「魔皇様方、お願いいたしたい依頼があるのですけれど……」
デビルズネットワークタワー・アスカロト。サーチャーの逢魔・魅阿は集まった魔皇たちを見回してから、次のように言葉を続けた。
「申し訳ありませんが、この時点で引き受けると確約された方以外にはこの先をお話することは出来ません。引き受けると仰られる方々のみ、どうかお残りください」
……これはかなり情報管理されているようだ。よほど危険な依頼なのかもしれない、色々な意味で。
そしてその場に残った魔皇たちを相手に、魅阿は依頼の内容について語り始める。
「30日の午後、ビルシャス某所の高級中華料理店にて会合が行われます。出席者は中華人民共和国人民解放軍陸軍所属、狐蓮大佐。その他、中国の政治家や官僚といった方々もご出席されます」
人民解放軍という単語が出た瞬間から、残った魔皇たちは思わず顔を見合わせた。中国の軍人やら政治家やら官僚やらが出席するような会合とは、いったい何の会合だというのだ。
「そして、パトモス政府やミチザネ機関から各々担当者の方がご出席されます」
中国……パトモス政府……ミチザネ機関……。そこまで聞いて、ピンときた者が居た。これはあれか、神魔技術製兵器輸入枠拡大に関する会合ではないのか?
「この会合は中国側の要望を伝える場になるとのことです。魔皇様方には、その警護に加わっていただきたいという依頼です」
なるほど、そういう会合であるなら警護も必要になる訳だ。パトモス側はもちろん警護を出すのだろうが、それだけでは手が足らないと思ったかこちらにも話がきたのであろう。魔皇たちはそう思っていた。ところが……。
「ただし、警護終了後にどのような警護を行うよう指示されたか、中国側の方にお伝えしていただきます」
……どういうことだ?
まさかこの依頼、頼んできたのはパトモス政府やミチザネ機関ではないということか?
「ご想像の通り、今回の依頼は中国側よりの依頼です」
魔皇たちの戸惑いを察した魅阿がそう説明した。つまり、中国側はわざわざ自分たちでも警護を頼んだということなのか。でも何のために?
「魔皇様方はパトモス側の警護の方々と協調しつつ警護をしていただくことになります。パトモス側よりの指示は聞き漏らさぬように……と念を押されています」
さてはて、目的がよく分からない。しかし確約してしまった以上、この依頼を引き受けるしかなく……。
「それでは魔皇様方、くれぐれもお気を付けて……」
魅阿は深々と頭を下げた。
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