■Broken fantasy 〜巣くう者〜■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 メビオス零
オープニング
〜●月●日〜

 島から回収された男は、既に修復不可能と判定。以降、コード『A−001型試験体 アルゴス』として実験素体の一つとする。アルゴスとは全身に百の目を持つという、神話の化け物だ。コイツの外見には似合いの名前だ。
 マザーやグレイブディッガーの肉片ぐらいしか期待していなかったが、どうやら雇い入れた二人組は優秀だったらしい。
 これからの実験が楽しみだ。

〜●月×日〜

 男の意識は戻っていない。体の九割は死んでいるのだから当然だろう。
 本体の意識がないためか、体の変異は止まっている。だがグレイブディッガーはSFでの使役を受け付けないという報告は受けているため、機械操作を行うことを前提として今のうちに開発を進行。サンプルを取るため、腕の一部を切除する。

〜●月△日〜
 男の意識が戻った。それと同時に変異したマザーの遺伝子が活動を再開する。だが、まだ起きて貰っては困る。目覚めに気の毒だが、とりあえず腕に浮き上がっていた目玉を抉って回収してから凍り付けにする。
 凄い。動けないくせに、意識だけは保っている。

〜△月●日〜
 緊急事態発生。実験中のサクリファイスが、第二支部から脱走したらしい。
 何とか魔皇達を数名雇い入れて処分したらしいが、アレの死体が政府に回収されていたら俺たちも危なかっただろう。
 こっちも気を引き締めなければならない。

〜△月×日〜
 今日も実験体として海外から活きの悪い魔皇達が送られてくる。まぁ、突然拉致られて活きの良さなんか無理があるか。だが寄生させて弄くり回すたびに声を上げるのはやめてくれ、むかつく。
 そろそろ最下層の廃棄場も賑やかになってきた。餌にするか?

〜△月△日〜
 研究員達の様子がおかしい。やっとサクリファイスの制御装置も完成してきたというのに、どうしたのだろうか。
 何でも、サクリファイス量産時に予定外の変異が起きたらしい。試験体の体は元の数倍に肥大化し、正直手に負えない。
 最下層の廃棄場に落としてみる。リアルアンデッドとスキュラを三十体ばかり潰したところで数に押し切られ、食い散らかされていた。
 ちょっと燃えた。コレも量産しよう。レポート書かなきゃ。

〜×月●日〜
 また問題が起きた。最近は問題続きだ。
 何でも、氷付けにしたアルゴスの変異が再開したらしい。ここ何ヶ月も活動しなかった癖に、何があったのだろうか。
 外見的には、まるで植物だ。腕や体の大きさは変わらない代わりに、まるで草の芽のように腕から細い糸のような物が出てきている。なんだろうか?
 だが危険な気がするので、とりあえず再凍結させる。 

〜×月×日〜
 最悪だ。実戦部隊の奴ら、研究員にそそのかされてサクリファイスを軍基地に送り込みやがった!!
 せっかく作った手駒は全滅。しかもこっちのことがバレ掛けてる。
 逃げたくても追っ手が怖くて逃げられねぇなぁ。

〜×月△日〜
 最近研究員達が少なくなってきている。久しぶりに点呼してみたら、マジで二割も足りない。だが、脱走した形跡はないらしい。上手くやったな。

〜◎月×日〜
 今までにない程の緊急事態だ。氷付けにしていた奴が消えたらしい。基地内では目撃されていない。総出で捜索したが、見付からなかった。
 しかも混乱に乗じてまた研究員が何人か消えた。くそっ、俺も逃げりゃよかった。

〜◎月◎日〜
 ‥‥おかしい。いくら何でもおかしすぎる。
 今日に限って、研究員達だけでなく警備兵達までいなくなってやがる。奴らも神経すり減らしてたのかな。気持ちは分かるが。
 今日も消えた奴らを捜しに捜索隊が出かけていく。
 そいつ等も帰ってこなかった。てか、基地から出てくとこすら誰も見てないのは‥‥なぜに?

〜◎月△日〜
 終わった。何かもう完璧なまでに終わった。
 俺は今、今までの研究レポートとか、そういう物をまとめている。くそっ!もっと早くこうしておけば良かった!!
 基地内にいた百何十人も、既に俺を含めて二十一人。残った奴らも全員逃げ支度をしているだろうよ! ああもう! こんな日誌を書いてるのももどかしい!!
 早く脱出しないと、あの化け物に食われ血ま――――――




●先行部隊の発見した研究員の日誌より抜粋●
●他の頁は、血に濡れて読めそうにない●
シナリオ傾向 戦闘 制圧
参加PC 錦織・長郎
月村・心
Broken fantasy 〜巣くう者〜
Broken fantasy 〜巣くう者〜

〜地下十四階・1325時〜

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

 真白い部屋のベッドに腰を下ろし、月村 心(w3d123)は荒い呼吸を整えていた。
 敵の激しい襲撃にあっていたエレベーターから抜けだし、既に二十分弱が経過している。
その間、心は体を落ち着け、目を閉じて昂揚した精神を静めていく。しかし失われた魔力を回復させるために行っている瞑想は、体が訴える激痛に妨害される。

「痛いのは分かりますけど、痛覚を切っちゃダメですよぉ?」

 小さく呻き声を上げた心に、ノルンは静かに声を掛けた。ノルンは所持していた応急キットで手早く心の体に包帯を巻いていくが、魔皇の体にはそんな物は申し訳程度でしかない。
 魔皇の体のデメリットと言えるだろう。自己治癒能力が非常に高い魔皇には、魔力を帯びたもの以外での治療が不可能に近い。ナイトノワールであるノルンには治癒系のDFを習得出来ない。従って、心の体を回復させられるのは心自身だけだったのだが……

「分かってるよ。あ〜、ったく。治りが遅いな」
(魔力が尽きそうだったのは分かっていましたけど、ここまで酷使してるなんて……)

 心の体には、本来はこの部屋に駆け込めるほどの体力も残っていなかった。
 大威力の魔皇殻を使い続け、DFを無理に連発し、ノルンをかばって敵の攻撃を一身に受け続けたのだから当然だろう。並のレベルの魔皇ならば、酷使の反動だけで優に三回は死んでいる。
 いくらノルンが大人しい気性だからと言っても、ここまでくれば心に忠告なり文句なり言いたくなる。だがしかし、心がここまでの状態に陥ったのは間違いなくノルンが居たからだ。心だけがあの場にいたのならば、決してここまでの消耗はなく、無事に上階へと戻れていただろう。
 それが痛いほどに分かっているからこそ、ノルンは無駄と分かりつつも心に応急手当を施し、少しでも助けになろうとしていた。
 心は右手を握って握力を確かめると、「ヨシッ」と膝を叩き、腰を上げた。

「これだけ回復すれば十分だ。行くぞ」
「ま、待って下さい! まだ塞がってない傷の方が多いんですよぉ?」
 ノルンは少しでも長く心を休ませようと、扉へ向かおうとする心を押し止める。
 しかし心は、そのノルンを前に、頭を振った。

「ノルン。お前の“黒き旋風”で、入り口にいたサーバントの動きを封じて足止めはしておいたが、とっくにこのフロアにだって敵が入り込んで来てるだろ。長居は出来ないぜ」
「どうやって上にまで上がるんですかぁ? さっきのエレベーターは登れないですよぉ?」
「……一つ、勘違いをしてるぞノルン」

 心はそう言うと、ニヤリと口を歪め、人差し指と立てて、それから下に向けた。

「俺たちが向かうのは地上じゃない。ここの最下層にいる大ボスだ」

 そう、心はキッパリと、躊躇いもなく言ってのけた。
 ノルンは心の言葉を聞いて、僅かに呆然する。それもそうだろう。こちらの戦力はたったの二人。しかも一人は傷を負って魔力も底を尽き掛けて、武装こそまだ使えるものの、決して敵陣のど真ん中で戦えるような状況ではない。

「無理ですよ!」
「無理じゃない。出来るだろ。このテンプルムは地下十五階で、三つに分かれてるフロアが一つに合流してる。そこまで行ければ、もしかしたら俺たちみたいにエレベーターを通って先回りしていた連中と会えるかもしれない。そうなれば脱出も殲滅も、不可能じゃないだろ」
「そうかもしれませんけど、誰も居なかったら?」
「その時は……方針転換はなしだ。案外研究施設を漁れば、こいつ等相手の対応措置とかがあるかもしれないぞ。ここの連中だって、まさか自分達が作っていたモノ相手の対抗策ぐらいは用意してるだろ。それを見つけ出して、利用させて貰う」

 なんにせよ、この場に留まるのは論外らしい。心は押し止めてきたノルンの肩を軽く叩き、静かに退かせた。ノルンは説得しようとして口を開き……やめた。心が赴く戦場に常に付き従って来たノルンは、心の判断を信じることにした。
 ノルンは、部屋の扉を開け、周りを見渡す心の後をついて行く。

「……分かりました。でも、不利だと思ったら逃げて下さいねぇ」
「ああ、サポートを頼……」

 バタ!
 勢いよく扉が閉じられる。ノルンはそれこそ鼻先で閉じられた扉に激突し、悲鳴を上げて扉に手を掛けた。

「心様! なんで閉じるんですか!?」
「ぁ〜、サポート頼もうと思ったんだが、しばらくはその場にいてくれないか?」

 心はそう言うと、扉が簡単には開かないようにとホルスジャベリンで扉を固定する。
 その心の周りには──

『GRURURURU……』

 喉から呻き声を上げ、心を凝視してくるケモノの群だった。数はザッと七匹。犬型やら猿が他やら種類は雑多だが、狭い場所ではあまり出会いたくない手合いである。

「集まられても迷惑なんでな。回復したてできついんだが、秒殺させて貰うぞ?」

 サーバントの群が、心に一斉に襲いかかる。まるで獲物に集るカラスのように、サーバントは心の全身を余す所無く食いちぎろうと跳びかかり……
 ゴォッ!!
 灼熱の炎と渦巻く熱風。そして何より、その業火によって増幅されたフェニックスブレードの刃が翻り、予告通りに跳びかかってきたモノ達を秒単位で消し炭へと変えていく。

「さぁ、出てこいよ大ボス。早くしなけりゃ、自慢の駒が全滅しちまうぞ?」

 不敵な笑みを浮かべる心の熱風に当てられ、廊下のあちこちから、新手のサーバントが現れた…………




〜地下五階・1330時〜

 心とノルンがエレベーターに姿を消してから、数十分が経った。
 その間に駆けつけた応援部隊と合流した錦織 長郎(w3a288)と幾行は、ようやく五階の掃討戦を終えて上階への脱出・補給線を確認していた。

「さて、それでは階下への突入を開始しましょうか」
「それはいいけどさ……どうしてエレベーターの方から心を追わないのさ」

 魔皇殻を大量殺戮仕様に換装し、大勢の部下を引き連れて階段を下りる長郎の後に続きながら、幾行は小さな声で尋ねていた。

「確かにエレベーターを使えば一気に十五階までショートカット出来ますが、それではそれまでの階層をスルーすることになりますからね。きっちりと補給線と脱出経路を確保するには、地道に一階一階攻略するのが当然……」
「そうじゃなくて、月村さん達を助けには行かないの?」
「行きません」

 キッパリスッパリと、長郎は当然のようにそう言った。

「そんな目で見てもダメですよ。エレベーターの入り口から上がってくるサーバントの数は減っていますが、それでも居ないわけではないのですからね。侵入を防ぐためにエレベーター前に兵を配置し、源泉となっている各階のサーバントを駆逐していかなければまた分断されかねません。そうなったら、助かるものも助かりませんよ」

 むしろ犠牲者が増えますと付け足す長郎に、幾行は溜息を付きながらも従うしかなかった。
 実際、長郎の言っていることは正しい。
 貴重なエースを助けに行こうとするのは人情だが、指揮を任される者は全体的な視野で指揮を執らなければならない。もし心を強引にでも連れ戻そうとすれば、他の階からのサーバントに包囲されるか、奇襲を受けるかして少なからず犠牲者が出るだろう。
 心とノルンが居なくなったときの襲撃でも、サーバント達が全滅させたがこちらにもそれなりの被害が出ている。本部に要請した応援部隊はまだ到着しておらず、いたずらに戦力を出せるほど、まだ余裕を持っていられる状況ではない。

「では……問答はここまでです。心君を助けたいのならば、一刻も早く各階を制圧していくしかないですね」

 長郎はそう言うと、幾行の後ろにいる部下達に身振りで合図を送った。
 部下達は頷き、静かに幾行を後方へと下がらせた。幾行は直接戦闘に参加することはせず、最後尾にてDFでの支援・他部隊への通信などの雑務を行う事になっている。
 階段の終着から、僅かに顔を覗かせて廊下を探る。相変わらず見通しが良くて何処までも真白な明るい廊下に、先程までではないにしろ、十数体ほどの人型のサーバントが蠢いていた。

「行きますよ。3……2……1……」

 ダッ! っと、長郎が階段から身を乗り出し、単身で疾駆する。見通しの良い廊下なのだから、当然長郎の姿はすぐにサーバントに発見され、一斉にその牙を向けられる。

「ハッ!」

 サーバント達が一斉に長郎に向かって走り出し、互いの間合いが三メートルほどにまで迫った頃、そのままシューティングクローで斬りつけると思いきや、突然長郎は跳躍した。
 天井に頭をぶつけかねないほどの、限界の跳躍。疾走の勢いを乗せた長郎は、まるで幅跳びでもするかのように、綺麗にサーバント達を軒並み飛び越えて着地する。ちょうど、サーバント達の背後に回るような形になった。
 長郎に意識を集中させていたサーバント達は、飛び越えられたことに一瞬戸惑いながらもすぐに体を反転させて追撃する。
 と、今度はその背中に、階段で待機していた長郎の部下達の火線が襲いかかった。
 ドダダダダダダダダダダダダダダ!!!!
 長郎の連れていた部下は十数人。廊下という狭苦しい場所で連れ回すには些か多いと思われるほどの人数は、長郎を除いてそのほとんどが遠距離戦に特化した武装を装備していた。
 故に火線の威力は、豪雨を超えて洪水に例えることが出来るだろう。サーバント達がどれほどの再生能力を持ち合わせていたとしても、全てが波によって洗い流され、後には肉塊すら残らない。

「──っ!」

 長郎はサーバント達を盾にしながら、合図のタイミングを計っていた。
 シューティングクローで胸元を突き刺し、見事に盾の役割を果たしているゴリラのようなサーバントが背後から受ける弾丸の衝撃でバタバタと暴れ回り、やがて自己再生すらしなくなる。

「真衝雷撃!!」

 その瞬間、タイミングを計っていた長郎は、溜め込んでいた魔力を解放した。
 暴れ回る雷撃はまるで花火のように、白い廊下をさらに閃光で満たし尽くす。
 それと同時に、長郎の部下達は一斉射撃をやめ、静かにサーバント達を注視した。衝雷撃によって焦げ付いたサーバントが、一匹、また一匹と崩れていく。
 最後の一体を蹴倒しながら、長郎は階段で構えている部下を呼び寄せた。

「この調子でこの階を制圧します。幾行、上の部隊に階段の確保を頼んで下さい。この階を制圧した後で、調査隊もこちらに呼び寄せるように」

 長郎はテキパキと指示を出しながら、部下達を引き連れて廊下を注意深く歩いていく。時折通風口に対しても攻撃しながら、長郎と幾行達は、順調に心達に迫っていっていた……




〜地下十五階・1400時〜

 一方、長郎達がゆっくりと近付いている時、心達は順調に長郎達から遠ざかっていた。
 十四階にてサーバントを倒した心達だったが、フロアのあちこちから集まってくるサーバント達から逃れるために、十五階までを突破したのだ。サーバント達と交戦し、隠れ、逃げ回りながら進んでいく心とノルンは、今では大きな警備室に立て籠もっていた。
 まるで軍の司令室のような作りで、数々のモニターとケーブルがあちこちに散っている。サーバントでも侵入していたのか、中には砕かれている物も混じっていたが、ほとんどの物はこの作戦中でもしっかりと起動していた。

「エネルギーは来てるんだよなぁ……だってのに」
「やっぱり開けられませんかぁ?」
「ああ。施設も軍並みだが、中身もだな。パスがないと開かねえ上に、防壁も頑丈だ。こりゃ、専門家じゃないと無理だろ」

 端末を叩きながら、心はモニターに映ったエラー表示に溜息を吐いていた。
 警察学校の課程で人前よりはこういったことにも心得はあったが、やはり暗部の研究機関ともなると、簡単に部外者が入り込めるようなプログラムはしていない。
 中身を見るのを諦めた心は、外の様子を窺っていたノルンに声を掛けた。

「外の様子はどうだ?」
「まだサーバントが残ってますよぉ。もうしばらくはここにいた方が良いと思います」

 ノルンは廊下を徘徊するサーバント達を確認し、すぐに首を引っ込めた。

「この中を突っ切るんですかぁ?」
「ああ。まぁ、ここで待ってれば他の部隊が追いついて来るとも思うが……」

 その前に、恐らくサーバント達から総攻撃を受けることになるだろう。ここまでの戦いでサーバント達に指揮系統が存在することには気付いた心だったが、さらに問題視していたのはこちらの行く先々にサーバントが現れることだった。

(こっちの動きが読まれているのか、それとも見られているのか……?)

 少なくとも、寄生されていようが居まいが、サーバントに精密機器を扱うような知能はない。心は研究員の類がカメラで監視しているのかとも思ったが、現在のこの場を見る限りでは影も形もない。

「あまりグズグズしてると、この部屋に敵が集中しそうだしな。サッサと下の階に行って……ノルン!?」
「はい?」

 心は叫んだ瞬間に走っていた。真狼風旋を使って加速した心は、硬直したノルンを一秒掛けずに追い抜きノルンに忍び寄っていたモノを一閃する。

『GYARARAARRARA!!!!!!』

 切り裂かれたサーバントが、叫びを上げながら天井の通風口へと引っ込んでいく。

「な、なんですか!?」

 突然の出来事に混乱するノルンだったが、足下でのたうち回るサーバントの半身……まるで棘を生やしたミミズのような容姿をした怪物を見つめ、反射的に蹴っ飛ばした。

「ひっ! なんですかこれ!」
「知るか、とにかく上に注意しろ! まだいるぞ!!」

 心はブレードに加えてホルスジャベリンを構え、壊されて剥き出しになった通風口を睨み付けた。ノルンもその視線を追って注視したとき、ノルンを襲ったサーバントがズルズルと恐ろしい速度で滑るように通り過ぎていく。

「気持ち悪いのが居ますね」
「ああ。天井裏にこんなのが住み着いているんなら、生き残りなんてのは居なさそうだな!!」

 心は今にも通り過ぎようとした怪物にジャベリンを突き立てた。心は一抱えほどもありそうな巨体を誇る怪物ミミズの感触に眉を顰め、暴れるミミズを両断してやろうと力を込める……
 と────

『GYARARAARRRRR!!!!!!』

 ダタダダダダダダ゙ン!!!!
 天井があちこちで弾け飛ぶ。その上にあるのは通風口だろう。仲間の危機を感じ取ったのか、それとも餌を逃さないために気合いが入っているのか……

「参ったな。ノルン。やっぱりここで助けを待つのは無理だろ?」
「そうですね。じゃ、出ましょうか?」

 天井のあちこちから顔を出し、大口を開ける怪物を前にして、二人は顔を見合わせて魔力を収束した……



To be continued