■学生服サロンvsブルマ08小隊vsパジャマ☆club■ |
商品名 |
流伝の泉・ショートシナリオEX |
クリエーター名 |
菊池五郎 |
オープニング |
徳島テンプルム――徳島県徳島市の県庁の上に浮かぶ、徳島県を担当するノーマルテンプルムである。
去る3月15日、東京ギガテンプルムが魔皇達の総攻撃によって陥落し、更に【翡翠決戦】に於いて、“巌皇”ペトロが死亡した事で、徳島テンプルムはどの13使徒にも従わず、今までと変わらない、徳島県民から感情を搾取し続ける方針を貫いていた。
その日、徳島テンプルムのネフィリム格納庫に、一機のネフィリムが降り立った。
殲騎・ピュアホワイトより更に女性らしい丸みを帯びた白銀に輝く機体は、インファント・テンプルムが生み出したネフィリム“マグダラのマリア”だった。
乗っているのは、グレゴールの戒めから解き放たれ、神帝軍から造反したグレゴール・珊瑚(―・さんご)だった。
マグダラのマリアの行く手を遮るように、徳島テンプルムを管理するアークエンジェル・アールマティの駆るネフィリム・ヴァーチャーが対峙した。
『どういう風の吹き回しですぴょん?』
「今日は話し合いに来ましたの」
アールマティが用件を聞くと、珊瑚はマグダラのマリアから降り立った。
珊瑚は白地に青い襟のスタンダードなセーラー服を身に纏っていた。
片や、ヴァーチャーから降りたアールマティは、ウサ耳に大きな白いグローブ、露出を抑えたバニースーツといった、ぴょんぴょんスーツを着ていた。だが、下半身は相変わらず馬の胴――ケンタウロス――だった。
「わたくしはユディット様の、インファント・テンプルムの意志に従っておりますわ。そして今、鳴門市を治めているのはわたくし‥‥今後一切、鳴門市は徳島テンプルムに従わない方針を固めましたの」
「つまり、市ごと離反するという事ですかぴょん?」
「コマンダー様は物分かりがよくて助かりますわ。もちろん、ただでとはいいませんわ。わたくし、“学生服サロン”を立ち上げて、コマンダー様に勝負を挑みますわ」
珊瑚はスカートを翻しながら、アールマティに戦線布告をした。
「ちょ、ちょっと待つぴょん」
アールマティの動物スーツは一度敗れていた。
しかも珊瑚が着ているセーラー服を始めとする学生服は萌えの基本であり、根強い人気を誇っている事は間違いなかった。しかも最近は、某お嬢様高校の小説が人気を博しており、当然珊瑚はその制服も押さえているに違いなかった。
負けた動物スーツで再び勝負を挑む程、アールマティも脳天気ではなかった。
「分かりましたぴょん‥‥私のもう一つの萌えで、その勝負を受けますぴょん」
勝負を受けてたったアールマティの、もう一つの萌えとは――。
「――という訳で、四度目の今度は徳島市と鳴門市の二都市にまたがって、民主主義の名を借りたテンプルムによる市民投票が行われる事になりましたの」
インプの密・パルステラは、呼び寄せた魔皇達に依頼内容を説明した。
「今度は『女性には学生服とブルマ&体操着、どちらが似合うか』という投票ですの。十四歳以上四十歳未満の女性は、投票日まで外出時は学生服かブルマと体操着のどちらかを着なくてはいけないそうですわ」
両方とも女性なら一度は着た事がある制服だから、後は歳と好みの問題だと女性の魔皇は思った。
「この市民投票の首謀者はアークエンジェル・アールマティと、グレゴール・珊瑚ですわ。アールマティは“ブルマ08小隊”を徳島市に、珊瑚は“学生服サロン”を鳴門市に発足して宣伝を行なっておりますの。今のところスクール水着を傘下に加えたブルマ08小隊が男性の、学生服サロンが女性の支持を受けているようですわ」
支持率が拮抗しているというその結果に、男性の魔皇は納得した。
「魔皇様達には、この制服聖戦をできるだけ速やかに止めて欲しいのですわ。今まではお手伝いできませんでしたが、今回はあたくし達徳島の密も“パジャマ☆club”を立ち上げて、全面的に魔皇様達のバックアップを致しますわ」
パルステラもやる気満々のようだった。
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シナリオ傾向 |
制服 萌え |
参加PC |
ヒール・アンドン
ヒロナカ・シュウスケ
葵・純
天道・白虎
白神・朔耶
倉見・織
七瀬・鈴音
サイガ・ツルギ
巽・弥生
ラディス・レイオール
アルト・ハーニー
橘・雪
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学生服サロンvsブルマ08小隊vsパジャマ☆club |
●パルステラもインプだから‥‥
徳島県を統治するコマンダー・アールマティと、鳴門市を管轄するグレゴール・珊瑚の制服の萌えの対立から勃発した第四次制服聖戦に、インプの密・パルステラが魔に属する者として正式に参加を表明した。
「‥‥ふむ、パジャマ☆Clubはなかなかの攻勢の様じゃな」
「‥‥学生服サロンも、負けてはいませんね‥‥五分五分、といったところでしょうか‥‥」
「確かにパジャマもいいんですけどね〜。うぅ〜、ブルマを! スク水着を! 着ている人が、ほとんどいないじゃないですか〜!!」
「魔皇様〜、道の真ん中で泣きながら力説しないで下さいよ〜」
「うーん、流石にブルマとスクール水着は、着る人と場所を選ぶからね」
JR徳島駅前の通りを歩いていた白神・朔耶(w3e749)は、昼下がりの平日とはいえ、多くの人が行き交う光景に複雑な表情を浮かべた。ヒール・アンドン(w3a705)が見た限り、往来する女性の半分近くがスタンダードなパジャマか、セーラー服やブレザーといった学生服を着ていた。
体操服&ブルマを着ている女性は10人中1人いればいい方で、密かに楽しみにしていた葵・純(w3e098)は想いの丈を叫んだ。逢魔・セリス(w3e098)はおろおろするばかりだが、逢魔・ヒカル(w3a705)はいつもの事と切り捨て、“ブルマ08小隊”が流行らない理由を説明してあげた。
「んふふ〜、今回はパルステラも一緒だし、朔耶にも頑張ってもらって、気合い入れて勝ちに行かないとね〜♪」
如何なる神帝軍を相手にしようとも物怖じ一つしない朔耶だが、今回は些か勝手が違っていた。朔耶の逃げ出したい心情を無視して、逢魔・鵺(w3e749)は盛り上がっていた。
パルステラが部長を務めるパジャマ☆Clubは、市街地の中央を走る国道438号線沿いのインテリアショップを間借りして、部室代わりにしていた。
元々寝具を扱った店で、店内には様々なベッドが置かれ、パルステラ達密が持ち込んだ各種パジャマがそれに彩りを添えていた。
「パルステラ、ご苦労様〜♪ ん‥‥んふふ〜、素敵なネグリジェね」
「シャネルの5番ですね〜」
純達を出迎えたパルステラの唇に一番近い頬に、鵺が朔耶達の目の前で挨拶のキスをした。
セリスの感想は故マリリン・モンローの有名な台詞だった。「何を着けて寝ているのか?」と取材で聞かれたマリリン・モンローは、「シャネルの5番」――つまり香水以外何も付けていない――と答えたのだ。
パルステラのネグリジェは下に着ている影の服がくっきりと浮び上がっており、ヒカルは着ている意味がないのではないかと思うと同時に、このネグリジェを大っぴらに着たかっただけではないかと、その真意を慮った。
「大人の魅力は鵺さんとパルステラさんにお任せして、私達はただ着るだけではなく、パジャマと小道具、そしてシチェエーションの組み合わせ次第で、どんな萌えにも対応できる事をアピールして行きましょう! 相応しい女傑が揃っていますからね!」
「‥‥部室を使って、写真撮影会を開きましょう‥‥みんなにパジャマを着てもらって、別々にベッドの上で写真を撮るのです‥‥大勢の人に来てもらう為に、ポスター等で告知した方が良いですね‥‥」
(「‥‥お主の言うパジャマを着るに相応しい女傑とは、ロリっ娘か!? ロリっ娘の事なのか!? ‥‥わし‥‥何でこんなところに居るんじゃろうか‥‥」)
純が室内を見渡すと、パルステラ以外の密は普通のパジャマを着ていたが、それだけでは他の勢力に対して押しか足りないと感じ、写真撮影会を提案した。するとヒールも同じ事を考えていたようで、シチュエーションの説明や告知の方法を純を交えてパルステラと打合せを始めた。
最近ロリっ娘が板に付いているとはいえ、朔耶は激しく落ち込んだが、慰めてくれるはずの鵺からして既に乗り気だった。
その日の夕方から、写真撮影会に向けた告知ポスターの撮影が始まった。
朔耶は正統派のパジャマだが、素肌の上に直接着ている上に、ズボンは穿いていなかった。そして手にはディフォルメした狐のぬいぐるみを持っていた。
「‥‥ふにゅ‥‥お兄ちゃん‥‥? ‥‥おはよう‥‥(く‥‥何でわしがこんな事を‥‥)」
朔耶は昨日の夜は一人で寂しくて、一緒に抱いて寝た狐のぬいぐるみを左手で抱きつつ、まだ起きたばかりで眠い目をごしごしさせながら、起こしに来た兄役兼カメラマンの純にはにかんでみせた。
はだけたシーツとパジャマの上着との間からちらりと覗く水色のショーツが、まだ熟していない瑞々しい青い果実を想わせた。
セリスも朔耶と同じく正統派のパジャマだが、こちらはぶかぶかの男物を着て、ナイトキャップを付けていた。
「先輩のパジャマって大きいですね♪ ‥‥それに先輩の匂いがする‥‥わわっ! 私ってば何言ってるんでしょう‥‥」
こちらは部活の先輩の家にお泊りに来たシチュエーションで、ベッドに腰掛けたセリスが先輩役兼カメラマンの純から借りたパジャマを「似合いますか?」と肩口まで持ち上げると、純の匂いが鼻に付き、思わず頬を赤らめてしまった。
ヒカルは素肌の上にカッターシャツを一枚だけ羽織った姿だった。
「いつもこの格好で寝てるけど‥‥人前は恥ずかしいよ‥‥」
「‥‥ヒカル‥‥その、胸が、見えていますよ‥‥」
シャツの真ん中のボタンだけ留めて肩をはだけさせていたヒカルは、ヒールに指摘されて始めて胸まではだけ過ぎている事に気付いたが、純は可愛く覗く先端の蕾までばっちり撮っていたのは言うまでもなかった。
なお、ヒールは女性向けに猫柄のパジャマ姿で、ヒカルと一緒に撮影した。
鵺のパジャマもパルステラ同様、肌を容易に透かし、隠す為の役割を何ら果たしていないネグリジェを纏っていた。
「わたし、甘えられるお姉さまが好きなのよね」
「ふふふ、あたくしで宜しければ、思う存分甘えて下さいな」
外見年齢的に歳上のパルステラに鵺が、蠱惑的に扇情的に絡み、お色気と歳上の魅力を余す所なく魅せた。
朔耶とセリス、ヒカル(+ヒール)と鵺の4種類のポスターは翌日、徳島市と鳴門市の街頭に貼られると、その日の内に盗難が相次ぐ程の盛況を見せた。
●ブルマが映える方法とは!?
アークエンジェル・アールマティが指揮を執る“ブルマ08小隊”の宿営地は、徳島中央公園内に建っている内町小学校を接収し、そこに設営していた。
『流石に町中じゃほとんど見掛けなかったけど、拠点には結構居るもんだな』
「‥‥夏でもないのに‥‥なんで水着‥‥馬鹿ばっか‥‥」
「それは違うなラム。グランドと体育館にはブルマと体操服、小学校のプールにはスクール水着と、萌えを十二分に引き出す場所を拠点としてチョイスしてるだろ」
「‥‥局地的だよ‥‥」
「その点でアールマティは苦戦しているようだな。まぁ、現役でもなければ、着るのに抵抗があるあるとは思うがな」
「‥‥何で、雪を見るのです‥‥?」
「それと、ブルマがいかがわしい物として見られているからでしょう。張り切っている牛美さんの為にも、ブルマに対する偏見を解くのが、僕達の最初の活動ですよ」
「シュウスケ様〜、格好いいです〜。で、でも〜、張り切っているのは鈴音様の方で〜、わたしは〜、その〜‥‥着るのはちょっと恥ずかしいです‥」
アルト・ハーニー(w3j060)は看板で会話をしながら、内町小の校庭を満足そうに見渡した。そこにはブルマと体操服に身を包んだ女性達が、スポーツで汗を流していたからだ。
逢魔・ラム(w3j060)は校庭内にあるプールサイドで、スクール水着を着て体育座りをしながらお喋りを楽しむ女性達を、冷ややかな視線で見ていた。倉見・織(w3f726)はアールマティがこの場所を選んだ理由にいち早く気付き、ラムに分かりやすく説明すると、逢魔・紅朱(w3f726)が率直な感想を述べた。
逢魔・楓(w3j161)は橘・雪(w3j161)に視線を移して、アールマティが苦戦している現状を打開する策を思い浮かべた。
ヒロナカ・シュウスケ(w3c668)にも策はあるようで、既に『2ねん5くみ うしみ』と書かれた名札を胸の部分に貼った体操服と赤ブルマを着てやる気を見せている逢魔・牛美(w3h374)のその姿に心の中で感涙を流しつつ、応えようとしていた。
しかし、牛美は七瀬・鈴音(w3h374)に強制的に着替えさせられており、歳を気にしてかなり恥ずかしがっていた。
「‥‥よくもまぁ、これだけ癖の強い奴等が揃ったものだ‥‥」
「う‥‥不安です‥‥何をさせられるか見当が付かない分、物凄く不安です‥‥」
「ライルもブルマ、似合うよ。一緒に穿こうね」
巽・弥生(w3i362)は前を歩く、こと萌えに関しては錚々たる顔触れに、複雑な心境を漏らした。それは逢魔・ライル(w3i362)も同様だが、既にノリノリの逢魔・ヤマツミ(w3c668)に容姿を見込まれて誘われ、早くも嫌な予感は現実味を帯び始めていた。
アールマティは体操服に緑のブルマ姿で女性達にブルマの萌えを説き、殺到する男性達の写真撮影に積極的に応じていた。
「アールマティさーん、また来ちゃった。今回もお手伝いさせてもらっていい? 大丈夫! 今回は勝つよう!」
面識のある鈴音が友達のように声を掛けると、アールマティも笑顔で迎えた。
「ブルマやスク水は、運動をする女性が着てこそ輝くからね。この学校の校庭やプールを解放しているように、女性票を獲得する為に、ブルマ派を支持する人達には市内のスポーツ施設を無料で使用できるようにして欲しいんだ」
「それが難しいので、ここを解放しているのです」
シュウスケが一通り紹介すると、鈴音が策を提案するが却下されてしまった。
「なら、選挙日前日に『ブルマ&スク水コンテストin徳島』を開催するのはどうだ? その優勝商品としてスポーツ施設の会員券を渡し、コンテストの参加者に無料券を配るんだ」
「それなら、今から手配すれば間に合いますね」
(「聞いてはいたが、神帝軍がこうもあっさりと俺達を受け入れるとはな‥‥萌えは神魔の懸橋足り得るのか‥‥」)
楓の策は期日付きで採用された。アールマティは萌えに平気で市民を巻き込む割には、公序面では融通が利かないようだ。
そんな鈴音と楓、アールマティのやり取りを見ながら、織は苦笑を浮かべた。
翌日から織達は市街地で、ブルマ&スク水コンテストin徳島の宣伝を大々的に行った。
「何で私が‥‥恥ずかしいじゃないですか‥‥」
「‥‥紅朱は普通だからいいですよ‥‥私は‥‥」
「‥‥お兄ちゃん達‥‥ブルマ08小隊に投票‥‥お願い‥‥ね‥‥」
紅朱は『2ねんAくみ こうしゅ』と書かれた名札を胸元に付けた体操服に赤ブルマ姿で、その横では何故か猫耳を付け、猫の尻尾付きの赤ブルマを穿いた雪が、顔を真っ赤にして恥らいながらビラを配っていた。
方やラムは胸の部分に『5ねん1くみ らむ』と書かれた名札を付けたスクール水着姿で、道行く男性に下から覗き込み、投票をお願いしていた。
『ラム、頑張れ。お兄ちゃんは草葉の陰で見守ってるぞ〜‥‥多分。と、俺も宣伝、宣伝。と。しかし、ジャージなんて何年振りだか‥‥学校の体育なんぞサボってたしな』
紅朱や雪、ラムのターゲットは男性で、体操服とジャージ姿のアルトと織、楓は女性にビラを配った。
「‥‥やはり‥‥こういうのは‥‥恥ずかしいものだな‥‥」
「よ‥‥よろしく‥‥やっぱり男の子がこんな格好するのは可笑しいですよ‥‥」
「ブルマ08小隊をよろしくね〜! ライル、なかなかツボを抑えてるね〜」
弥生は紺のブルマに体操服といったスタンダードスタイルだったが、現役とはいえ人前という事もあって、耳まで真っ赤にしながらビラを配っていた。しかし、しばらくすると弥生も「よろしくお願いしま〜す」と愛想を振りまける程に慣れてしまっていた。
一方、ライルはヤマツミと一緒に、弥生と同じくスタンダードなブルマ姿で、歳下の男の子が好きな女性をターゲットにしていた。ヤマツミはノリノリだったが、ライルは終始慣れる事はなく、耳まで真っ赤にしながら何かを訴え掛けるような上目づかいでビラを配り、それが却って母性本能をくすぐったようだ。
「はぁ‥‥はぁ‥‥ん‥‥シュウスケ様〜、もう‥‥はあん‥‥ダメです〜」
牛美は真紅の上下ジャージに竹刀といった体育教師スタイルのシュウスケと一緒に、ジョギングで市内を回りながら宣伝していたが、運動が苦手な上に巨乳が揺れまくり、艶めかしく紅潮した頬と荒い吐息で、男性達を悩殺していた。
『ブルマからパンツや臀部がはみ出てしまうからやらしい、という見解をお持ちの方もいるだろう。だが違う! それは身体の成長によってブルマのサイズが小さめになった為に起こる現象で、身体の動きにブルマの伸縮が付いていけないからである! 故にこれは成長期の女子特有の現象、普通にサイズの合うブルマをしていれば問題はない! 皆さん! 動きやすく機能性に優れたブルマを穿こうではありませんか!』
シュウスケは牛美を気遣いながら、ブルマの誤解と偏見を解く熱い街頭演説を行った。
この日の宣伝活動と演説によって、ブルマ派は女性票を徐々に得始めるようになった。
「もちろん、タダとはいわないよ。これを‥‥」
「そ、それは、激レアのポンポコタヌキスーツではありませんか!」
「ふふん、どう? 協力してくれたらあげるよ?」
「‥‥分かりました。でも、名魂奪封<ネイムソウルスティール>は、多くの人を操れる訳ではないですよ‥‥」
雪達が帰った後、鈴音はこっそりとアールマティと何かを交渉していた。超限定モデルのポンポコタヌキスーツに釣られたアールマティは、鈴音と密約を交わしたのだった‥‥。
●珊瑚の悪癖はまだ直ってなくて‥‥
グレゴール・珊瑚がオーナーを務める“学生服サロン”の会場は、JR鳴門駅の東にある鳴門ガレの森美術館を接収して、併設されているカフェレストランを解放していた。
珊瑚は神帝軍の活動拠点として大毛島全島を接収していたが、この時既にデアボライズした十二人の妹魔皇が接近してきていた為、今回は使えなかった。
「パルステラ殿は隠れ家が地元に密着していますから、パジャマ派は対等に戦えるでしょうけど‥‥アールマティ殿は完全なアウェーですからね」
「しかし、油断大敵、といいます。ホームだからこそ、徳島市へ進出する為の基盤をきちんと固める必要がありますね」
サイガ・ツルギ(w3i037)とラディス・レイオール(w3i495)は、鳴門ガレの森美術館への道程の中、ほとんどの女性が学生服を着ている様子を見ながら選挙戦の行く末を分析していた。
『美術品観賞デー』等、美術品を重んじる政策を執ってきた珊瑚は、鳴門市ですこぶる評判がよく、鳴門市の全市民が珊瑚を支持している言っても過言ではなかった。
ツルギは紺のブレザーに紺地に赤のチェックのミニスカート+黒のパンスト、ローファーという格好をしていた。ラディスは髪をポニーテールにして女装し、セーラー服を着ていた。
珊瑚は空色のブレザーに紺のスカートを穿き、サロンを訪れたご婦人達と談笑を楽しんでいた。
「制服聖戦は魔皇側でも、自分達の萌えをぶつけ合うお祭りのような感じになっていますから、純粋にお手伝いをさせて下さい」
ラディスは正直に自分達が魔に属する者だと明かした上で、協力を申し出た。
「他の派閥は女性票を獲得する為に動いてきます。そこで女性票を確実にする為にもオープンカフェを開いて女性達の注目を引き、そこで演説をして票を固めるのです」
「その間に私とルベが徳島市へ行き、活動してきます。ラディス殿が防備を固め、私が打って出る策ですの」
「にゃはは、朝は『出会いは曲がり角で偶然☆』作戦、昼はアイドルデビューだよ♪」
「オープンカフェは既に摩瑠子がしていますから、二番煎じ感は否めませんわ。このカフェレストランで事足りないでしょうか? ミニライブに関しては、わたくしの方でご用意いたしますわ」
(「ラディスお姉様の女装、完璧ですのにぃ、珊瑚さんは完全に見破っているようですぅ」)
珊瑚はラディスの策に難色を示し、オープンカフェの内容を今あるカフェレストランに盛り込む事で合意した。ツルギと逢魔・ルベライト(w3i037)の策は気に入り、早速明日から実行する事になった。
その際、珊瑚はラディスからは距離を置き、ツルギやルベライトには平気で近付く事から、ラディスの女装は見破られていると逢魔・リフィーナ(w3i495)は思った。
「ち、遅刻するぅー!」
翌朝、紺のブレザーに紺地に赤のチェックのミニスカート+黒のオーバーニーソックス、ローファーという格好で食パンをくわえたルベライトが、駅へ向かって全力疾走していると、曲がり角で人とぶつかり転けてしまった。
「痛たたた〜‥‥ごめんなさい、あたしったらドジで‥‥きゃ!? み、み、見てないですよね〜!?」
ルベライトはぶつかった相手を気遣った後、スカートが翻り、お気に入りの白の猫さんパンツが見えている事に気付くと、慌ててスカートを直した。
「ふふふ、ブレザーとニーソックスの相性は抜群ですし、何よりこのお約束のシチュエーションに抗える男性はいなくてよ」
眼鏡を掛けてマネージャーよろしく、物陰から様子を伺っていたツルギは、ほくそ笑んでいた。
「本日より、学生服を着て来店した方には、手作りケーキとハーブティのセットを割引いたします」
ラディスがセーラー服姿で鳴門市内を触れ回った甲斐があり、カフェレストランにはOLを始め、昨日以上の人出があった。
そこで優雅で淑やかなピアノの演奏を披露し、歳下の女の子にはお姉さんとして憧れの眼差しを受け、ご婦人方には可愛がられた。
「ラディスお姉様、お疲れさまですぅ」
元気一杯にウェイトレスしているリフィーナは、ラディスの演奏が終わると冷たいお絞りを持っていき、仲のいい姉妹をアピールした。
途中から楓と雪が手伝いに加わり、雪は希少種の赤いセーラー服にミニスカスタイルでウェイトレスとして働き、楓は数少ない男手として裏方の雑用を担当した。
●絶体絶命!? 魔法少女派!
天道・白虎(w3e286)は窮地に追い込まれていた。
“まじかる♪シスターズ”を擁する“魔法少女派”は、葵とヒールがパジャマ派に移籍してしまった為、解散の危機に瀕していたからだ。
「それでも私は戦うよ! だって魔法少女、まじかる♪シスターズなんだから!!」
逢魔・くれあ(w3e286)の励ましがなければ、白虎の心は折れていただろう。
しかし、現実はそんなに甘くはなかった。魔法少女派を『まじかる♪堂』と改め、公式HPに聖戦の様子を振り返ったフォトギャラリーを設置し、魔法少女をイメージした小物やアクセサリーのグッズ販売を行ったが、女性票を確保する事はできなかった。
しかも今回は、頼みの綱の男性票をパジャマ派とブルマ派に獲られてしまい、魔法少女派の支持率は1割を切ってしまったのだ。
「このままじゃジリ貧かよ‥‥まだだ、まだ終わらんよ!」
くれあと一緒に地道に人助けをしていた白虎は、偶然通り掛かったパジャマ☆Clubの拠点を見て、強いライバル心を燃えたぎらせた。
●勝利(萌え)の女神はどの陣営に微笑むのか!?
選挙日の前日。パジャマ☆Clubが3割5分の支持率を得て半歩リードし、ブルマ08小隊と学生服サロンが3割の支持率で、追撃態勢に入っていた。
まじかる♪堂は実に支持率5分で、巻き返しは絶望的かと思われていたが‥‥。
パジャマ☆Clubは写真撮影会を開催していた。
「朝ご飯、今できますからね♪」
セリスはパジャマの上にエプロンを付け、フライパンを片手にキッチンに向かいながら、台所へ入ってきたお兄ちゃんに振り返る‥‥といったシチュエーションだった。
(「わし‥‥何か大切なものを色々と失った気がする‥‥」)
朔耶は変わらず、寝起き+お兄ちゃん+素肌パジャマ(上着のみ)+はだけて覗くショーツの4連コンボの寝起きシーンで魅せた。
「‥‥はう‥‥頭撫でちゃダメですよ‥‥はぅ〜‥‥」
囲まれているのはヒールも同じだったが、こちらは女性達だった。モデルへのお触りは禁止だが、ヒールだけは頭を撫でられ、照れとも恍惚とも取れる表情を激写された。
「ふふ、幾らでも、写真でもビデオでも何でも撮っていいわよ〜♪」
ネグリジェ姿の鵺とパルステラは、ベッドの上で絡み合っていた。お互いの身体を愛撫するだけの、(鵺から見れば)ソフトなものだが、美女が2人絡み合う様は得も言われぬ程妖艶で凄絶で、それでいて何者も穢す事のできない聖域を漂わせていた。
「あう、純、後ろから覗いちゃダメだよ。お尻見えちゃうから‥‥」
「ヒカル、見えて‥‥いえ、見せていいのですよ! パジャマは半脱ぎの時が一番の萌えなんですから!」
「は、半脱ぎって何ですか! 私、そんな格好でき‥‥あ‥‥くぅ! 触手はダメぇ‥‥うん‥‥くぅ‥‥」
率先して今まで無言で撮影していた純が、ヒカルの後ろに回ると、ヒカルは咄嗟にほとんどないカッターシャツの裾で丸みを帯びた可愛いお尻を隠そうとしたが、それは却って純を煽る結果となってしまった。
突如、朔耶達へ半脱ぎを強制した純に、セリスが文句の1つも言おうとするが、真テンタクラードリルが伸びてきて身体を絡め取り、口を塞いだ。
「それでいいのか、朋友(とも)よ!? それで満足なのか、朋友よ!!」
「結局裸にされるの〜!? って、こんな格好写真に撮るな〜!!」
朔耶が宝刀『白夜』を構えると、今度はヒカルが、どこからともなく現れたブーメランパンツ一丁に目元だけ隠した覆面を付けた男に、あの“暗黒の貴公子”――白虎――に脱がされていた。
「ふぁぁ! はぁ‥‥うぅ! そんなに激しくぅ! ‥‥された‥‥ら、みゃう! おかしくなっちゃうよぅ‥‥あっ、おっきいのでいっぱいで‥‥もう‥‥もう、あ、ああ、あああああ〜!!」
白虎の言葉に心を揺さぶられた純もこっそりと暗黒の貴公子姿になり、真テンタクラードリルだけでなく、自分の身体も思う存分使ってセリスを弄び、長く尾を引く絶叫と共に天上の快楽へと誘った。
「今宵は最後のステージ。皆様の一糸纏わぬ美しき姿を是非ともご披露願いましょう」
「そうはさせないよ! 1人でもまじかる♪シスターズ、正義の為に戦うんだから!!」
ヒカルのカッターシャツが白虎によって脱がされる寸前で、まじかる♪くれあが駆け付けた。
「‥‥まじかる♪くれあ‥‥私もこんな事をしている場合じゃないです‥‥紫輝閃、仮面三人衆が一人、宿六仮面改め真・宿六仮面参上! まじかる♪くれあ、まじかる♪ヒカルン、愛と勇気と正義の為に、今こそ再びまじかる♪シスターズとして立ち上がる時だ!!」
「まじかる♪くれあ、あたしが間違ってたよ。まじかる♪ヒカルン、愛と勇気と正義の為に再び参上、だよ♪」
まじかる♪くれあが1人で他の陣営の為に戦う姿に、ヒールとヒカルは感動し、ヒールは真・宿六仮面となり、ヒカルはまじかる♪ヒカルンへと変身し、魔法少女派へ寝返ったのだった。
「やれやれ、無粋な奴らじゃな」
こうしてまじかる♪シスターズは再結成され、暗黒の貴公子は――しかし、朔耶が今までの鬱憤晴らしに既に刀の錆びにしていた。
何はともあれ、暗黒の貴公子達は倒され、大円団となった。
「んふふ〜、悪い子にお仕置きは終わってないわよ♪」
「じゃぁ、変わったお仕置き、してみましょう〜♪」
捕らえられた白虎はその後、鵺とくれあ、パルステラに精根尽きるまで解放されなかったという‥‥。
ブルマ08小隊のブルマ&スク水コンテストin徳島は大盛況の中、幕を閉じた。
「シュウちゃん! 牛美が鈴音に連れられて‥‥う!?」
「ヤマツミ!? ‥‥牛美は本当に可愛いなぁ、思わず体育倉庫に連れ込みたくな‥‥ぐは!?」
『ヤマツミにゃ恨みはないが、この方が面白いんでね』
「ふ‥‥戦いとは力技だけでどうにかなるものではないのだよ。そこでしばらく大人しくしていろ」
コンテストの後、鈴音を尾行していたヤマツミは、牛美が鈴音に連れていかれた現場を目撃し、シュウスケに報せた。しかし、アルトと弥生に逆に尾行されており、ヤマツミは真両断剣<ギガブレイクス>を付与した100tはんま〜で殴られ、シュウスケは幻魔影<ファントムハンド>で牛美の艶姿を見せられている間にユニコーンホーンで殴られ、気絶させられた。
「皆さん、集まってくれてありがとー♪ 今日は楽しんでいってねー♪」
内町小の体育館には、『大人の体育ショー』の噂を聞き付けた男性達で溢れ返っていた。
ステージの上から鈴音が挨拶をすると、先ずラムと紅朱が脱ぎ始めた。
「‥‥今から‥‥脱ぐから‥‥お兄ちゃん達‥‥僕の事‥‥ちゃんと‥‥見ててね‥‥」
「ムーちゃん、あたしの方が先だよー!」
ラムと紅朱はアールマティのネイムソウルスティールによって名前を奪われて操られており、方やスクール水着、方や体操服に赤ブルマを脱ぎ始めた。
「ふふ‥‥どうしたイル、そんな目をして?」
「ぅ‥‥ぁ‥‥」
「どうした? ん? ふふふ、そうだな‥‥牛美にでも慰めてもらってはどうだ?」
ライルもまた操られており、弥生はにやにやと笑いながら唆し、普段とは違う反応を愉しんだ。
「弥生は可愛いな〜」
「こ、これ! ルト!? ‥‥んん!?」
「小さい事を気にしていたが‥‥触り心地はいいな」
「はぁ‥‥ん‥‥そのようなところ‥‥舐めるでない‥‥や‥‥やめ‥‥くぅぅ‥‥」
すると今度は操られたアルトが弥生の頭を撫でつつ、指を髪に這わせて胸元へ来ると揉み始めた。着物の上半身を脱がされた弥生は抵抗しようとするが、アルトに首筋を舐められ、その言葉は熱い吐息へと変わった。
「紅(べに)も胸がない事を気にしていたな‥‥ふふ、俺が大きくしてやろう」
生まれたままの姿でステージの上に置いてある跳び箱の上に座っていた紅朱の胸を、織が後ろから鷲掴みにし、リズミカルにマッサージを始めた。気持ちいいのか、紅朱の頬は赤く染まり、憚る事なく嬌声を挙げ続けた。
「私、ヒロナカ・シュウスケは牛美さんに手出しする輩に対して、特例として真・魔皇殻の使用が許可されている。速やかに撤収しやがれ、この‥‥う、牛美さん!?」
「シュウスケ様〜‥‥濃いミルクが飲みたくて飲みたくて〜、切ないです〜‥‥」
「濃いミルクって、僕は持って‥‥う‥‥牛美さん!」
「‥‥ん‥‥うぐ‥‥ふう、美味しいです〜‥‥もう一杯飲みますね〜?」
駆け付けたシュウスケは逆に、牛美に抱き付かれていた。
「ふふふ‥‥いい光景だね。観客も魅入ってるよ‥‥え‥‥ボクは‥‥」
みんなが乱れている様子を、悪魔の笑みを浮かべながら見ていた鈴音だったが、ライルに襲われてしまった。
ショーが終わり、アールマティが術を解除した後、涙を流しながら悪戯は控えようと決心した鈴音だったという。
『萌黄たんって呼んでね♪』
ルベライトは街角で、ミニライヴを開いていた。
『おーばーにー!
あなたはこれが好きなんでしょ?
おーばーにー!
わたしの虜にしてみせるわ(今に見てなさい!)
スカートはためかせ わたしは走る
あなたと初めて出逢った あの角まがる
今日もあなたは 爽やか笑顔
「おはよう」 声掛けてくれた
きゅんとするこの気持ち なんなのかしら
恋?そんなわけない 認めないわ
おーばーにー!
好きよそうよ悪いの?
おーばーにー!
履いたままがいいのよね(お、覚えておくわ)』
唄うのは自ら作曲を手掛けた『おーばーにー!』だった。バックコーラスはリフィーナが、演奏はツルギが担当した。
『皆さん、女性らしさは一体何なのでしょうか? 確かに露出の多いブルマやスクール水着姿は外見的な女性らしさをストレートに出していると思います。けれど、それが女性らしさの全てとはいえないでしょう。私達学生服サロンは、学生服には外見的には表せない魅力を引き出す力があると思っています。それが本当の女性らしさだと思います!』
ルベライトのミニライヴが終わった後、ラディスが集まった人々に学生服の魅力について熱弁を振るった。
●ビバ! 制服!!
今回の制服聖戦は、これだけでは終わらなかった。
『争うのは止めないか? 見よ! この姿を!! 制服とブルマのコラボレーション!!! ‥‥共存する事は素晴らしいと思わないか? 徳島市も鳴門市も、魔皇も神帝軍も、このコスチュームのようにお互い協力し合い、新しい萌え‥‥もとい、新しい世界を実現しようじゃないか!!!!』
投票日当日、楓はセーラー服の上着のみに尻尾付きの赤ブルマを穿き、猫耳に首輪を付けた雪を連れて各投票場を回り、熱弁を振るった。
それぞれの良い所を、更に猫耳にする事で通常の3倍は萌える!(当者比)と思っていたのだ。
この演説の甲斐あってか、偶然かは分からないが、パジャマ☆Clubとブルマ08小隊、学生服サロンの得票率は、ほぼ同率だった。
つまり引き分けになったのだ。
なお、まじかる♪堂はパジャマ☆Clubの一件で得票率を1割まで回復させたものの、暗黒の貴公子騒ぎは全てまじかる♪堂が仕組んだ事が露呈してしまった。
アールマティと珊瑚はお互いの萌えを認め、鳴門市は徳島テンプルムの管轄下から外れ、治外法権が認められた。また、アールマティとパルステラもある程度和解した。
全ては制服という萌えが生んだ、結果だった。
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