■The dead's wars 〜終局〜■ |
商品名 |
アクスディアEX・デビルズネットワーク |
クリエーター名 |
メビオス零 |
オープニング |
戦闘から一夜が明け、ようやく基地の消火活動も終了した。
DFやらSFやらが乱発された基地は、もはやその機能を満足に果たしていない。しかしだからといって、対ロシア戦線拠点の一つである基地を、安易に放棄するわけにも行かない。せめて新たに攻めてくる敵には対応出来るようにと、新たに配属された殲騎や軍用ゼカリアを配置し、基地の復興作業と平行して、今回の事件の調査を行っていた。
「‥‥これまた、ずいぶんと派手にやったな」
調査班に加わっていた一人が、周りを見渡しながらそう言った。
大勢の兵士達とサーヴァント達の激戦によって、基地はあちこち穴だらけ。誰のかも判明しない肉片があちこちに飛び散り、あまりの惨状に逃げ出す者も続出した。
戦っているときはまだ気にしているような余裕はなかった。だが、明るくなってから改めてみると、どれだけの地獄が展開されたのかなど、現地にいなかった者達でも、想像するのは容易だった。
「―――さん。言われていた捜索活動を終了しました」
「早いな。聞かせろ」
「はい。それで少々困ったことが‥‥」
駆け寄ってきた部下は周りを見渡し、聞き耳を立てられていないのを確認する。
(内部に侵入していた者ですが、脱出には失敗していたようです)
(死んだか?いざとなったら、“ヒラニヤカシプ”の自爆装置を使って消すはずだろう?)
(はい。“ヒラニヤカシプ”には一定以上のダメージを与えられた場合、起動者もろとも自爆するようにセットされていました。しかし現場にいた者達に事情聴取をしたところ、どうやら殲騎のロケットガントレッドによって拘束、握り潰されたようです。その時点で爆発も確認されています。自爆には失敗したようです)
(‥‥‥‥て言うことは、あの馬鹿は?)
(救助された者達のリストの中に記録がありました。現在、ビルシャス内の軍施設に収容されています)
(‥‥‥‥オイオイ、まさか)
(いえ、まだ吐いてはいないようです。ですが、時間の問題ですね。捕まったタイミングと、場所、そして事前に声を聞かれていたのが災いしたようです。なかなか勘の良い奴らですよ)
(‥‥わかった。状況が変わったな。基地に戻った方々には、俺から報告しておこう。お前は奴を始末してくれ)
(拘束した者達は?)
(消さなくていい。馬鹿の始末を終えたら、速攻で戻れ)
密談が終了する。指示を受けた部下は薄い笑みを浮かべて走り去り、指示を出した上官は溜息混じりに通信機を取り出した。
(風向きが変わってきたな‥‥‥裏切り者にも目を光らせなけりゃならないってのに、厄介な)
「あ、こちら―――です。これより、事態の修正作業にかかります」
〜〜〜〜〜
「収容した奴は、まだ何も言わないのか?」
「はい。状況や証言から見ると、明らかに何らかの関係があるはずなのですが‥‥」
ビルシャス内軍用施設、その一室にて、一人の男が拘束されていた。
救助に当たっていた者達の証言や状況から、この事件の重要参考人として拘束されたのだ。確たる証拠も無しに拘束するなど、本来ならば許されることではない。だがそれは警察活動での離し。ことが軍関係ならば、それこそ一片の情も掛けられない。
拘束された男から目を離し、軍人の一人が言う。
「あまり時間を掛けるわけにもいかん。こうしている間にも、仕掛けてきた奴らが海外にでも逃亡するかもしれん」
「はい。海岸線から不審な船や殲騎の類が出ないように規制を掛けていますが、この手の者達をどれだけ押さえられるか‥‥」
「この男を囮にして、暗殺者でも来ればいいのだがな。そこから糸口が掴めることも多い」
「はい。ですが本当に暗殺されては困ります。応援として、何人か護衛を呼んでおきましょうか?」
「そうだな。今はどこでも人手不足だ。あまり余分な人員を割くことは出来ん。外からの応援を呼べるのならば呼んでおけ。人選は任せるが、信頼出来る者達にしておけよ」
「任せておいて下さい」
部下が言う。だが尚も拘束されている男から目を離さぬその目は、まるで害虫を見るかのように冷ややかだった‥‥
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シナリオ傾向 |
調査 |
参加PC |
錦織・長郎
風祭・烈
黒江・開裡
月村・心
如月・伊織
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The dead's wars 〜終局〜 |
The dead's wars 〜終局〜
〜尋問室前〜
カツッ、カツッ、カツッ‥‥
清掃の行き届いた廊下に、小さな靴音が響き渡る。
軍施設の奥に作られた特別収容所には、外で騒々しく鳴り続けている訓練の掛け声も軍用機の騒音も聞こえてこない。そしてこの場所には極限られた人間しか出入りは出来ず、人の喧騒というものからはほど遠い、まるで隔離病棟である。
そんな静かな場所の一室に辿り着いた月村 心(w3d123)は、扉の横で腕を組み、退屈そうにしている風祭 烈(w3c831)に話し掛けた。
「ここに居続けると、どうにも暗くなるな‥‥‥どうだ?なんか喋ったか?」
「全然。これでもかとばかりに、な」
見回りから帰ってきた心は、「そうか‥」とだけ言って、扉を開けようと手を伸ばし‥‥‥
『ぁ‥‥う‥‥』
『ふふ。どうです?もうそろそろ話したくなりました?』
中から妙な声が聞こえてきた。
思わず手を止め、扉は微かに開けられている状態で停止する。
『‥‥‥‥』
『反抗的な目だな。クレイメーア』
『はい』
『フギャーー!』
『ほらほら。これなんてどうです?』
『♭♂◎≧※!?』
『ぁ〜‥‥‥言うんなら猿轡とかも外してやるって。な?ここらでギブアップしといた方が‥‥‥』
『‥‥‥‥‥』
『‥‥‥あくまで黙秘か。チャレンジャーだな‥‥‥分かった。クレイメーア。俺はエメラルダを連れてくる。多少怪我させても、まぁ、治療すれば跡なんか残らんしな』
『分かりました。頑張りますね!』
ガチャッ
反射的に閉じてしまった扉が、今度は中から開けられる。現れた黒江 開裡(w3c896)は、扉の前で冷や汗を流している心を見付け、口を開いた。
「おっ。心か。見回りご苦労さん。‥‥って烈?どうしたんだ。居眠りでもしたか?」
「違う!いや、て言うか、その‥‥‥今の会話はいいのか?」
「‥‥‥‥聞いてたのか。大丈夫だ。クレイメーアだって、手加減ぐらいは心得てる」
「扉の隙間から『100t』の文字が見えたぞ?」
「気のせいだ」
「だからこれ以上関わるな‥‥」開裡の目はそう言っていた。
そしてそれは恐らく、この中に入ることも、しばらくの間は出来ないであろう事を意味している。
「さて、これからエメラルダを呼んでこないとな‥‥‥俺がこの棟から出て連絡を入れてみる。ここは電波遮断しているからな」
「分かった。だが監視って言っても、扉の前で待ってるぐらいしか‥‥‥」
『それじゃぁ、調教始めま〜す。喋る気になったらいつでも言えるように、猿轡は外しておくね』
『…ぷはっ!た、助けてくれ!オイ、誰か居るんだろ?!助けてく‥‥‥ちょ、ちょっと待て!それは無理だ!!無茶だって!!ひっ‥‥‥ぐえぇ!ウギャーーーー!!!!!!』
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥俺が行っても、中は見るなよ?」
「怖くて見れないっての‥‥‥!」
扉の前で冷や汗をかいて硬直している烈と心を残し、連絡を取るために開裡は廊下を歩き出す。
心が通ってきた時とは対照的に、足音の音が響くような事はなかった。代わりに余計に喧しい悲鳴が響き渡っていたが‥‥‥
誰一人として、声の主を助けるようなことは出来なかったのであった‥‥‥
〜軍施設兵舎棟・屋上〜
「ノルンさん。どうですか?成果の程は‥‥」
「う〜ん、ダメダメですよぉ」
「そっちもですか。この子達も頑張ってくれてるんですけど、やっぱり正体の分からない人を探すのは‥‥‥‥難しいですね」
二人の腕には、今し方偵察から戻った鳥型魔獣殻が留まっている。二人は屋外の偵察の役目を与えられたのだが、魔獣殻による偵察ではやはり暗殺者の類を発見することは困難だった。
何しろ、暗殺者を捜し出せと言っても手掛かりは何もない。単純に怪しい奴を捜したとしても、そもそも見て怪しいと分かるような暗殺者はただのバカである。
「ぁ、通信だ」
二人がもう一度魔獣殻を飛ばして周囲を見渡そうとしている時、ノルンの腰にぶら下がっていた通信機が鳴りだした。
「はい。ノルンです」
『開裡だ。そっちの状況はどうだ?』
「今のところは異常なしですよ。‥‥‥やっぱり、周囲を警戒するのは他の兵隊さんに任せて、私達は関係者の尋問にまわった方が良くないですか〜?」
『それは他の奴に回って貰ってる。それに、そっちの仕事も結構重要だぞ?基地内だけじゃなく、周辺の森とかも探してくれよ。狙撃って手段もあるんだから』
「‥‥‥基地内にいる標的に、どうやって狙撃するんですかぁ」
真面目に言ってるのかと、ノルンは不満を漏らした。開裡は『冗談だ』と笑って、エメラルダに尋問室へ向かうように指示を出す。
「そう言えば、上の人達と話を聞きに行った人達、どうしてるかな?」
「錦織さん達ですか?大丈夫ですよ、あの人達なら」
そう言うと、ノルンは去っていくエメラルダの後ろ姿を見送りながら、本日五回目の偵察活動を再開した‥‥‥
〜軍施設司令塔内・司令官室〜
「‥‥‥もう一度言って貰えますでしょうか、大佐殿」
「“移送する”そう言ったのだよ。錦織君」
司令官と向き合っている錦織 長郎(w3a288)は、只でさえ細い目をさらに細めている。端から見ていると、睨んでいるようにしか見えない。
しかし司令官は怯むことなく、真っ向から切り返した。
「これは中央からの命令だ。こんな基地よりも警備が整っている」
「お言葉ですが長官。現在は暗殺者が潜んでいるという情報もあります。ここは下手に動かすよりも、万全の準備が整うまで待つべきかと‥‥」
長郎に同行していた如月 伊織(w3k672)が言うが、司令官は動じることはない。
「私は中央からの命令を伝えたまでだ。それ以上を言う必要はない」
本当にそれ以上を言う必要はないと感じているのか、それとも早々に話を切りたいのか‥‥‥‥司令官が秘書官に目配せすると、秘書官は手にしていたファイルを長郎に渡してきた。長郎が中身をパラパラと見ると、そこには護送のために用意された車両や同行する兵士などのリストが入っている。
「君たちは正規兵ではないからな。こちらで用意させて貰った。奴の護衛をしっかり頼むぞ」
それで話は終わりなのか、司令官は退出を促す。
長郎と伊織は一瞬だけ視線を合わせると、一礼して部屋を出た。
‥‥‥
‥‥
コッコッコッ‥‥
「で、どう見ました?」
「どうもこうも、真っ黒だな。中央に置くのなら最初からそうしてる」
司令室から出て数分程経ち、伊織と長郎は歩きながら会話していた。
時折兵士達が擦れ違うが、言葉の断片を聞いただけでは推測も出来ないだろう。
「ああ。誰が繋がっているのかはだいたい分かってきたが‥‥‥‥どうする?護送まであと一時間しかないぞ」
「対象が絞れましたから。如月さん、時間を二時間‥‥‥いえ、一時間延ばしてくれませんか?」
コッ‥‥
伊織の足が止まり、意外そうな表情で長郎を見てくる。
「出来るのか?そんな短期間で」
「金銭・交友・企業etc.etc.‥‥確かに調べる項目は多いですが、たった数人に人数が絞れれば尻尾ぐらいは掴めるでしょう。幸い、ここは適地のど真ん中です。データには事欠きません。消される前に動きましょう」
その適地のど真ん中でも気付かれずに尻尾を掴める自信があるのか、長郎は平然と言ってのけている。だが彼が行おうとしている調査は、本来ならば十数人規模で行うべき事だ。たった数人でも一〜二時間で調べられるとは思えない。
「‥‥‥‥分かった。何とかしてやる」
「ありがたい。では、月村さん達には連絡を入れておいて下さい。私はこの足で始めますので」
そう言うと、長郎は格納庫に向かおうとする伊織と別れて別に道に入っていった。どこに行くのかも聞いていなかったが、恐らくは訊かない方がいいのだろうと判断し、伊織は通信機を取り出した。
〜軍施設格納庫への廊下〜
格納庫は、尋問室からはかなり離れた位置にあった。
理由としては様々だが、まず監禁されている者達が脱走を図った場合、少しでも脱走率を下げるためだろう。
烈と心は拘束されている男の背後を歩き、前をクレイメーアとエメラルダが歩いている。
男は、クレイメーアに首輪を付けられ、ビクビクと震えていた。尋問室から出る直前までクレイメーアに尋問されていた所為か、クレイメーアが話し掛けるたびに悲鳴を上げている。エメラルダがその様子を見てオロオロしていたが、烈に『聞かない方がいい。精神的に」と言われ、今では助けもせずに完全に傍観モードに入っている。
(問題になるとしたら、基地の外に出る瞬間‥‥‥‥か。狙撃ならたぶん防げる。直接斬りつけてくるか?あり得ないな。自分が捕まって終わりだ)
(爆弾は?車に付けられてるとか)
(‥‥‥‥俺達も乗るんだよな。その場合は巻き添えか)
思わず冷や汗が流れてくる。
巻き添えで吹き飛ばされたら笑えない。
「お、早かったな」
格納庫の扉が開かれると、その先に居たのは先に連絡を受けていた開裡と、連絡を入れてきた伊織、そしてノルンだった。
先回りして一体何をしているのかと思ったが、一目で分かった。
伊織と開裡は念入りに護送車を点検し、爆発物を探していたのだ。
「考えることは一緒だな」
「軍の所有物でも、その軍が信用出来ないんだったら仕方ない。整備員には睨まれたけどな」
開裡はそう言うと、頬に付いた油を拭き取った。かなり念入りに検査していたのか、開裡の手には小さな部品が‥‥‥
「‥‥開裡、その手に持ってるのは――」
「気にするな」
廊下で流していた冷や汗を増しながら心が訊くと、開裡は惚けるようにそう言った。
さらに追求するべきかどうかを心が一瞬悩んでいると、心達とは少し遅れてこちらに向かっていたらしい兵士が一人、格納庫に入ってくる。
「待たせたな。私が護送に同行するレイスだ。しばらくの間は、私の指示に従って貰うぞ」
メンバー全員に聞こえるようにハッキリした口調で言うレイスを、開裡達は値踏みするように監察した。
‥‥‥恐らくは敵の一人なのだろうが、それにしても同じ車両に乗るのである。まさか自爆までするとは思えないが‥‥‥
「何をしている。早くそいつを乗せて出発だ。急げ!」
「ぁ〜‥‥すいません。えっと、レイス大尉殿?実は護送車が故障してしまいまして、エンジンが掛からないんですよ」
「‥‥‥何?」
「代車は出払ってるんで、これしかないんですよ。一時間ぐらいで終わりますから。待ってて‥‥」
「三十分だ!さっさとしろ」
開裡が惚けた口調で言うと、イライラした口調でレイスが怒鳴った。他のメンバーはそれぞれ目配せをし、意図を察知する。
そして‥‥‥
「‥‥‥‥なんで、二時間も待たされないといけないんだ?!」
「まぁまぁ。数々の不運が重なったんですよ。怒鳴らないで下さいって」
白々しく心は言うと、護送車の運転席に座った。レイスは助手席に乗り、開裡とクレイメーア、烈は男を見張るために後ろに乗る。伊織とエメラルダの二人は別の車両に乗り、外敵が来た時に素早く交戦出来るようにしていた。
「さっさと出せ。もう時間がないんだ。向こうを待たせてるんだぞ」
「はいはい。では出発しますよ」
十分な時間稼ぎは出来たと判断し、ようやく故障させていた車を始動させる。
(さ〜て、ここからが問題だな)
格納庫から車を出し、兵士に誘導して貰いながら基地の外へ向かう。
襲撃に会うとしたら、基地の外に出た時だろうが‥‥‥
ゴッ‥‥!!!!!
「なっ‥‥!?」
声を上げるような暇など無かった。
爆発の方向は心の左側‥‥助手席から起こっていた。巻き起こった爆発は心を巻き込み、護送車の後方全体を木っ端微塵に吹き飛ばす!!
「――――!!」
あり得ないと踏んでいた‥‥だが、その事態が起こったのだ。
(自爆‥‥‥くそっ!それとも道にでも仕掛けられてたか?いや、今はそれどころじゃない!)
自分のすぐ隣で爆発が起こったにもかかわらず、心はまだ思考を途切れさせていなかった。爆発の炎と煙、砂塵の舞う中でレイスと後ろに乗っていた者達を探してみるが、爆発によってダメージを受けた体は言うこと聞かず、這うようにしか動けなかった。
「烈様!皆さん、大丈夫ですか!!?」
炎の外からエメラルダの声が聞こえてくる。それに答えるようにして煙の外から影が入ってきたかと思うと、心の体が持ち上げられ、数秒もせずに炎の外まで運び出された。
「クソッ‥‥やられたな」
心を車内から助け出した伊織は、一緒に連れ出したレイスを地面に横たえた。だが既にその体は蘇生出来るような状態には見えず、本人はどうしてこうなったのか‥‥‥分からないと言うような、何とも言えない表情を浮かべていた。
「開裡達は?」
「エメラルダが治療中。とりあえずルチル圏外に出しておけば死にはしないが‥‥‥暗殺は成功だ。どさくさに紛れて消されてたよ」
伊織は苦々しげにそう言い、心を支える手に力を籠めた。
「大丈夫だろ」
「あ?」
「まだ向こうが居るからな」
そう言うと、心は司令塔に視線をやって、こちらを眺めている司令官を睨み付けた‥‥‥
〜軍施設司令塔内・司令官室〜
‥‥‥‥その光景を、司令官は窓際に立ち、静かに監視していた。
結果にほくそ笑むわけでもなく、しかし慌てるような様子も見せていない。
「‥‥‥どこから分かっていた」
「つい先程から、ですね。あなたと秘書官の方、色々と調べさせて貰いました」
司令官とは机を挟んだ状態で、長郎が淡々と言葉を紡ぐ。秘書官は二人に交互に視線を向け、ジリジリと後退していた。
「その結果、あなたの秘密口座に大金が振り込まれていることと、それと同日に襲撃にあった基地の見取り図がこの部屋のパソコンから転送されている事実を突き止めました。記録は消されていましたが、ちゃんと復元しましたよ。それから数日後、さらにあの基地に数人の兵士達が、あなたの指示によって配置転換されていますね?残念ながら拘束されたあの男以外は、全員死亡したようですが‥‥‥」
ダァン!
銃声が響く。その音に驚いたように肩を震わせた秘書官は、手にしていた銃を落として足を押さえた。
長郎の手には、いつの間にか大口径の銃が握られている。
「詰めが甘かったようですねぇ。おっと、自殺しようなんて考えないで下さいね?その前に手足を撃ちますから。‥‥‥さて、チハ指令からあなたの拘束を承認して貰いました。私達は甘くはないので、外の者達の借りはしっかり払って貰いますよ」
「‥‥‥‥‥好きにしろ!」
懐から銃を取り出そうとした司令官は、それを放り捨てて吼えていた。
それを合図に、部屋の外から次々に兵士達が現れ、司令官達を拘束していく。
「さて、被害は甚大‥‥この代償は高く付きますよ」
長郎は窓から爆発地点を見下ろし、静かに呟いていた‥‥
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