスカ軍服をまとい、長い髪をたなびかせた女グレゴール、鋼鉄の淑女ドロンジだ。拡声器で魔皇たちに呼ばわる。
「アジトに立て籠もっている魔皇に告ぐ! 無駄な抵抗はやめて直ちに投降せよ!」
「まさかとは思うが‥‥街中で砲撃とかしないよな?」
 ジェフトがつぶやくや戦車の砲身が輝き、まばゆく輝く砲弾が放たれた! 光の砲弾はマンションの壁をするりと透過。そしてアジトのど真ん中で爆発した。
 どがああああああん!!
 神輝力の衝撃波でマンションの壁に叩きつけられる魔皇たち。
「‥‥って、言ってるそばからきた!?」
「戦車だと? だからどうしたぁ! そんなもん俺達が粉砕してやる!!」
 風間・総一郎(w3g774)がショルダーキャノンをぶっ放す。だがその炸裂弾が到達する寸前、戦車全体が神輝力の輝きに包まれた。
 ぼおおおん!!
 炸裂弾が着弾し、派手に爆発する。だが戦車には傷一つついていない。
「何っ!? キャノンが効かない!?」

 戦車の中では操縦手担当の宇宙刑事ファスナーと砲手担当の濃・スモウキング・ザ・ドーンが感服していた。
「さすがは対魔皇決戦兵器。シャイニングフォースを付与した魔障壁アクティブ装甲はまさに鉄壁の防御力だ」
「人や建物に危害を及ぼさず、魔皇のみを殺傷する神輝砲の威力もな!」
 戦車長ドロンジが声を張り上げる。
「この重戦車ティーゲルの前に、魔皇たちは独軍バルバロッサ電撃作戦で蹴散らさせるソ連兵も同然。徹底的に叩いておしまい!」
「「阿羅法羅殺殺!」」
 お約束のかけ声が返ってきた。
「ティーゲル、全速前進!」
 アクセルを踏み込む操縦手。
「グマァァァァァァァァーッ!!」
 進み始めた戦車が猛り狂ったように吠える。‥‥なぜだろう?(白々しく以下略)

●緊急手術だっ!
 ここは山口市内、湯田温泉郷のキャンプ場。
 ワゴンの中で奉丈・遮那(w3c047)とノシューアが、そっと外を見渡す。
「ここまで来れば一安心、かな?」
「とりあえず、一休みしましょう」
 ニャンダラケのダンボールと一緒に座席に押し込まれていたガルゥたち猫耳病患者たちが、ぞろぞろと降りてきた。
「よ〜し今のうちにトイレ、トイレ」
「外の空気はおいしいにゃ〜♪」
 彼らは仲間たちが戦車と戦っている隙に、ここまで逃げてきたのだ。
「‥‥嫌な予感がする」
 榊・紫翠(w3a670)がつぶやく。それを逢魔・聖架(w3a670)が聞きとめる。
「ただの予感でしょ? ‥‥でも紫翠の予感って、たまに当たるから‥‥あっ!」
 予感は的中。向こうから見覚えのあるリムジンが走ってくる。
「‥‥大当たりだ。‥‥渡せるか? ‥‥守ってみせる」
「そこのリムジン止まりなさい!」
 ワゴンの前に立ちはだかる紫翠と聖架。リムジンが止まり、中からヘルカッツェが降りてきた。
「あ〜らこんな所でばったり出会うなんて、奇遇ね〜。ところで、その車に積んだダンボールの中味は何かしら?」
「おまえには渡さないわよ!」
 聖架の氷の壁がヘルカッツェを阻む。
「ふん! 所詮は幻覚ね!」
 シャイニングフォースは防げても物理攻撃は防げない氷の壁。ヘルカッツェはそのまま壁の向こう側に歩いていった。ところが、そこには緋月・玲(w3h207)と逢魔・ウィルベル(w3h207)が待ちかまえていた。
「ハイキング中よ邪魔しないで!」
 ばぉん! フライパンでヘルカッツェをぶっ叩き、倒れたところを緋月・玲が押さえ込む。
「オペの開始だ、メス!」
 雷神の短刀であっという間に服を切り裂く。
「いや〜ん! お医者様のえっちぃ!」
「心肺停止だ!」
 電撃ぶちかまし。
「ひぃ〜っ!」
「解剖だ!」
 止めを、ぷち☆っとな。
「きゃ〜〜〜っ!」
 これ以上は自主規制! 悶絶したヘルカッツェを置き去りにして、魔皇たちを乗せたワゴン車は走り出した。

●森へお帰り
「来たな‥‥」
 物陰でシャケ弁当をパクついていた風羽・シン(w3c350)の耳が、接近する戦車の轟音を捉える。
「はぁ‥‥もういい加減この手のは終わりにして欲しいよ‥‥」
 例のごとくぼそっとつぶやく逢魔・ロンベルディ(w3b375)。
「さて‥‥性懲りもなくまた来たか。まぁいい、今度という今度は徹底的にもう何も出来ないくらいにしてやればいい‥‥くくく‥‥」
 道路のど真ん中に仁王立ちした紬・玄也(w3b375)、突進してくる重戦車ティーゲルをしっかと見据える。
「熊殺し猛虎の苦露夜参上! 今日も貴様を打ち倒してくれよう!!」
 ヒット・エンド・ランで立て続けに真狼風旋をぶち込むと、戦車からドロンジが怒鳴り返す。
「無駄無駄無駄無駄ぁ!」
 がごっ! 急に戦車が前に進まなくなった。“こんなこともあろうかと”逢魔・刹那(w3c350)が設置した戦車止めトラップがキャタピラに引っ掛かっている。
「よしっ! 足止め成功だ! 次はマジックハンドの破壊だ!」
 戦車砲の死角から、風羽・シンが真ショルダーキャノンで砲撃。紬・玄也が右のマジックハンドにシューティングクローを撃ち込み、ワイヤーで拘束。続いて風間・総一郎が戦車に斬り込む。
「戦車がどうしたぁ! 貴様らに捕まるほど俺達は弱くねぇぞ!!」
「おのれぇ! 神帝軍の栄光、やらせはせんぞぉ!」
 操縦手ファスナー、目一杯にアクセルを踏み込む。
「グマァァァーッ!!」
 戦車が吠え、トラップを破って再び前進開始。
「神輝砲、エネルギー充填120%!」
 神輝力の輝きを帯び始める戦車砲。
「5、4、3、2、1、どすこぉい!!」
 スモウキングが戦車砲をぶっ放す。神輝力の衝撃波で魔皇たちが吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。と、砲手と操縦手の目が点になった。
「むむっ!?」
「こ、このネタは‥‥もしや!?」
 現れた新たな人影。逢魔・アサミ(w3c968)だ。その姿たるや防毒マスクにゴーグルに青い合羽に青いワンピース、ついでに虫笛。これはまさか!?
「おぉ‥‥光を失ったわしの目にもはっきりと見えるぞ。その者蒼き衣を纏てうんたらかんたら‥‥古き言い伝えは真であったか‥‥」
 そこまで言い切った途端、紬・玄也はロンベルディに殴られた。
「マスターはまだ目はしっかり見えてるでしょ!」
 そんな二人にお構いなく、アサミが虫笛振り回しながら言う。
「森へお帰り。ここはお前の来るところじゃないのよ」
 言って、妖精のつむじ風を発動。旋風が戦車を包む。すると、またも戦車が神輝力の輝きを放つ。‥‥作戦失敗。敵の誰も別の場所には吹き飛ばされなかった。
「魔皇め! 貴様ら著作権が怖くないのかーっ!?」
 怒鳴るドロンジにアサミが言い返す。
「その言葉、そっくりあなた達に返してあげますわ!」
 言うが早いか、戦車のマジックハンドがアサミに伸びる。
「きゃ〜〜〜っ!!」
「しまった! アサミが!」
 マジックハンドに捕らえられて暴れるアサミ。
「くらえ魔皇どもめ!」
 再び輝き出す戦車砲。と、まさにその時を狙い、神無月・玲香(w3f486)がショット・オブ・イリミネートをぶちかます。直撃をくらって傾ぐ砲塔。
「思った通り。神輝力を戦車砲に充填する間は、本体の防御に神輝力を回せないというわけね」
 玲香、真ヘルタースケイル振りかざして戦車に突撃。つかみかかってきた左のマジックハンドをばっさり切り捨てる。
「じゃ〜ま〜よ。今はむしょうに暴れたい気分なの」
 さらに風羽・シンがキャノンで右のマジックハンドを破壊。捕まっていたアサミを助け出した。
「魔皇め! よくも神輝砲を! こうなったら戦車で轢き潰してやる! 魔障壁アクティブ装甲フルパワー!」
 神輝力の輝きがさらにアップ。操縦手ファスナーは狂ったように戦車を走らせる。道の街灯が、標識が、次々と薙ぎ倒されていく。
「これはいかん! 安全な場所に誘導しなくては!」
 逃げる魔皇たち。それを追う戦車。と、いきなり戦車が追うのをやめ、くるりと向きを変えた。
「グマァァァァーッ!!」
「どうした!? 何が起きたんだ!?」
 風羽シンは見た。戦車の進行方向に二人の人影。二神・麗那(w3a289)とメレリル・ファイザー(w3a789)だ。
「いや〜! 何よこれ〜っ!!」
「どうして戦車が追いかけてくるのよ〜っ!!」
 慌てて逃げる二人の手には、お弁当の包みが握られている。
「シャァケベントォォォーッ!!」
 戦車が吠える。シンは悟った。
「そうか、シャケ弁当か!」
 すかさず、シンは逢魔・レイナ(w3g774)と逢魔・リゥ(w3d147)に伝える。
「ありったけのシャケ弁当を買ってこい! それで戦車を誘導する!」

●潜入工作失敗
 ここは聖マジョンナ病院。応接室では早坂・榮(w3h873)がマジョンナに突撃インタビュー。
「マジョンナさん、なんで猫耳病赤ちゃんの家族には、聖マジョンナ病院から多額の見舞金が支払われているんです? それどころか、治療費やメディアからの報酬も全て家族にわたっているそうですね? これ、考えようによっては、それで家族に何か隠させているようにも感じるんですけどねぇ?」
「鋭い指摘ね。もっとも、その疑問に今すぐ答えるわけにはいかないわ。今は魔皇相手に戦争進行中の非常時。機密保持のために隠すべき情報もあるってことよ」
 ぼおおおおん!! 研究室のほうで派手な爆発音がした。マジョンナ、にやりとほくそ笑む。
「どうやらその魔皇が、神輝力トラップにかかったようだわ」
「あたしもその魔皇の顔、おがんでやるわ」
 マジョンナにくっついて研究室に入った早坂・榮は、床に倒れている北原・亜依(w3c968)を見た。
「これが、魔皇?」
「入院患者になって病院に潜入し、私のパソコンに細工しようとしたようね」
 看護婦がやって来て、早坂・榮に目配せする。実はその看護婦、ナース服着た逢魔・レティエル(w3h873)とと逢魔・モーヴィエル(w3a789)だった。
「これで魔皇のサンプルも手に入ったことだし、実験の準備を始めてちょうだい」
「分かりましたわ。マジョンナ様」
 レティエル、倒れた亜依を移動ベッドに乗せると、こっそりと出口へと運び出した。
「それじゃ、あたしも忙しいからこれで帰るわ〜」
 榮もレティエルの後から部屋を出ていく。

●血清完成間近!?
「は〜い、熊さんこっちよ〜」
 ありったけ買い込んだシャケ弁当を逢魔・ディルロード(w3a289)に運ばせて、レイナとリゥが戦車を誘導する。ここは、山口市内を流れる一の坂川の橋の上。戦車は橋の手前まで来ていた。
「シャァケベントォォォーッ!!」
 戦車が橋を渡り始めたその時を狙い、魔皇たちがわらわらと戦車の後ろに群がり、戦車を川に向かって押し出す。
「破壊するのは本当に惜しいが‥‥ならばせめて俺の手で爆砕する。お前が熊だったのが運の尽きだ。落ちろ!」
 満身の力を込めて押しやるジェフト・イルクマー。戦車が橋の欄干をぶち破る。そのまま戦車は一の坂川へ。砲塔を下にしてひっくり返り、そして動かなくなった。それを橋の上から見下ろして、紬・玄也が高笑い。
「熊ごときがこの猛虎の苦露夜に勝てると思ったか!! ふははははははは!!!!」

 それから数日後。緋月・玲の研究室にて。
 竜崎・海(w3f521)、逢魔・ヒナ(w3f521)、ウィルベルが感染予防のマスク装備でガルゥの看病と血清作製の作業を続けている。
「ガルゥ、気分はどうだい?」
「うん。前と比べたらずっとよくなってきた」
「見たところ前より顔色もいいし、猫耳も小さくなっているしな」
 密が様子を見にやってきた。
「様子はどうですか?」
「あ、密か。これを頼む」
 竜崎は密に一通の書状を渡す。
 緋月・玲は血清のテスト中。
「これが成功すれば患者の為、そして我が野望のため‥‥」
「ん? 何だか頭がムズムズ‥‥きゃーっ! 何これ!?」
 ウィルベルが頭を抑えて叫ぶ。その頭にはしっかりと猫の耳が。
「大変だ! ウィルベルが猫耳病に!」
「玲! さてはマスクを不良品にすり替えたわね!」
「許せ! これもベル生猫耳化計画のため‥‥」
 言いおわらぬうちに、ウィルベルは玲を容赦なくどつき倒した。
 はっとして、ぐったりとなった玲に気づき、
「やだ。これじゃまるで、わたしが暴力女みたいじゃない」
 可愛く、叩いた積もりなのに‥‥。猫耳病でパワーアップでもしたのだろうか?


 逢魔・ウィルベル(w3h207)‥‥猫耳病!!