それは奇妙な殺人事件であった。
場所はいずれもソアル内。最初に事件が起こったのは……10月に入ってすぐのことだっただろうか。
小さな公園の片隅に、女性の死体が転がっているのが早朝に発見された。所持品などから、いわゆる夜の商売系のお店で働く30代の女性であることが判明した。そう、所持品などからでだ。何故なら、その女性の遺体は顔や両腕、胸部や腹部、背中などが鋭い刃物か何かで滅多突きにされて、判別が出来なくなってしまっていたからである。
死因はどうやら最初に喉を一突きされたことによるもののようだった。それから各部位を滅多突きにしていったのであろう。
だがしかし、全く傷付けられていない部分が存在した――両方の足である。何故かそこだけはかすり傷すらなく、綺麗なものであった。
それから現在に至るまで、同様の事件がさらに3件発生していた。20代前半の女性、20代後半の女性、そして19歳の女性。いずれも同じように顔などを滅多突きにされ、両足のみが無傷となっていた。
20代前半の女性は繁華街のビルの裏側で倒れているのを早朝に発見された。20代後半の女性と19歳の女性は、各々1人暮ししている自分の部屋で殺害されているのを発見された。職業は20代前半の女性が夜の商売系のお店、20代後半の女性がOL、19歳の女性が大学生である。
手口が手口ゆえ、一連の事件は同一犯と考えられた。事件の内容ゆえに、GDHPに捜査権を委譲した方がよいのではないかという声もソアル署内にはあった。しかし……現在までに捜査権の委譲は行われていない。ソアル署の上層部の一部が強く反対しているとの話である。
まあGDHPへの対抗心ゆえ、そんなことが起こるのはそれなりにある話だ。けれども、何故に一部が強く反対しているのであろう。
そのことが気にかかった一部のGDHP捜査官たちは、捜査権の委譲を待つことなくこの事件について独自に調べ始めるのであった……。
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