10月某日、GDHPの捜査官に対して『密かな指令』が下っていた。それは、とある議員についての身辺調査である。
その議員の名は黒山三郎――パトモス国議会の人類派議員にして、魔属に対する規制強化の強硬派代表格だ。
では何故にこのような事態になったのか、簡単に触れておこう。去る8月、タレコミの確認に向かい容疑者確保した際、その容疑者の部屋からとんでもない代物が発見されたのだ。『新東京におけるクーデター計画』なる書類の束である。
だが、ここで一番の問題となったのは計画内容ではない。その中の1枚の書類に記されていたサインが問題だったのだ。そこにあったのは『黒山三郎』というサインであったから――。
これを入手したGDHPは、非常に慎重に筆跡鑑定を実施した。他人が偽造したサインである、当初はそう思っていたからである。ところが、出た結果は洒落にはなっていなかった。『90%以上の確率で、黒山議員本人が記したものであると考えられる』という結果が出てしまったのだ!!
現職議員がクーデターを画策していたことが知れ渡ったら、パトモスが大混乱に陥ること間違いない。対外的にも色々と影響が出てくるだろう。
そのため、捜査も内密にかつ慎重にならざるを得ない。そこで冒頭で触れた『密かな指令』に戻る。
GDHPは今回の黒山の調査の名目を、黒山が狙われているという情報が入ったため、ということにしたのだ。ゆえに今回の裏を知っている者は僅かにしか存在しない。少なくとも、書類を発見した者たちは知っていることだろう。
さあ……調査の開始だ。結果次第では、パトモスを揺るがしかねない調査の……。
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