「ここ……だよな、タク?」
「ああ、ユーリ。タレコミの住所はここで間違いないな」
8月某日のことだ。GDHP刑事・ユーリこと木下有理と、同じくGDHPの刑事・タクこと拓山良樹の姿は、ビルシャス某所のとある6階建てのマンションの前にあった。人呼んで『あぶれる刑事』のこの2人、どうしてこんな所に居るのかといえば……。
「にしても、女からのタレコミかあ」
ユーリがニヤリと笑いながらつぶやいた。
「どうせ男に愛想をつかせたんだろ」
クールに切り返すタク。それに対し、ユーリが右手の人差し指を顔の前で揺らしながら言い返す。
「チッチッチ、そいつは違うぜタク。きっとな、男に真っ当な道に戻ってほしい女が泣く泣くタレコミの電話かけてきたんだって」
「どっちでもいいさ」
タクは素っ気なく答えると、マンションを見上げた。
「で……306か。真ん中だな」
「中途半端な位置だよなあ」
やれやれといった様子でユーリが言った。
「オレら2人でも十分だけどさ、タク」
「ああ、俺たちだけでも十分だけどな、ユーリ」
タクが頷き、ユーリと顔を見合わせた。
「「万一ってこともあるからな〜」」
そして2人の声がはもった。
「今、減俸喰らうと辛いんだ」
「俺も、スーツの支払いが……」
……なかなかに、切実な理由があるようで。
かくして2人は、人手を集めてからタレコミのあった部屋へ向かうのであった。
ちなみにそのタレコミ内容とは、306号室に住んでいる男が銃を複数持っている、というものである――。
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