■EXCEED.【軌道高射砲破壊】■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 UNKNOWN
オープニング
お久しぶりです、魔皇様方……サーチャー、シグルーンです。
時間がありません。現状からお話しします。

ISCA旧管理区域に、移住計画と称して地方から集められた大量の一般人が監禁、人質となっています。
首謀者は、北海道側グレゴール。その他複数名のデアボリカ工作員が存在し、人質の管理を行っているようです。

以前、特務軍による一掃が行われた旧管理区ですが、その後の再開発も行われず、不要な土地として放置されていました。
しかし、実際には一般居住層のみが破壊され、実験区画であった地下部分が残っていたのです。
それを再利用したISCA残党軍によって、旧管理区は巨大な神輝エネルギー集積システムへと改造されていました。更にその中心に建造された塔、クリスタル・セルを触媒とした大型の神輝光エネルギー発振システムが、今も尚、人質の感情を吸い上げています。
この塔……高出力のエネルギー砲は、発射されれば唯一無二のエネルギーインフラである人工衛星・エゼキエルを撃ち落とし、その被害、混乱は未曾有の物になるとされています。
どうやら核は、集められた人々の不安と恐怖を煽る為の道具だったようです。また、使い終わった人々を一掃する為、とも……考えられます。
しかし前回の依頼により、核爆弾の合流自体は阻止できました。発射までの時間はかなり余裕がある筈です。

ただ……首脳部は、既に人質に見切りを付け、特務軍による広範囲爆撃を決定しました。
人々の感情が無ければ、砲撃は行われない……そう判断したようです。

ですが…。
ですが、私は、私はそんな事、見過ごすなんてできません。
ミチザネ特務軍は、敵グレゴールが強奪し、操っている強化型バリアブル・ネフィリム、そしてもう一騎、突如として現れた魔凱殲騎の迎撃により、一旦破壊作戦を練り直す体制に入っています。その間に、旧管理区に突入、中央にある神輝光軌道高射砲を破壊してください。


これが私からの、最後のお願いです。
シナリオ傾向 殲騎戦
参加PC 月島・日和
天剣・神紅鵺
真田・浩之
ミティ・グリン
フェミナ・シークザイル
桜庭・勇奈
EXCEED.【軌道高射砲破壊】
夜の地上に、ぽっかりと浮かび上がる白色の光。
大きな器のように光を蓄える城壁の都市は、その中央に光源の塔を囲っている。
城壁には、黒い翼を掲げた紫色の殲騎が立ち。
人々の恐怖を啜って輝く塔の突端に、機械の翼を持った天使が立つ。






―――懺悔の天使


親弾に搭載された大量のベアリング弾が、人々の監禁されている大型のバスを掠める。
低空からの射出が徒となり、地表を蹴るように飛んだミティ騎は完全にその範囲から外れている。
しかし面制圧を目的とした拡散弾頭は、単発でも一瞬にして大量の人命を奪い去る。そしてその最後の恐怖でさえ、都市に根を張った衛星砲のシステムに吸い取られていく。
桜庭は奔走した。人質の救助が目的だったが、障害はデアボリカ兵だけではない。戦闘が間近で行われている為、人々をこの城塞都市で誘導する事さえ難しかった。
同じく都市内に降り立ったミティも、デアボリカ兵と砲塔周辺に配置された高射砲を破壊するのが目的だったが、城壁を越えた時点で強化型バリアブル・ネフィリムに目を付けられていた。
白の魔皇フェミナ・シークザイルと逢魔のクライスが駆る殲騎がネフィリムに狙いを定めているものの、都市の残骸を高速で行き来する機体に追尾型魔皇殻の補正もままならない。
「技術、性能、理想、気迫。何を取っても凡庸な上にブランクも長い。だが、負けんよ」
人の手によって機械化の施されたネフィリムが、眼前で急激にベクトルを変える。変形と同時のスラスター噴射で強制的に捻じ曲げたような機動を魔皇殻の翼で追うフェミナ騎だが、あっという間にDFの発動距離からも離されてしまう。
「うわ!もう来たよ」
順調に二つめの高射砲を叩き潰していたミティ騎に、変形状態のバリアブル・ネフィリムが衝突する。
轢き倒すように上を取ったネフィリムは瞬時に変形を済ませると、エネルギーブレードを真っ直ぐに振り下ろす。咄嗟に掲げた太刀が融解温度を迎えるまで、僅かも無い。
「奥の手発動!」
目眩ましに放った超幻魔影。耐DF加工が施されている機体だが、高位のDFを受ければ損害は免れない。眩惑効果は発揮されなかったが、隙を見たミティ騎は動きの止まった騎体を蹴り飛ばし、体勢を立て直す事には成功した。
「SFが封じられれば大分……」
「…駄目、です」
霧の中から光の束が漏れる。追いついたフェミナ騎とミティ騎の中間で、霧に守られた空間が真っ二つに割けた。
『聖棘<ペイン>……』
バリアブル・ネフィリムの、風を捕らえる主翼部分が強く発光している。
『励賛歌<ハーモニクス>』
願いの歌が響き渡る。その罪が罰によって贖われる事を願う歌が。
音響板のように振幅する翼から、魔族の精神をくしゃくしゃに螺じ曲げる歌が。
殲騎に対するダメージは無い。しかし、響き渡る音がその中に染み渡り、神経を、眼球を、内臓を、肉体のあらゆる箇所で棘の腕が引き絞っていくような痛みを引き起こす。
あるのは痛みだけ。非殺傷制圧兵器のような効果を持つ固有の上位SF。
度を超えた負荷に制御を手放した精神が戻ってくるまでに、数秒。指先が引き攣り、膝の震えは止まっていない。
しかし痛みに負けて手を離せば、目の前で剣を振り上げるネフィリムの良い的でしかない。
「ぅっ……!!」
更なる不快感を堪えて、フェミナ騎が跳躍と同時に火砲を発射する。
『耐えるか……楽になれば良い物を』
剣を止め、追尾弾を両腕で防ぐネフィリム。その後ろで、ようやくミティ騎が身を起こした。
「もう一発は拙い…!」
コクピットの中に饐えた匂いが充満している。強い負荷で収縮した胃から内容物が零れ、足下に溜まっていた。
「ロクでもない天使だ、アレであの機体も盗……っぷ」
演技をしている余裕も無く、真パルスマシンガンの震動で吐き気が戻ってくる。
敵は機体慣れしていない為か、強引な機動の所為で隙が多く、ダメージは蓄積している。何とか冷静さを引き戻すと、フェミナは超幻魔影の中に潜んだ。
しかし、一度同じ攻撃を受けている為か、ネフィリムは踏み込んでこない。
『良い的だよ、お前……』
再び、音が裂く。
身構えていた両騎であったが、霧の中で機を待っていたフェミナ騎が砲身を掲げたまま停止している。
「こ…のぉぉっ!!」
ツインビームカノンが火を噴く直前、ミティ騎が苦し紛れに投じた太刀がネフィリムの膝に食いかかる。
射撃反動を受け止め損ねた機体は照準を違え、白い殲騎の腰を吹き飛ばすに留まった。獣の鎧が予め付与されていた為か、コクピットに直接の打撃は無い。
しかし半ば程で撃ち折られた機体は、もう立ち上がる事も出来ず、徐々に送還が始まっている。
『魔皇が…っ!』
奥の手の奥の手に取っておいた真バスターライフル。しかし、もう奥も底も言っていられない。
既に次弾は装填され、片足を引き摺った機体が此方を睨む。
「歌い死ねっ!!」
双方、直撃。
振り向き様のビームカノンは胴体に、バスターライフルは胸部に。
零れ落ち始める装甲の隙間で、疲弊しきった主の体を担ぐ細腕。
「……はい。“こんなこともあろうかと”……鉄板を二つほど持って参りましたが……」
手持ちの壁にまで頼るような状況で、次の手を繰り出す事もできない。
対して、衝撃から立ち直ったネフィリムは、歪んで上手く曲がらない脚を引き摺りながらも立ち上がった。
「間に合えっ!!」
頭部と其れに繋がる頭部を失ったネフィリムが変形を開始する。そこへ、人質の退路を確保した桜庭の騎体が飛びついた。
『えぇい、退けぇっ!!』
機首にしがみついた桜庭騎を振り解こうと、出鱈目な軌道を描いて飛ぶネフィリム。
マウントされたビームカノンが獣の鎧で守られた殲騎の脚に向けて幾度となく撃ち込まれるも、紅の騎体はその腕力で食らい付いて離さない。
人の手が加えられ、MLRSのラッチが組み込まれた隙間に、腕を差し込む。
「ここだぁっ!!」
炸裂する衝撃。真撃破弾の威力を内部から受け、バリアブル・ネフィリムは内部から四散した。
誘爆するPBバッテリーの光と破片を受け、ネフィリムの墜落と同時に桜庭騎もコンクリートに叩き付けられる。
加速度のまま暫く地面を転がり、騎体は仰向けに停止した。
「…ハティ」
「えぇ……まだ、ですね?」
撃ち抜かれ、脆くなった脚部に鞭打ち、桜庭は負傷したミティ達の元へ騎体を進める。
仲間を救う為に、未だ暫く、立っている必要があった。




―――DIABOLO

「さて、これで幕だ。人間ども。私は道化らしく……」
城壁の上、口上を挙げる天剣騎を無言で遮る騎体。
真ガーディエルジャケットを着込んだ真田騎が、触手に守られたその胴体に蹴りを入れる。
「道化らしく……」
触手を掴み、本体を引き寄せて真ブリュンヒルデの一撃を見舞おうとするも、その腕は別の触手で遮られた。
「踊り続けようさッ!!」
相対零リーチ。触手の網の中での究極的なインファイトとなった真田騎。基本性能を強化しているとは言え、一撃で突破出来なかったのは辛い。
天剣騎は距離を離したい所だったが、襟を掴まれるような距離では隙を見せる訳にもいかなかった。
「魔力が勿体ないが…」
イルイの放つ重力の檻が、蠢く触手を捕らえる。
保持力を失った魔皇殻から、本来殲騎の物ではない人類兵器が落ちていく。
「ぅッ陶しいぞ、気取り屋っ!!」
超蛇呪縛。拘束力に対し拘束力の上級DF。
両者の効力は拮抗し、しかし真田騎は呪縛によって飛行機能を抑えられ、魔皇殻の推力で何とか落下を阻止している。
彼方では月島が残る一騎に苦戦を強いられているのが見え、そして中央に聳える塔は予想より遙かに早く充填を済ませようとしている。それを確認する視界も、徐々に下がりつつあった。
先に途切れたのは、重力の檻。
高笑いと共に振り上げられた真ファナティックピアスが、真っ直ぐに振り下ろされる。
分裂する切っ先。
張り裂ける音。
視界の端が真っ白になる。
「―――がッ、外ィィ野がぁぁぁッ!!」
防御に回した触手は全てが焼け落ち、翼は巻き添えを喰って拉げ、殲騎の細い横腹が削がれている。放った攻撃も、横合いから殴りつけた光芒に落とされている。
地上からの長距離援護砲撃。真メギドランチャーを元来の位置に携えた紫の騎体が、射撃反動をいなし切れずに転倒していた。
「来た…か」
砲火を合図にしたかのように、見覚えのあるゼカリアが、人を背にした竜が都市に雪崩込み、デアボリカ兵と戦闘を始める。
先んじて桜庭が誘導していた人々は竜騎隊に誘導され、安全な位置まで護送されていった。
「有象無象がノコノコとっ!」
人質の解放を続ける眼下の兵士を睨め付け、振り返る天剣騎。
その背後で、DFの呪縛を振り切った真田騎が全ての推力を発揮して天剣騎を捕らえ、押し込む。
「イルイ、行けるか?」
「…魔力には余裕があるが、騎体の損傷が激しい。無茶は…いや、よそう。どの道、あれを発射されたら全て終わりだ」
頸に手を、背に真ブリュンヒルデを突きつけられ、その騎体は真っ直ぐに、塔へと向かう。
「うう゛ぉぉォォッ!!」
超衝雷撃が炸裂し、飛び散る雷撃が真田騎を襲う。
本来なら限界を超えそうなダメージだが、魔獣殻の翼は消える事なく、主を支え、進ませる。
「これが、此んな事がッ!」
強固なフレームで覆われた砲塔が、目前に迫る。
基盤からは光が溢れ、真下から太陽に灼かれるような真っ白な世界に入る。
「これが、道化だと――
超燕貫閃の力を帯びた切っ先が、衝突のままに騎体の背を破り、砲塔へと磔にする。
貫通した衝撃は内部で反響し、神輝光で充ちたクリスタル・セルに罅を穿った。
ガラスの割れるような音が断続的に続き、数秒で、それは轟音へと置き換わる。
人工の結晶体が、蓄えた力を支えきれずに崩れていく。
崩れていく。
内側からの圧力が増した砲塔は熱した竹のように爆ぜ、折れ曲がり、決壊の切欠となった二騎の姿を覆い隠す。
漏れ出した光は天に迎えられ、歪な墓標から立ち上る霊気となって消えた。
しかし。
立ち上る光の霞は、その中に、未だ戦いを続ける騎体を残していた。







―――最期


漂う光に照らされる騎体は、僅かに掠めただけの傷が山のように積み重なり、損傷に比べて酷く汚れて見えた。
二丁のライフルは直撃さえせず、かえって自ら敢行した体当たりや、近接格闘での擦過傷の方が多く感じる。
加減、ではない。明らかに制御に苦しんでいる。そしてそれは当然の事だった。
楡の逢魔、キセノはその主がパトモスに潜入している間、歩兵としての訓練は積む事ができても、騎体での戦闘はできない。
それ故の技量差、スピリットリンクの不足、そして高負荷の魔凱。
騎体のコンディションは常に乱れている。それでも尚性能差を見せつけるのは、単独の技量に過ぎない。
現に、二人分の注意力を持った月島の騎体は健在。
一対一を維持したまま、この依頼を成功で終えたまま、尚逃げ帰ろうとしない騎体を眼前にしたまま。
「……終わりました」
ライフルを斜めに構え、空に立つ紫。
「…これでもう、衛星は撃てません」
「だからこそ、職に殉じる」
硬質な応えの後ろに、その心を知って身を捧げる逢魔の啜り泣く声を感じ取る。
「どの道、こうはなったのだろう。理念も、帰る場所も…」
終わった戦場に、銃撃の乾いた音と、騎体が夜を裂く風切り音だけが鳴る。
震える腕で強引にトリガーを引き絞る楡騎。掠めもせず、懐に入った騎体から逃れるだけの距離で、身を投げたような無茶な機動を起こす。
細かな騎体制動は諦めたのだろう。ただ、動いているだけの騎体。
「もう止めろ!」
軌道の予測どころではない。無理矢理に翻る騎体を凝視していた悠宇が堪らずに声を上げる。
「逢魔能力どころか、殲騎のコントロールも無理なんじゃないのか!」
応えない。その騎体に、とうとう月島騎の指が掛かる。
ライフルを保持した両腕を掴み、装甲がぶつかる。
膂力は紫同士、互角。
魔凱の力を得ている楡騎が、その推進力を頼りに月島騎を壁面へと押し込む。
接触する両騎。疲弊の息づかいさえ聞こえる、逢魔の苦しみをすら感じ取れる距離。
「障害と、なるのなら…!」
月島の決意を受け、壁を背にした殲騎が覆い被さる殲騎を押し戻す。
負荷となり続けた魔凱の力は持ち主の衰弱と共に機能を弱めていた。
「その壁が、未来を妨げるのなら…」
刀が、翻る。一瞬身を引こうとした騎体に、悠宇の重力の檻が絡む。
「だが、その未来を滞らせ、腐らせようとしているのは…」
「私は……待ちます」
束縛を振り解こうと悶える殲騎の両腕が断たれ、それでも尚、抗おうとする騎体に、最期の太刀が向けられる。

最期の、一振りが………………


















―――――


その後。
崩壊した衛星軌道砲は解体され、パトモスは平穏な日常を取り戻しました。
国外の脅威は相変わらず続いていますが、楡容疑者が残した資料によって旧日本派による司やユディットの幽閉・神魔実験や、葛城大臣の監禁を暴露された日本国はその正当性を失い、徐々にではありますが、国としての形を崩しつつあります。
しかし、同時に流出したゼカリアの研究資料から、その動力がファンタズマを取り込んだ特殊なプラグに起因する事が露呈。
これにより、ミチザネ派は失脚、全てのゼカリアは新たに構成された議会によって生産が止められ、国内の戦力は魔皇や神帝に頼る事になりました。
そう、人の力が失われ、三位一体の均衡が揺らいでしまったのです。

それでも、平穏は続いています。
力を持たない人類は、魔族と神属にその両肩を抱かれたまま。
仮初めだと笑う人。何れ崩壊を迎えると嘯く人。妥協の安寧だと唱える人。
偽物の、人の手に因らない箱船だと言う人。
私は、それで良かったと思います。
この時代を迎えた魔皇様達が、その側らに立つ逢魔達が、超えてきた結末。
それが、今の世界です。
ありがとうございます。魔皇様。
また、どこかで…

               ―――シグルーン





Thank you for talking with me.

Thank you for ”exceed”ing answer.

Next, meet in your dream.

Slaintheva!

                  UNKNOWN