この事件の発端は、一体どれ程まで時を遡るのだろうか?
一月前のスミルナル基地襲撃・捕虜暗殺事件。
二月前の実験素体抹殺事件。
半年前の遺跡発掘・サーヴァント寄生事件。
おおやけに公表されにくい事件ばかりが巻き起こった御陰で後手後手に回ってしまったが、それでも、ようやく解決の兆しが見えてきた。
(‥‥‥まさかここまで集められているとは‥‥)
何十人‥‥‥自分の周囲だけで、それだけの兵士達が待機している。その中に混り、周囲を監察している傭兵もまた、この作戦に参加している傭兵の一人である。
ある筋から回ってきた依頼によって、その傭兵はこう命じられていた。
“地下17階にある○○号端末から、以下の資料を持ってこい”
それだけである。
だと言うのに、その報酬は非常識だった。前金だけで、数年は遊んで暮らせるだろう。
(さて、一体何が出てくるのか‥‥)
軍から与えられた資料から見た限りでは、どうも実感が湧かなかった。だがそれでも構わない。何しろ、自分の目的は化け物達相手のドンパチではなく、そのドンパチを隠れ蓑にしてデータを回収するだけだ。
ようは、危険からは全力で離脱するだけである。
数年前の戦争を生き残った者ならば、それぐらいの技量は会得しているのだった。
「総員戦闘準備は出来てるか!作戦まで後五分!覚悟を決めろ!!」
部隊指揮官が声を張り上げる。敵さんに見つかっていることなど、百も承知なのだろう。
(さて、と。それじゃあ、地獄への観光ツアー。案内よろしく)
戦闘準備を確認しながら、数多い兵士に紛れ込んだ潜入者は、一人だけ笑っていた‥‥
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