この事件の発端は、一体どれ程まで時を遡るのだろうか?
一月前のスミルナル基地襲撃・捕虜暗殺事件。
二月前の実験素体抹殺事件。
半年前の遺跡発掘・サーヴァント寄生事件。
おおやけに公表されにくい事件ばかりが巻き起こった御陰で後手後手に回ってしまったが、それでも、ようやく解決の兆しが見えてきた。
「‥‥向こうも配置に付いたか。いよいよだな」
ポツリと、一人の傭兵が呟いた。
その目は一キロ程離れた場所で突入の合図を待っている部隊が見える。敵陣のテンプルムに攻め込める入り口は三つだけ。たったそれだけの数しかないのだから、既に敵はこちらのことを察しているだろう。
その証拠に、今まで観測されることの無かった絶対不可侵領域が展開されている。それを展開すれば、どうしても中央軍の目から逃れることが出来ないが為に今まで展開しなかったのだろう。
それを使っているのならば、既にここは臨戦態勢に入っている。既に中にいた研究者達が逃亡した可能性は高いが、しかしだからといって中に入らないわけにも行かない。
「作戦開始まで後三十分か‥‥やれやれ。まだ戦争をしたがる奴らがいるんだな」
ぼやきながらも、体から滲み出る殺気は本物だった。
この数年間の平和がウソのようだ。いや、厳密に言えばどこも平和になどなっていない。何しろこの国でさえ、まだまだ数多くの火種で燻っている。
‥‥その中でも一際目立たず、そして大規模に進んできたのが、これから相手をする者達だ。ここに至るまでにどれだけの命を弄んできたのかを思うだけで、殺意が体を這い回ってゾクゾクする。
「これは、お前達が望んだ戦争だぞ」
吐き捨てるように言い、手にしていた敵の資料を握りつぶす。
さぁ、相手の望みを叶えよう。
戦争がしたいのなら相手になる。
ただし、
そちら側を、一人たりとも、残すつもりはないんだがな‥‥
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